荒野の空を〇2
- 2024/01/27 16:57:00
彼が注いできてくれたスープを受け取る。美味しそうな香りにまた腹が鳴ってしまいそうだった。彼がスープを口にしているのを見届けると、自分も一口。
「…美味しい。」
キョトンとしたような瞳を浮かべながらスプーンを見つめた。野菜の旨味が良く感じられる。そしてどこか懐かしい味だった。そうだ、ベレアン国の料理はこういう味だったな。久しぶりに故郷の食に触れられて、改めて自分はやっぱりベレアンの人間なんだなと実感した。それから一口ずつ、胃の消化に負担をかけないように食べて、気が付けば完食していた。
「…ありがとう、すごく美味しかった。 …っ…うん、分かった。」
そういうと彼にトレイごと器を渡した。それからまるで睡眠薬でも入っていたのかと思うほどの睡魔がやってきた。腹が満たされたことと、まだ体が本調子でないことが原因だろう。ゆっくり横になって目を閉じた。意識が飛んで深く眠りにつきそうな瞬間、包帯が巻かれている腕をゆっくり持ち上げ、近くに座っている彼の手に触れた。
「…ありがとう、ロイン。」
ちゃんと名前は憶えていた。優しい表情を浮かべながらそう彼の名とともに感謝を伝えると、手を離し、ゆっくりと深い眠りについた。
____________________________
キゾンの奇襲場所になること把握です。今クレアはベレアンの腕章を持っていますが、服はキゾンの隊服を着ています。キゾン騎士たちが襲って来ようとするなら、クレアが自分自身を使って避難民を守ろうかと考えています。(きっとロイン達には貴様はどっちの人間だ!!と言われる+反感を食らうかと思いますが)
今後の物語の進み方も見ながら追々決められたらと思います。。
クレアの姿にロインはそれしか言えなかった。こうなることが分かっていたから…あの日街から帰ってきた時も、クレアの笑顔を見た瞬間言い出せなくなってしまった。
「よっぽどの事が無い限り、アイツは生きてるよ。刺すのに使った“イチコロ”っていう技はさ、相手を麻痺させて捕獲する技なんだ。エールボルドの村長が言ってたように、本当は魔獣相手に使ってた技で…」
勿論人間相手だって事をわかってて使用したんだし。その分の加減もちゃんと取っている。それに刺した後の処置も、兄貴が的確にしてくれたお陰で「人間相手でも使えるんじゃねぇか!?」と俺が錯覚する程、順調に昏睡状態に陥ってくれたし。
余程の体調急変がない限り。誰かが勝手に危篤状態と勘違いして、変な薬や心臓マッサージなんかをしなければ。問題なんて起きる筈が無いんだ。
とはいえ。結局アレ以来ヤツの姿を見ていない上、兄貴にも「キゾンで療養する」という噂しか知らないと言われた。だから、今のロインには「絶対に生きてる」なんていう無責任で烏滸がましい事を、クレアに向かって言う度量は無い。
暫く口を噤んだまま、蹲るクレアをロインは見つめていた。自分がやった事に後悔が無いから更に性質が悪いんだ、と。ロインは自分で自身の性質に苦虫を噛み潰す。
「好きなだけ、泣けばいいよ。俺は先に戻るから、さ。」
このままクレアを一人にするのは、忍びない。だが、敢えて明るく声をかけると、ロインは踵を返した。
__________
ゆっくりサイル側を観ている余裕が無いので、ひとまず此方だけ
サイル自身は、ちゃんと(普通に)カイ様と話が出来るようにしたい、んです。(現在その準備中)
ロインの言う通りに、黙って聞いていた。いや、黙らざるを得なかった。言葉が出ないんだ。彼から告げられる事実に。私はロインの顔を見つめているのに、見えていない。
クロードが生きていた。でも、片腕しか動かなくて、その片腕は責任を取って奪われたものだと。私のせいだ、と思ったのも束の間。ロインが最後に言った一言で全てが覆る。
「………彼は、生きてる、よね?」
気づくと立ち上がってロインの前まで進んでいた。そして夜だと言うことも忘れて、声を出してしまう。
「殺してないよね…?彼は、…クロードはまだ生きてるよね?!、お願い、そう言って!!!じゃないと私は貴方のこと…!!」
彼の胸元を握りしめながら叫んだ後、ハッとした。私は今、何を言おうとしたんだ。「貴方を殺してやる」とでも、言おうとしたのか。私の表情を見ようとしない彼に、もしかしたらと、思ってしまう。その現実を受け止めれる程、彼の存在は私に取って軽いものではなかったし、私は強くなかった。
私はその場に崩れ落ちるように倒れた。彼の横顔が、そしてこちらを振り向き微笑む表情が一瞬目の前に映る。なんでこんな時に思い出してしまうのだろう。その幻影を目に映らないよう、私は手で顔を覆った。
先程の問いに胸奥が思わずビクつく。まさか聞かれているとは思ってなかったからだ。気まずげに、見つめてくるクレアから視線を逸らし、焚火の揺らぐ炎に焦点を変える。そのまま黙ってしまい、暫くはそうしていたが、ロインは吹っ切った様に小さく笑うと手元の掛布を広げてクレアの体を包むように覆った。
「それじゃあまだ寒いだろ。それとさ、やっぱこれは先に言っておかなくちゃなんねぇから、黙って聞いてくれるかな。」
立ち上がって一歩彼女から離れると、真剣な面持ちでロインは深く頭を下げた。
「悪かった。俺は…正直、許して貰えるとは思ってないし、許して欲しいとも言えない。けど、謝罪はさせてくれ。」
そう一言ずつ噛み締めるようにゆっくりと、言い終えてからロインは頭を上げた。少しだけ切なげに彼の瞳が揺れ、寂しげな笑顔がロインからクレアに向けられる。
そして、ロインは事の顛末を静かに語りだした。
【一か月ほど前。街で兄貴を見かけて声をかけた。話に夢中になっていたら仇のアイツが現れた。俺は奴に斬り掛かったがガキ扱いするみたいにあしらわれて余計に腹が立った。
兄貴の体張った仲裁が入らなかったら、俺は本当にアイツを殺してたかもしれないんだ。】
そこまで言うと、ロインは手で顔を覆い、大きく息を吐いた。やっぱり今の状態じゃクレアの顔をまともに見れない。それに彼女に謝らなければならない最大の罪悪はこの後だ。
もう一度、意を決するとロインは再び語りだした。
奴が片手で俺に対抗してたのは、奴の利腕の神経が切られているからで。奴の犯した戦争犯罪は既にそれで贖われていると。不覚にも兄貴が言ったんだ。
でもさ。納得行かねぇんだよ。俺は。だって、親父は死んじまってるし。どうしてもそれで責任が“終わり”だなんて、俺は納得できない。だから。
「無抵抗で刺される痛みをテメェも味わってみろよ。」って、俺がアイツの腹を刺した──
「…ごめん。本当にごめん。」
平謝りに謝るしかない。何つっても俺があいつを“刺した”って事実は変わらないのだから。
__________
【 】内はダイジェスト書きしてます。字数オーバーしまくりなので、全文はログで見て下さい。
先程の問いに胸奥が思わずビクつく。まさか聞かれているとは思ってなかったからだ。気まずげに、見つめてくるクレアから視線を逸らし、焚火の揺らぐ炎に焦点を変える。そのまま黙ってしまい、暫くはそうしていたが、ロインは吹っ切った様に小さく笑うと手元の掛布を広げてクレアの体を包むように覆った。
「それじゃあまだ寒いだろ。それとさ、やっぱこれは先に言っておかなくちゃなんねぇから、黙って聞いてくれるかな。」
立ち上がって一歩彼女から離れると、真剣な面持ちでロインは深く頭を下げた。
「悪かった。俺は…正直、許して貰えるとは思ってないし、許して欲しいとも言えない。けど、謝罪はさせてくれ。」
そう一言ずつ噛み締めるようにゆっくりと、言い終えてからロインは頭を上げた。少しだけ切なげに彼の瞳が揺れ、寂しげな笑顔がロインからクレアに向けられる。
そして、ロインは事の顛末を静かに語りだした。
【一か月ほど前。街で兄貴を見かけて声をかけた。話に夢中になっていたら仇のアイツが現れた。俺は奴に斬り掛かったがガキ扱いするみたいにあしらわれて余計に腹が立った。
兄貴の体張った仲裁が入らなかったら、俺は本当にアイツを殺してたかもしれないんだ。】
そこまで言うと、ロインは手で顔を覆い、大きく息を吐いた。やっぱり今の状態じゃクレアの顔をまともに見れない。それに彼女に謝らなければならない最大の罪悪はこの後だ。
もう一度、意を決するとロインは再び語りだした。
奴が片手で俺に対抗してたのは、奴の利腕の神経が切られているからで。奴の犯した戦争犯罪は既にそれで贖われていると。不覚にも兄貴が言ったんだ。
でもさ。納得行かねぇんだよ。俺は。だって、親父は死んじまってるし。どうしてもそれで責任が“終わり”だなんて、俺は納得できない。だから。
「無抵抗で刺される痛みをテメェも味わってみろよ。」って、俺がアイツの腹を刺した──
「…ごめん。本当にごめん。」
平謝りに謝るしかない。何つっても俺があいつを“刺した”って事実は変わらないのだから。
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【 】内はダイジェスト書きしてます。字数オーバーしまくりなので、全文はログで見て下さい。
外は思ったより冷え込んでいた。昨日よりも随分と寒さが増している気がする。焚き火に当たれば平気かと思っていた自分の甘さに反省する。炎の灯りを頼りに足を進めると、彼が近くで腰掛けていた。彼の背中しか見えていないため、彼が今どんな表情をしているのかは分からない。ただ、心なしか悲しそうな印象を覚える。確かに、昼間のあの場で言ってくれても良かったのに、何故か頑なに話そうとしない様子に見えた。そして今呼び出されているのも、人のいない夜の時間だ。何か特別な理由があることには間違い無いのだろう。
彼に近づくと、ふと彼の独り言が聞こえた。
「…何を許してもらえないの?」
音量を小さめにしながら、彼に声をかけた。そして彼の隣に座って、焚き火に手の平を当てた。
そして彼を柔らかい表情で見つめた。
「ごめんね、…寒いところ、待たせてしまって」
「わかったよ。今夜、皆が寝静まった後でいいか?」
今すぐには、内容が内容なだけに軽々しく話せなかった。クレアが受けるショックを考えれば当然である。
スッと頭を撫でに伸ばした手が、一瞬躊躇って、何事もないと言い聞かすように優しく頭部に置かれた。そしてロインは踵を返し、クレアと連れ立って小屋の中へ入る。
そして、静寂に包まれる深夜を迎えた。
一旦は床に就いて皆が寝静まるのを待ったロインは、そっと寝屋を抜け出した。寒くないように羽織る掛布を手に、常夜灯の焚火の前まで移動する。ロインが抜け出したことにクレアが気づいていれば、追って出てくるだろう。畳んだままの掛布を抱えてロインはじっと揺れる炎を眺めた。
万が一にも他人に聞かれたくはない故に、小屋から離れて人気の無い深夜を選んだが。爆ぜる薪の火粉が炎の中で舞いあがる。それを見ながらロインはクレアがどう思うか、模索していた。不安がある訳ではない。だが、話を聞いて夜中悶々と一人抱えるかもしれないクレアを思うと、夜が明けるまで伸ばそうか、などという弱腰が顔を覗かせてくるし。話すと言ったからには男らしく、その方がクレアも気持ちが落ち着くだろうとも。
でも、以前にアヨルが怪我をした時の…キゾンの軍人を庇ったクレアの鬼気迫る表情を思い返せば、何とも言い難い気持ちになった。
「許しちゃもらえねぇだろうな。」
独りぼそっとロインは呟いた。
______________________
前に(この章の冒頭で)帰宅後の夜、クレア様と話してた例の焚火の前に居ます。
クレア様到着まで話をズルズル引っ張って済みません。
やっぱり内容が内容なだけに、ロインもなかなか話したがらない…んですよね。だって「後悔はしてない」とはいうものの、悪いのはどう見てもロインの方なので。
「…ねぇロイン。さっきの王女様の話、なんだけど…キゾン国の護衛官を傷つけたって…。貴方、私の知らないところで、何をしたの?」
怪訝そうな表情で彼を見つめた。彼とずっと行動を共にしていたわけではない。私は私の、彼には彼の担当があったから、それぞれがそれぞれの役割を全うする日々が続いていた。しかし夜には落ち合うことができたし、1日のうちに数回は顔を合わせることはあったから、決して彼と仲が悪いわけではないと私は思っている。しかし今、彼は私に隠し事をしていたのだと知った。すでにその事実だけでも寂しいと思っているのに。
私から視線を晒そうとしている彼の両肩を掴んでこちらを見させてる。その瞳でしっかりと彼の彷徨く目を捉えた。
「…どんな事でも怒らないし、ちゃんと最後まで聞くから。…教えて?」
私は何も知らない、何も知らないから、この時、そう言えたんだ。
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すみません、、一旦こちらだけお願いします_| ̄|○
「わかったよ。今夜、皆が寝静まった後でいいか?」
今すぐには、内容が内容なだけに軽々しく話せなかった。クレアが受けるショックを考えれば当然である。
スッと頭を撫でに伸ばした手が、一瞬躊躇って、何事もないと言い聞かすように優しく頭部に置かれた。そしてロインは踵を返し、クレアと連れ立って小屋の中へ入る。
そして、静寂に包まれる深夜を迎えた。
一旦は床に就いて皆が寝静まるのを待ったロインは、そっと寝屋を抜け出した。寒くないように羽織る掛布を手に、常夜灯の焚火の前まで移動する。ロインが抜け出したことにクレアが気づいていれば、追って出てくるだろう。畳んだままの掛布を抱えてロインはじっと揺れる炎を眺めた。
万が一にも他人に聞かれたくはない故に、小屋から離れて人気の無い深夜を選んだが。爆ぜる薪の火粉が炎の中で舞いあがる。それを見ながらロインはクレアがどう思うか、模索していた。不安がある訳ではない。だが、話を聞いて夜中悶々と一人抱えるかもしれないクレアを思うと、夜が明けるまで伸ばそうか、などという弱腰が顔を覗かせてくるし。話すと言ったからには男らしく、その方がクレアも気持ちが落ち着くだろうとも。
でも、以前にアヨルが怪我をした時の…キゾンの軍人を庇ったクレアの鬼気迫る表情を思い返せば、何とも言い難い気持ちになった。
「許しちゃもらえねぇだろうな。」
独りぼそっとロインは呟いた。
______________________
前に(この章の冒頭で)帰宅後の夜、クレア様と話してた例の焚火の前に居ます。
クレア様到着まで話をズルズル引っ張って済みません。
やっぱり内容が内容なだけに、ロインもなかなか話したがらない…んですよね。だって「後悔はしてない」とはいうものの、悪いのはどう見てもロインの方なので。
「わかったよ。今夜、皆が寝静まった後でいいか?」
今すぐには、内容が内容なだけに軽々しく話せなかった。クレアが受けるショックを考えれば当然である。
スッと頭を撫でに伸ばした手が、一瞬躊躇って、何事もないと言い聞かすように優しく頭部に置かれた。そしてロインは踵を返し、クレアと連れ立って小屋の中へ入る。
そして、静寂に包まれる深夜を迎えた。
一旦は床に就いて皆が寝静まるのを待ったロインは、そっと寝屋を抜け出した。寒くないように羽織る掛布を手に、常夜灯の焚火の前まで移動する。ロインが抜け出したことにクレアが気づいていれば、追って出てくるだろう。畳んだままの掛布を抱えてロインはじっと揺れる炎を眺めた。
万が一にも他人に聞かれたくはない故に、小屋から離れて人気の無い深夜を選んだが。爆ぜる薪の火粉が炎の中で舞いあがる。それを見ながらロインはクレアがどう思うか、模索していた。不安がある訳ではない。だが、話を聞いて夜中悶々と一人抱えるかもしれないクレアを思うと、夜が明けるまで伸ばそうか、などという弱腰が顔を覗かせてくるし。話すと言ったからには男らしく、その方がクレアも気持ちが落ち着くだろうとも。
でも、以前にアヨルが怪我をした時の…キゾンの軍人を庇ったクレアの鬼気迫る表情を思い返せば、何とも言い難い気持ちになった。
「許しちゃもらえねぇだろうな。」
独りぼそっとロインは呟いた。
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前に(この章の冒頭で)帰宅後の夜、クレア様と話してた例の焚火の前に居ます。
クレア様到着まで話をズルズル引っ張って済みません。
やっぱり内容が内容なだけに、ロインもなかなか話したがらない…んですよね。だって「後悔はしてない」とはいうものの、悪いのはどう見てもロインの方なので。
「わかったよ。今夜、皆が寝静まった後でいいか?」
今すぐには、内容が内容なだけに軽々しく話せなかった。クレアが受けるショックを考えれば当然である。
スッと頭を撫でに伸ばした手が、一瞬躊躇って、何事もないと言い聞かすように優しく頭部に置かれた。そしてロインは踵を返し、クレアと連れ立って小屋の中へ入る。
そして、静寂に包まれる深夜を迎えた。
一旦は床に就いて皆が寝静まるのを待ったロインは、そっと寝屋を抜け出した。寒くないように羽織る掛布を手に、常夜灯の焚火の前まで移動する。ロインが抜け出したことにクレアが気づいていれば、追って出てくるだろう。畳んだままの掛布を抱えてロインはじっと揺れる炎を眺めた。
万が一にも他人に聞かれたくはない故に、小屋から離れて人気の無い深夜を選んだが。爆ぜる薪の火粉が炎の中で舞いあがる。それを見ながらロインはクレアがどう思うか、模索していた。不安がある訳ではない。だが、話を聞いて夜中悶々と一人抱えるかもしれないクレアを思うと、夜が明けるまで伸ばそうか、などという弱腰が顔を覗かせてくるし。話すと言ったからには男らしく、その方がクレアも気持ちが落ち着くだろうとも。
でも、以前にアヨルが怪我をした時の…キゾンの軍人を庇ったクレアの鬼気迫る表情を思い返せば、何とも言い難い気持ちになった。
「許しちゃもらえねぇだろうな。」
独りぼそっとロインは呟いた。
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前に(この章の冒頭で)帰宅後の夜、クレア様と話してた例の焚火の前に居ます。
クレア様到着まで話をズルズル引っ張って済みません。
やっぱり内容が内容なだけに、ロインもなかなか話したがらない…んですよね。
「わかったよ。今夜、皆が寝静まった後でいいか?」
今すぐには、内容が内容なだけに軽々しく話せなかった。クレアが受けるショックを考えれば当然である。
スッと頭を撫でに伸ばした手が、一瞬躊躇って、何事もないと言い聞かすように優しく頭部に置かれた。そしてロインは踵を返し、クレアと連れ立って小屋の中へ入る。
そして、静寂に包まれる深夜を迎えた。
一旦は床に就いて皆が寝静まるのを待ったロインは、そっと寝屋を抜け出した。寒くないように羽織る掛布を手に、常夜灯の焚火の前まで移動する。ロインが抜け出したことにクレアが気づいていれば、追って出てくるだろう。畳んだままの掛布を抱えてロインはじっと揺れる炎を眺めた。
万が一にも他人に聞かれたくはない故に、小屋から離れて人気の無い深夜を選んだが。爆ぜる薪の火粉が炎の中で舞いあがる。それを見ながらロインはクレアがどう思うか、模索していた。不安がある訳ではない。だが、話を聞いて夜中悶々と一人抱えるかもしれないクレアを思うと、夜が明けるまで伸ばそうか、などという弱腰が顔を覗かせてくるし。話すと言ったからには男らしく、その方がクレアも気持ちが落ち着くだろうとも。
でも、以前にアヨルが怪我をした時の…キゾンの軍人を庇ったクレアの鬼気迫る表情を思い返せば、何とも言い難い気持ちになった。
「許しちゃもらえねぇだろうな。」
独りぼそっとロインは呟いた。
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前に(この章の冒頭で)帰宅後の夜、クレア様と話してた例の焚火の前に居ます。
やっぱり内容が内容なだけに、ロインもなかなか話したがらないですね。
「わかったよ。今夜、皆が寝静まった後でいいか?」
今すぐには、内容が内容なだけに軽々しく話せなかった。クレアが受けるショックを考えれば当然である。
スッと頭を撫でに伸ばした手が、一瞬躊躇って、何事もないと言い聞かすように優しく頭部に置かれた。そしてロインは踵を返し、クレアと連れ立って小屋の中へ入る。
そして、静寂に包まれる深夜を迎えた。
一旦は床に就いて皆が寝静まるのを待ったロインは、そっと寝屋を抜け出した。寒くないように羽織る掛布を手に、常夜灯の焚火の前まで移動する。ロインが抜け出したことにクレアが気づいていれば、追って出てくるだろう。畳んだままの掛布を抱えてロインはじっと揺れる炎を眺めた。
万が一にも他人に聞かれたくはない故に、小屋から離れて人気の無い深夜を選んだが。爆ぜる薪の火粉が炎の中で舞いあがる。不安がある訳ではない。後悔していないのだから。
でも、以前にアヨルが怪我をした時の…キゾンの軍人を庇ったクレアの鬼気迫る表情を思い返せば、何とも言い難い気持ちになった。
「許しちゃもらえねぇだろうな。」
独りぼそっとロインは呟いた。
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前に(この章の冒頭で)帰宅後の夜、クレア様と話してた例の焚火の前に居ます。
やっぱり内容が内容なだけに、ロインもなかなか話したがらないですね。
「わかったよ。今夜、皆が寝静まった後でいいか?」
今すぐには、内容が内容なだけに軽々しく話せなかった。クレアが受けるショックを考えれば当然である。
スッと頭を撫でに伸ばした手が、一瞬躊躇って、何事もないと言い聞かすように優しく頭部に置かれた。そしてロインは踵を返し、クレアと連れ立って小屋の中へ入る。
そして、静寂に包まれる深夜を迎えた。
一旦は床に就いて皆が寝静まるのを待ったロインは、そっと寝屋を抜け出した。寒くないように羽織る掛布を手に、常夜灯の焚火の前まで移動する。ロインが抜け出したことにクレアが気づいていれば、追って出てくるだろう。畳んだままの掛布を抱えてロインはじっと揺れる炎を眺めた。
万が一にも他人に聞かれたくはない故に、小屋から離れて人気の無い深夜を選んだが。爆ぜる薪の火粉が炎の中で舞いあがる。不安がある訳ではない。後悔していないのだから。
でも、以前にアヨルが怪我をした時の…キゾンの軍人を庇ったクレアの鬼気迫る表情を思い返せば、何とも言い難い気持ちになった。
「許しちゃもらえねぇだろうな。」
独りぼそっとロインは呟いた。
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前に(この章の冒頭で)帰宅後の夜、クレア様と話してた例の焚火の前に居ます。
やっぱり内容が内容なだけに、ロインもなかなか話したがらないですね。
リドーはそんなクレアを静かに見つめ、アルバレスは驚きに目を見張った。もっともアルバレスの場合は、王女殿下に物怖じせずに話すその器量に、であったが。
そんなそれぞれの思惑に、元の穏やかな笑みを湛えて王女は区切りの言葉を発した。
「では、改めて代表者のみでの話し合いを致しましょうか。」
手打ち一つ、こうして改めて後日に正式な内容を詰める会合が設けられる事となった。
今日の話し合いが解散となり、王女がアルバレスと兄リドーを引き連れ、街へ戻っていく。その馬車を見送っていると、エールボルドの村長が顔を真っ赤にしてロインに近づいてきた。
「お…お前はっ!!アレを人間に使ったのかっ?!」
「えーと。アレって?」
はぐらかすようにロインは返す。
「バッカもんっ!! イチコロに決まっておるわ!!」
「やだなぁ、親っさんってば。どのみち俺の腕は保証済みでしょ。」
あはははは、と笑って誤魔化す。そうした所で村長の怒りが収まらないのはロイン自身、よく身に染みていた。
「魔獣相手の技を人間に使うヤツがあるかーっ!!!!」
拳を振り上げ激昂する村長を周囲が宥めている間に、ロインはクレアの手を引いてさっさと小屋で待つ皆の所へと戻っていく。空笑いしながらロインはクレアを気遣うようにチラリと見る。このまま彼女が何も訊ねて来なかったら、あの一件は黙って伏せておこう。
クレアがクロードの事に、気づいてないのにわざわざ蒸し返すのは、やりたくないなとロインは思っていた。いずれは謝らなければならないが、今がそのタイミング…とはロインには思えなかった。ほんの少し、胸の中の棘がチクチクと心を刺す。
