Nicotto Town


❝御寺居さんちの蔵の中❝

違反行為を見つけたら?
  • サークルTOP
  • サークルカフェ
  • 掲示板
  • 伝言板
  • メンバー一覧

ラヴレター

 君と僕の日常の詩 より

***このコメントは削除されています***
アバター
2025/05/10 09:16
貴方がこれを読んでいる頃は、俺はもう傍に居ないのかもしれない。
それでも、伝えておきたいから、此処に残しておきます。

俺は、このひと月の短い間だったけれど、人間らしく生きられた。
カイのお陰なんだよ。全て。カイに出会わなければ、今でも未だ道具のままだったし、人間として生きる事なんて考えもしなかった。
生きて行こうと思えたのも、カイが傍に居てくれたからだ。

俺は最後の最期まで、諦めずに生きるよ。だって

辛い思いをさせてごめん。愛してくれて有難う。きっとわからず屋だと俺に愛想尽かしただろうけど。
俺はカイのお陰で今度こそ自由になれたんだ。今でも望めるならカイの傍に居たい。
アバター
2025/05/05 11:43

 思わず突き上げたくなる魅力的な言葉だが。今夜の目的はユウの蜜をたっぷりと味わう事だ。その為に仕掛けたのに、ここで崩しては台無しになる。
 グッとブレンは堪えた。そして、繊細なタッチで中の口を押さえ、蓋をする。

「クッ…ユウ、今夜は君の甘い蜜が飲みたい、と言ったろ。」

 強烈な刺激にはならないかもだが、じわじわと浸透していくような疼きは感じている筈だ。何処までユウは耐えられるか、互いの根競べとなりそうだ。
 子宮の中まで挿れてしまうと、こちらへの刺激も強くなりすぎる。溢れ出す蜜の熱を受けつつ、ギリギリの線を狙って入り過ぎない様に注意した。

「遠慮なく腰を落として良いんだぞ?」

 腰の動きに合わせてグイと押し上げては留めて、額に汗を浮かべた顔でユウに挑発する笑みを見せる。ユウの吸い付きもあって、一層太さを増す分身が窮屈な通り道を目一杯押し広げた。限界を超える位、
***このコメントは削除されています***
アバター
2025/05/05 11:42
まくき
アバター
2025/05/03 10:45
hgf
***このコメントは削除されています***
アバター
2025/03/31 18:53
..
アバター
2023/09/06 17:18
------------------------------------------------------------------

 ブレン × ユウ

「オイルマッサージ」

------------------------------------------------------------------
アバター
2023/09/06 02:52
 美容に良いとされている高級なローション。ブレンは手に入れたそれを眺め、色々と考えを巡らせていた。
 ユウに使ってあげれば喜ぶだろうか。最近はなかなか肌に触れる機会を持てなかったから、その詫びに丁度良いかもしれない。疲れも溜まっているようだから、これでマッサージでもすれば、少しは機嫌を直してくれるかな。
 密かにほくそ笑む。折角だから何処かのリゾート地のプライベートコテージにでも泊まって、ゆっくりと彼女の身体を解きほぐすも良い。そんな想像がブレンの頭の中を巡っていた。

 そう、満天の星の下。松明に照らされて、揺れるヤシの葉影が煽情的な色を醸し出している。波打つプールサイドでは水面が赤く反射し、宵闇の帳を織り交ぜて揺らめいていた。
 遠くに聞こえる鳥の声や、時折吹き抜ける風音、爆ぜる松明、たゆとう波音、それら野性味溢れる原始の音楽に重ねて、ヒーリングミュージックの静かな調べが心地よく合わさっている。
 ブレンはユウの手を引いて、プールサイドに置かれた長椅子に腰を下ろした。彼女を連れ出したのは勿論、マッサージを施す為だ。
 ココにおいで、と自らの膝上を指差す。きっとユウは戸惑うだろう。
 だが素直なユウはきっと、


そのまま仰向けに寝そべった。

そのまま後ろから軽く彼女を抱きすくめる。
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/09/05 21:33
 ブレンはユウの手を引いて、プールサイドに置かれた長椅子に腰を下ろした。彼女を連れ出したのは勿論、マッサージを施す為だ。
 ココにおいで、と自らの膝上を指差す。きっとユウは戸惑うだろう。
 だが素直なユウはきっと、