それでも。知りたくない事を敢えて教える必要はない。ロインの脳裏を親父の最期の姿が掠めていき、密かに強く唇を噛んだ。
______________________
フェルマー家の親父さまの所はさしずめ、ロイン曰く「あんな最期を聞いてなきゃ、こんなに憎まずに済んだのに」です。
“イチコロ”はアヨルでも知ってますので、問われれば説明可能です。
静まり返った状況に、私は再度、今度は王女様に向けて口を開いた。
「この子が…ロインが、護衛の方にご迷惑をかけてしまったんですね。…本当にすみません。それを不問にしていただいたことも、…ありがとうございました。…で、今あなた方がこうして村へ来て、お話させて頂いているのは、もっと別の趣旨のはずです。…どうか、その一件については後でちゃんとお話し聞きますので、今は懐に収めて頂きたい。…ロインもだよ。」
まるで喧嘩の仲介者のごとく、ロインにも声を掛けた。
「穀物の売買についてですが、ロインの言ったとおり、土地が浸水してしまったので今すぐは厳しい状況です。王女様のおっしゃる通り、耕作再開に向けてお力添えいただけるのであれば…売買について前向きに検討させてください。…ただ、そのお力添えの一つとして、…彼のお兄様の解放をお願いします。ご覧の通り、ここにいる村人たちは、まだ大人が必要な子供たちばかりです。…一人でも多く彼らを支えられる人がいて欲しい。…人手不足はお互い様です。解放されたからって、貴方達との縁を切るわけではありません。お兄様はこの村の人間として、貴方はキゾン国の王女として、新しい形で関係を築いていけばいい。…戦争が終わったから、できることじゃないですか。」
あの頃の私たちはできなかった。それでもあの人は、私を縛り付けることなく、故郷に返してくれた。クロードが私にしてくれたことが、ふと脳裏に浮かんでいた。
______________________
済みません。まだ具体的にクレア様に話せる所まで到達しませんでした。
この次こそは持っていけるようになります(多分)
ド厚かましいですが。
話の内容からの、クレア様の推測をお聞かせ願えれば…有難いです。
「そうね。その件については謝罪します。耕作可能になるまで此方も助力は惜しみません。全力で対処しましょう。」
真摯に王女は謝罪し答えた。具体的に詰めていくのはこれからになるが。続く話し合いに周囲は固唾を飲む。
「それは有り難い。じゃあ、ついでじゃないですがリドー兄貴も返してください。」
早く復興させたいんでしょ? と話を振る。
「そうしたいのは山々だけれど。何処かの誰かさんがうちの護衛官を再起不能にしてくれたおかげで、こちらも人手が足りないのよ。」
有能なお兄さんをまだ返す訳にはいかないわ、と王女は笑った。
「やだなぁ。“再起不能”て言う程、アレはダメージは残らないですよ? どなたかの人使いが荒いから、仮病でも使ってるんじゃないですか?」
「あらあら。怒りに任せて刺した人が何を仰るんでしょう。」
「ぶっ殺すつもりなら、とっくにアイツはあの世に行ってますよ? 数日麻痺する程度の傷で何を大げさに言ってるんでしょうかね。」
「まあ、仮死状態を麻痺状態だなんて、どういう判断能力をしてらっしゃるのかしら。」
会話の内容を知っているのは、王女とフェルマー兄弟だけである。護衛官のアルバレスですら、『療養の為に暫くキゾン王国に戻る』という事だけしか聞かされていない。エールボルドの村長は『まさか…』という疑いの目でロインを見やり、クレアに至っては何の事だか全く見当が付かない筈だ。
「不問にしたのはあくまでも、本人たっての希望だからで。貴方が牢屋にぶち込まれなかったのは周りの人間の尽力だという事に気づいてらっしゃらないのしら。」
それでもまだ言うつもり?と釘を刺すように、上から目線で王女はロインを見下した。この件に関しては、少なからずの不満が王女にも有るわけで。言い返せないロインを気持ち良さげに見下し煽る。
「それを申すなら、俺達家族に対しての賠償を改めて彼に請求しますが。」
爆発しそうなロインに対し、冷静に、リドーは王女に進言した。その言葉に王女も少しやり過ぎたと反省の色を顔に浮かべる。
「そうね。その件については謝罪します。耕作可能になるまで此方も助力は惜しみません。全力で対処しましょう。」
真摯に王女は謝罪し答えた。具体的に詰めていくのはこれからになるが。続く話し合いに周囲は固唾を飲む
「それは有り難い。じゃあ、ついでじゃないですがリドー兄貴も返してください。」
早く復興させたいんでしょ? と話を振る
「そうしたいのは山々だけれど。何処かの誰かさんがうちの護衛官を再起不能にしてくれたおかげで、こちらも人手が足りないのよ。」
有能なお兄さんをまだ返す訳にはいかないわ、と王女は笑った
「やだなぁ。“再起不能”て言う程、アレはダメージは残らないですよ? どなたかの人使いが荒いから、仮病でも使ってるんじゃないですか?」
「あらあら。怒りに任せて刺した人が何を仰るんでしょう。」
「ぶっ殺すつもりなら、とっくにアイツはあの世に行ってますよ? 数日麻痺する程度の傷で何を大げさに言ってるんでしょうかね。」
「まあ、仮死状態を麻痺状態だなんて、どういう判断能力をしてらっしゃるのかしら。」
会話の内容を知っているのは、王女とフェルマー兄弟だけである。護衛官のアルバレスですら、『療養の為に暫くキゾン王国に戻る』という事だけしか聞かされていない。エールボルドの村長は『まさか…』という疑いの目でロインを見やり、クレアに至っては何の事だか全く見当が付かない筈だ
「不問にしたのはあくまでも、本人たっての希望だからで。貴方が牢屋にぶち込まれなかったのは周りの人間の尽力だという事に気づいてらっしゃらないのしら。」
それでもまだ言うつもり?と釘を刺すように、上から目線で王女はロインを見下した。この件に関しては、少なからずの不満が王女にも有るわけで。言い返せないロインを気持ち良さげに見下し煽る
「それを申すなら、俺達家族に対しての賠償を改めて彼に請求しますが。」
爆発しそうなロインに対し、冷静に、リドーは王女に進言した。その言葉に王女も少しやり過ぎたと反省の色を顔に浮かべる
ロインのやった事と彼の罪は互いに相殺する、で賠償問題に片を付けた筈だ。両者には再認識させて言い合いを終わらせたい
対になる様に双方が座り、話し合いが始まった。案の定、王女様とロインがお互いに探りながら話を進めていた。それを誰も止められないような雰囲気のまま、進んでいく。私が安易に彼女の手に乗ってここまで連れてきたのが悪かった。そうすれば、こんな厳しい取引が行われることもなかっただろう。仮にこの契約をロインが承諾しなかった場合、腹いせに権力を振りかざしてくるかもしれない。この戦争に勝利した国の王女と、敗戦国の小さな村の代表とであれば、どちらが上かなど天秤にかけるまでもない。
危ない綱を勝手に拾ってきた私が悪かった。
彼らの間に割って入れるほどの自信がなく、少し俯いたまま反省していた時、目の前から視線を感じる。顔を少し上げるとロインの兄がこちらを見ている。何か、私のことを見物するように。疑問に思っていると彼の方から視線を外したため、私も元の通り目を伏せた。
それでも彼らの話し合いは徐々に火力を上げていく。私は彼らの言動を注意深く監視するようにしていた。大方、彼らが話し合いたい内容は理解した。それから逸脱するような方向へ話が展開されるようなら止めないとだし、暴力が発生しそうなときは怪我をして求める義務があると思ったからだ。
______________________________
彼女なりに静観していました
この後の”例の件”について、よろしくお願いいたします
まだまだ二人(ロインと王女)の言い合いは続く形になるのですが。
ロインの目的 → 復旧用の資材と人材の確保。兄リドーの奪還。
王女の目的 → 後々の為の有能な人材のスカウト。この先の友好な関係作り。
…といった所です。そして、リドー兄貴の奪還に話を持ってくれば、例の件…に関して触れぬ訳にはゆかぬので。ロインとしてはそこら辺…クレア様にはあんまり聞かれたくないと思ってます。
その“例の件”の話がクレア様の耳に入った後に、クロードの腕の話を小屋に戻ってから、二人きりの際にしようかと。
クレア様には会談(言い合い)の様子を静観して頂いても良いですし。言いたい事があれば口を挟んで頂いて構いません。また、書きづらければ、ダリル様の方へロルを振って頂いても大丈夫です。
どうぞ宜しくお願い致します。
リドー兄貴に視線を送れば、向こうも気付いてアヨルに村の皆と共に待っているよう説得をしていた
こうして一先ず、一行はエールボルド村長宅へと向かう事となったのだった
村長宅に到着すると、村長は呆気に取られた顔をしていた。事前連絡も何も関係なく、突然押し寄せて来られたのだから当然かもしれない。しかも相手は一国の王女だ
「円座の方が忌憚なく話せるでしょう?」
上下の関係は無しに、対等に会話をしたい、ということらしい。周囲を無視し、場の中程に王女は着いた。それを見てロインは王女の真向かいに座る。そんな遣り合う気満々の二人に深く溜息をつき、村長は二人の間に陣取った
王女から時計回りに、市街地から馬で追い駆けてきたアルバレス、クレア、ロイン、エールボルドの村長、そしてクレアの真向かいにリドーが腰掛ける。これでぐるりと円座に並んだ形だが
「早速ですが。村に来た本当の理由は何です?」
互いの紹介もすっ飛ばし、いきなりロインは王女に噛み付いた
「貴様!!その態度は不敬であるぞ!!」
そのあまりの態度にアルバレスは身を乗り出し諫めようとしたが。王女の手によって制される
「被害状況と復興の進捗をこの目で確認する為ですわ。」
そう答える王女だが、ロインは建前と判断していた。高々その為だけに足を運ぶような輩ではあるまい。笑顔は崩さぬものの、手を組んで肘をついて長丁場に備えて相手に視線を送る。そして、にこやかに言葉を返した
「御冗談を。俺らの村を乗っ取ってか、丸め込んで、未来永劫穀物を搾取するつもりでしょうに。」
「まあ随分な物言いね。いいでしょう。その通りだわ。貴方達とは良好な関係でキゾン国へ穀物を卸して貰いたいの。」
それ相応の取引をして頂けるかしら。とロインの言葉を流し、同じく笑顔で手を組み問う。こちらの足元は見せないし相手の足元も見ないつもりである。商売としては、買う側は少しでも安く、売る側は少しでも高く、お互い良い条件を取ろうとするもの。だが目指すのは、あくまでWin-Winの対等な取引だ
場の空気は完全に、王女とロインの二人だけのものになっていた
リドー兄貴に視線を送れば、向こうも気付いてアヨルに村の皆と共に待っているよう説得をしていた
こうして一先ず、一行はエールボルド村長宅へと向かう事となったのだった
村長宅に到着すると、村長は呆気に取られた顔をしていた。事前連絡も何も関係なく、突然押し寄せて来られたのだから当然かもしれない。しかも相手は一国の王女だ
「円座の方が忌憚なく話せるでしょう?」
上下の関係は無しに、対等に会話をしたい、ということらしい。周囲を無視し、場の中程に王女は着いた。それを見てロインは王女の真向かいに座る。そんな遣り合う気満々の二人に深く溜息をつき、村長は二人の間に陣取った
王女から時計回りに、市街地から馬で追い駆けてきたアルバレス、クレア、ロイン、エールボルドの村長、そしてクレアの真向かいにリドーが腰掛ける。これでぐるりと円座に並んだ形だが
「早速ですが。村に来た本当の理由は何です?」
互いの紹介もすっ飛ばし、いきなりロインは王女に噛み付いた
「貴様!!その態度は不敬であるぞ!!」
そのあまりの態度にアルバレスは身を乗り出し諫めようとしたが。王女の手によって制された
「被害状況と復興の進捗をこの目で確認する為ですわ。」
そう答える王女だが、ロインは建前と判断していた。高々その為だけに足を運ぶような輩ではあるまい。笑顔は崩さぬものの、手を組んで肘をついて長丁場に備えて相手に視線を送る。そして、にこやかに言葉を返した
「御冗談を。俺らの村を乗っ取ってか、丸め込んで、未来永劫穀物を搾取するつもりでしょうに。」
「まあ随分な物言いね。いいでしょう。その通りだわ。貴方達とは良好な関係でキゾン国へ穀物を卸して貰いたいの。」
それ相応の取引をして頂けるかしら。とロインの言葉を流し、同じく笑顔で手を組み問う。こちらの足元は見せないし相手の足元も見ないつもりである。商売としては、買う側は少しでも安く、売る側は少しでも高く、お互い良い条件を取ろうとするもの。だが目指すのは、あくまでWin-Winの対等な取引だ
場の空気は完全に、王女とロインの二人だけのものになっていた
リドー兄貴に視線を送れば、向こうも気付いてアヨルに村の皆と共に待っているよう説得をしていた。
こうして一先ず、一行はエールボルド村長宅へと向かう事となったのだった
村長宅に到着すると、村長は呆気に取られた顔をしていた。事前連絡も何も関係なく、突然押し寄せて来られたのだから当然かもしれない。しかも相手は一国の王女だ
「円座の方が忌憚なく話せるでしょう?」
上下の関係は無しに、対等に会話をしたい、ということらしい。周囲を無視し、場の中程に王女は着いた。それを見てロインは王女の真向かいに座る。そんな遣り合う気満々の二人に深く溜息をつき、村長は二人の間に陣取った
王女から時計回りに、市街地から馬で追い駆けてきたアルバレス、クレア、ロイン、エールボルドの村長、そしてクレアの真向かいにリドーが腰掛ける。これでぐるりと円座に並んだ形だが
「早速ですが。村に来た本当の理由は何です?」
互いの紹介もすっ飛ばし、いきなりロインは王女に噛み付いた
「貴様!!その態度は不敬であるぞ!!」
そのあまりの態度にアルバレスは身を乗り出し諫めようとしたが。王女の手によって制された
「被害状況と復興の進捗をこの目で確認する為ですわ。」
そう答える王女だが、ロインは建前と判断していた。高々その為だけに足を運ぶような輩ではあるまい。笑顔は崩さぬものの、手を組んで肘をついて長丁場に備えて相手に視線を送る。そして、にこやかに言葉を返した
「御冗談を。俺らの村を乗っ取ってか、丸め込んで、未来永劫穀物を搾取するつもりでしょうに。」
「まあ随分な物言いね。いいでしょう。その通りだわ。貴方達とは良好な関係でキゾン国へ穀物を卸して貰いたいの。」
それ相応の取引をして頂けるかしら。とロインの言葉を流し、同じく笑顔で手を組み問う。こちらの足元は見せないし相手の足元も見ないつもりである。商売としては、買う側は少しでも安く、売る側は少しでも高く、お互い良い条件を取ろうとするもの。だが目指すのは、あくまでWin-Winの対等な取引だ
場の空気は完全に、王女とロインの二人だけのものになっていた
リドー兄貴に視線を送れば、向こうも気付いてアヨルに村の皆と共に待っているよう説得をしていた。
こうして一先ず、一行はエールボルド村長宅へと向かう事となったのだった。
村長宅に到着すると、村長は呆気に取られた顔をしていた。事前連絡も何も関係なく、突然押し寄せて来られたのだから当然かもしれない。しかも相手は一国の王女だ。
「円座の方が忌憚なく話せるでしょう?」
上下の関係は無しに、対等に会話をしたい、ということらしい。周囲を無視し、場の中程に王女は着いた。それを見てロインは王女の真向かいに座る。そんな遣り合う気満々の二人に深く溜息をつき、村長は二人の間に陣取った。
王女から時計回りに、市街地から馬で追い駆けてきたアルバレス、クレア、ロイン、エールボルドの村長、そしてクレアの真向かいにリドーが腰掛ける。これでぐるりと円座に並んだ形だが。
「早速ですが。村に来た本当の理由は何です?」
互いの紹介もすっ飛ばし、いきなりロインは王女に噛み付いた。
「貴様!!その態度は不敬であるぞ!!」
そのあまりの態度にアルバレスは身を乗り出し諫めようとしたが。王女の手によって制された。
「被害状況と復興の進捗をこの目で確認する為ですわ。」
そう答える王女だが、ロインは建前と判断していた。高々その為だけに足を運ぶような輩ではあるまい。笑顔は崩さぬものの手を組んで肘をついて、
「御冗談を。俺らの村を乗っ取ってか、丸め込んで、未来永劫穀物を搾取するつもりでしょうに。」
にこやかに、
その時、王女様からもお誘いを受ける。思わずぎょっとしてしまった。この空気の中に私を入れようとしているのか。この様子なら2人で話したいのではないか、私なんて部外者なんじゃないか、と思ったが、チラッとロインを見る。少し不服そうに見えるが、それは王女様が私に手を差し伸べ、こちらへキゾン側へ寄らせようとしているのが見えたからかもしれない。
「…………是非、よろしければ」
私は彼女の手は取らず、苦笑いを浮かべてそう答えた。そしてそのままロインの隣へ歩み寄る。
「お連れしましょう、」
そうロインに声をかけて先に歩み始めた。例え想い人がいようと私はベレアン側だ。それを示すような行動であった。
心配するな、といつもの笑顔でクレアを宥める。そしてロインは自ら前に出た。
王女はそっと優しくクレアの肩に手を添えて、労うように優しく微笑む。そして彼女もクレアより前に出て、ロインと向き合った。
「そんな大仰な立場では無くってよ。私は一介の外交官でしかありませんもの。」
そう言い、華麗に御辞儀をした。
「貴方が、この村の代表なのですね。御会い出来て光栄です。」
そこまでは穏やかな笑顔で王女は挨拶をしていた。だが次には鋭い眼光で真っ直ぐにロインを射抜き、力強く声を発した。
「私はキゾン王国第一王女、ルアチャンナ・デ=キゾンと申しますの。貴殿とは一度ゆっくり話をしたいと思っていましたわ。ロイン=フェルマー殿?」
ロインも負けじと笑顔で王女を睨み付け、明るく大声で言い放つ。
「そうですか。それでしたら、エールボルド村の村長宅で今から如何ですか?」
「ええ、是非!そうして頂けると有難いですわね。」
「俺も、名高いキゾン王国の王女様にお会い出来るだけでなく、直々に御指名頂けるとは光栄です!」
「まあ!!本当に口がお上手ですね!!」
「いえいえ!!貴女の足元には及びませんよ!!」
うふふ、あはは、と二人とも笑っている。豪快な笑顔で、互いに火花を散らしていた。
「そうね。折角だからクレアさんも御一緒にいかが?」
アドバンテージを取る様に、王女はクレアに手を差し伸べた。
______________________
ロインvs王女会談へのお誘いです。多分、クロード関連のお話も出てきます。
2024/11/02 18:48
そんなクレアの表情に、一ヶ月前の出来事についてそういや何も話してなかった事をロインは思い出した。仇討ちは、もう済ませてしまっている。ので、現在はそんな感情は無い。ロインもその話をどう切り出せば良いかわからずに、そのままにしてしまっていた。
心配するな、といつもの笑顔でクレアを宥める。そしてロインは自ら前に出た。
王女はそっと優しくクレアの肩に手を添えて、労うように優しく微笑む。そして彼女もクレアより前に出て、ロインと向き合った。
「そんな大仰な立場では無くってよ。私は一介の外交官でしかありませんもの。」
そう言い、華麗に御辞儀をした。
「貴方が、この村の代表なのですね。御会い出来て光栄です。」
そこまでは穏やかな笑顔で王女は挨拶をしていた。だが次には鋭い眼光で真っ直ぐにロインを射抜き、力強く声を発した。
「私はキゾン王国第一王女、ルアチャンナ・デ=キゾンと申しますの。貴殿とは一度ゆっくり話をしたいと思っていましたわ。ロイン=フェルマー殿?」
ロインも負けじと笑顔で王女を睨み付け、明るく大声で言い放つ。
「そうですか。それでしたら、エールボルド村の村長宅で今から如何ですか?」
「ええ、是非!そうして頂けると有難いですわね。」
「俺も、名高いキゾン王国の王女様にお会い出来るだけでなく、直々に御指名頂けるとは光栄です!」
「まあ!!本当に口がお上手ですね!!」
「いえいえ!!貴女の足元には及びませんよ!!」
うふふ、あはは、と二人とも笑っている。豪快な笑顔で、互いに火花を散らしていた。
「そうね。折角だからクレアさんも御一緒にいかが?」
アドバンテージを取る様に、王女はクレアに手を差し伸べた。
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ロインvs王女会談へのお誘いです。多分、クロード関連のお話も出てきます。
心配するな、といつもの笑顔でクレアを宥める。そしてロインは自ら前に出た。
王女はそっと優しくクレアの肩に手を添えて、労うように優しく微笑む。そして彼女もクレアより前に出て、ロインと向き合った。
「そんな大仰な立場では無くってよ。私は一介の外交官でしかありませんもの。」
そう言い、華麗に御辞儀をした。
「貴方が、この村の代表なのですね。御会い出来て光栄です。」
そこまでは穏やかな笑顔で王女は挨拶をしていた。だが次には鋭い眼光で真っ直ぐにロインを射抜き、力強く声を発した。
「私はキゾン王国第一王女、ルアチャンナ・デ=キゾンと申しますの。貴殿とは一度ゆっくり話をしたいと思っていましたわ。ロイン=フェルマー殿?」
ロインも負けじと笑顔で王女を睨み付け、明るく大声で言い放つ。
「そうですか。それでしたら、エールボルド村の村長宅で今から如何ですか?」
「ええ、是非!そうして頂けると有難いですわね。」
「俺も、名高いキゾン王国の王女様にお会い出来るだけでなく、直々に御指名頂けるとは光栄です!」
「まあ!!本当に口がお上手ですね!!」
「いえいえ!!貴女の足元には及びませんよ!!」
うふふ、あはは、と二人とも笑っている。豪快な笑顔で、互いに火花を散らしていた。
「そうね。折角だからクレアさんも御一緒にいかが?」
アドバンテージを取る様に、王女はクレアに手を差し伸べた。
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ロインvs王女会談へのお誘いです。多分、クロード関連のお話も出てきます。
心配するな、といつもの笑顔でクレアを宥める。そしてロインは自ら前に出た。
王女はそっと優しくクレアの肩に手を添えて、労うように優しく微笑む。そして彼女もクレアより前に出て、ロインと向き合った。
「そんな大仰な立場では無くってよ。私は一介の外交官でしかありませんもの。」
そう言い、華麗に御辞儀をした。
「貴方が、この村の代表なのですね。御会い出来て光栄です。」
そこまでは穏やかな笑顔で王女は挨拶をしていた。だが次には鋭い眼光で真っ直ぐにロインを射抜き、力強く声を発した。
「私はキゾン王国第一王女、ルアチャンナ・デ=キゾンと申しますの。貴殿とは一度ゆっくり話をしたいと思っていましたわ。ロイン=フェルマー殿?」
ロインも負けじと笑顔で王女を睨み付け、明るく大声で言い放った。
「そうですか。それでしたら、エールボルド村の村長宅で今から如何ですか?」
「ええ、是非!そうして頂けると有難いですわね。」
「俺も、名高いキゾン王国の王女様にお会い出来るだけでなく、直々に御指名頂けるとは光栄です!」
「まあ!!本当に口がお上手ですね!!」
「いえいえ!!貴女の足元には及びませんよ!!」
うふふ、あはは、と二人とも笑っている。豪快な笑顔で、互いに火花を散らしていた。
「ロイン…!」
警戒するような厳しい視線を王女に向けている。私は王女様の前に立ち、守るようにしながらロインを制そうとした。
「落ち着いてロイン…!私が連れてきたの、…何も言わずにごめんなさい。市街地で会って、…村の様子を見たいからって…。彼女は…」
彼女のことを紹介しようとして言葉を引き戻す。彼に「キゾン国の王女様だ」と伝えて、カイの時のようにならないか不安になったからだ。気が立っている状態で何を起こすか分からない。彼女もロインも傷つけたくない、…ロインを守りたい。
不安げな様子で口をパクパクさせながら、それでも言葉を出せずにいた。
______________________
ロインがまた嫌な気持ちにならないように、興奮しないように言葉を選ぼうとしていますが、
ちょっと怯えています、ご認識を(..)
必死でアヨルはリドーに問い質した。同時に村の人々もリドーの存在に気付き始める。元は時期村長候補として、ロインの手助けも有りながら父親の右腕として働いていたのだ。注目を浴びる状況に困惑しながら、リドーはアヨルを宥める。
騒ぎが大きくなりかけたその時、皆の背後から響くような大声が聞こえた。
「俺はこの村の代表でロイン=フェルマーと言います。女王陛下におかれましてはどのような御了見で此方まで足を運ばれたのか、お聞かせ願いたい。」
声を張っていたのは、ロインだった。そして視線も一斉に彼へと動く。
仕事の片づけと午後の段取りを終え、昼食に戻ってきてみればこの騒ぎである。遠目でも見慣れぬ相手が来ている事はすぐにわかったし、アヨルの様子でリドーが戻ってきた事も把握した。
だが、実質リドー兄貴の帰還がメインで、此処に訪れた訳ではなさそうなのはすぐに感じ取れた。恐らく様相の異なるあの女の指図だろう。
そうロインは認識すると、その一人だけ明らかに違う、身分の高そうな女性─王女に厳しい視線を送った。
-------------------
ロインの位置からまだクレア様は見えてない、というか気づいてません。
&まさか相手がキゾン王国の王女だとは知らぬ状態。
きっと隣国フーゴン国の女性元首だと思っている…感じです。
私の言葉を聞き、彼女と少しずつ会話を始める村民達。王女も言葉を選びながら彼らと言葉を交わし始めた。その様子を私は固唾を飲んで見守るしかなかった。
一方で、ロインとアヨルの姿が見当たらなかった。朝出かける時には居たし、声もかけてきたはずだ。彼らが居ないことに不安が募っていたその時、「おにいちゃん!」と叫ぶ女の子の声が聞こえた。その声の主がアヨルであることがすぐにわかった。王女様から離れるわけにはいかなかったため、辺りを見回した。すると馬車の奥の方から泣き声が聞こえ、王女様から離れない程度に馬車の後ろを覗き込む。そこには泣きつくアヨルと王女様の側近にいらした男性が立っていた。
相手はキゾン国の人間だ、すぐに離さないとと思ったが、彼女の泣き声があまりにも縋るような声にピタッと身体が止まった。なんだか、このままで居させてあげた方がいいような気がして。ただ困惑な表情は隠しきれなかった。
-------------------
あまり動かない方が良さそうかと思い…
ロイン様の合流お待ちしております
「街の再建が一段落着いたら、友人のみのささやかな慰労パーティーを行おうと思っているの。是非クレアさんも行らしてね。」
さらりとそんな話を矢継ぎ早に行う他愛のない会話に混ぜてくる。はっきりとした彼女の受け答えのないまま会話を続け、淡々と馬車は道を進んだ。
馬車は暫く荒れ地の道を走り、そしてクレアの案内でアイレット村に到着する。
王女は馬車を降りると真っ先に、洪水の爪痕が未だ残る大地を前にして跪き、黙祷を捧げた。
一方で、クレアの話で経緯は手に取るように理解できた。王女は人当たりの良い笑顔を向けた。頭の中の算段等はおくびにも出さず、今はまだしっかりクレアを懐柔し、ゆくゆくはクロードの伴侶として二人仲良くキゾン王国に忠誠を誓ってもらおう。
そんなことを考えながら、そっと王女はほくそ笑んだ。
最後に、辿り着いた仮設住宅の周辺に居る人々に、王女は目を向けた。
確かに、クレアの言う通り一見して青年、壮年層の姿はない。城なら現役を既に退いている年配の者や、子供達の中でも年長とされている世代の子らが中心となって動いている状態だ。きっと大人は兵役で取られ未だ戻ってきてはいないのだろう。それを考えれば少し胸が痛む。
憂える王女の表情と村人に信頼されているとわかるクレアの姿に、そっとリドーは身を引くようにして彼女等から離れ、馬車の影へ下がった。先にロインに今日ここへ来ることを伝えられれば良かったのだが、呼び出された内容は馬車が走り出すまで知らなかった。今はまだ皆に合流できない手前、姿を見られない方が良い。そうロインとも話した事柄だ。
目深に帽子を被り、俯き加減で様子を窺う。リドー自身も村の様子は気になっていた。何よりアヨルが心配だった。とはいえ、それもロインから様子は聞いている。
だが。
馬車が到着したのを、アヨルは洗濯場から戻る途中で見た。よく見れば何故かそこにクレアの姿がある。けれどよくよく見るアヨルの瞳には、誰よりも胸を打つ姿が映っていた。
洗濯籠を放り出し、全速力でアヨルは馬車の方へ駆けて行く。そして。
「お兄ちゃんっ!!!」
「街の再建が一段落着いたら、友人のみのささやかな慰労パーティーを行おうと思っているの。是非クレアさんも行らしてね。」
さらりとそんな話をやつぎ早に行う他愛のない会話に混ぜてくる。はっきりとした彼女の受け答えのないまま会話を続け、淡々と馬車は道を進んだ。
そして、クレアの案内でアイレット村に到着する。
王女は馬車を降りると真っ先に、洪水の爪痕が未だ残る大地を前にして跪き、黙祷を捧げた。理由が何であれ、行いの結果からは目を背けてはいけない。それが相手がに対しての最低限の礼儀だと胸に刻んであるからだ。それは、王族であり、容易く他人の命を天秤に掛ける裁量を認められている者としての責務であると、亡き叔父上に教わっていた。あまりの惨状を前にし、彼ならばどう思っただろうかと、少しばかり感傷的になる。
一方で、クレアの話で経緯は手に取るように理解できた。こうして直接現地を見れたのも意義はあるが、土地を最盛期の頃に戻すのはやはり一筋縄では行かなさそうだ。予想以上に手を回す必要がある様子に、王女の頭の中では早速人材の段取りに取り掛かっていた。
それにしても。クレアの優秀さに王女は目を見張った。人当たりの良い笑顔を向け、頭の中の算段等はおくびにも出さず、今はまだしっかりクレアを懐柔し、ゆくゆくはクロードの伴侶として二人仲良くキゾン王国に忠誠を誓ってもらおう。
そんなことを考えながら、そっと王女はほくそ笑んだ。
「街の再建が一段落着いたら、友人のみのささやかな慰労パーティーを行おうと思っているの。是非クレアさんも行らしてね。」
さらりとそんな話をやつぎ早に行う他愛のない会話に混ぜてくる。はっきりとした彼女の受け答えのないまま会話を続け、淡々と馬車は道を進んだ。
それからしばらくして「ここです」と声を上げる。馬車を停止させ、アイレット村の様子を見せた。…まるで、そこに本当に集落があったのかの疑ってしまう光景が広がっている。復興が進んでいるとはいえ、未だ地面とほぼ同等の位置に屋根が落ちているし、地面はぬかるんだままだ。数えられる程度の建物が何とか支柱を保って建っているが、これが元通りになるのにどれほどの時間と労力が必要になるのだろうか。
私はここに住んでいた住人の年齢や生活様式、戦争があったときに行動していたことなど、自分の知って見てきた範囲の話を全部伝えた。彼らの助けになるはずだと信じて。
一通り伝え終わった彼女の表情を見て、次に行こうと伝えた。今度はここに住んでいた人たちが暮らしている仮設住宅に案内したかったからだ。こんな光景をずっと眺めて観察しているよりも、実際にここへ戻ろうと奮闘する住人たちと接してもらう方が価値があるだろうと思って。
再び馬車に乗り30分した頃、私たちの住む仮設住宅へ到着する。彼らは自分たちの手を止めて顔を上げた。皆何事だと不安な表情を見せるが、私が先に降りると少しホッとしたように驚いた。
「こちらが先ほど案内したアイレット村と…その近隣の住人たちが暮らしている場所になります。住人の多くは…まだまだ大人の力が必要な若い子たちばかりなんです。」
「街の再建が一段落着いたら、友人のみのささやかな慰労パーティーを行おうと思っているの。是非クレアさんも行らしてね。」
さらりとそんな話をやつぎ早に行う他愛のない会話に混ぜてくる。はっきりとした彼女の受け答えのないまま会話を続け、淡々と馬車は道を進んだ。
とても朗らかに、そして、その笑顔は少女のように輝いた。
「嬉しいわ。折角だから、両方行かせて貰いましょう。」
言うが早いか、王女はそのままクレアの手を引いて待機している馬車へと向かった。既にリドーは馬車で待機しており、御者の隣に腰かけている。護衛官アルバレスはまだ戻って来てはいなかった。
「では、参りましょうか。」
さっさと自分で馬車の扉を開けると、周囲の様子など気にも留めず、(建前では)クレアに乗るよう勧めた。半ば強引に押し込むようにして、自身も向かいに腰掛ける。
そうして馬車は一路アイレット村へと出発した。
昼食用の炊き出しが着々と仕上がってくる。と同時に匂いにつられて、作業を手伝っていた子供達が次々と共同小屋へ戻ってきた。
「みんなーっ、ちゃんと手を洗うんだよーっ!!」
「はーい!!」
元気のいい返事は返ってくるものの、腹ペコ怪物の子供達は目を離すとすぐに、汚れた手のままで摘み食いを試みるもんだから、アヨルは少しも気が抜けない。料理は女性の先輩方に任せて、逃げ回る子達を一人ずつ捕まえてはちゃんと手を洗わせる。こういう集団生活では、病気が広がっていくのが一番怖いのだと、口酸っぱく兄貴に言われていた。
汲み上げた井戸水を使って何とか全員手を洗わせ終えると、先に子供達に昼食を配り、その足で年配の方々の分を世話係の人に渡しに行く。そしてついでに出てくる汚れ物を回収し、洗濯場へ持っていった。
「ふぅ…。」
洗い桶の水に浸すと、腰を伸ばしにアヨルは立ち上がる。自分が一番ぐるぐる走り回っているんじゃないかという気持ちになるが、こうして息を吐いた途端襲ってくる虚脱感が、どうしようもなくアヨルを不安にさせた。
みんな、頑張ってる。私も頑張らないと。
「………。」
無理はするな、と兄貴は言うけど。誰だって無理はしてる。兄貴だってそうだ。
でも、いつまで続くんだろ。…こんな生活。
どれだけ考えないようにしても、言い様のない不安はどんどん心に積もっていく。
気づけば一人、アヨルは泣いてた。
__
王女は完全にクレア様を「逃すまじ」モードに入ってます。友情親交から(クロードとの)サプライズ再会目論む女性ですから。やっぱり話はロインからで。
とても朗らかに、そして、その笑顔は少女のように輝いた。
「嬉しいわ。折角だから、両方行かせて貰いましょう。」
言うが早いか、王女はそのままクレアの手を引いて待機している馬車へと向かった。既にリドーは馬車で待機しており、御者の隣に腰かけている。護衛官アルバレスはまだ戻って来てはいなかった。
「では、参りましょうか。」
さっさと自分で馬車の扉を開けると、周囲の様子など気にも留めず、(建前では)クレアに乗るよう勧めた。半ば強引に押し込むようにして、自身も向かいに腰掛ける。
そうして馬車は一路アイレット村へと出発した。
昼食用の炊き出しが着々と仕上がってくる。と同時に匂いにつられて、作業を手伝っていた子供達が次々と共同小屋へ戻ってきた。
「みんなーっ、ちゃんと手を洗うんだよーっ!!」
「はーい!!」
元気のいい返事は返ってくるものの、腹ペコ怪物の子供達は目を離すとすぐに、汚れた手のままで摘み食いを試みるもんだから、アヨルは少しも気が抜けない。料理は女性の先輩方に任せて、逃げ回る子達を一人ずつ捕まえてはちゃんと手を洗わせる。こういう集団生活では、病気が広がっていくのが一番怖いのだと、口酸っぱく兄貴に言われていた。
汲み上げた井戸水を使って何とか全員手を洗わせ終えると、先に子供達に昼食を配り、その足で年配の方々の分を世話係の人に渡しに行く。そしてついでに出てくる汚れ物を回収し、洗濯場へ持っていった。
「ふぅ…。」
洗い桶の水に浸すと、腰を伸ばしにアヨルは立ち上がる。自分が一番ぐるぐる走り回っているんじゃないかという気持ちになるが、こうして息を吐いた途端襲ってくる虚脱感が、どうしようもなくアヨルを不安にさせた。
みんな、頑張ってる。私も頑張らないと。
「………。」
無理はするな、と兄貴は言うけど。誰だって無理はしてる。兄貴だってそうだ。
でも、いつまで続くんだろ。…こんな生活。
どれだけ考えないようにしても、言い様のない不安はどんどん心に積もっていく。
気づけば一人、アヨルは泣いてた。
__
王女は完全にクレア様を「逃すまじ」モードに入ってます。じっくり観察、堪能中…といった所。
クロードとの再会は劇的なものを用意してくれますよ。
「わ、私は…っ」
名乗ってもいいのだろうか。私の名前を聞いて、キゾン国から逃げ出した捕虜だと、…キゾン国の一騎士団長に罪を与えた人間だとバレてしまわないか。私は、あの後クロードがどうなったか知らない。カイさんから生きていることは教えてもらったが、戦後の彼の行方など知らない。生きているのか、亡くなってしまったのかさえも。
クロードが私を助け、逃亡に加担した話が彼女にも伝わっているのか、伝わっているのであればどこまでの詳細が伝わっているのか、分からない。ただ、私はこの状況から逃れられないとも悟った。
「……私は、クレア・ロバーツと申します。」
恐る恐る名前を口にした。怖くて彼女の表情も見れない。ただ、まだ聞こえてこない彼女の声にすかさず言葉を続ける。
「あ、貴方のおっしゃった通り、アイレット村から来ました。…村自体は損壊が多く、今は別の場所に仮設テントを建て暮らしています。…どちらの場所も案内できますが、いかがでしょうか。」
__________________________
成り行きでいきましょう〇
クレアもその方が彼女らしく動けるかと思いますし、
クロード様の認知も、必ずしも前にお伝えした方法で認知しないとなんて思っていないので!
(むしろ王女様から教えてもらうとか、そう言うのもありかもしれないなとも思いました)
なので、一旦気にせずキャラたちにお願いしちゃいましょう
とても朗らかに、そして、その笑顔は少女のように輝いた。
「嬉しいわ。折角だから、両方行かせて貰いましょう。」
言うが早いか、王女はそのままクレアの手を引いて待機している馬車へと向かった。既にリドーは馬車で待機しており、御者の隣に腰かけている。護衛官アルバレスはまだ戻って来てはいなかった。
「では、参りましょうか。」
さっさと自分で馬車の扉を開けると、周囲の様子など気にも留めず、(建前では)クレアに乗るよう勧めた。半ば強引に押し込むようにして、自身も向かいに腰掛ける。
そうして馬車は一路アイレット村へと出発した。
昼食用の炊き出しが着々と仕上がってくる。と同時に匂いにつられて、作業を手伝っていた子供達が次々と共同小屋へ戻ってきた。
「みんなーっ、ちゃんと手を洗うんだよーっ!!」
「はーい!!」
元気のいい返事は返ってくるものの、腹ペコ怪物の子供達は目を離すとすぐに、汚れた手のままで摘み食いを試みるもんだから、アヨルは少しも気が抜けない。料理は女性の先輩方に任せて、逃げ回る子達を一人ずつ捕まえてはちゃんと手を洗わせる。こういう集団生活では、病気が広がっていくのが一番怖いのだと、口酸っぱく兄貴に言われていた。
汲み上げた井戸水を使って何とか全員手を洗わせ終えると、先に子供達に昼食を配り、その足で年配の方々の分を世話係の人に渡しに行く。そしてついでに出てくる汚れ物を回収し、洗濯場へ持っていった。
「ふぅ…。」
洗い桶の水に浸すと、腰を伸ばしにアヨルは立ち上がる。自分が一番ぐるぐる走り回っているんじゃないかという気持ちになるが、こうして息を吐いた途端襲ってくる虚脱感が、どうしようもなくアヨルを不安にさせた。
みんな、頑張ってる。私も頑張らないと。
「………。」
無理はするな、と兄貴は言うけど。誰だって無理はしてる。兄貴だってそうだ。
でも、いつまで続くんだろ。…こんな生活。
どれだけ考えないようにしても、言い様のない不安はどんどん心に積もっていく。
気づけば一人、アヨルは泣いてた。
「貴女はとっても優しいのね。」
心配いらないわ、とウィンクをする。わかっているから、と笑顔をクレアに向けて親しげに彼女の手を取る。
「良かったら、名前を聞かせて貰えないかしら。これも女神様のお導きね。それに、もし貴女がアイレット村から来たのなら、この後私を案内して下さらない?」
王女は軽く握手を交わし、これから向かう所であった事をクレアに告げた。柔らかい微笑みの中にも、何処か有無を言わせぬ力強さがある。しっかりとクレアの眼差しを捉えた上で、王女は何の迷いもなく自己紹介を始めた。
「改めて、私から名乗らせて貰うわね。私は、ルアチャンナ・デ・キゾン。キゾン王国第一王女で外務大臣を務めているの。貴女は?」
---------
大変遅くなりました(陳謝) 一旦成り行き任せでさせてもらえると有難いかな、と思ってます。
実質、クレア様がクロードを見かけるまでの間は、現状況から考えても暫く時間がかかるだろうし、どのみちまだ復興…生活再建にドタバタしてる時なので。
ルアハ王女は多分この状況を楽しみます(裏ボス的に)。フェルマー兄弟はクレア様、クロード、二人の状況を分かっているので一番力になるし、最も立ち回ってくれる存在だと想定してます。
とはいえど。クレア様の動き次第で彼らがどう出るか。まだ未知数ですので、私もあまり想像できないんです。素直に動いてくれそうなのって、リドー兄貴だけだから。
「ロイン?……あっ…」
彼と目がバチっと合ってしまい、すぐにロインでないことを理解する。そもそも名前を名乗っていたじゃないか。服もこの国の軍服ではない。とんだ大きな間違えをしてしまって、恥ずかしくなった。
「…す、すみません。…知り合いに、声が似てて…。彼もフェルマーさん、だったから…。」
そう言うともう一度女性の方を見つめる。
「私も大丈夫です。お怪我がなくて、よかったです。…先程の護衛の方は、どうか許してあげてください。…私が貴女に覆い被さる寸前、彼も貴女を助けようと手を伸ばしていた姿、見えたので…。」
それだけ言い残すと、立ち上がり「それでは失礼します」とその場を去ろうとしていた。
落ち着いた様子で返事をする。体を起こし、彼女は今しがた立っていた場所を見返した。他の住人か遠巻きにしてくれていたおかげで、他の者への被害は無かったらしい。
「ルアハ様っ!!」
血相を変えていたのは、ほんの僅かに王女から離れていたアルバレスである。本来護るべきだった彼にとっては重大な失態に他ならなかった。
「申し訳ございません!! どのような処罰もお受けします!!」
「そうね。他にも危険な半壊の建物はまだまだ存在するから、早急に解体するように各所へ伝えて頂戴。」
「ハッ!!」
それこそ泣きそうな声で返事を返す彼は、すぐさま軍部の者達の元へ駆けていった。その背を軽く見送って彼女はクレアに振り向いて声をかけた。
「改めて、礼を言うわ。それに、貴女も大丈夫かしら? 怪我はしていない?」
丁度その時、二人に近づいてくる人物がいた。そのまま彼は王女に敬礼をし、その場で名乗りをあげる。
「リドー=フェルマー。只今参上致しました。」
彼の容姿は何処となくアヨルに似ていて、その声音はロインによく似ていた。
---------
ひとまずこちらだけ。まだ今の段階ではきっと、王女はクレア様をただの被災者の一人としか見てないと思われますので、「ロインと繋がってるよー」アピールをばして頂けると助かります。
クロードはもうちょっと後での合流になるんじゃないかと。(ベハレスコ農村部視察後、戻ってからで考えてます。)
念の為に持ってきていた古紙にメモを残し、帰路に立とうとした。
その時、後ろから何か嫌な気配を感じた。
直感に等しい感覚に、反射的に後ろを振り向くとゆっくりと崩れ始めている家屋があった。
その近くには人がいるのが見えて、すぐに声を上げる。
「……………危ない!!」
声を上げた瞬間、木の折れる音とともに支柱の役割をになっていた太い丸木が人目掛けて倒れた。間一髪、私はその近くにいた人の背中を押して、丸木の下敷きから逃した。一緒に地面に倒れ込む。その後、屋根や瓦礫がくずれるおとがきこえたが、やがてピタリと止まった後、顔を上げて瓦礫の様子を見た。崩れ去り、家屋の形を失っていた。
もう大丈夫だと判断し、一緒に地面に倒れんだ人に声をかけた。
「突然すみません!…あ、あの、お怪我は……」
声をかけた人を見て言葉を止める。私が瓦礫から庇っていたのは、先程の綺麗な洋装の女性だった。近くの付き人の方も焦った様子で彼女の安否を確認していた。
--------------------------
遅くなってすみません!そして一旦こちらだけ……
加えてですが、無理矢理王女様と接触させていただきました(p_-)
アルバレス様も近くにいたものの、丸木が落ちてきたのはほぼ王女様目掛けてだったことと、
アルバレス様が庇う前にクレアが動いてしまっていたということにしてもらえればと…
ほんと、強引にすみません!
この先ダリル様とかも登場させたく思ってます。
王女様にはクレアの存在を把握してもらえれば、
再開する時やプロポーズしていただくときなどに役立つかなと思ったので、
初手で接触させていただきました。
王女様がクレアのことを知っている知らないはお任せしますし、
この行動を王女様がどう受け取ってクレアにどう声をかけるかもお任せします。
号令と共に一斉に軍服を着た者達が、中心の彼女に向けて敬礼をする。彼女も手を挙げ、彼らを労う様に振舞った。今日配分する荷物の積み下ろしがあらかた終わった所で、一部の兵士は集まってきていた住民達への配給の対応に当たっている。この後第二陣、第三陣と荷物が運ばれてくる予定だった。
「引き続き、怪我の無いよう瓦礫の撤去に当たって下さい。以上。」
彼女の言葉に皆が一喜する。浮足立つのを抑えるように、強い声で言葉を閉めた。王女は皆が持ち場に戻るのを確認しながら、自身も次の視察地へ赴く準備に取り掛かる。
「リドーは何処にいるのかしら。」
傍で控えている護衛官アルバレスに、彼の所在を尋ねる。まだ、そこにクロードの姿は無かった。クロードと共に王女を護るアルバレスは畏まって答えた。
「もうすぐこちらに到着します。」
今日は漸くベハレスコの農村部、穀倉地帯へ行く事が出来るのだ。目的はエールボルド村での村長と直接の会談、及び3村の被害状況と現状の確認である。それと、キゾン王国の代表としての洪水の一件で謝罪もあった。
案内役に同地区出身のリドー・フェルマーを据えて、これから向かう予定である。
_
クレア様には、王女一行を避けて物資の調達に専念して頂いてもいいですし。
瓦礫撤去の手伝いしながら、同じ作業に当たっているであろうダリル様など引っ張り出して、暫く街に留まってもらってもいいですし。(…一応本日中にクロードもベハレスコ入りする予定)
それまでの詳しいクロードの経緯は、相談板での参照をお願いします。
今となっては、あの言葉の意味が理解できた。私の正体を知っていながら、少しでも私の心の荷を下ろそうと言葉を選んで伝えてくれたのだろう。…本当、優しい人だった。
馬で進んでいるものの、瓦礫が多く整備されていた道もなくなっているため、馬を走らせることは難しかった。ゆっくり、それでも少しずつ市街地へと近づいていった。
市街地の中心部までやってきて、馬を近くに置いておいた。ここからは自分の足で場所を探そう。救援物資が届いている場所を特定しようと意気込んだが、それはすぐに見つかりそうだった。近くにいる人々がほとんど同じ場所を目指しているからだ。その流れに沿って歩みを進めると、大きな木箱や荷台が下ろされている場所を発見する。多くの人々がそこに群がっているのだ。私は群衆の中には行かず、遠くからそれを眺める。あまり目立ちたくもなくてフードを被りながらその様子を伺った。
知っている軍服の人達がたくさんいる。もう私の服は捨てられてしまったが、妙に親近感を抱いてしまった。中央には綺麗な服装の女性がいらっしゃる。何者なのかは分からなかった。
くっそ、やりやがったな。
それでも、少しばかり喜ばしい気持ちになったロインであった。
クレアが市街地に出ている間、ロインは仲間と共に村の復旧にあたっていた。まだ倒壊家屋の残骸が残っているものの、使える材木はあらかた運び出し終えて、今は土壌の水抜きに取り掛かっている。まだ、個々に生活を維持する状態に無い為、食事は村全員分の炊き出しで賄い、寝泊りは仮組した小屋を各戸別に使って貰っている状態だ。
「コラーっ、泥団子は上にある的に向けて投げろって言っただろっ!」
お互いに投げ合いしている子供らに向けて、明るい声で叱咤する。
水抜きしたい土地の周りに溝を掘り、掘った土は土地の上へと積み重ねる。水は低い方へと流れていくので、掘った溝へと溜まっていく。そうして水路を作り、土地に残る余分な水を排していくのだ。
最初の一か月は洪水のショックと、戦争が終わった事の安堵で気が抜けた者が多く、まともに生活の立て直しに掛かれるようになったのは、二か月目に入ってからだ。それぞれの役割にも漸く慣れていき、自衛団のメンバーも責任有る立場で動いている。目に見えて分かるほどではないが、着々と物事は進んでいた。
今の村での仕事の内訳はこうである。
まずは炊き出しを中心とする、生活係。洗濯場は共同使用にし、共有の小屋の清掃、弱者の世話、村人の健康管理など、割と幅広い分野を担ってもらっている。
その中でも、年少の子供達には動けない御老体方の見守りを、同時に御老体方にも幼子達の面倒を見てもらい、相互に役割を与えて張り合いがあるように心がけたりもしていた。
働ける者は、市街地に行って物資の調達をする係と、村で復旧に当たる係に分かれて作業をしていた。それなりに体力も危険も伴うので、見極めた上で物事に個人対応できる人選をしている。
アヨルは生活係に籍を置く形だが、各部署への情報伝達および調整に奔走してもらっている。そしてロインは村の代表として、各所への指示、観察、対外交渉、他…人手の足りていない所の助っ人など、平たく言えば『何でも屋』だった。
情報整理ありがとうございました…!