そのまま仰向けに寝そべった。

そのまま後ろから軽く彼女を抱きすくめる。
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/09/04 23:48
 そう、満天の星の下。松明に照らされて、揺れるヤシの葉影が煽情的な色を醸し出している。波打つプールサイドでは水面が赤く反射し、宵闇の帳を織り交ぜて揺らめいていた。
 遠くに聞こえる鳥の声や、時折吹き抜ける風音、爆ぜる松明、たゆとう波音、それら野性味溢れる原始の音楽に重ねて、ヒーリングミュージックの静かな調べが心地よく合わさっている。
 ブレンはユウの手を引いて、プールサイドに置かれた長椅子に腰を下ろすと、そのまま後ろから軽く彼女を抱きすくめる。
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/09/04 23:40
 そう、満天の星の下。松明に照らされて、宵闇の帳が煽情的な
揺れるヤシの葉の影と波打つプールサイドは、野性味溢れる原始の音楽に包まれていた。遠くに聞こえる鳥の声
ブレンはユウの手を引いて、プールサイドに置かれた長椅子に腰を下ろすと、そのまま後ろから軽く彼女を抱きすくめる。
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/09/04 23:26
 美容に良いとされている高級なローション。ブレンは手に入れたそれを眺め、色々と考えを巡らせていた。
 ユウに使ってあげれば喜ぶだろうか。最近はなかなか肌に触れる機会を持てなかったから、その詫びに丁度良いかもしれない。疲れも溜まっているようだから、これでマッサージでもすれば、少しは機嫌を直してくれるかな。
 密かにほくそ笑む。折角だから何処かのリゾート地のプライベートコテージにでも泊まって、ゆっくりと彼女の身体を解きほぐすも良い。そんな想像がブレンの頭の中を巡っていた。

 そう、満天の星の下。松明に照らされて、ベンチにプールサイドは
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/08/26 02:29


 美容に良いとされている高級なローション。ブレンは手に入れたそれを眺め、色々と考えを巡らせていた。
 ユウに使ってあげれば喜ぶだろうか。最近はなかなか肌に触れる機会を持てなかったから、その詫びに丁度良いかもしれない。疲れも溜まっているようだから、これでマッサージでもすれば、少しは機嫌を直してくれるかな。
 密かにほくそ笑む。折角だから何処かのリゾート地のプライベートコテージにでも泊まって、ゆっくりと彼女の身体を解きほぐすも良い。そんな想像がブレンの頭の中を巡っている。
アバター
2023/08/15 15:43
------------------------------------------------------------------

 ベゼルト in ヴィータ

「細マッチョ」

------------------------------------------------------------------
 肌は白いままだった。髪はいつの間にか光を受けて輝く金色になっている。破れた服の合間から醸すその身体は、思いの外がっしりとしていて、しなやかに思えた手足は逞しさを増していた。
 くっきりと浮き出た喉仏がゆっくりと水を飲み下していく。声音も心なしか低い。
「有難うございます。」
 空になったグラスを受け取り、マーレンは新しい服を差し出した。
「とにかく着替えた方がいい。汚れてしまっているから。」
 ヴィータ…と呼ぶべきか。目の前の相手に困惑しながら似た体格の体をまじまじと眺めた。こんな事が実際に起こるなんて、未だに信じられない。

 落ち着きを取り戻したブレンが、ゆっくりとこちらへ戻ってくる。不機嫌さは相変わらず
「ベゼルト。」
 嫌な表情を浮かべたまま名を呼ぶブレンに呼応して、彼の足元へ跪いた。
「申し訳ございません、ブレン様。」
 首を垂れるその姿は、明主と騎士そのもの。二人の関係がより一層理解できるようだ。
アバター
2023/08/02 17:32
-------