参考とさせていただきます。
クロード様の片腕の件、ロイン様から理由を聞く方向で私も考えていました。
それが一番考えられる方法かな…と。
ただそれでロイン様とクロード様のやり取りがロルの展開として発生しないのが、悩ましいとかないでしょうか?それがちょっと気になりました…
もし問題なければ4カ月以内に会っており、解決している状態でロイン様からお伝えいただければと思います。クレアのロルも返しましたが、例えば王女に仕えている人間に片腕が動かない人がいること、それがクロードであることを人伝いに聞き、ロイン様から教えてもらうとか、実際にクレアがクロード様らしき人を目撃したが、腕が動いていないこと知り、その場から逃亡。ロイン様に慰めてもらうがてら正しい真実を教えてもらうなど、できたらどうかなと思っています。
馬で郊外から市街地へ向けて歩みを進める。本来ならもっと早く来れていれば、瓦礫の撤去も合わせて進められたが、ロインにこれ以上心配をかけるわけにもいかない。”働きすぎだ”と言われてから、心の中で何かがストンと落ちた気がする。…あぁ、きっと懐かしいと思ってしまったんだ。キゾン国に居た頃、仲間に担当を交代してまで夜間の監視役をやっていた。苦ではなかった、嘘を抱え一人で眠るよりは余程楽だったから。それなのにあの人はわざわざ監視塔へやってきて「無理をするな」と言ってくれた。彼の方が、すごく忙しかったのに。
今となっては、あの言葉の意味が理解できた。私の正体を知っていながら、少しでも私の心の荷を下ろそうと言葉を選んで伝えてくれたのだろう。…本当、優しい人だった。
馬で進んでいるものの、瓦礫が多く整備されていた道もなくなっているため、馬を走らせることは難しかった。ゆっくり、それでも少しずつ市街地へと近づいていった。
市街地の中心部までやってきて、馬を近くに置いておいた。ここからは自分の足で場所を探そう。救援物資が届いている場所を特定しようと意気込んだが、それはすぐに見つかりそうだった。近くにいる人々がほとんど同じ場所を目指しているからだ。その流れに沿って歩みを進めると、大きな木箱や荷台が下ろされている場所を発見する。多くの人々がそこに群がっているのだ。私は群衆の中には行かず、遠くからそれを眺める。あまり目立ちたくもなくてフードを被りながらその様子を伺った。
知っている軍服の人達がたくさんいる。もう私の服は捨てられてしまったが、妙に親近感を抱いてしまった。中央には綺麗な服装の女性がいらっしゃる。何者なのかは分からなかった。
くっそ、やりやがったな。
それでも、少しばかり喜ばしい気持ちになったロインであった。
クレアが市街地に出ている間、ロインは仲間と共に村の復旧にあたっていた。まだ倒壊家屋の残骸が残っているものの、使える材木はあらかた運び出し終えて、今は土壌の水抜きに取り掛かっている。まだ、個々に生活を維持する状態に無い為、食事は村全員分の炊き出しで賄い、寝泊りは仮組した小屋を各戸別に使って貰っている状態だ。
「コラーっ、泥団子は上にある的に向けて投げろって言っただろっ!」
お互いに投げ合いしている子供らに向けて、明るい声で叱咤する。
水抜きしたい土地の周りに溝を掘り、掘った土は土地の上へと積み重ねる。水は低い方へと流れていくので、掘った溝へと溜まっていく。そうして水路を作り、土地に残る余分な水を排していくのだ。
最初の一か月は洪水のショックと、戦争が終わった事の安堵で気が抜けた者が多く、まともに生活の立て直しに掛かれるようになったのは、二か月目に入ってからだ。それぞれの役割にも漸く慣れていき、自衛団のメンバーも責任有る立場で動いている。目に見えて分かるほどではないが、着々と物事は進んでいた。
今の村での仕事の内訳はこうである。
まずは炊き出しを中心とする、生活係。洗濯場は共同使用にし、共有の小屋の清掃、弱者の世話、村人の健康管理など、割と幅広い分野を担ってもらっている。
その中でも、年少の子供達には動けない御老体方の見守りを、同時に御老体方にも幼子達の面倒を見てもらい、相互に役割を与えて張り合いがあるように心がけたりもしていた。
働ける者は、市街地に行って物資の調達をする係と、村で復旧に当たる係に分かれて作業をしていた。それなりに体力も危険も伴うので、見極めた上で物事に個人対応できる人選をしている。
アヨルは生活係に籍を置く形だが、各部署への情報伝達および調整に奔走してもらっている。そしてロインは村の代表として、各所への指示、観察、対外交渉、他…人手の足りていない所の助っ人など、平たく言えば『何でも屋』だった。
薄っすら陽の光を感じて目を覚ます。するとめのまえにはロインの顔がそこにある。割と見慣れてしまっているのと、寝ぼけているせいで何も抵抗しなかった。彼が何だか口説いてくるような言葉を言われている気がして、そしていつもしてやられているため、仕返しがしたいと思っていたところだった。
彼の頬に優しく両掌を当てて円を描くように挟む。柔らかい頬がムニムニと動いた。
そしてまだ開き切っていない瞳のまま微笑みかける。
「……まだ、眺めていたい?」
少しポカンとしている彼にクスリと笑うと「冗談。」と言って、手を離した。上半身を起こし、上へと手を上げ身体を伸ばした。そして自分が包まっていた毛布を彼に掛ける。
「…市街地、行ってくる。貴方はここで待ってて。…大丈夫、無理はしないよ。貴方にこれ以上、心配かけたくないしね。…また夜、ここで一緒に寝よ。」
そう言うと立ち上がって朝日を浴びに外に出た。
______________
復興進捗あると嬉しいです…!
お願いしてもよろしいでしょうか、、お手伝いはいくらでもします。
クレアの反応楽しんでもらえてよかったです笑
本当に、あんなことを言ってマジで「OK」されたらどうしようかと思ったぜ。
クレアがまだちゃんとまともな思考を持てる状態であることを確認出来て、ロインは一安心していた。疲労と絶望で頭が回らなくなったら、うやむやなまま流されてしまうか、自ら投げやりに首を縦に振ってしまいかねないので。
そうならないようにケアするのも自分の役目だと、ロインは考えていた。
そろそろ、アヨルの方もガス抜きしてやらないと、だよな。
最近は情緒不安定なのか、表情がいつも以上にころころ変わる。意外に繊細な神経の持ち主であることを兄はちゃんと理解しているのだ。まあ、本当は長兄が戻って来れれば、その分の負担は軽減するんだけどな。
長々と下らぬ事に頭を回しつつ、クレアの目が開く様をじっくりと堪能する。
「よぉ、おはよ。…可愛いんで、つい眺めてた。」
多分なんで見ているのか聞きたいだろうと思って、ロインは自ら白状した。
本当に、あんなことを言ってマジで「OK」されたらどうしようかと思ったぜ。
クレアがまだちゃんとまともな思考を持てる状態であることを確認出来て、ロインは一安心していた。疲労と絶望で頭が回らなくなったら、うやむやなまま流されてしまうか、自ら投げやりに首を縦に振ってしまいかねないので。
そうならないようにケアするのも自分の役目だと、ロインは考えていた。
そろそろ、アヨルの方もガス抜きしてやらないと、だよな。
最近は情緒不安定なのか、表情がいつも以上にころころ変わる。意外に繊細な神経の持ち主であることを兄はちゃんと理解しているのだ。まあ、本当は長兄が戻って来れれば、その分の負担は軽減するんだけどな。
長々と下らぬ事に頭を回しつつ、クレアの目が開く様をじっくりと堪能する。
「よぉ、おはよ。…可愛いんで、つい眺めてた。」
多分なんで見ているのか聞きたいだろうと思って、ロインは自ら白状した。
「馬鹿!!最低!!変態!!ビッチ!!」
少し大きな声を出してしまったことにすぐに口を噤む。しかし赤くなった頬は火の灯りのせいで丸見えだった。からかわれているのがすぐに分かった。けれど、上手にあしらう言葉が見つからず、語彙力のない言葉で言い返すことしかできなかった。
すぐに彼から離れるために小屋の方へと向かった。しかし、ふと立ち止まって思い直すと、もう一度ロインのところまで戻ってくる。そして後ろから首後ろの襟を掴むと強引に引っ張るように連れていく。
「貴方も戻るのっ!」
そう言って小屋に入り、アヨルが寝ている傍へ彼を放り投げる。自分はアヨルとロインとは反対側の布団の上に寝転がり、彼の分の毛布を奪い、ミノムシになるかのように身体に巻き付けた。そして背を向けながら、
「貴方はそっち、…じゃ、お休みっ」
と言って、目を閉じた。
彼の言う通り疲れがたまっていたせいかすぐに寝入ってしまった。
翌朝、市街地に行くために起きようとしていた時間にも関わらず、背を向け遠ざけて寝ていたクレアの身体はロインのすぐ傍にあった。
____________
遠慮なく使わせてもらいました…!
この後少しずつクロード様とクレアが近くにいるように仕向けて行けたらと思います
本当に、あんなことを言ってマジで「OK」されたらどうしようかと思ったぜ。
クレアがまだちゃんとまともな思考を持てる状態であることを確認出来て、ロインは一安心していた。疲労と絶望で頭が回らなくなったら、うやむやなまま流されてしまうか、自ら投げやりに首を縦に振ってしまいかねないので。
そうならないようにケアするのも自分の役目だと、ロインは考えていた。
そろそろ、アヨルの方もガス抜きしてやらないと、だよな。
最近は情緒不安定なのか、表情がいつも以上にころころ変わる。意外に繊細な神経の持ち主であることを兄はちゃんと理解しているのだ。まあ、本当は長兄が戻って来れれば、その分の負担は軽減するんだけどな。
長々と下らぬ事に頭を回しつつ、クレアの目が開く様をじっくりと堪能する。
「よぉ、おはよ。…可愛いんで、つい眺めてた。」
多分なんで見ているのか聞きたいだろうと思って、ロインは自ら白状した。
そう言うと、クレアの両頬を包む様に両手で挟んで、ウニュと寄せる。自分の事を棚に上げて無理をし通すクレアに、軽いお仕置きを与えた。
「俺は昼間でもテキトーにサボってるから。休息は十分足りてんだよ。お前こそ、気ィ張り詰め過ぎだろーが。アヨルが言ってたぜ。『クレアが働き過ぎだ』って。」
有難い事ではあるが。こんな時だからこそ、程々に手を抜くってことをちゃんとして欲しいのだ。そうでないとクレア自身がぶっ倒れてしまう。
「疲れてんのはお互い様だろ?クレア。」
彼女の瞳を見つめたまま、ロインは笑って言った。こんな状況下にある気持ちが、どうにかしたいと突き動かすのは理解できる。けれど、だから余計に危険なのだとロインは感じていた。ロインは手を彼女の顎へ移動させると、軽く持ち上げ、耳元へ顔を寄せる。
「それとも、運動が足りてねぇんなら、よく眠れるように、俺がイカせてやろうか?」
勿論、冗談である。
___
二人きり、ですし。多少大きな声出しても誰も気づかんだろうし。…という状況。
引っ叩かれるのは承知の上なので、クレア様が怒って小屋に戻ってくれるのを狙っております。
そう言うと、クレアの両頬を包む様に両手で挟んで、ウニュと寄せる。自分の事を棚に上げて無理をし通すクレアに、軽いお仕置きを与えた。
「俺は昼間でもテキトーにサボってるから。休息は十分足りてんだよ。お前こそ、気ィ張り詰め過ぎだろーが。アヨルが言ってたぜ。『クレアが働き過ぎだ』って。」
有難い事ではあるが。こんな時だからこそ、程々に手を抜くってことをちゃんとして欲しいのだ。そうでないとクレア自身がぶっ倒れてしまう。
「疲れてんのはお互い様だろ?クレア。」
彼女の瞳を見つめたまま、ロインは笑って言った。こんな状況下にある気持ちが、どうにかしたいと突き動かすのは理解できる。けれど、だから余計に危険なのだとロインは感じていた。ロインは手を彼女の顎へ移動させると、軽く持ち上げ、耳元へ顔を寄せる。
「それとも、運動が足りてねぇんなら、よく眠れるように、俺がイカせてやろうか?」
勿論、冗談である。
___
二人きり、ですし。多少大きな声出しても誰も気づかんだろうし。…という状況。
引っ叩かれるのは承知の上なので、クレア様が怒って小屋に戻ってくれるのを狙っております。
「?!…ま、まだ起きてたの?」
もうてっきり寝ていると思っていた。こんな時間まで起きているのは、きっと何か作業をしていたのだろう。彼もまた村の復興のために朝から晩までよく働いていた。昨日も夜遅くまで市街地にいて、食料調達していた。今日も本当は市街地へ向かおうとしていたから、私が代わりに行ってくると声を上げた。彼にはゆっくり休んで欲しくて。
「…食料、小屋に置いておいた。多分、1週間は持つと思うよ。」
今日の成果を伝えると、更に落ち着いた少し暗めのトーンで言葉を続けた。
「今日、聞いたんだけどさ。明日以降、市街地に今まで以上の救援物資が届くんだって。…フーゴン国からの物らしいけど、裏ではキゾン国が支援してる…とかないとか。
詳しい場所まで皆んな分からなそうだったけど、明日行って、場所確認してこようと思う。」
市街地も安全な訳ではなかった。倒壊家屋が多く、いつ崩壊してもおかしくないような建物ばかり残っている。人々が暮らしてはいるが、私たちがここから市街地に向かうにはそんな建物が多く残る道を通らなければならなかった。
私は寝ぼけ半分、ロインの前髪に触れ、かき上げるかのように撫でた。ああ、こうしてみると本当、雰囲気はあの人に似てるんだよなぁ。本人には到底言えないけれど。
手を下ろすと軽く笑みを浮かべた。
「早く寝な?疲れてるでしょう…。私はここにいるから、…ゆっくりお布団入っておいで。」
今日の記録分を書き終えて、ロインは伸びをしながら窓の外を眺めた。遠くで焚火の火が揺らいでいるのが見える。そういやまだクレアが戻ってこないな、と思いながら空気を吸いに外へ出た。
「んー、ありゃぁ…」
揺らぐ光に人の影が見え隠れする。もしかしたら、とロインは速足で見えている焚火の方へ向かって行った。
「よお、お疲れさん。」
近づけば思った通り、クレアだった。ロインは彼女の隣に並んで腰を下ろす。ちょうど目の前の焚火も挨拶を返すように爆ぜた。
ベハレスコ領にあった3村の被害も各地と同様であり、家屋の倒壊が酷かった。引き起こされた洪水のせいで作物を育てていた土地も水に流されてしまっている。漸く水が引いてきたところだが、それでもぬかるんだ土壌では家屋の建て直しはまだ先になるだろう。
しかしこの侵攻に加担したフーゴン国からベハレスコ領の村々に救援物資が届くようになった。母国から供給されることなどなかったため受け取る他なく、それで何とか暮らしを保っていたのだった。
寝静まった夜。焚火を頼りに街から避難場所へと戻ってくる。私を匿ってくれたロイン達の村もまた、あの日避難してからそのままの場所で最低限の暮らしを守っていた。もう皆それぞれの小屋やテントの中で眠りについていた。私は荷物をいつもの貯蔵庫へ卸しに行く。日中、瓦礫の撤去をしながら掘り出せた衣類や食料、他国が実施している救援物資の調達を行いここに戻ってくる。そしてまた陽が昇れば瓦礫の撤去に向かう。そんな日々の繰り返しだった。
(あと一週間分は稼げたかな…。今日は、ちょっと頑張ったかも。)
焚火の前に腰を下ろす。今ロイン達のいる小屋に戻れば、彼らを起こしてしまうだろう。このままここで一休みしようと、膝を抱えながらぼんやりと火を眺めた。
今日の記録分を書き終えて、ロインは伸びをしながら窓の外を眺めた。遠くで焚火の火が揺らいでいるのが見える。そういやまだクレアが戻ってこないな、と思いながら空気を吸いに外へ出た。
「んー、ありゃぁ…」
揺らぐ光に人の影が見え隠れする。もしかしたら、とロインは速足で見えている焚火の方へ向かって行った。
「よお、お疲れさん。」
近づけば思った通り、クレアだった。
寝静まった夜。焚火を頼りに街から避難場所へと戻ってくる。私を匿ってくれたロイン達の村もまた、あの日避難してからそのままの場所で最低限の暮らしを守っていた。もう皆それぞれの小屋やテントの中で眠りについていた。私は荷物をいつもの貯蔵庫へ卸しに行く。日中、瓦礫の撤去をしながら掘り出せた衣類や食料、他国が実施している救援物資の調達を行いここに戻ってくる。そしてまた陽が昇れば瓦礫の撤去に向かう。そんな日々の繰り返しだった。
(あと一週間分は稼げたかな…。今日は、ちょっと頑張ったかも。)
焚火の前に腰を下ろす。今ロイン達のいる小屋に戻れば、彼らを起こしてしまうだろう。このままここで一休みしようと、膝を抱えながらぼんやりと火を眺めた。
小屋では休んでいる者が大半だった。寝静まる静けさの中、ロインはまだ戻ってこないクレアを待ちながら、一人記録をつけていた。洪水が起こってからの間を、次の災害時に向けて役立てられるように。復興していくにも何が必要か、前以てわかっていれば、被害は十分に抑えられる。今回だってそうだ。口伝であったが随分役に立った。しっかりとした記録があれば、次回にはそれを元にしての応用が利く。
今日の記録分を書き終えて、ロインは伸びをしながら窓の外を眺めた。遠くで焚火の火が揺らいでいるのが見える。そういやまだクレアが戻ってこないな、と思いながら空気を吸いに外へ出た。
「んー、ありゃぁ…」
揺らぐ光に人の影が見え隠れする。もしかしたら、とロインは速足で見えている焚火の方へ向かって行った。
ロイン達は水抜きの土木工事に取り掛かっている(畝立て方式)
ベレアン帝国との終戦協定の締結は済んだが。まだその他の難題は残っていた。特にベハレスコ領の自治権に関してはかなり難航している。豊かな土壌と交通の拠点、そして地形をうまく活用すれば十分に城塞都市として、経済を動かす上で最重要地であることがはっきりしているからだ。
仕事が忙しく、なかなか更新できませんでした(..)
クレアの方は、少し時間を飛ばさせてもらいました。
「いつか会いに行く」という言葉の通り、やはり終戦後すぐに再会するのは難しいかなと思いまして…。
下記の内容と食い違うところができてしまうかもしれませんが、すみません認知いただけますと幸いです。
また、クレアは昔のクロード様のように身を削る様に働きながら暮らしています。
母国が何もしてくれないため、自分達で動くしかないのがベレアン国民の状況です。軍も残ってはいますが、大半は機能しておらず、切り離された状況下である軍人がほとんどです。(クレアもその一人。)
瓦礫撤去の傍ら、物資を集め避難場所へと戻る。交代制で活動していますが、クレアはロイン達よりも広範囲に行動し、得たものを全て村へ注いでいるという状況です。
この後クロード様と近場で行き違いすれ違う中、他のメンバーがやきもきしながら間に入って手を尽くす…見たいな進め方にする上で、やはりクレアには先にクロード様が片腕の機能を失っていることを認知させたいなと思っています。
(自分のせいだ、と自分を追い詰めて闇落ちする…みたなことも考えています。)
どの道いろいろ追々だと思っているので、また適宜ご相談させてください〇
馬車の前後を護衛する役目を担う一人として、今は後方側について馬上より警護の目を光らせていた。操馬は片手で行っているが、慣れ親しんだ愛馬だからこそか、全く苦ではない。率先して馬の方がむしろクロードに合わせてくれている。
後発の復興部隊に先んじて、まずはフーゴン国の元首に会い、この一週間の助力への感謝の意と引き続きの協力要請、そして今後の対応についての話し合いを行うのが目的だ。そしてその後、フーゴン国で帝国ベレアンと終戦協定の締結を結ぶ。
出発までの時間は、クロードには取り分け忙しい一日であった。
施術後、目を覚ましてからゆっくりする間もなく異動への書類提出を迫られた。そしてすぐに身体の洗浄と健康診断がなされ、片手動作に慣れる間もなく、邸宅で一時の身支度を強要される。そのまま、拉致されるがごとくクロードは王女のボディカードに就かされた。あとは現在に至るまで見ての通り、フーゴン国への御供の真っ只中であった。
クロードの懐にはあの短刀が収められていた。その存在を感じながら、託してくれたカイの事を想う。クロードに憧れを抱き、陰日向共に信じて付いてきてくれた。特にクレアを逃してからは、彼には苦労ばかりを掛けてしまったと詫びる気持ちが深く胸に響いている。あの最後の泣き顔には、上司であった思いの労い等ではなく、掛け替えのない親友として、共に乗り越えた戦友として、彼の想いを分かち合いたい。
ちゃんと生きて欲しい─カイのその願いに、今度こそ前向きに応えたいと、クロードは強く望んだ。
サイルの事はカイに託し、クレアが望んだ様に、彼も新しい人生を歩んでくれることを願った。そして伝えられた彼女の”いつか必ず会いに行く”の言葉を、クロードも同様に胸に描いた。
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また時系列前後しても良いので、復興活動等書いて頂ければ有難いです。
市街地は戦闘被害中心で、既にフーゴンから日用雑貨や食料などの支援物資が入ってきております。
一部フーゴン所属の再建活動隊なども、ベハレスコ入り。
ロイン達の集落(3村)は、洪水被害のダメージで壊滅に近い感じになるかと
馬車の前後を護衛する役目を担う一人として、今は後方側について馬上より警護の目を光らせていた。操馬は片手で行っているが、慣れ親しんだ愛馬だからこそか、全く苦ではない。率先して馬の方がむしろクロードに合わせてくれている。
後発の復興部隊に先んじて、まずはフーゴン国の元首に会い、この一週間の助力への感謝の意と引き続きの協力要請、そして今後の対応についての話し合いを行うのが目的だ。そしてその後、フーゴン国で帝国ベレアンと終戦協定の締結を結ぶ。
出発までの時間は、クロードには取り分け忙しい一日であった。
施術後、目を覚ましてからゆっくりする間もなく異動への書類提出を迫られた。そしてすぐに身体の洗浄と健康診断がなされ、片手動作に慣れる間もなく、邸宅で一時の身支度を強要される。そのまま、拉致されるがごとくクロードは王女のボディカードに就かされた。あとは現在に至るまで、見ての通りフーゴン国への御供である。
結構加筆してありますので、問題なければ幸いです。
(やっぱりココはこう直して欲しい、部分あれば遠慮なく言って下さいね。)
現段階でのロル
※完了分
御前会合 → カイ様のクロード見守り → ダリル様達収容同意 → サイル判決
※これからの分
フーゴン外交外遊準備 → カイ様褒章授与式
…の流れで進めようかと思っております。『カイ様のクロード見守り』のロル続きはクロードの回想で入れようかと思っておりますので。
そして、クレア様の方ですが。『フーゴン外交外遊準備』のロルが終了次第、舞台をフーゴン・ベハレスコヘ移して、合流したく存じます。
その際、クロードだけでなく、ダリル様一行も適宜に構って頂けたらなとか考えてます。
(メインの二人が近場で行き違いすれ違う中、他のメンバーがやきもきしながら間に入って手を尽くす…みたいな? ご提案頂いている②の系統ですが、多分うんか月で再会できるパターン)
ご提案①はぜひ、プロポーズに使わせていただきたい。です。←お膳立ては王女が好んてしそうですが。
舞台がベハレスコ農村部から市街地中心部へと移る形になるかと存じます。
エピソードとして
ついでにダリル様とカーナの式も上げちゃっても構わないかしらーって。
クレア様とカーナの恋バナ女子会とか。
ロインがクロードをやっちゃった後の、クレア様のクロード介抱とか。
明確なのはこんなあたりですが。復興にあちこち駆けずり回る形にはなると存じます。イベントはその都度発生していくと思いますので、その時はどうぞ宜しくお願い致します。
クロード様とクレアの再会について考えあぐねていまして…
稚拙ではありますが、以下内容についてご意見を頂ければと思います。
まず前提として考えたのは、起点になるのはクレアの方かなと考えています。これまでのクロード様の考え方を見て「会いたいけども、生きていてくれればそれだけで十分だ」という感覚が強いのかな?と思いました。片腕をなくし新しい仕事を始め、きっとクレアを探すどころではないと思うので、クレアからクロード様に会いに行くのが綺麗かなと思っています。それを踏まえ、
①舞踏会で再会する
舞踏会の思い出を強く持っていただいている認識なので、付き人として参加した舞踏会でクレアを懐かしんでいるクロード様のところへクレアが登場するパターンです。
②周りの助けを借りて再会する
総督とカイはクロード様をクレアに会わせてあげようと動きます。そのかいあって、クロード様がいるところにクレアを連れてくるパターンです。
(戦争から数年経って、クロードがクレアを拾った森の中にいたところでクロードと総督が話をしていて、そこにカイがクレアを連れてくる…というイメージです)
①②をするにも事前にロイン様に動いてもらったり、話を繋げられるようなエピソードを交えて最終的に再会で着たらなと思っています。
勿論①②以外のアイデアがあれば教えて欲しです(。。)
可能なら、この後クロード様の判決に進んでいただければと思います
また、過去ロル確認させて頂きました…!
丁寧にありがとうございます><
私こそ見返したいので、引き続きまとめて頂けると嬉しいです
きっと京様にも「この部分はもう少しこうしたかった」等、手直しされたい所があるかと存じ、お詫びと確認兼ねて告白した次第です。
もし、このまま掲載を御許し頂ければ有難いですし、抵抗があれば消去は止む無しと考えておりますので、気兼ねなく申して下さる様願います。
アクセス数の解析は
https://kasasagi.hinaproject.com/access/top/ncode/n4139ip/
で、見れるようなので。
基本、カイ様が…サイルの所為で命を落とすような目に遭ったり、出世に響く様な可能性が無ければ、旅立つ必要は無いので。
命の危険=追手の追撃 を無くせれば、サイルがキゾンに残る率も高くなりますし。このあたり、ハリとの絡みの中で追手の脅威を無くせたらな、と考えてます。
再会するパターンは
A.ハリが城に潜り込んで、サイルの救出を試みる
B.サイルの裏切りを知ったハリが、城に潜り込んで抹殺を試みる
C.①のチャボラ視察に同行した先で、そこに身を寄せてたハリと再会する
…あたりが無難かと。A.B.では多分カイ様だけでなく、総督殿にも絡んでいただけるだろうかと目論んでます。サイルの処遇はこのルートではまだ保留中(未だ檻の中)。
C.はヒルトン様に参加して頂ければ嬉しいな、と。カイ様はその分お休みになるかも。サイルは誰かしらの預かり待遇か、もしくはヒルトン様の監視下で経過観察(生かすのに相応しいか)処置を受けてるか。
今のところ、そう言った流れになるかと存じます。
でも、カイ様からの告白は楽しみにしてます! (ハリを含めた三角関係に発展していきそうですけど)
そして、サイル様の見た目ですが。
元に戻す為に、手っ取り早く「毒を以て毒を制す」
または「師匠の万能薬」を試みる(師匠=アク)←これはC.ルートの場合が濃厚
…そこらへんが回復させる手立てになりそうだな、と思っています。
(それ以外の自然治癒だと数年~十数年かかりそうなので)
完全回復か、痣残しかはその時の流れ任せになろうかと。膝の怪我についても…ですね。(でもこちらは当初より確実に歩ける方向に向かうと思います。)
再度、登場人物が増えてしまいますが、どうぞ宜しくお願いします。
基本、カイ様が…サイルの所為で命を落とすような目に遭ったり、出世に響く様な可能性が無ければ、旅立つ必要は無いので。
命の危険=追手の追撃 を無くせれば、サイルがキゾンに残る率も高くなりますし。このあたり、ハリとの絡みの中で追手の脅威を無くせたらな、と考えてます。
再会するパターンは
A.ハリが城に潜り込んで、サイルの救出を試みる
B.サイルの裏切りを知ったハリが、城に潜り込んで抹殺を試みる
C.①のチャボラ視察に同行した先で、そこに身を寄せてたハリと再会する
…あたりが無難かと。A.B.では多分カイ様だけでなく、総督殿にも絡んでいただけるだろうかと目論んでます。サイルの処遇はこのルートではまだ保留中(未だ檻の中)。
C.はヒルトン様に参加して頂ければ嬉しいな、と。カイ様はその分お休みになるかも。サイルは誰かしらの預かり待遇か、もしくはヒルトン様の監視下で経過観察(生かすのに相応しいか)処置を受けてるか。
今のところ、そう言った流れになるかと存じます。
でも、カイ様からの告白は楽しみにしてます! (ハリを含めた三角関係に発展していきそうですけど)
そして、サイル様の見た目ですが。
元に戻す為に、手っ取り早く「毒を以て毒を制す」
または「師匠の万能薬」を試みる(師匠=アク)←これはC.ルートの場合が濃厚
…そこらへんが回復させる手立てになりそうだな、と思っています。
(それ以外の自然治癒だと数年~十数年かかりそうなので)
完全回復か、痣残しかはその時の流れ任せになろうかと。膝の怪我についても…ですね。(でもこちらは当初より確実に歩ける方向に向かうと思います。)
再度、登場人物が増えてしまうかもしれませんが、どうぞ宜しくお願いします。
性別:女
年齢:18歳
容姿:
ハスキーボイスの小柄な少年。片目に傷のような赤くて細い筋が入っている。傷ありの目の瞳が薄いオッドアイ。瞳も髪も同じ、ほうじ茶色。体の一部(腹)に黒斑があり、他にも古傷が多数。ペタ胸の為、陰部を除けば少年にしか見えない。
その他:
アケ(=サイル)とは同期で、Hランク。大がかりな作戦の予兆を掴み、調査結果を逐一本国に送っていた。ただ、肝心の作戦部分の情報を得る為の城への潜入前に、失敗して長らく気を失っていた。気が付いたのは、行軍がベハレスコへ出立する頃。
まだ独自任務をこなすFランクに到達する前の段階の時に、同期の連中に絡まれていたのをサイルに助けられた経験がある。その時から密かにサイルを慕っていた。
サイルも弟分的な庇護欲感情をハリには抱いていたので、能力以上の任務を強要させ、完遂できなかった彼女への酷評と切捨てを行う組織中枢に自棄を起こし…以下知っての通り。
名前(コードネーム):アク
性別:男
年齢:?歳
容姿:
乞食。髪も無く、カサカサの肌にやせ細った皮と骨だけに等しい身体。襤褸を身にまとい、同じ場所にずっと座っている。目・耳・舌・声・触感の能力は失っており、唯一臭覚だけは効く。
その他:
サイル達、ベレアンの諜報部内では「アク」という呼称で認識されているが、実際は名の無い情報屋。国境平野と鉱山を結ぶ街道の下、ベイヤーラ湿原側の一角に十数人で形成しているチャボラに居る。
まだ彼の目や耳や触感が残っていた時に、別の場所でサイルは彼の薬草、鉱薬に関しての知識を学び、習得。以後会うことは無く、今回の作戦にあたって思いがけず再会したという流れ。
サイルが小動物に託した特殊な方法で暗号を記した紙の行き着く先が…彼の元で、特定の人間(もしくは猛禽類)にのみ、その紙を渡し、本国へ届けさせる橋渡しを行っていた。(紙は白紙のボロ切れです。特殊な溶液で文字が浮かび上がる仕組み)
性別:女
年齢:18歳
容姿:
ハスキーボイスの小柄な少年。片目に傷のような赤くて細い筋が入っている。傷ありの目の瞳が薄いオッドアイ。瞳も髪も同じ、ほうじ茶色。体の一部(腹)に黒斑があり、他にも古傷が多数。ペタ胸の為、陰部を除けば少年にしか見えない。
その他:
アケ(=サイル)とは同期で、Hランク。大がかりな作戦の予兆を掴み、調査結果を逐一本国に送っていた。ただ、肝心の作戦部分の情報を得る為の城への潜入前に、失敗して長らく気を失っていた。気が付いたのは、行軍がベハレスコへ出立する頃。
まだ独自任務をこなすFランクに到達する前の段階の時に、同期の連中に絡まれていたのをサイルに助けられた経験がある。その時から密かにサイルを慕っていた。
サイルも弟分的な庇護欲感情をハリには抱いていたので、能力以上の任務を強要させ、完遂できなかった彼女への酷評と切捨てを行う組織中枢に自棄を起こし…以下知っての通り。
名前(コードネーム):アク
性別:男
年齢:?歳
容姿:
乞食。髪も無く、カサカサの肌にやせ細った皮と骨だけに等しい身体。襤褸を身にまとい、同じ場所にずっと座っている。目・耳・舌・声・触感の能力は失っており、唯一臭覚だけは効く。
その他:
サイル達、ベレアンの諜報部内では「アク」という呼称で認識されているが、実際は名の無い情報屋。国境平野と鉱山を結ぶ街道の下、ベイヤーラ湿原側の一角に十数人で形成しているチャボラに居る。
まだ彼の目や耳や触感が残っていた時に、別の場所でサイルは彼の薬草、鉱薬に関しての知識を学び、習得。以後、今回の作戦にあたって再会したという流れ。
サイルが小動物に託した特殊な方法で暗号を記した紙の行き着く先が…彼の元で、特定の人間(もしくは猛禽類)にのみ、その紙を渡し、本国へ届けさせる橋渡しを行っていた。(紙は白紙のボロ切れです。特殊な溶液で文字が浮かび上がる仕組み)
性別:女
年齢:18歳
容姿:
ハスキーボイスの小柄な少年。片目に傷のような赤くて細い筋が入っている。傷ありの目の瞳が薄いオッドアイ。瞳も髪も同じ、ほうじ茶色。体の一部(腹)に黒斑があり、他にも古傷が多数。ペタ胸の為、陰部を除けば少年にしか見えない。
その他:
アケ(=サイル)とは同期で、Hランク。大がかりな作戦の予兆を掴み、調査結果を逐一本国に送っていた。ただ、肝心の作戦部分の情報を得る為の城への潜入前に、失敗して長らく気を失っていた。気が付いたのは、行軍がベハレスコへ出立する頃。
まだ独自任務をこなすFランクに到達する前の段階の時に、同期の連中に絡まれていたのをサイルに助けられた経験がある。その時から密かにサイルを慕っていた。
サイルも弟分的な庇護欲感情をハリには抱いていたので、能力以上の任務を強要させ、完遂できなかった彼女への酷評と切捨てを行う組織中枢に自棄を起こし…以下知っての通り。
名前(コードネーム):アク
性別:男
年齢:?歳
容姿:
乞食。髪も無く、カサカサの肌にやせ細った皮と骨だけに等しい身体。襤褸を身にまとい、同じ場所にずっと座っている。目・耳・舌・声・触感の能力は失っており、唯一臭覚だけは効く。
その他:
サイル達、ベレアンの諜報部内では「アク」という呼称で認識されているが、実際は名の無い情報屋。国境平野と鉱山を結ぶ街道の下、ベイヤーラ湿原側の一角に十数人で形成しているチャボラに居る。
まだ彼の目や耳や触感が残っていた時に、別の場所でサイルは彼の薬草、鉱薬に関しての知識を学び、習得。以後、今回の作戦にあたって再会したという流れ。
サイルが小動物に託した特殊な方法で暗号を記した紙の行き着く先が…彼の元で、特定の人間(もしくは猛禽類)にのみ、その紙を渡し、本国へ届けさせる橋渡しを行っていた。(紙は白紙のボロ切れです。特殊な溶液で文字が浮かび上がる仕組み)
サイルがカイ様から離れたがる一番の理由は、自分の所為で命を落とすような目に遭って欲しくない、という強い思いから。なのでそのあたり(追手との攻防)をどうにか出来れば、カイ様と一緒になる事に不足はございません。
なので、①②の展開を組み込んで良いならば。
②のハリとの再会を主体とした展開に、①のチャボラ待遇改善を絡めたシナリオを組んだら、追手の件もサイルの見た目も解決できるかな…と思います。
サイルがカイ様から離れたがる一番の理由は、自分の所為で命を落とすような目に遭って欲しくない、という強い思いから。なのでそのあたり(追手との攻防)をどうにか出来れば、カイ様と一緒になる事に不足はございません。
なので、②のハリとの再会を主体とした展開に、①のチャボラ待遇改善を絡めたシナリオを組んだら、追手の件もサイルの見た目も解決できるかな…と思います。
(②のハリがらみのシナリオは追手の方で、①のアクの助けで身体の回復を…と)
体に黒アザが一部残る形でも、いずれ
■戦後の動きについて
①②どちらでも大丈夫ですが、その後の展開次第とサイル様のカイへの気持ち次第ですかね。。。
カイ自身は友情とは別の感情(=恋愛感情)を抱き始めています。※こちら嫌であればお申し付けください!
確証は得られていませんが、このままサイル様がどこかへ行ってしまうのを個人的な感情として嫌がっています。どこかで野垂れ死んでしまうかもしれない、寂しい思いをしているかもしれないと不安になるので自分の傍に置かせたいと思っています(サイル様の悩みの種を知らないので)
例えば①②の結果、カイがサイル様への恋心を自覚して告白もありかなと思っていますし、その言葉を聞いてサイル様がここに残るかor旅立ってしまうか検討いただいてもよいかなと思っています。
■サイル様の見た目について
こちらはある程度治ってほしいですよね(..)
火傷のような跡だけ残ってしまう程度だと嬉しいかなぁという感じです…!
①.ロルの初期に一部存在を書いていた、情報を送った先の仲間(コード名:アク)と彼が棲むチャボラ(キゾン王国内)の待遇改善を求める話。
②.急遽サイルが受け持つ事になった今回の堰堤爆破情報搾取の、元々の担い手だった仲間(コード名:ハリ)と再開する話。
他にも、カイ様の傍でドジっ子を演じながら常に組織の刺客からカイ様を護り撃退する方向へ持っていくのも、数年時間は飛びますが…ベレアン帝国へ戻って組織を壊滅させて再びキゾン王国へ帰還する…という話で続けるのも有りかなと存じます。
以上を踏まえてご検討頂ければ幸いです。
どうぞ宜しくお願い致します。
追記で。
サイルの頭髪の一部は毒の排出や無毒化に一役買ってます。(一部の植物が塩害を一枚の葉に集中させて逃れる機能を持つ、のと似たようなもの)
今回相当量抜いちゃってますので、本当に元の姿に戻るのかどうか…話の成り行き任せです。こちらも希望があれば言って頂いた方が良いかと。
〇一般部署…無線傍受、情報収集、極秘任務伝達など。危険度は一般兵士と同程度の内容。事務方。
〇綱紀部署…公安に近い存在。 治外特権、ベレアン帝国軍内でもエリートが集まる部署。なれるのはベレアン帝国民に限る。
〇選範部署…ベレアン帝国民以外を集めた諜報部。危険地帯に赴く実働部隊。その育成から洗脳も全てここで行われている。一般のベレアン国民には、諜報部の一般部署並みの印象しかない。
ランクはAから順に区別されていて、各ランクの人数は2~3人程度。後ろに行けば行くほど能力値は高い。F以降は敵地での本格的な潜入捜査、I以降は工作中心、O以降は綱紀部署の手足になって粛清の実務(主に暗殺)を執り行いながら、潜入、工作行動も同時に要求される有能人材ランク。
Qは完全洗脳を受けた監視および粛清役。Fまで生き残ること自体、至難の業な上、それまでに皆組織を裏切る事への恐怖を刷り込まれる。
サイルが所属していたのはPランク。
『裏切り』に対する洗脳の全ては、Uランクに位置づけされた処分対象である人体モルモットの映像から。「Uランクまで到達出来たら自由になれる」というのも組織の売り文句。
…という超鬼畜な組織に所属。今までのサイルの言動からまとめてみると、こんな感じになってしまいましたので。
これまでの戦争状況から人員が大幅に減ってしまって、今回の敗戦で壊滅状態に…という案もあるのですが。それでも高ランク人員は多少残ってるでしょうから、追手のがサイルの元にやってくる可能性は高い。
相手は一騎当千の能力の持ち主なので、被害を出さずに倒すとなれば、相当の難易度になるかと存じます。
サイルが自身の見た目を変えた理由もソコにあります。組織側にサイルが「死んだ」と認識させられれば、安全面の確保はし易い。カイ様他、キゾン王国の方々に迷惑かけたくはないので。キゾン王国に留まる=危険度は増す という意識は常にサイルの頭の中に存在してます。同時に、既に関わりを持つカイ様や他の騎士の方々に関しても、サイルが離れたからと言って安全が保障される訳ではない。その矛盾によるジレンマも、サイルが抱える悩みの種。
それがサイルの現状…といった所です。
〇一般部署…無線傍受、情報収集、極秘任務伝達など。危険度は一般兵士と同程度の内容。事務方。
〇綱紀部署…公安に近い存在。 治外特権、ベレアン帝国軍内でもエリートが集まる部署。なれるのはベレアン帝国民に限る。
〇選範部署…ベレアン帝国民以外を集めた諜報部。危険地帯に赴く実働部隊。その育成から洗脳も全てここで行われている。一般のベレアン国民には、諜報部の一般部署並みの印象しかない。
ランクはAから順に区別されていて、各ランクの人数は2~3人程度。後ろに行けば行くほど能力値は高い。F以降は敵地での本格的な潜入捜査、I以降は工作中心、O以降は綱紀部署の手足になって粛清の実務(主に暗殺)を執り行いながら、潜入、工作行動も同時に要求される有能人材ランク。
Qは完全洗脳を受けた監視および粛清役。Fまで生き残ること自体、至難の業な上、それまでに皆組織を裏切る事への恐怖を刷り込まれる。
サイルが所属していたのはPランク。
『裏切り』に対する洗脳の全ては、Uランクに位置づけされた処分対象である人体モルモットの映像から。「Uランクまで到達出来たら自由になれる」というのも組織の売り文句。
…という超鬼畜な組織に所属。今までのサイルの言動からまとめてみると、こんな感じになってしまいましたので。
これまでの戦争状況から人員が大幅に減ってしまって、今回の敗戦で壊滅状態に…という案もあるのですが。それでも高ランク人員は多少残ってるでしょうから、追手のがサイルの元にやってくる可能性は高い。
相手は一騎当千の能力の持ち主なので、被害を出さずに倒すとなれば、相当の難易度になるかと存じます。
サイルが自身の見た目を変えた理由もソコにあります。組織側にサイルが「死んだ」と認識させられれば、安全面の確保はし易い。
代わりに、判決に至るまでのやり取りを集中的にさせてもらえたらいいな、と思っております。
…現状、クロードは牢獄の壁に頭ぶつけてコブ作っちゃってます。命に別状及ぼすほど迄には至っておりませんから、ひとまずご安心を。
多分、カイ様が回復なされた3日後ぐらいは、いろいろやり過ぎてヘタってるでしょう。食事と水分は拒否してるかと思われますので、カイ様の前に、総督殿に喝っを入れてもらうか、会って早々強引に飲ませてあげてください。
宜しくお願い致します。
あとはクロードとの再会を待ちたく…
ロイン様で何かやりたい事とあれば言ってください!
この後カイ自身で短刀のことをクロード様に伝えたく…
よろしくお願いします
「…マジ…かよ。本当に、此処にいるつもり…なのか?」
クレアにだって故郷はある。帰りたい筈だ。何より彼女の恩人を目の敵にする俺がいるってのに…
「まあ確かに、すぐにはどっかに離れてくって訳には行かないよな。」
旅の安全や生活の確保を考えれば、今暫くこの村に留まって様子を窺うのが賢明だ。国内情勢は何処に行っても乱れているだろうし、取り敢えず身の安全を確保できてる間に移動する為の蓄えを備えておくのが肝心になる。
少しだけ躊躇った手をクレアの頭に乗せて、そのまま軽く撫で回した。
「それじゃあ。宜しくな。、クレア。」
頭から離した手を、今度はクレアに向けて差し出す。戦争という大きな枷が一つ消えた、とはいえまだまだこれからが大変だ。きっと生活環境は大きく変わっていくだろう。支配する相手が変わるだけ、と言ってしまえばそれまでだが。
ただ、気が付けば私の涙は止まっていて、冷たく悲しかった心が少しずつ温まっていくような心地がした。
”美人”という言葉に首を左右に軽く振る。それから一呼吸置き、涙で潤った瞳で少しだけ微笑む。
「…貴方と出会えてよかった。…ありがとう、ロイン。」
それから彼が私の頬から手を下ろした時、考えていたことを彼に伝えようと決心する。正直、彼が快く受け入れてくれるだろうかと不安でいっぱいだ。いや、迷惑だと振りほどかれてしまうかもしれない。けれど、私なりに助けてもらった恩を返したい。そしてここから、クロードともう一度会うために進んでいきたい。
「ねぇロイン、…私、ここに残りたいと思ってる。皆が住んでいた場所に戻れるように、…敗戦で不安定な生活を少しでも支えたい。私にできる限りのことは何でもするつもりだから、…どうか、私をここに置いてくれない、かな」
まあ、クレアって愛嬌あるし、美人だからな。いい様に囲うつもりで拾ってきて、マジになっちまったというヤツかもしれんし。
そう考えるとクレアが思う程、良い奴だと考える気にはなれなかった。
大きく息を吐いて、ロインは肩の力を抜き、そっとクレアの両頬に手を添えて微笑みける。
「ほら、もう泣くな。折角の美人が台無しだぜ?」
親指で両眼から零れ落ちる涙を拭う。綺麗なのは見た目だけじゃない。心もクレアは綺麗だ。子供の無垢な綺麗さより、痛みや辛さの先にある言い訳や妥協を受け止めてなお真っ直ぐに、素直で在る芯の強さみたいなものが輝いている。
あまりそういうのを言葉にするのは得意じゃない。が強いて言えば、真面目、ってやつかな。
本当に、こんな形で出会わなかったなら、もっとクレアとも親密になれたかもしれねぇんだよな…。
そう思うと、少し寂しい気がした。
「彼がいつも、傍に居てくれたから…かな。あの人、騎士団長だったから…そんな人が近くに居てくれる人間を誰も疑わなくて…ずっとバレなかったんだと思う。」
一応自分自身でも言葉遣いやマナーには気をつけていた。周りの会話を参考にし、人との食事は必ず周りが手を付けている仕草を確認してから食べ始めていた。咄嗟の判断と見様見真似でもバレなかったのは、クロードが気にかけ、よく行動を共にしてくれていたおかげだろう。
「バレたのは自業自得なんだ。…彼に正体がバレていたことを知って、動揺しちゃって…。私も、さっきの貴方と同じように、彼に刃を突きつけた。…そして、彼に怪我を負わせた。その光景を他の騎士に見られちゃってバレた、って話。逃げ回ったんだけど結局捕まって…たくさん、殴られた。手当てしてもらった傷のほとんどがそうだよ。」
ははっと笑うように言葉を終えた。そして再度落ち着いて言葉を続ける。でも純粋な疑問を抱くような彼だから、きっとこれだけじゃ物足りないのだろう。それに私も無意識に言葉を続けていた。
「でも、彼が助けてくれた。怪我で動けなかった私を抱えて、キゾンの王城から連れ出してくれて。…キゾンの追手に追いつかれた時、自身の身柄を引き換えに、私を逃がしてくれたの。…そうして私は、ベレアンに戻って来れた。私がバレずにキゾンで暮らせていたのも、こうして生きてベレアンに戻って来れたのも、全部クロードのおかげで…」
彼の名を口にしたとき、ホロっと涙が零れた。キゾンで彼と一緒にいた場面や彼の時折見せた優しい表情が思い起こされた。今ようやく事がひと段落し、張ってた気が緩んだせいだろうか。そんな彼を犠牲にしたこと、守れなかったこと。…それでも、もう一度会いたいと思っていること。零れた涙が止まることなく流れてしまい、それ以上言葉を続けることができなかった。
まあ、クレアって愛嬌あるし、美人だからな。いい様に囲うつもりで拾ってきて、マジになっちまったというヤツかもしれんし。
そう考えるとクレアが思う程、良い奴だと考える気にはなれなかった。
大きく息を吐いて、ロインは肩の力を抜き、そっとクレアの両頬に手を添えて微笑みける。
「ほら、もう泣くな。折角の美人が台無しだぜ?」
親指で両眼から零れ落ちる涙を拭う。綺麗なのは見た目だけじゃない。心もクレアは綺麗だ。子供の無垢な綺麗さより、痛みや辛さの先にある言い訳や妥協を受け止めてなお真っ直ぐに、素直で在る芯の強さみたいなものが輝いている。
あまりそういうのを言葉にするのは得意じゃない。が強いて言えば、真面目、ってやつかな。
本当に、こんな形で出会わなかったなら、もっとクレアとも親密になれたかもしれねぇんだよな…。
そう思うと、少し寂しい気がした。
「クレア。あのさ、俺はアンタに謝られる事なんて何一つ、無い、て思ってる。それに先刻の奴だって、俺の仇って訳じゃない。本当の仇は…一人だけ、だからさ。」
正直、最後の言葉はクレアの目を見ては言えなかった。実際俺が仇を討てばそれは、彼女の恩人の命を奪うことになる。
きっと謝らなきゃならねぇのは、俺の方だよな。
ロインは苦い顔情のまま、笑った。皆が善い様に、全てが丸く収まるなんてのは、所詮絵空事だ。其々が各々に己の中で落としどころを見つけて収めていく。大なり小なりわだかまりは残ってしまうもの。
「でもよく周りの連中にバレなかったな…つか、結局はバレたんだろ?」
でないと、あの怪我は説明がつかない。かなり無遠慮に話に突っ込んでしまったが、ロインは悪びれもせずにクレアを見つめた。そういやアヨルに「兄貴はズケズケとモノ言い過ぎ」とか「デリカシーが無さすぎる」とか言われていたっけ…と、こんな時になんというか、思い出してついまた目線を反らす。
傍から見ればまるでガキのような仕種だと、ロインは恥ずかしさに顔を赤らめた。
「クレア。あのさ、俺はアンタに謝られる事なんて何一つ、無い、て思ってる。それに先刻の奴だって、俺の仇って訳じゃない。本当の仇は…一人だけ、だからさ。」
正直、最後の言葉はクレアの目を見ては言えなかった。実際俺が仇を討てばそれは、彼女の恩人の命を奪うことになる。
きっと謝らなきゃならねぇのは、俺の方だよな。
ロインは苦い顔情のまま、笑った。皆が善い様に、全てが丸く収まるなんてのは、所詮絵空事だ。其々が各々に己の中で落としどころを見つけて収めていく。大なり小なりわだかまりは残ってしまうもの。
「でもよく周りの連中にバレなかったな…つか、結局はバレたんだろ?」
でないと、あの怪我は説明がつかない。かなり無遠慮に話に突っ込んでしまったが、ロインは悪びれもせずにクレアを見つめた。
…今がちょうど、頃合いなのかもしれない。
「…アヨル、皆にロインが起きたことを伝えてきてくれる? それから、これからのことについて皆話し合いをしているようだから、…ロインの代わりに参加してきてくれないかな?お願い、」
そう頼むとアヨルは何かを察したのか快く承諾し、部屋を後にした。彼と2人きりで話がしたいことを遠回しで伝えたのだが、きっと分かってくれたのだろう。
それから再びロインを見て、顔を上げるように伝えた。
「…事情はアヨルから聞いたよ。…こちらこそごめん。私が邪魔しなきゃ、貴方の気持ちも…少しは楽になれたかもしれない。…敵を庇うなんて、馬鹿な人間だよね。」
あの時止めなければ、ロインにとっての敵討ちが成立していたかもしれない。父親を亡くし、妹を守るために自分がしっかりしなければと甘えを作らずここまで生き抜いてきた彼の経緯はどれほど辛いものだったか。
「でも、…そんな馬鹿な人が私以外にもう一人居たの。…私がベレアン兵士だと知りながら、私を助けてくれた銀髪のキゾン騎士。…きっと、貴方の仇と同一人物だと思うよ。」
それから落ち着いた様子で続けた。
「私はずっと、キゾン国にいたの。…国外遠征中に魔物に襲われて倒れていた私を助けてくれたのが銀髪の彼で。…彼は私がベレアン兵士だと知りながら、…それを仲間に密告せず、私の前でも知らないふりをして。…ずっと私を匿い、そして逃がしてくれた。…だから貴方が私を見つけてくれたあの日、キゾンの隊服を着てたの。…ずっと、キゾン国にいたから。」
フゥと一息抜くと、思い切ってロインは口を開いた。
「その…アレだ。先刻は済まなかった。」
そう言って、深々と頭を下げた。
いくら頭に血が上っていたとはいえ、理不尽に「殺す」だなんて言うべきじゃない。あの場でクレアが立ちはだかったのにだって、理由が有った筈。訳も知らずにただ命を奪うんじゃ、あの銀髪野郎と変わらねぇ。
そんな傍若無人に振る舞う自分を、自身で許せなかった。ロインは反省しつつも、あの時のクレアの態度も思い返していた。少なくとも二人は顔見知りであったらしい。経緯は様々、クレアが村へ逃げてきた訳も、嘘をついて傷の理由を誤魔化しただろう事も、クレアからもう一度直接聞く必要がある。
本当の判断を下すのはそれからだ。ロインは強く決意を抱いて、下げた頭の合間からちらりとクレアを覗い見た。
住民たちの様子を伺うと、悔しそうに泣き崩れる人もいれば安心したように胸を撫で下ろしている人たちもいる。確かに敗戦は悔しい、しかしそれよりもあの洪水から難を逃れられたことに何よりの安堵を感じ取れた。私もどちらかと言えば後者だ。この戦争の終焉がついに来たかと、入っていた力が少し抜けた。
これからどうすればいいか、どこへ向かえばいいか、皆話し合いを始めている。自分も加わるよう依頼されたが、ロインの様子が心配だから後で向かうことだけ伝えた。
ロインを運んだ小屋の中へ向かう。私はこれまで通りの接し方を心がけようと決心していた。きっとこの一件で彼は私に強い敵意を向けてくるかもしれない。”この裏切者が”と罵るかもしれない。それでも私は、彼から受ける全てを受け入れるつもりだ。
部屋の入口に足を踏み入れる前、アヨルが誰かと話す声が聞こえた。すぐに部屋の中を見るとロインが目覚めていたのだ。これもまた安堵の息を漏らす。
「ロイン…!」
すぐそばまで近寄る。彼は少し動揺しているように見えた。
「…目が覚めてよかった。まだ、ゆっくり休んでていいよ。」
_______________________
いえいえ!こちらの展開の方が助かりました!