 擢磨×おばば
「三ツ又の件」【化モノ譚 -ムシバミ-】

-------
「そう。御前さんだ。」
 再び同じ声がした。聞こえた方に振り向くと、路地の入り口にほの暗く灯りが点っている。見るからに老婆という人物が、易の行燈を上げて座っていた。
「アレは、やめておきな。」
 高齢の老婦人、というよりおばばの風情がしっくりくる。占い師らしき老婆はビタとも動かず、擢磨は彼女に釘付けにされて、足止めを喰らった。
「何なんだよ、アレって。」
 不服そうに言葉を返す。思い当たるものは擢磨には無い。
「化ノモノ、だよ。」
 ゾクン、と擢磨の身の毛がよだつ。そんな言い方をするのは限られていた。途端に警戒心で擢磨の心は埋め尽くされた。下手に言葉を返す相手ではない。黙ったまま、擢磨は老婆を睨みつける。
「三ツ又…アレは親に捨てられ、猫に食われた赤子だ。」
 尋常じゃない動揺が、擢磨を襲い始めていた。
 三ツ又の事がわかるのなら。考え様によっては、目の前に居るのは人間ではない、ということだ。
 もう、昔みたいにそう簡単にヤラれることは無いが、今は朝壬も不調だし。不用意に物の怪との諍いを起こさぬ方が良い。あしらう術を探りながら、必死で擢磨は知恵を巡らせた。
 老婆の、見えない表情が嘲り笑っているようにさえ、感じる。
「…なんで? アイツは猫だろうが。」
 老婆はしたり顔の口元を見せて、当然の如くに擢磨に答えた。
「親の愛情の代わりを、食ろうた猫に求めたからだ。」
 心臓を鷲掴みにされた。強い衝撃が走る。思わず擢磨は自分の胸に手を当てた。息苦しさに締め付けられるし、早鐘を打つ心の臓が痛くて堪らない。自ら鼓動を押さえ込むように、胸を掴んだまま擢磨は手を握りこんだ。
「…ふざ…けんな。」
 怒りが擢磨を飲み込んでいく。握り締めた拳を、擢磨は持ち上げた。駄目と分かっているのに、吸い込まれるように、その拳が老婆の顔目掛けて突き進んでいく。老婆の哂いが眼に焼き付いてしまって、忘れられそうにない。
「……ぁっ!!?」
 そのまま前のめりに路地へと擢磨は引き込まれた。…ように感じたが。
「あ…れ。」
 擢磨は元の飲み屋通りに立っていた。周囲の賑わいは何も変わらない。狐に抓まれた様に、肌に張り付く厭な感覚だけが、擢磨の手元に残っている。
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/08/02 17:30
-------
 擢磨×おばば

「三ツ又の件」【化モノ譚 -ムシバミ-】

-------
「そう。御前さんだ。」
 再び同じ声がした。聞こえた方に振り向くと、路地の入り口にほの暗く灯りが点っている。見るからに老婆という人物が、易の行燈を上げて座っていた。
「アレは、やめておきな。」
 高齢の老婦人、というよりおばばの風情がしっくりくる。占い師らしき老婆はビタとも動かず、擢磨は彼女に釘付けにされて、足止めを喰らった。
「何なんだよ、アレって。」
 不服そうに言葉を返す。思い当たるものは擢磨には無い。
「化ノモノ、だよ。」
 ゾクン、と擢磨の身の毛がよだつ。そんな言い方をするのは限られていた。途端に警戒心で擢磨の心は埋め尽くされた。下手に言葉を返す相手ではない。黙ったまま、擢磨は老婆を睨みつける。
「三ツ又…アレは親に捨てられ、猫に食われた赤子だ。」
 尋常じゃない動揺が、擢磨を襲い始めていた。
 三ツ又の事がわかるのなら。考え様によっては、目の前に居るのは人間ではない、ということだ。
 もう、昔みたいにそう簡単にヤラれることは無いが、今は朝壬も不調だし。不用意に物の怪との諍いを起こさぬ方が良い。あしらう術を探りながら、必死で擢磨は知恵を巡らせた。
 老婆の、見えない表情が嘲り笑っているようにさえ、感じる。
「…なんで? アイツは猫だろうが。」
 老婆はしたり顔の口元を見せて、当然の如くに擢磨に答えた。
「親の愛情の代わりを、食ろうた猫に求めたからだ。」
 心臓を鷲掴みにされた。強い衝撃が走る。思わず擢磨は自分の胸に手を当てた。息苦しさに締め付けられるし、早鐘を打つ心の臓が痛くて堪らない。自ら鼓動を押さえ込むように、胸を掴んだまま擢磨は手を握りこんだ。
「…ふざ…けんな。」
 怒りが擢磨を飲み込んでいく。握り締めた拳を、擢磨は持ち上げた。駄目と分かっているのに、吸い込まれるように、その拳が老婆の顔目掛けて突き進んでいく。老婆の哂いが眼に焼き付いてしまって、忘れられそうにない。
「……ぁっ!!?」
 そのまま前のめりに路地へと擢磨は引き込まれた。…ように感じたが。
「あ…れ。」
 擢磨は元の飲み屋通りに立っていた。周囲の賑わいは何も変わらない。狐に抓まれた様に、肌に張り付く厭な感覚だけが、擢磨の手元に残っている。
アバター
2023/07/29 01:44
 肌は白いままだった。髪はいつの間にか光を受けて輝く金色になっている。破れた服の合間から醸すその身体は、思いの外がっしりとしていて、しなやかに思えた手足は逞しさを増していた。
 くっきりと浮き出た喉仏がゆっくりと水を飲み下していく。声音も心なしか低い。
「有難うございます。」
 空になったグラスを受け取り、マーレンは新しい服を差し出した。
「とにかく着替えた方がいい。汚れてしまっているから。」
 ヴィータ…と呼ぶべきか。目の前の相手に困惑しながら似た体格の体をまじまじと眺めた。こんな事が実際に起こるなんて、未だに信じられない。