ありがとうございます
すぐ横では心配そうに見つめる妹アヨルの顔があった。
「兄貴…。」
何を言おうか迷っているのか、アヨルが口ごもる。そんな妹に、心配ねぇよ、と笑いかけてロインは彼女の頭を撫でた。
「それより、だ。腕の怪我は…大丈夫か?」
頷いて、きちんと治療を施された腕を差し出して、アヨルは兄に見せた。細腕に巻かれた包帯に、少しばかり悲しげに瞳を揺らす。だがそれ以上はいつもと変わらず明るい笑顔で彼女の心配を払しょくするように、ロインはぐしゃぐしゃとアヨルの頭髪を搔き乱した。
「まあ、やっちまったことは仕方ねぇしな。すぐに元通り、きれいに治るさ。」
けど無茶は禁物だぞ、と釘を刺す事も忘れない。そうして、ロインは完全に身を起こすと、今度はクレアの姿を探し見た。
すぐ横では心配そうに見つめる妹アヨルの顔があった。
「兄貴…。」
何を言おうか迷っているのか、アヨルが口ごもる。そんな妹に、心配ねぇよ、と笑いかけてロインは彼女の頭を撫でた。
「それより、だ。腕の怪我は…大丈夫か?」
頷いて、きちんと治療を施された腕を差し出して、アヨルは兄に見せた。細腕に巻かれた包帯に、少しばかり悲しげに瞳を揺らす。だがそれ以上はいつもと変わらず明るい笑顔で彼女の心配を払しょくするように、ロインはぐしゃぐしゃとアヨルの頭髪を搔き乱した。
「まあ、やっちまったことは仕方ねぇしな。すぐに元通り、きれいに治るさ。」
けど無茶は禁物だぞ、と釘を刺す事も忘れない。そうして、ロインは完全に身を起こすと、今度はクレアの姿を探し見た。
差し出されたアミュレットを少女の手元に戻す。
「…なら尚更、君が持っていた方がいい。君も酷い怪我をしているんだ、早く治った方が兄も安心するだろう?…それに君にとって大事なものなら、他人に何と言われようと大事にしなさい。」
彼女に言い聞かせたが、半分自分にも言い聞かせていて。物ではないが、大切な人達が祖国で待っている。身を挺して俺に後を繋いでくれた人がいる。例え罪人だろうと、捕虜であろうと、自分は大切にしたい人なのだ。周りから何と言われようとも。
「…彼の言う通り、それはアヨルが大切にしなきゃ。…代わりに…ではないんだけど、これを貴方に託したい。」
そう言ってクロードから貰った短剣を差し出す。返り血などですでに錆かかっているが、クロードに渡して欲しかった。彼が無事に帰れることを信じんて、彼からあの人に伝えて欲しい。
「…あの人に、これを返して欲しい。それか伝えて欲しい。…いつか必ず、会いに行くと。」
「…分かった。サイルにも、同じことを伝えておく。」
「…あの子のことも、クロードのことも、よろしくね。」
いつ何時彼との別れが来てもいいように託したいものを託した。それからロインを馬に乗せ、アヨルに支えてもらいながらロインを運ぶ。手綱はカイが持ち、誘導する。
こうして戦争は大軍を少数の力で見事押さえ込んだキゾンの勝利で幕を下ろした。
「あの、助けて頂いて本当に有り難うございます。それで…コレ、お母さんが使っていたお守りなんですが、きっと…持っていると怪我が早く良くなるおまじないがあるから。お渡しします。」
そう言って傷のお詫びに再度、アミュレットをカイに差し出す。クレアにも視線を送り、渡すもう一つの理由を打ち明けた。
「…実はさ。兄貴はあんなだから、大事なものなんだけれど持ち辛くて。」
刻まれた紋章を見れば、その理由は一目瞭然だろう。アヨルは母親がこれを手に取る度、苦し気な表情を緩ませていつも自分に「おかげで少し楽になった」と微笑んでくれていたのを知っている。だからきっとこのお守りには傷を癒す効果があるのだ、と。ずっとそう信じてきたから、酷い目に遇わせてしまった命の恩人に、少しでも報いたい。そう願う気持ちも、アヨルには本物だった。
兄貴は、言い伝わったお守りの効果は「迷信だ」と、一切取り合ってはくれなかったけれど。
「大丈夫だよ。彼は悪い人じゃないって、分かっているから。…まあ、彼は私のこと、嫌いになっちゃったかもだけど。」
それから一呼吸置いてカイの方を見つめる。
「…彼は、私を助けてくれた人なの。貴方たちに見逃してもらった後、必死になって国境を越えて。…力尽きて倒れていた私を見つけて、救ってくれた。…私が今生きていられるのは、彼らのおかげなんだ。…だから悪い子じゃないの。…どうか、見逃してあげて。」
「…はぁ……だから、もともと殺すつもりはないって言ってるだろ。」
大きくため息を吐きながら彼女たちに伝える。この場はお互いに見逃す。これ以上長居してこの場を他の誰かに見られてしまったら、彼らが傷ついてしまうかもしれない。そろそろお開きの時間にしなくては。
「少女は馬に乗れるか?俺の馬で兄貴を近くまで運んでやる。…君と俺は徒歩だ。さすがに兄貴が目覚めて反撃されたら困るしな。」
そう言って口笛で馬を呼んだ。
ちなみに上司の総騎士団長と王太子殿下には、包隠さず報告しております。(もちろん一部の貴族や騎士団からも非難はあった)
ことの顛末は以上のように考えております。(&純粋に毒が回った遺体と、首を斬られて毒が回らなかった遺体では雲泥の差があるというのも加えたい)
想像なされてたものより遥かに酷い想定で申し訳なく存じますが、即時判断をしなければならなかった旨、ご理解いただければ幸いです。勿論、クロードが行った行為が“善”だとは思っておりませんが…
「あのぅ…」
ただそれでも兄貴の事は詫びたかったし、悪く思わないで欲しい。そう願って二人に恐る恐る声をかける。
「ごめんなさい。」
何も言えずに、結局頭だけ下げる。二人の顔をまともになんて到底見れない。結果は結果だと割り切る思考があるから、兄貴のようにキゾン兵だからと言って憎む気持ちはない。でも、他人は違うのだ。仕方がなかったんだと、傷つけられて、刃を向けられて、納得する筈がない。
そして短期間とはいえクレアに姉のような親近感を勝手ながら抱いていた。だからクレアには特に兄貴に悪印象を持って欲しくなかった。
「…虫のいい話だけど。兄貴の事、嫌いにならないで…。」
頼りなく、アヨルは消え入りそうな声で呟いた。そして、言い訳するように独り言ちに語り出す。
「…一年位前にはなると思うけれど。一番酷かった戦いに親父は出征してたの。…一番上のお兄ちゃんは後方支援隊で遅れて参加していて、お兄ちゃんが着いた頃にはあちこちに負傷者が出てたんだって。
…親父は、足が折れて立てなかったらしい。でも、突然、「退却せよ!!」って声が奥から響いて…兄貴が言ってた銀髪の人が血だらけで走ってきた。走ってきて、ろくに親父の状態を見ずに、剣を振り下ろした…、て。その時、その人に付いた血が返り血なんだと気が付いた、ってお兄ちゃんは言ってた。その人の後ろから来た人は無くて、濃い霧が雪崩れ込んですぐにその一帯は見えなくなった、て言ってた。
数日経ってから戦場に戻れば、誰一人、生きてる人はいなかった。戦地を遡って起点になるらしい場所の遺体に毒の影響が見られたから、あの霧が毒だったって事が分かったけれど。殆どの遺体は首を剣で刺し斬られてた…って話だったの。」
実際には何一つ、自分は見ていない。アヨルはその事実が口惜しかった。お兄ちゃんが嘘を付いていると思わないけれど、立場が違えば見えてくる景色も違う。きっと、銀髪の人にも何か事情があった筈。
彼のカウントダウンが残り少ない瞬間、私は大きな声で彼に最後になるかもしれない言葉を吐く。
「人を守って死ねるなら、兵士としての本望だ!!」
そして彼は刃先を向けて突進してくる。”クロード、ごめん。”そう心の中で呟いて目を閉じた。それから数秒、待ってみたが痛みも血の流れる感覚もない。恐る恐る目を開けてみると、想定していなかった光景が広がっていた。
「……っ…これで満足か?……少年。」
ロインの刃を受け止めたのはカイだった。クレアを庇い、腕でロインの刃を受け止めていた。深くまで刃が刺さっており、そう簡単に抜け無さそうだった。きっと刃を抜けば大量に血が噴射するだろう。滴り落ちる赤い血がどんどん増えていった。
「…妹の前で人殺しになるな。…ちゃんと、守ってあげられるお兄さんになりなさい。」
そう伝えるとロインの首元を打ち、ロインを気絶させる。クレアは「ロイン!」と声を上げて彼の元へと駆け寄った。気を失っているだけであるのを確認して胸を撫で下ろす。そしてアヨルもこちらへ来るように呼んだ。起きたときに私がいるよりも彼女に居てもらった方が安心するだろうし。
そして私は男性に向き直る。
「ご、ごめんなさい…!すぐに処置しないと…!」
「心配しなくていい。…っ…彼も誰かを傷つけないと、…っ…気が済まなかっただろうしな。」
刃を腕から抜き、必死に抑える。苦しそうな表情に私はすぐに服の袖を切って巻き付け始めた。
ちなみに上司の総騎士団長と王太子殿下には、包隠さず報告しております。(もちろん一部の貴族や騎士団からも非難はあった)
ことの顛末は以上のように考えております。(&純粋に毒が回った遺体と、首を斬られて毒が回らなかった遺体では雲泥の差があるというのも加えたい)
想像なされてたものより遥かに酷い想定で申し訳なく存じますが、即時判断をしなければならなかった旨、ご理解いただければ幸いです。勿論、クロードが行った行為が“善”だとは思っておりませんが…
ちなみに上司の総騎士団長と王太子殿下には、包隠さず報告しております。(もちろん一部の貴族や騎士団からも非難はあった)
ことの顛末は以上のように考えております。(&純粋に毒が回った遺体と、首を斬られて毒が回らなかった遺体では雲泥の差があるというのも加えたい)
想像なされてたものより遥かに酷い想定で申し訳なく存じますが、即時判断をしなければならなかった旨、ご理解いただければ幸いです。勿論、クロードが行った行為が“善”だとは思っておりませんが…
ちなみに上司の総騎士団長と王太子殿下には、包隠さず報告しております。(もちろん一部の貴族や騎士団からも非難はあった)
ことの顛末は以上のように考えております。(&純粋に毒が回った遺体と、首を斬られて毒が回らなかった遺体では雲泥の差があるというのも加えたい)
想像なされてたものより遥かに酷い想定で申し訳なく存じますが、即時判断をしなければならなかった旨、ご理解いただければ幸いです。勿論、クローとが行った行為が“善”だとは思っておりませんが…
「あのぅ…」
ただそれでも兄貴の事は詫びたかったし、悪く思わないで欲しい。そう願って二人に恐る恐る声をかける。
「ごめんなさい。」
何も言えずに、結局頭だけ下げる。二人の顔をまともになんて到底見れない。結果は結果だと割り切る思考があるから、兄貴のようにキゾン兵だからと言って憎む気持ちはない。でも、他人は違うのだ。仕方がなかったんだと、傷つけられて、刃を向けられて、納得する筈がない。
そして短期間とはいえクレアに姉のような親近感を勝手ながら抱いていた。だからクレアには特に兄貴に悪印象を持って欲しくなかった。
「…虫のいい話だけど。兄貴の事、嫌いにならないで…。」
頼りなく、アヨルは消え入りそうな声で呟いた。そして、言い訳するように独り言ちに語り出す。
「…一年位前にはなると思うけれど。一番酷かった戦いに親父は出征してたの。…一番上のお兄ちゃんは後方支援隊で遅れて参加していて、お兄ちゃんが着いた頃にはあちこちに負傷者が出てたんだって。
…親父は、足が折れて立てなかったらしい。でも、突然、「退却せよ!!」って声が奥から響いて…兄貴が言ってた銀髪の人が血だらけで走ってきた。走ってきて、ろくに親父の状態を見ずに、剣を振り下ろした…、て。その時、その人に付いた血が返り血なんだと気が付いた、ってお兄ちゃんは言ってた。その人の後ろから来た人は無くて、濃い霧が雪崩れ込んですぐにその一帯は見えなくなった、て言ってた。
数日経ってから戦場に戻れば、誰一人、生きてる人はいなかった。戦地を遡って起点になるらしい場所の遺体に毒の影響が見られたから、あの霧が毒だったって事が分かったけれど。殆どの遺体は首を剣で刺し斬られてた…って話だったの。」
実際には何一つ、自分は見ていない。アヨルはその事実が口惜しかった。お兄ちゃんが嘘を付いていると思わないけれど、立場が違えば見えてくる景色も違う。きっと、銀髪の人にも何か事情があった筈。
「ごめん、兄貴。約束破って勝手に家に戻って…。でも、その人が助けてくれたのは本当なんだよ。僕ね、生き埋めになっちゃったんだ。」
出来るだけ、明るく大した事じゃないような口ぶりでアヨルは語った。でないと、心配性な兄貴はもっと荒れる。
「その人が屋根の下敷きになった僕を引っ張り出してくれなかったら、今頃親父と母さんの所へ行ってたよ。あ、それに見てよ。木片で血だらけになってた腕も綺麗に治してくれたんだよ? まぁ応急処置ではあるんだけどね。」
あははーと無邪気に笑って見せる。ロインの前に出て、包帯の巻かれた腕を見せびらかすように、アヨルは兄にアピールをした。けれど兄貴の眼はぎらついたまま、アヨルを一瞥し、すぐに元の憎しみを宿した視線をクレアの背後にいる軍人へ向ける。
「クレア、退けよ。でないと殺すぞ。」
低く唸り、全く引く素振りを見せないまま、ロインはナイフを構え直した。切っ先は真っ直ぐ二人に向けられる。一切の聞く耳を持たないロインの態度はクレアにも侮蔑の目を向けていた。
「10秒だけ見逃してやる。10秒だ。それ以上俺の目の前に居続けるなら、テメェぶっ殺すっ!!」
そう強く宣言すると、間髪入れすにカウントを開始する。
------
ロインも、クレア様の 罪の告白=戦争 ということは十分理解してますから。ただ憎しみを昇華させるには持っている感情があまりに大きい。なのでどこかにそれを鉾の先にして向けないと、ロイン自身が持ち堪えられない、といった所です。
カイ様が退けば、ロインは刃を納めますので。でも、戦えばカイ様の方が確実に戦闘技術は上です。
アヨルが長兄から聞いた、例の戦場の話を詳しく聞く、というのもアリです。(ロインは気絶させて)
謝罪をすれば、世間に悪行への贖罪を行ったことになる。許されざる罪を打ち消す事を望むのと同じ。
「今はまだこの命を君に渡すわけにはいかない。だが全ての片が付けば…だから、憎むなら俺だけを憎め。君の父親を殺したのも、殺すと決めたのも俺だ。俺だけにしろ、その憎しみを向けるのは。」
謝罪は贖罪にもなる。
「今はまだこの命を君に渡すわけにはいかない。だが全ての片が付けば…だから、憎むなら俺だけを憎め。君の父親を殺したのも、殺すと決めたのも俺だ。俺だけにしろ、その憎しみを向けるのは。」
「…済まない、…仇を…討たせて、やれなくて…」
「うるせぇ、」
「ごめん、兄貴。約束破って勝手に家に戻って…。でも、その人が助けてくれたのは本当なんだよ。僕ね、生き埋めになっちゃったんだ。」
出来るだけ、明るく大した事じゃないような口ぶりでアヨルは語った。でないと、心配性な兄貴はもっと荒れる。
「その人が屋根の下敷きになった僕を引っ張り出してくれなかったら、今頃親父と母さんの所へ行ってたよ。あ、それに見てよ。木片で血だらけになってた腕も綺麗に治してくれたんだよ? まぁ応急処置ではあるんだけどね。」
あははーと無邪気に笑って見せる。ロインの前に出て、包帯の巻かれた腕を見せびらかすように、アヨルは兄にアピールをした。けれど兄貴の眼はぎらついたまま、アヨルを一瞥し、すぐに元の憎しみを宿した視線をクレアの背後にいる軍人へ向ける。
「クレア、退けよ。でないと殺すぞ。」
低く唸り、全く引く素振りを見せないまま、ロインはナイフを構え直した。切っ先は真っ直ぐ二人に向けられる。一切の聞く耳を持たないロインの態度はクレアにも侮蔑の目を向けていた。
「10秒だけ見逃してやる。10秒だ。それ以上俺の目の前に居続けるなら、テメェぶっ殺すっ!!」
そう激しく宣言すると、間髪入れすにカウントを開始する。
「違う、…あの人がそんなこと、できっこない…っ」
震えた声で彼の無罪を主張した。あの人が無差別に人を殺すわけがない。感情が読みづらくて一見怖そうに見えるけれど、ただ不器用なだけで本当は人思いの優しい人なんだ。私はちゃんと知っている。この目で見てきたのだから。過去の事実は私には分からないし、ロインが言っていることが真実だろうと、私は私の目で見たことを信じるしかできなかった。
「君は下がれ。あいつの標的は俺だ、…ここで君が犠牲になってしまえば、クロード様に合わせる顔がない」
「…!!…………、…そっか…あの人は、…クロードは、生きているのね。」
少しだけ振り向き少し潤んだ瞳でカイに微笑みかけた。その言葉がどれほど嬉しいことか。身体を張って私を守ってくれた彼が、私のせいで処分されたと思っていた彼が生きているなんて。彼の口ぶりからきっと生きているんだと理解した。尚更、あの人の大事な仲間の彼を守らなくては。
「ロイン、…私だって非道な人間だよ。この国のために、他国の軍人を殺した。”苦しんで死にたくない”と懇願されて仲間や市民を殺したことだってある。…私たちが”戦い”を選ばなければ、失わずに済んだ命は山ほどある。…過去は変えられないけれど、これ以上同じ過ちは繰り返しちゃいけないのよ。敵も、…私たちも。」
奪う選択ではなく助け合う選択肢を。例えこの行動が”非道だ”と言われても、人を殺すこと以上に非道な行いはない。人を守ることを”非道”と呼んだら、それは大きな間違いだ。
「アヨル、…この人に助けてもらったことは本当?」
この事実は彼から聞くよりもアヨルの口からちゃんと伝えてもらった方がいい。私も、彼にはサイルを助けてくれた借りがある。クロードが生きているということはサイルもきっと生きている。そう信じてアヨルの言葉を待った。
「やめてよ!!バカ兄貴っ!!」
寸での所でアヨルは兄の手を払い飛ばした。不意の行動によろめくも、ロインは軍人の手からアヨルの腕を奪い返し、自分の元へ引き寄せる。そして庇う様にアヨルの体を自分の背兄貴と隠した。
「この人は僕のことを助けてくれたのっ! 勘違いしないでっ!!」
必死で兄の背中を叩いて抗議する。傷の手当てをしている間に向けられた彼の心配そうな眼差し、丁寧な傷口の処置、何より自分に向けられた真摯な声が、ちゃんと人間として相対してくれているとすぐにわかる。そんな人が悪い人間である筈がない。
敵意剥き出しで、憎悪に染まった双眸を命の恩人に向ける兄貴に、アヨルは切羽詰まった声で訴えた。
「騙されんな!!こいつらはっ…キゾンの軍人は皆鬼だ!!人でなしなんだよ!!
親父がこいつらに殺されたのを忘れたのか?!! 動けねぇ親父の首を斬ってとどめを刺したの忘れたかっ?!!」
アヨルに言い聞かすというより、抑え切れない憎しみを吐露するようにロインは怒号をぶちまけた。親父の最期を見てきた長兄から直接聞いたのだ。あの悲惨な戦場の、敵将が行った仕打ちを。毒靄で全てが飲まれてしまってもその前に起きた許せない行為を明らかにしたい。正義感などではなく、ロインの心にあるのは私情の憎悪だけだった。全ての人間にその罪を明らかにし、そいつの名誉も尊厳も完膚なきまでに叩き潰したい。そんな激しい怒りが犇めいている。
「てめえもっ!!あの蒼の銀髪野郎の手下だろう!!生き残ってる連中を…っ!!無抵抗の奴らを殺して回る外道に情けは無ぇっ!!!!」
兄の言葉に思わず、無意識にアヨルは首筋を─頸動脈を庇う様に手で押さえた。信じてた筈のカイへの視線が僅かに揺らぐ。
「で…でも、兄貴…」
「そういやそいつ…銀髪野郎は仲間の大将も殺して回っていたみたいだな? 毒靄が回れば自分の非道な罪が隠せるとでも思ったか? 自分だけ生き残れば後は“死人に口無し”なんて考えてたんじゃねえよな?」
目の前で転んだ彼女のもとへ向かい、血が流れている腕を掴む。細かい木くずが傷口についている。すぐに備えていた水筒を取り出し、「染みるが我慢してくれ」と言葉を添えてから傷口に水を掛ける。それからなるべく清潔な布を取り出し傷口から丁寧に木くずを取り除く。ある程度治療が終わったところで布をそのまま手際よく巻き付けた。
「俺は君を殺さない。だから落ち着いてくれ。傷は応急処置はしたから、あとはちゃんと救護所へ行って手当てしてもらいなさい。それから…これは大事なものだろう。」
彼女の目を見ながらちゃんと伝える。そして先ほど投げ捨てたアミュレットを手渡す。彼女が大事そうに握り締めていたことを見ている。この紋様は我らキゾン国のものだが、なぜベレアン国の少女が持っているのか、気になってしまったが詮索はよそう。
「救護所の近くまで俺が付き添おう。だから__」
「アヨル!!」
その時、私は漸くアヨルの姿を見つけることができた。きっと自分の家の方に向かったのだろうという予想は的中した。しかし胸を撫で下ろせる状況ではなくて、私はすぐにクロードから貰った短剣を取り出す。キゾンの軍服を着た男性がアヨルの腕を掴んでいるのだ。連れ去ろうとしているか、殺そうとしているか。そのどちらかだと判断したからだ。
「その子から手を離しなさい!!…?!」
「!!…き、君は…!」
その男性は私とクロードを捕まえようと追ってきた人物で、サイルとクロードに助けられたものの私を逃がす判断を下したキゾン国の騎士だった。忘れるわけがない、それはどうやらお互い様のようだった。振り上げた短剣を、私は振り下ろすことができなかった。
「返します!! 返しますから!!助けて!!」
地面に投げ出されたアミュレットは、そのままカイの足元まで転がった。その動きとは逆にアヨルは後退り、体を反転させて立ち上がろうとした。その時、折れた木材の断片に腕を引っ掛け、手首から肘へ向けて皮膚が切り裂ける。血がアヨルの腕を瞬く間に赤く染めた。
「……ぃっっ!!!」
動けなくなる程の激痛がアヨルを襲う。思った以上に深く裂けた腕が、アヨルから血の気を奪う。傷口を抱えてアヨルはどうにもならずに地面へ転がった。
もう…もう、ダメだ。逃げられないし、助からない。自分の境遇を嘆いてすぐ上のバカ兄貴の顔や一番上のお兄ちゃんのが顔が目に浮かぶ。助けて欲しい。けど。それで兄貴達が傷を負うなら…最悪、死んでしまうかもしれないなら。
自分が酷い目に遭う方がまだ、いい。誰も(知り合いの)傷つく姿なんて見たくない、から。
目の前が滲んでいく。泣きながら、そうしてアヨルは抵抗するのをやめた。
------
(アヨルの)地面へ転がる→コケて立ち上がれない状況。
傷口は深いけれど、範囲はカイ様の掌に収まる長さです。片手で十分止血可能。
木片は大きめのが刺さってるかもしれませんが、複雑に傷に入り込むまでには至っていません。指で十分抜けます。
兄貴のロインはクレア様の後を追っかけて遭遇するつもりでいます。(そして現場←アヨルのケガを見て、カイ様に食って掛かる予定。どんな対処をしても兄ロインは、キゾン兵だというだけで食って掛かりますので)
「返します!! 返しますから!!助けて!!」
地面に投げ出されたアミュレットは、そのままカイの足元まで転がった。その動きとは逆にアヨルは後退り、体を反転させて立ち上がろうとした。その時、折れた木材の断片に腕を引っ掛け、手首から肘へ向けて皮膚が切り裂ける。血がアヨルの腕を瞬く間に赤く染めた。
「……ぃっっ!!!」
動けなくなる程の激痛がアヨルを襲う。思った以上に深く裂けた腕が、アヨルから血の気を奪う。傷口を抱えてアヨルはどうにもならずに地面へ転がった。
もう…もう、ダメだ。逃げられないし、助からない。自分の境遇を嘆いてすぐ上のバカ兄貴の顔や一番上のお兄ちゃんのが顔が目に浮かぶ。助けて欲しい。けど。それで兄貴達が傷を負うなら…最悪、死んでしまうかもしれないなら。
自分が酷い目に遭う方がまだ、いい。誰も(知り合いの)傷つく姿なんて見たくない、から。
目の前が滲んでいく。泣きながら、そうしてアヨルは抵抗するのをやめた。
------
(アヨルの)地面へ転がる→コケて立ち上がれない状況。
傷口は深いけれど、範囲はカイ様の掌に収まる長さです。片手で十分止血可能。
木片は大きめのが刺さってるかもしれませんが、複雑に傷に入り込むまでには至っていません。指で十分抜けます。
兄貴のロインはクレア様の後を追っかけて遭遇するつもりでいます。(そして現場←アヨルのケガを見て、カイ様に食って掛かる予定。どんな対処をしても兄ロインは、キゾン兵だというだけで食って掛かりますので)
魔物を討伐後、ロインから声を掛けられる。焦った表情の彼とは裏腹に彼女の居場所を知っているつもりの私は冷静だった。彼の探す妹の場所に顔を向けたとき、言葉を失った。いるはずの彼女の姿がなかったからだ。すぐ近くには小さな女の子の姿が見えた。「アヨル、ここに居たよね?」と声を掛けると「アヨルちゃんならあっちに行っちゃったよ」と方角を指さした。その指先を辿ると町があった戦火の上がる景色があっった。
「まさ…か………」
何で?何でよりによって戻ってしまったの?そんなことが脳裏に浮かびながら、無意識にその方角へ走り出していった。
______________________
少女は俺を見るなり怯えたように崩れる。見ればベレアンの住民のようだった。何も考えなしに手を差し伸べたせいで、敵も味方も忘れていた。
しかし俺には彼女を命を奪うつもりはなかった。それならこんな風に手を差し伸べはしない。けれど、これは演技かもしれない。俺の隙をついて殺そうとする…ベレアンはそういう人間だと小さい頃から叩き込まれていた。小賢しく非道な民族の集団、殺すに値する人間どもだと。今目の前で怯える彼女も…もしかしたら。…こんな時、クロード様ならどうするんだろう。あの人は、あの人なら。
俺は手に持っていた武器から手を離した。そして彼女に両掌を見せるように手を広げる。そして優しい声色で声を掛けた。
「…武器、怖かったね。脅かしちゃってごめんね。…怪我は、大丈夫かい?……もしかして、それを守ろうとしていたかな?」
少女の手元にあるアミュレットを見つめながら問いかけた。
逆光で顔や姿はよくわからない。でも兵士らしい感じはした。きっと、警備隊の人がたまたま通りかかって見つけてくれたんだろう。そう自分に納得させて、アヨルは自分よりも大きいその手を握った。
引き摺り出されて無事抜け出せたアヨルにの目に映ったのは、違う現実だった。
「……ィッ……ャ…あぁっ…!??」
自分でも驚く程強く、悲鳴を上げて身体を強張らせる。咄嗟に浮かんだのは、殺されるの一言だ。
「ご…ごめんなさい! 殺さないで!…ください、お願いです。お願い…します…。」
目を逸らすのでさえ、怖くて出来ない。その場に崩れ落ちて、声を震わせながらアヨルは必死で嘆願した。
その頃アヨルの姿が見えない事にロインは気づいた。代わりにクレアが視界に入ってくる。ちょうど魔物を討伐し終えて皆が喜びに沸いている状況だった。クレアも随分活躍したらしく、村の仲間達に囲まれて親しく打ち解けあっている。受け入れてもらえたんだな、と本来なら喜ぶ所なんだが。
「クレア。アヨルを見かけなかったか?」
妹が心配で、表情に出しはしないものの、焦る気持ちのままクレアに声をかける。
------
ロインをクレア様に合流させますので、良ければ連れてってやってください。
アヨルは単にパニックを起こしているだけなので。落ち着けばちゃんと危険がないことや、カイ様の優しさに気付けるコです。+手には例のお守り(インペリアルエッグ型アミュレット)握り締めてますので。会話の取っ掛かりにして頂ければ良いかな…と。
新トピ立ち上げ、ありがとうございます。
微かに聞こえた声に俺は馬を止めた。
サイルと別れてから休む間もなく馬を走らせ、ベハレスコ領までやってきた。サイルの功績通り、国境警備塔が崩れ廃屋と化しそうだった。そしてその奥にはベレアンの中央部が見える。すでに先行部隊が突破したようで中央部に聳えるベレアン帝国の王城あたりから火の手が上がっていた。
仲間はうまくやってくれている。ここに加勢が来なければ、我々の勝利だ。そのためにも後続部隊は中央部の加勢に向かおうとするベレアン兵士たちをここで食い止める必要がある。俺はそのバックアップに回るのが最適だと判断した。中はクロード様と同じ騎士団長らがやってくれる、そう信じている。
そんな時に聞こえてきたのがその声だった。敵をはねのけ、中央部につながる通路を塞ぐ。聞き間違えかと思ったが、何度も何度も聞こえる声に俺の意識は奪われた。人手も足りている、周りを見て判断すると俺はその声の主を辿る様に足を進めた。やがて声の近くまでやってくる。辺り一面、家屋が水に浸り、自分の目線よりも下に屋根がある。倒壊している家屋の中から一体何が…と思ったその時、もう一度「助けて」と聞こえた。真横にある倒壊した家屋からだ。まさか、…そう思い、しゃがんで屋根の下を覗き込む。そこには少女の姿があったのだ。声の主はこの子だ。
「待ってろ!!」
声を上げ、彼女と目が合う。彼女の意識ははっきりしている。助けを呼べているくらいだからだ。この屋根が邪魔しているのだろう。屋根の構造を一つ一つどかしていく。そしててこの原理を利用し、屋根と家屋の間に隙間を作る。ここからなら彼女のところへ向かえそうだ。隙間から彼女の元へ向かい、手を伸ばす。
「…大丈夫、こちらへおいで。」
先ほどとは違う声色で優しく言葉を掛ける。この時の俺は、敵も味方も頭になかった。
逆光で顔や姿はよくわからない。でも兵士らしい感じはした。きっと、警備隊の人がたまたま通りかかって見つけてくれたんだろう。そう自分に納得させて、アヨルは自分よりも大きいその手を握った。
引き摺り出されて無事抜け出せたアヨルにの目に映ったのは、違う現実だった。
「……ィッ……ャ…あぁっ…!??」
自分でも驚く程強く、悲鳴を上げて身体を強張らせる。咄嗟に浮かんだのは、殺されるの一言だ。
「ご…ごめんなさい! 殺さないで!…ください、お願いです。お願い…します…。」
目を逸らすのでさえ、怖くて出来ない。その場に崩れ落ちて、声を震わせながらアヨルは必死で嘆願した。
その頃アヨルの姿が見えない事にロインは気づいた。代わりにクレアが視界に入ってくる。ちょうど魔物を討伐し終えて皆が喜びに沸いている状況だった。クレアも随分活躍したらしく、村の仲間達に囲まれて親しく打ち解けあっている。受け入れてもらえたんだな、と本来なら喜ぶ所なんだが。
「クレア。アヨルを見かけなかったか?」
妹が心配で、表情に出しはしないものの、焦る気持ちのままクレアに声をかける。
------
ロインをクレア様に合流させますので、良ければ連れてってやってください。
アヨルは単にパニックを起こしているだけなので。落ち着けばちゃんと危険がないことや、カイ様の優しさに気付けるコです。+手には例のお守り(インペリアルエッグ型アミュレット)握り締めてますので。会話の取っ掛かりにして頂ければ良いかな…と。
逆光で顔や姿はよくわからない。でも兵士らしい感じはした。きっと、警備隊の人がたまたま通りかかって見つけてくれたんだろう。そう自分に納得させて、アヨルは自分よりも大きいその手を握った。
引き摺り出されて無事抜け出せたアヨルにの目に映ったのは、違う現実だった。
「……ィッ……ャ…あぁっ…!??」
一応家の倒壊状態とアヨルの位置、記載しておきます。その方がカイ様も動きやすいでしょうから。
倒壊時:
家全体が均等に斜めに傾き、屋根の重みで圧し潰れた形。アヨルが到着した時点で本当は少しずつ傾いていて、いつ崩れ落ちてもおかしくない状況にあった。
アヨルの位置:
おおよそ家の中心。箱は備え付けの家具箪笥(のようなもの)の仕掛け鍵付きの引き出し奥に入っている。万が一流されても水に浮くような設計。鍵は存在しないものの、ちょっとした開けるコツがいるような仕組み。
幸い倒壊した際、箪笥がアヨルの上に覆い被さって、空いた中の空間にすっぽりはまってしまった。足元の床を除き、周囲は頑丈に封じられている。緩んだ床板の間からどうにか外に繋がっている。
怪我はほぼ無いものの、正座して上体を前倒しにした亀の子(土下座?)姿勢の為、長時間に渡るとエコノミー症候群の危険性が増す。
・・・という感じになるかと思います。
とはいえ本当にざっくりと「瓦礫の中から」でも構わないですよ。
そこいらじゅう水浸しの中、自分の家に辿り着いたアヨルは、少し傾いた扉を掻い潜り、中へと入る。家財の殆どを上げ舟に避難させていたものの、肝心のお守りは兄貴の手前、家に残したままだ。部屋の中は浸水のせいで物が散乱していたが、流されずに残っていた箱の奥の方で大事に包まれて、幸いにもそう汚れることなく無事に存在していた。アヨルはそっと箱から取り出し、大切に掲げて壊れていないかもう一度確かめる。
「よかった。大丈夫…みたい。」
安堵した所為か、その場に思わずへたり込む。同時に涙まで溢れてきた。どれだけ周りに「大丈夫」と声を掛けられていても、ずっと怖かった気持ちは変わらない。でも、もう洪水も治まったし、きっと敵の兵隊さんも魔物もみんな、兄貴たちや警備隊の人達が退けてくれる。だって、皆強いんだし。
洪水にも耐え、無事だったお守りを見ていたら、アヨルは何だかそう思えてきたのだ。
「…と、戻らなきゃ。」
こうしちゃ居れないとアヨルは立ち上がる。皆に自分が居なくなったと思われる前に戻らなきゃ。余計な心配はかけたくない。そう思って扉のある方向へ歩み寄ろうと踏み出したその時、家全体がミシリと大きく音を立てた。
え、と何が起きたか判断する前に、轟音が起き、アヨルはそのまま家屋に飲まれた。突然の出来事に、状況を把握出来る位落ち着けたのは、音が完全に消えて暫く経ってからた。数分?いや、数十分? でもそれ以上時間が経っている気さえする。
「だ…だれかぁ…」
恐々声を出して助けを求める。けれど気づく人なんているのだろうか。誰もアヨルがここに戻ってきている事なんて知らないし。大声を出してまた崩れでもしたら怖いし。
幸いだったのは、天井と壁に挟まれた隙間に、偶然転がり込んでいた事だろう。でも空間が狭すぎて、身動きが取れない。
「誰か…誰か…助けてぇ…」
今にも消え入りそうな声で、アヨルは震えながら声を上げた。
その時、アヨルの背中方向から人々の悲鳴が聞こえる。何があったのだろかと顔を上げると、キゾン国の襲来に合わせて魔物が近づいてきてしまったようだ。ここは人間だけが敵ではない。
「…アヨル、街のみんなと一緒に隠れてて。…大丈夫。すぐ、戻ってくるから。」
そう言って魔物の方へと向かっていく。怖くないわけではないが、それ以上に守らなきゃという感情が強かった。身体は逃げるよりも戦う方へ意欲が増していく。幸いにも国外遠征の経験からか、魔物への対処法も理解していた。同種を倒したことがある。先ほど仕舞っていた短刀を取り出し、怯える住民の間を颯爽と駆けながら魔物に向かって刃を立てた。
______________________________
短くてすみません、、、この間にアヨル様がお家へ向かっていただければと思います。
短刀に刻まれた紋様は、どこかで見た覚えがある。すぐにアヨルはそれが何なのか分かった。そうだ、家に置いてあるお守りと一緒だ。
そのお守りは、母親と一緒に通りがかった見知らぬ騎士達に助けてもらった際、彼らから頂いた物だ。兄貴は…親父が死んだ時に「そんなもの捨ててしまえっ!!」って、怒鳴りつけたけど。アヨルにとっては今じゃ数少ない母の思い出の品だ。傷で身体が苦しい時、それを撫でてよく「気持ちが落ち着く」と言って笑ってくれてたったけ。
そんなことが矢次早に思い出される。不安や恐怖で強張っていたアヨルの心に、少しずつ勇気が沸き上がる。そうだよ。しっかりしなきゃ、私。兄貴達だって頑張ってるんだから。
「あの…有難う。勇気、出てきたよ。」
涙目だけれど、少しはにかみながらアヨルはクレアに向けて笑顔を見せた。
ロインと分担し、避難できた住民たちの安否確認を行っていたところ、小さく固まるアヨルの姿が見えた。怯えて縮こまる姿に無意識に彼女の方へ足を向けていた。そして目の前の光景を隠す様に包み込んだ。
「大丈夫。…大丈夫だよ、アヨル。」
そして少し離れると彼女の肩を掴みながらしゃがみ込み彼女の視線に合わせる。
「私の目を見て?……そう。……そう、大丈夫。…私が必ず貴方を守るから。…そうだ!これ持っててごらん?守護の女神さまがね、お力を貸してくれるよ。」
そう言ってクロードからもらった短刀を渡す。そしてアヨルが握っている手と短刀を覆うように手を重ね、一緒に祈る様に目を瞑った。
アヨルは初めて目にする戦争の光景に、何も考えられなくなった。戦争が現実に起こってる事は頭では理解していたのだが。
愕然とする気持ちに思考が追い付かない。大変だった現実は、今までだってずっと続いてきた。母親が大怪我が元で亡くなった時も、徴兵で一番上の兄と父親が出ていった時も、その父親が亡くなったと知らされた時も。何時だって、心に衝撃はあった。その度に村の仲間や兄貴に助けられてきた。お互いに人同士、助け合って生きてきたのだから。
それでもこんな光景は見た事が無い。人が人を殺し合う光景に恐怖し、足がすくむ。
警備隊の戦闘訓練や、兄達の野獣退治も、側で見た事は何度だってある。けれど…全然違う。こんなの見ちゃいけない。
耐え切れずに、アヨルは強く目を瞑った。頭を抱えるみたいに耳をも塞ぐ。パニックを起こさぬよう自分の殻に閉じ籠って、嵐が過ぎるのを待つみたいにその場に蹲った。
けれど。理解している。こんなことをしてる場合じゃない、ってことを。理解しているのに、体が、心が、動けない。
お兄…ちゃん…。助けて、と心の中でアヨルは叫んだ。
------
この後、予定通りアヨルにお守りを取りに家へ向かわせますが。その前にクレア様に、アヨルを抱き締めるなりなんなりして、アヨルを安心させてやってください。(兄のロインは色々事後確認に奔走してます。ので戻れずです)
アヨルにとって、天災で簡単に人が死ぬような環境で生きてきたので、敵(=人間)と味方(=人間)が殺しあう現実は理解できない…といった感じにしてみました。
アヨルは初めて目にする戦争の光景に、何も考えられなくなった。戦争が現実に起こってる事は頭では理解していたのだが。
愕然とする気持ちに思考が追い付かない。大変だった現実は、今までだってずっと続いてきた。母親が大怪我が元で亡くなった時も、徴兵で一番上の兄と父親が出ていった時も、その父親が亡くなったと知らされた時も。何時だって、心に衝撃はあった。その度に村の仲間や兄貴に助けられてきた。お互いに人同士、助け合って生きてきたのだから。
それでもこんな光景は見た事が無い。人が人を殺し合う光景に恐怖し、足がすくむ。
警備隊の戦闘訓練や、兄達の野獣退治も、側で見た事は何度だってある。けれど…全然違う。こんなの見ちゃいけない。
耐え切れずに、アヨルは強く目を瞑った。頭を抱えるみたいに耳をも塞ぐ。パニックを起こさぬよう自分の殻に閉じ籠って、嵐が過ぎるのを待つみたいにその場に蹲った。
けれど。理解している。こんなことをしてる場合じゃない、ってことを。理解しているのに、体が、心が、動けない。
お兄…ちゃん…。助けて、と心の中でアヨルは叫んだ
「…大丈夫だよ。私たちも行こう。」
________________________
それから程なく、国境付近の見晴らし台から監視していた兵士が何かを見つけた。動く何かを見つけた兵士は双眼鏡を使って確認する。見えたのは大量の水の流れ、遮るものを全て飲み込みながらこちらへ向かってきていた。
「水だ!!大量の水が押し寄せてきた…!!」
警報を鳴らしながら高台へ逃げるように警告が響き渡る。見晴台にできる限りの人数が乗り込む。溢れた兵士たちは近くの高台を目指し馬を走らせ逃げようとするが、濁流の速さには勝てなかった。仲間が水に飲まれていくのを見下ろす。マーズレンもその一人だった。偶然見晴台の監視役と交代していた彼は運よく難を逃れていた。しかし、敵に撃たれる仲間を見たときと同じほど目を背けたくなる光景が広がっていた。
__________________________
「本当に………っ」
その光景を私は避難場所から見ていた。しかし同じように避難住民たちもその光景に息を呑む。自分達が暮らしていた居住地を飲み込む大量の水に言葉を失っているようだった。そして水の勢いが収まったその頃合い、キゾン国の騎士たちが攻め入る様子を目にしてしまった。
唯一、そんな疎外感を打ち破るような声で近付いてきたのは、ロインの妹アヨルだ。
「いたいたーっ!! 大丈夫なのっ?! 出歩いちゃ身体に障るでしょ!?」
息急ききってクレアの元へ遠くから駆け寄ってくる。
「帰ってみたら居ないんだもんっ。心配したよー、ホント。」
屈託無く笑うアヨルは、そう言ってクレアと腕を組み、懐いてくる。そのすぐ後にロインが建物から外へ出てきた。いつもと変わらず飄々と笑顔を見せてクレアに声をかける。
「よお。待たせたな。てか、アヨル。お前何で此処にいる?」
呆れた様子で騒がしい妹に茶々を入れ、それまでの淀んだ空気を吹き飛ばした。クレアの肩を軽く叩き、一先ず決まった事だけ報告する。
「敵に穀物庫を狙われると危ない…という理由で移動させる話になった。キゾン軍が襲ってくるっていう噂を盾にできれば恩の字ってトコだな。」
忙しくなるぞー、と楽しげにロインは笑う。
他の皆は個々に各々の長の元へ別れると、ロインの仲間達も彼の元へ集まってきた。
「基本は分散させて置く、って事になっているから。俺達は他の村連中と荷運びだ。」
頼んだぜ。と仲間の肩に手を置き、発破を掛けていく。
「クレアは…そうだな。取り敢えず、アヨルにくっ付いて回ってくれ。」
内容はアヨルに聞けばいいから、とロイン達は慌ただしくその場を去っていった。
------
特にこの後の事は考えておりませんので。“準備がすべて整った”という形でロルを先へ飛ばしても、“洪水のちキゾン兵の奇襲が始まった”まで進んでいただいても構いません。
クレア様のやりたい事があれば、それに応じてこちらも動きますので。遠慮なく申してください。
唯一、そんな疎外感を打ち破るような声で近付いてきたのは、ロインの妹アヨルだ。
「いたいたーっ!! 大丈夫なのっ?! 出歩いちゃ身体に障るでしょ!?」
息急ききってクレアの元へ遠くから駆け寄ってくる。
「帰ってみたら居ないんだもんっ。心配したよー、ホント。」
屈託無く笑うアヨルは、そう言ってクレアと腕を組み、懐いてくる。そのすぐ後にロインが建物から外へ出てきた。いつもと変わらず飄々と笑顔を見せてクレアに声をかける。
「よお。待たせたな。てか、アヨル。お前何で此処にいる?」
呆れた様子で騒がしい妹に茶々を入れ、それまでの淀んだ空気を吹き飛ばした。クレアの肩を軽く叩き、一先ず決まった事だけ報告する。
「敵に穀物庫を狙われると危ない…という理由で移動させる話になった。キゾン軍が襲ってくるっていう噂を盾にできれば恩の字ってトコだな。」
忙しくなるぞー、と楽しげにロインは笑う。
他の皆は個々に各々の長の元へ別れると、ロインの仲間達も彼の元へ集まってきた。
「基本は分散させて置く、って事になっているから。俺達は他の村連中と荷運びだ。」
頼んだぜ。と仲間の肩に手を置き、発破を掛けていく。
唯一、そんな疎外感を打ち破るような声で近付いてきたのは、ロインの妹アヨルだ。
「いたいたーっ!! 大丈夫なのっ?! 出歩いちゃ身体に障るでしょ!?」
息急ききってクレアの元へ遠くから駆け寄ってくる。
「帰ってみたら居ないんだもんっ。心配したよー、ホント。」
屈託無く笑うアヨルは、そう言ってクレアと腕を組み、懐いてくる。そのすぐ後にロインが建物から外へ出てきた。いつもと変わらず飄々と笑顔を見せてクレアに声をかける。
「よお。待たせたな。てか、アヨル。お前何で此処にいる?」
呆れた様子で騒がしい妹に茶々を入れ、それまでの淀んだ空気を吹き飛ばした。クレアの肩を軽く叩き、一先ず決まった事だけ報告する。
「敵に穀物庫を狙われると危ない…という理由で移動させる話になった。キゾン軍が襲ってくるっていう噂を盾にできれば恩の字ってトコだな。」
忙しくなるぞー、と楽しげにロインは笑う。
他の皆は個々に各々の長の元へ別れると、ロインの仲間達も集まってきた。
「基本は分散させて置く、って事になっているから。俺達は他の村連中と荷運びだ。」
頼んだぜ。と仲間の
外で待っている間、中でどんなことが話し合われているのか気になった。これで私はやはり信用ならないと避難を取りやめることになったら。もし、キゾンが洪水を起こしてしまったら。…もし洪水が起こらなかったら。いろんな考えが頭の中に一気に流れてくる。その考えが私に不安と恐怖を与えた。
その時、懐から短刀が落ちる。クロードからもらったものだ。すでに錆が始まっている。もう使い物にならないだろうが、手放すことができなくてすぐに拾い上げた。
(…大丈夫、…大丈夫。)
短刀を握り締めてそう何度も心の中で唱える。ちゃんと誓ったじゃないか、弱気にならないって。落ち着きを取り戻すと短刀を懐に戻し、ロインの帰りを待った。
____________________
こんな感じで短いですが止めますね。
ロイン様のお帰りをお待ちしております。
釘を刺すように嗜めてくる彼に、ロインは余裕のある顔情で躓く事なく切り返す。
「別に全てを鵜呑みにしなくても、洪水の件は十分考えられるじゃないですか。わざわざ『人工的に起こる』って言っているんだ。俺等を全滅させるつもりなら、言う必要もないでしょう?」
首を竦め、彼はお手上げといわんばかりに溜息を吐いた。
「お前…どんどん親父に似てくるな。」
「そうっすか?」
イケしゃあしゃあと、笑い返すロインに旧友の面影を見る彼は、漸くその顔に笑みを零した。
------
お待たせ致しました。一難去ってまた一難中です。(なろうの原稿整理やらなきゃならなくなりました。)
書き切れなかったので、ロインと村長の会話の続き…こちらに記載しておきます。
まあそりゃあ彼女にも、彼女の事情があるだろう。無い者があんな所でぶっ倒れてたりしないからな。
程なくエールボルド村の中でもしっかりした大き目の家に到着した。入口の周辺には幾人かが立ち話をしている。その中にはリヴィエ村の副村長もおり、ロインはその会話に入っている相棒に声をかける
「よぉ。」
「ああ、ロインか。どうだった?」
「まあまあ。首尾は上々、ってトコだな。」
リヴィエの副村長にも軽く会釈し、ロインはクレアの背中を押して、家の中へと入っていった。ほぼ集会所となっている一階の広間に踏み入り、上座でどっしりと構えている御人の元へ歩み寄る。クレアの姿を見た他の者達は、気を利かしてか部屋から退出した
クレアと村長、合わせて三人きりになったところで、ロインは漸く口を開いた
「お久しぶりです。村長。」
「うむ。」
じろりと目がクレアを捉えた。顔貌からして気難しげな表情がクレアへと向けられる。ロインは顔合わせの済んだクレアに外に出て待っているよう促し、改めて自分は村長と向き合った
「…親父さんの葬式以来か。」
ハハッと軽く笑い流し、ロインは改まった格好を崩して、楽な姿勢で座った
「彼女は間違い無く、中央軍部に居ましたよ。ベレアンの人間ですね。」
「だが、それだけで信用しろというのは無理があるな。」
「じゃあ、一先ず俺の見解を聞いてくれますか。」
そう言うと、彼に更に顔を近づける。あまり周囲には話が漏れないよう気を付けながら、そしてロインは話し出した
「まず、彼女の同期のヤツが隊の中に居ました。そいつの話では3ヶ月間行方不明だったそうです。因みに彼女は自身の怪我を落馬のせいにしてましたが、十中八九殴られたものだと思いますね。俺は。」
余計に顔を顰める彼に、ロインは思わず笑みを零した
「傷の確認はアヨルがしてるんですよ? 顔の傷だけじゃない。全身のやられ方がそうだってね。それに倒れていた場所は不干渉の湿原域だ。あそこはフーゴンからも山越えの遠方からも、そしてキゾンからも人が流入できる。」
まあ最も、野獣や魔獣と対戦する危険な土地柄なんで、余程の事がない限り逃げ込む馬鹿はいない
「俺は間違い無くキゾン王国から逃げてきたと見てますよ。」
まあそりゃあ彼女にも、彼女の事情があるだろう。無い者があんな所でぶっ倒れてたりしないからな。
程なくエールボルド村の中でもしっかりした大き目の家に到着した。入口の周辺には幾人かが立ち話をしている。その中にはリヴィエ村の副村長もおり、ロインはその会話に入っている相棒に声をかける。
「よぉ。」
「ああ、ロインか。どうだった?」
「まあまあ。首尾は上々、ってトコだな。」
リヴィエの副村長にも軽く会釈し、ロインはクレアの背中を押して、家の中へと入っていった。ほぼ集会所となっている一階の広間に踏み入り、上座でどっしりと構えている御人の元へ歩み寄る。クレアの姿を見た他の者達は、気を利かしてか部屋から退出した。
クレアと村長、合わせて三人きりになったところで、ロインは漸く口を開いた。
「お久しぶりです。村長。」
「うむ。」
じろりと目がクレアを捉えた。顔貌からして気難しげな表情がクレアへと向けられる。ロインは顔合わせの済んだクレアに外に出て待っているよう促し、改めて自分は村長と向き合った。
「…親父さんの葬式以来か。」
ハハッと軽く笑い流し、ロインは改まった格好を崩して、楽な姿勢で座った。
「彼女は間違い無く、中央軍部に居ましたよ。ベレアンの人間ですね。」
「だが、それだけで信用しろというのは無理があるな。」
「じゃあ、一先ず俺の見解を聞いてくれますか。」
そう言うと、彼に更に顔を近づける。あまり周囲には話が漏れないよう気を付けながら、そしてロインは話し出した。
「まず、彼女の同期のヤツが隊の中に居ました。そいつの話では3ヶ月間行方不明だったそうです。因みに彼女は自身の怪我を落馬のせいにしてましたが、十中八九殴られたものだと思いますね。俺は。」
そんな折、一番聞かれなくなかった言葉を彼に投げかけられる。心臓をぐっと掴まれたように目を見開いた。彼らはキゾンの隊服であることを知っていたのか。それなのに彼らは私を始末することなく、生かし、私の言葉を聞き入れて行動してくれたのか。何か罠にはめられているのか、いないのか。
「………ごめん。」
私はその場に立ち止まり、そう言葉を発した。彼は不思議そうにこちらを振り向く。
その瞳をしっかり見ながら、言葉を続けた。
「今は、…今は言えない。…でも避難が終わったら、…貴方も私も無事に生きていられたら。その時にちゃんと話すよ。」
そう言葉を伝えると再び歩き始める。
それから少しだけ顔を微笑ませた。
「そのためにも先を急がなくちゃね。」
軽く肩を叩き、相手のマーズレンにも聞こえるような発声で、クレアに耳打ちをする。
「そろそろ村長の所に挨拶しに行かないと。世話役の力添えが無いと、故郷まで帰られるの苦労しますよ。」
そう言い、目配せで合図をクレアに送る。引き際だと理解してくれると助かるんだが。
エールボルド村長がこの辺り一帯の代表(世話役)を務めている事は周知の事実だ。軍部だって知っている。まあそんなことは(軍部には)重要視もしてないだろうが。自衛団設営の件でも、先々代の村長がベハレスコ市長と中央部に掛け合い、奔走してくれたお陰で設立できたと云われている。
ロインはクレアの腕を引き寄せ、軽くマーズレン他警備隊員達に会釈した。そうして向きを変えてクレアを元来た道へと引き返させる。背中を押すように歩き、彼らへ声が届かない位置まで促すと、漸く手を下ろしてロインはクレアと並んだまま彼女に話しかけた。
「色々大変だったんだな。アンタ。」
親しみを込め、ねぎらう様に優しく声をかける。そして続けざまに本題をぶつけに、ロインはクレアへ耳打ちした。
「でも何でキゾン軍の隊服なんて着てたんだ?」
何と彼女は答えるんだろう。それこそ何食わぬ顔でロインはクレアの返答を待った。勿論歩きながら、だ。
------
会話ベースでも必要情報盛沢山だったので助かりました。有り難うございます。
クレア様の反応を見てロインは判断しますので。真実は、洪水避難後でも大丈夫です。
この後、クレア様との顔合わせ目的でエールボルド村長の処へ向かいますので、どうぞ宜しくお願い致します。(因みに説得はロインが責任もって行います。)
軽く肩を叩き、相手のマーズレンにも聞こえるような発声で、クレアに耳打ちをする。
「そろそろ村長の所に挨拶しに行かないと。世話役の力添えが無いと、故郷まで帰られるの苦労しますよ。」
そう言い、目配せで合図をクレアに送る。引き際だと理解してくれると助かるんだが。
エールボルド村長がこの辺り一帯の代表(世話役)を務めている事は周知の事実だ。軍部だって知っている。まあそんなことは(軍部には)重要視もしてないだろうが。自衛団設営の件でも、先々代の村長がベハレスコ市長と中央部に掛け合い、奔走してくれたお陰で設立できたと云われている。
ロインはクレアの腕を引き寄せ、軽くマーズレン他警備隊員達に会釈した。そうして向きを変えてクレアを元来た道へと引き返させる。背中を押すように歩き、彼らへ声が届かない位置まで促すと、漸く手を下ろしてロインはクレアと並んだまま彼女に話しかけた。
「色々大変だったんだな。アンタ。」
親しみを込め、ねぎらう様に優しく声をかける。そして続けざまに本題をぶつけに、ロインはクレアへ耳打ちした。
「でも何でキゾン軍の隊服なんて着てたんだ?」
何と彼女は答えるんだろう。それこそ何食わぬ顔でロインはクレアの返答を待った。勿論歩きながら、だ。
会話ベースでも必要情報盛沢山だったので助かりました。有り難うございます。
クレア様の反応を見てロインは判断しますので。真実は、洪水避難後でも大丈夫です。
この後、クレア様との顔合わせ目的でエールボルド村長の処へ向かいますので、どうぞ宜しくお願い致します。(因みに説得はロインが責任もって行います。)
「お前、3カ月前の国外調査に行っただろ?…戻ってきた隊員達の中に居なくて、死んだものだと…思ったんだ。…それに、1週間前からここ周辺を警備していたが、人なんて見かけていない。……お前、今までどこにいたんだ?」
その言葉に息を詰まらせる。背筋をなぞられたようなゾワッとする感覚に顔を歪めた。真実は言えない、サイルとの約束もある。だからと言ってロインに伝えたことと相違があっては彼らに怪しまれてしまう。
「……あ、あの時…野獣に襲われてしまって……でも、助けてもらって…。国境外れの、小さな村で…しばらく居させてもらったの。…だけど、いつまでもお世話になるわけにはいかないから、…戻ってこようと…」
「じゃぁその傷は?戻ってくるだけでそんな傷を負うのか?…それにその頬、…まるで殴られたような」
「落馬してしまって!…殴られた傷、じゃなくて…早く到着したくて…馬に無理させて険しい道を選んじゃったら顔面から落ちちゃって!…馬もそれで逃がしちゃったから…」
「そう、だったのか…大変だったんだな。」
でも生きててよかったよと安心した表情でマーズレンは言葉を返した。
___________________________
会話ベースで進みが無くてすみません(..)
ロイン君には洪水の免れた後、ちゃんと真実を伝えるつもりです。
「あのぅ、先日村外れの草むらで行き倒れてたんで、俺達で介護してたんです。で、ここならもしかしたら知り合いの方がおられるんではないかと思って、案内してきたんですが。」
何か不都合があったか問うような眼差しで、下手にロインは軍人達に伺い立てた。クレアに助け舟を出した、というより彼女が話していない様々なことを聞き出す為に仕掛けたと言っても過言でない。まあ、それでもヤバくなったらフォローを入れるつもりではいる。
あまり警備隊員とは馴染みがないので、向こうもロインや村の事は詳しくわかっていないだろう。それを逆手にロインは気弱そうな青年のふりをしてみた。
------
マーズレン様の事、了解です。後日談の番外編等では活躍しそうですね。
ロル短くて済みませんが、もう少しクレア様と警備隊とのやり取りを聞きたいので、良ければお願い致します。
一応これでもクレア様に対するロインの信用度は上がっております。のでご安心を。
(後で「何でキゾン軍の隊服なんて着てたんだ?」と聞く気満々ですけど)
「そう…だね。行ってみるよ。………貴方も、来る?」
君なら聞かなくても付いてきそう、なんて言えるわけもなくて。少しだけ観念したような表情を浮かべながら彼の方へ振り向き、歩き出した。
駐屯地があるところまで一歩一歩歩みを進める。見上げれば駐屯地までもうすぐだった。怪我が完治していない以上、これより早く歩むことはできない。また何かを気にしてかロインも自分の隣を歩こうとはせず、やや斜め後ろに付いてくるだけだった。…警戒されている。軍人の勘が働いた。決して悪いことじゃないし、彼の反応が普通だ。いやむしろ得体のしれない人間の怪我の手当てをし、食料や衣服まで与え、自分の言葉を聞いて行動してくれた彼らはよほどのお人好しなのだろう。その意に、応えなければ。
駐屯地の前までやって来ると、警備隊の軍人が私たちを見つける。手に持っていた槍でそれ以上中に入れさせまいと通せんぼする。
「貴様、何の用…ん?……その腕章は、中央の…。…なぜ中央部隊の人間がここにいる。彼らは城下町守備と特攻部隊に配属されているはずだ!…さては、偽物…!」
「お、お待ちください!!……お前、クレアか?」
槍を構えていた軍人の一人が自分の名を呼んだ。キョトンとした表情で彼を見ると、見覚えのある表情の男性だった。
「………マーズレン…?」
「そうだ!俺だよ、クレア…!…隊長、大丈夫です。彼女は私と同期のクレア・ロバーツです。ベレアン隊員で間違いありません。…でもお前、生きてたなんて……っ 亡霊、じゃないよな…?」
「や、やめてよ…!死んだと思われててもおかしくないけど…、…でもちゃんと、こうして生きてるから…っ」
心臓に手を当てながら訴える。しかし旧友に会えたことで少しだけ気持ちの荷が解けたような感覚になった。
_________________
駐屯地にいたマーズレンはクレアと同期の軍人です。この会話で敵ではないことを認知してもらえればと思います…。ちなみにここ以外にマーズレンは現れないと思ってもらって構いません〇
「食べ終わったんだな。随分元気になったみたいじゃないか。」
良かったなと、無遠慮に背中を叩く。
「確かアンタ、軍の中央部隊に居てたんだよな? だったら丁度今この先の丘の上で中央部の軍隊さんが駐屯しているんだよ。知り合いが居るかもしれないし、挨拶しに行ってみたらどうだ?」
そんな風にクレアに持ち掛ける。要は、本当に中央部隊に居たかどうか、知りたいのだ。敵兵襲撃の噂以来、余所者に対しての疑心暗鬼は広がっていて、クレアがどれだけ真実を話そうとしても、信じてはもらえまい。
エールボルド村の村長の言い分もやはり、信用に至らない、という事だった。直談判はまだだが、このままクレアを連れて話し合いに行っても結果は同じだろうし。そんな関係でクレアを駐屯部隊にぶつけ、身元を明らかにする算段をつけてみたが。果たして(結果は)どう出るだろう。
相変わらず顔の表に出すことなく、ロインは良い人を演じ続けた。
------
内情にはそういう部分(クレア様の身元)がございますので。信頼を得たら説得はトントン拍子に進んでいきます。(まだ、キゾン兵かもしれない、と疑ってる部分は皆持ってますので。)
「食べ終わったんだな。随分元気になったみたいじゃないか。」
良かったなと、無遠慮に背中を叩く。
「確かアンタ、軍の中央部隊に居てたんだよな? だったら丁度今この先の丘の上で中央部の軍隊さんが駐屯しているんだよ。知り合いが居るかもしれないし、挨拶しに行ってみたらどうだ?」
エールボルド村の村長の言い分はやはり、信用に至らない、という事だった。直談判はまだだが、このままクレアを連れて話し合いに行っても結果は同じだろうし。そんな関係でクレアを駐屯部隊にぶつけ、身元を明らかにする算段をつけてみたが。果たして(結果は)どう出るだろう
相変わらず
服と食事を受け取る。彼が出て行ったところを見計らってすぐに服を脱いだ。この軍服にはどれだけお世話になったのだろうか。様々なことを思い出しそうになったが、ぐっと記憶をねじ伏せる。今は感傷に浸っている場合ではないからだ。幸い、ここに居る人たちはキゾン国がどのような軍服を着ているのか分からないのだろう。分かっていれば、今頃私の命はないに等しいはずだから。
ロインから渡された服に腕を通し、腕章を腕にはめた。全く同じというわけではないが、中央に勤務していた時に来ていた生地感と似ていた。肌なじみの良さと懐かしさに、自分はベレアンの人間なんだと認識せざるを得ない。ほんの少し、チクリと心が痛んだのはここだけの話。
着替えと食事を終え、少しだけ外に出てみることにした。地面を踏み、一歩ずつ前に進む。そこには変わらずお天道様が地上を照らし、少し冷たい風が吹いていた。久々に浴びた日差しに身体が慣れない。少し眩しそうにしながら目を細める。そして辺りをキョロキョロと見回していた。
数日後、いや数時間後にはここが水に浸かってしまう。そんなこと、この光景から誰が想像できようかと思ってしまった。
_____________
承知致しました〇
クレアも自分が身体を張ってでも守らねばと思っていますので、良い様に使ってください。
また住民の補足情報もありがとうございました。今後の展開の参考にさせていただきます。
服と食事を受け取る。彼が出て行ったところを見計らってすぐに服を脱いだ。この軍服にはどれだけお世話になったのだろうか。様々なことを思い出しそうになったが、ぐっと記憶をねじ伏せる。今は感傷に浸っている場合ではないからだ。幸い、ここに居る人たちはキゾン国がどのような軍服を着ているのか分からないのだろう。分かっていれば、今頃私の命はないに等しいはずだから。
ロインから渡された服に腕を通し、腕章を腕にはめた。全く同じというわけではないが、中央に勤務していた時に来ていた生地感と似ていた。肌なじみの良さと懐かしさに、自分はベレアンの人間なんだと認識せざるを得ない。ほんの少し、チクリと心が痛んだのはここだけの話。
着替えと食事を終え、少しだけ外に出てみることにした。地面を踏み、一歩ずつ前に進む。そこには変わらずお天道様が地上を照らし、少し冷たい風が吹いていた。久々に浴びた日差しに身体が慣れない。少し眩しそうにしながら目を細める。そして辺りをキョロキョロと見回していた。
数日後、いや数時間後にはここが水に浸かってしまう。そんなこと、この光景から誰が想像できようかと思ってしまった。
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承知致しました〇
クレアも自分が身体を張ってでも守らねばと思っていますので、良い様に使ってください。
また住民の補足情報もありがとうございました。今後の展開の参考にさせていただきます。
扉の向こう、顔を覗かせたロインが朝食と着替えを持ってやってくる。ベッド側まで足を運ぶと、温めたミルクとパンと昨日の残りのスープをトレイごと手渡した。そして、クレアには少し大き目かもしれない服を一式、脇に添えるように置いた。
「良かったら、俺のだけど服着替えないか?」
汚れっぱなしの着ているのもなんだから、とロインは言う。実際は、多分キゾンの軍服だろうと思うクレアの服を全部、処分したいからだ。でもまだ素直にそこまで打ち明けるほど、ロインはクレアを信用しちゃいない。
当たり障りのない笑顔で、後で食器を下げに来るから、とロインは一旦部屋を出た。
家の外では、いつもと変わらない村の光景が広がっている。勿論、それはロインが指示したからだったが。村の中で高台に一番近い寄合所には、一日分の食料と自力で動ける村の年寄り達が休んでいる。各家の上げ舟の守りに各一人ずつ、自衛団仲間の連中に煮炊きの煙を上げてもらっている。一応警備塔からは普段と変わらない光景に映るだろう。
避難準備は夜が明ける前に大方片づけた。後は、エールボルド村の村長と直接話を付けに行って来なくちゃな。
青空の広がる天を見つめ、ロインは軽く溜息を吐いていた。
------
洪水は、この日の夕方には押し寄せる見込みになるのではないかと。
なんとなく、クレア様には国境警備隊相手の盾になって頂く流れになるかもしれません。説得のメインはロインが行う形になるので、腕章は無くさずに持っていて頂ければ助かります。
-避難状況- ※幼児=5歳以下 小児=9歳以下
【リヴィエ/10世帯.41人】家財…(重度)洪水対策済。
住民…全員、エールボルド村の共同避難所で待機。(お年寄り8人/幼児5人/小児8人/少~成年20人)
【エールボルド/4世帯.25人】家財…未~(軽度)洪水対策中。
住民…共同避難所にお年寄り(5人)・避難してきたリヴィエ村民(33人)・アイレット村民(要介護者/3人) 自宅待機(12人) 避難対応に、共同避難所周辺へ行ってる従事者(8人+8人)
【アイレット/8世帯.34人】家財…(重度)洪水対策済。
住民…寄合所にお年寄り+幼児(16人) 他(7人) 自衛団(8人)
※自衛団の中に、ロイン兄妹は入ってます。
扉の向こう、顔を覗かせたロインが朝食と着替えを持ってやってくる。ベッド側まで足を運ぶと、温めたミルクとパンと昨日の残りのスープをトレイごと手渡した。そして、クレアには少し大き目かもしれない服を一式、脇に添えるように置いた。
「良かったら、俺のだけど服着替えないか?」
汚れっぱなしの着ているのもなんだから、とロインは言う。実際は、多分キゾンの軍服だろうと思うクレアの服を全部、処分したいからだ。でもまだ素直にそこまで打ち明けるほど、ロインはクレアを信用しちゃいない。
当たり障りのない笑顔で、後で食器を下げに来るから、とロインは一旦部屋を出た。
家の外では、いつもと変わらない村の光景が広がっている。勿論、それはロインが指示したからだったが。村の中で高台に一番近い寄合所には、一日分の食料と自力で動ける村の年寄り達が休んでいる。各家の上げ舟の守りに各一人ずつ、自衛団仲間の連中に煮炊きの煙を上げてもらっている。一応警備塔からは普段と変わらない光景に映るだろう。
避難準備は夜が明ける前に大方片づけた。後は、エールボルド村の村長と直接話を付けに行って来なくちゃな。
青空の広がる天を見つめ、ロインは軽く溜息を吐いていた。
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洪水は、この日の夕方には押し寄せる見込みになるのではないかと。
なんとなく、クレア様には国境警備隊相手の盾になって頂く流れになるかもしれません。説得のメインはロインが行う形になるので、腕章は無くさずに持っていて頂ければ助かります。
-避難状況- ※幼児=5歳以下 小児=9歳以下
【リヴィエ/10世帯.41人】家財…(重度)洪水対策済。
住民…全員、エールボルド村の共同避難所で待機。(お年寄り8人/幼児5人/小児8人/少~成年20人)
【エールボルド/4世帯.25人】家財…未~(軽度)洪水対策中。
住民…共同避難所にお年寄り(5人)・避難してきたリヴィエ村民(33人)・アイレット村民(要介護者/3人) 自宅待機(12人) 避難対応に、共同避難所周辺へ行ってる従事者(8人+8人)
【アイレット/8世帯.34人】家財…(重度)洪水対策済。
住民…寄合所にお年寄り+幼児(16人) 他(7人) 自衛団(8人)
※自衛団の中に、ロイン兄妹は入ってます。
”生きてくれ。…生きていてくれ。そしていつか、戦争が終わったらまた会おう。”
彼の言葉が脳裏で再生される。こみ上げる涙をぐっと堪えた。今は流すときじゃない。悲しい気持ちも悔しい気持ちも浸っている場合じゃない。彼らを救って必ず生き延びる。例え、そのときクロードがいなかったとしても、この目で最後まで確認するまでは。
_____________________
エールボルド村民の説得と避難後の戦闘回避がイベントって感じですかね、、
補足事項認識しておくようにします。
ロイン達の村落、アイレット村ははベハレスコの中で一番多くベイヤーラ湿原との緩衝地帯に接している。すぐ隣の村リヴィエはベイヤーラ湿原から流れ出る河川沿いにあり、両村合わせて最も洪水の被害を受けてきた地域だ。もう一つ先の村エールボルドは作付面積は少ないものの、ロインの村とその隣村の輸送中継地点になっていて、両村よりは小し高い位置にある。三村合わせて一地区扱いだった。今は兵役に人が取られているとはいえ、それでも合わせれば100人位は居る。
「隣村にも声を掛けてきたぜ。リヴィエの連中はエールボルドに向かうって。」
戻ってきた仲間と挨拶を交わし、ロインは卓上に地図を広げ見る。
「俺達の(村の)分の荷物は、(上げ舟に)あらかた運び終わったぜ。」
「後はじーさんばーさん連中の避難だな。」
アイレット村の避難はこれでほぼ片付いた。だが。
「エールボルドの奴らを説得するのは難しそうだ。」
この十数年、被害の無かった彼らにしてみれば、人為的とはいえ自分達の領域まで水が来るとは思っていないんだろう。だが、過去に起こった大災害の際には、エールボルド村でも人が流されている。より安全を期すなら更に高い場所に向かうのが良いんだが。
それともう一つ。国境付近に近づいて戦闘に巻き込まれることを、皆恐れているんだう。それはロイン達であっても同じだからだ。とはいえ、危険性はどちらも五分五分。戦闘ならまだ逃げ回れば何とかなるかもしれない。が、流されればほぼ助からないだろうから。
「せめて市街地側の坂の上に穀物を運んでもらう事は出来ないのか?」
ついでに半数でもそっち(坂の上)に避難してくれれば有難い。そんな事を実はロインは考えていた。
穀倉庫は各村ごとにあるものの。災害避難を兼ねて、普段からちょくちょくエールボルド村へ運び込みしてます。なので三村まとめた大きい穀倉庫がエールボルド村にはあるんですが。。。そこも水には浸かります。
上げ舟…洪水に備えて各家庭の軒に吊るしてある避難用の舟。洪水時に家族や家財道具など乗せて非難する。アイレット村では主に家財道具の避難の為に使っている。(波除シート付tかな)
ロイン達の村落、アイレット村ははベハレスコの中で一番多くベイヤーラ湿原との緩衝地帯に接している。すぐ隣の村リヴィエはベイヤーラ湿原から流れ出る河川沿いにあり、両村合わせて最も洪水の被害を受けてきた地域だ。もう一つ先の村エールボルドは作付面積は少ないものの、ロインの村とその隣村の輸送中継地点になっていて、両村よりは小し高い位置にある。三村合わせて一地区扱いだった。今は兵役に人が取られているとはいえ、それでも合わせれば100人位は居る。
「隣村にも声を掛けてきたぜ。リヴィエの連中はエールボルドに向かうって。」
戻ってきた仲間と挨拶を交わし、ロインは卓上に地図を広げ見る。
「俺達の(村の)分の荷物は、(上げ舟に)あらかた運び終わったぜ。」
「後はじーさんばーさん連中の避難だな。」
アイレット村の避難はこれでほぼ片付いた。だが。
「エールボルドの奴らを説得するのは難しそうだ。」
この十数年、被害の無かった彼らにしてみれば、人為的とはいえ自分達の領域まで水が来るとは思っていないんだろう。だが、過去に起こった大災害の際には、エールボルド村でも人が流されている。より安全を期すなら更に高い場所に向かうのが良いんだが。
それともう一つ。国境付近に近づいて戦闘に巻き込まれることを、皆恐れているんだう。それはロイン達であっても同じだからだ。とはいえ、危険性はどちらも五分五分。戦闘ならまだ逃げ回れば何とかなるかもしれない。が、流されればほぼ助からないだろうから。
「せめて市街地側の坂の上に穀物を運んでもらう事は出来ないのか?」
ついでに半数でもそっち(坂の上)に避難してくれれば有難い。そんな事を実はロインは考えていた。
穀倉庫は各村ごとにあるものの。災害避難を兼ねて、普段からちょくちょくエールボルド村へ運び込みしてます。なので三村まとめた大きい穀倉庫がエールボルド村にはあるんですが。。。そこも水には浸かります。
上げ舟…洪水に備えて各家庭の軒に吊るしてある避難用の舟。洪水時に家族や家財道具など乗せて非難する。アイレット村では主に家財道具の避難させる為に使っている。(波除シート付tかな)