 落ち着きを取り戻したブレンが、ゆっくりとこちらへ戻ってくる。不機嫌さは相変わらず
「ベゼルト。」
 嫌な表情を浮かべたまま名を呼ぶブレンに呼応して、彼の足元へ跪いた。
「申し訳ございません、ブレン様。」
 首を垂れるその姿は、明主と騎士そのもの。二人の関係がより一層理解できるようだ。
アバター
2023/07/25 17:08
---------------------------------------------------
 由野×恭真

「朽チ成シ 閻封蔵3」【半妖祓殺師恋愛帖】

---------------------------------------------------
 今更、ほんの少し霊力を回復させても、結界を破る力など到底無い。せめて格子の際で由野を見送るだけでも。恭真は奥歯を噛み締め、身体に力を込める。
「じゃあ恭真さん。少し僕に付き合ってくださいね。」
 笑いかける由野に、諦めた眼差しで恭真も微笑み返す。ゆっくりと由野は手を引いて、格子戸の外へ出た。繋いだままの恭真の腕も格子の外側へ出る。
 腕に掛かる激痛を想像はしたが。何の変化も起きなかった。
 不思議と身体が軽い。結界はどうしたのだろう。ピリリともしない腕に首を傾げ、そのまま体ごと格子を抜ける。
「恭真さん?」
「…いや。」
 意外という表情を見せる恭真に、由野が声をかける。まだ恭真は周囲を窺い、首を回した。二人で蔵の扉を潜り、人工光に満ちた通路へ出る。
 あまりに静か、だ。結界の外へ出たというのに、扉の前に立つ仁王像も二人を静観している。眩しすぎる光量に、恭真は軽い眩暈を覚えた。
 ふらりと揺れる恭真の身体に、由野は驚き、すぐに支え直す。
「大丈夫ですか。」
「ああ。」
 明るい光の元、改めて見る普段とは真逆な互いの様相は、恭真も可笑しく感じた。黒いスーツを着こなしている由野が変に思う。
「似合わないな。」
「恭真さんも、です。」
「…そうだな。」
 お互いに互いの服装を見て、一頻り笑った。緊迫感の無い和やかな笑いが、それまでの焦燥心を癒してくれる。
 由野は微笑んで恭真を見た。近づく顔貌はまた恭真にキスを施す。流れ込む霊力に慌て、恭真は由野を引き離した。
「心配性なんですね。この位は大丈夫。」
 そう言うものの。由野の身体を思えば、心配するなという方が無理な話だ。
「シャンとして下さいね。その方が僕は楽で良いですよ。」
 自分より大きい恭真さんを支えて歩く方が大変、と愚痴る由野の言葉に流石の恭真も文句を言えなかった。
「ああ、分かった。」
 息を整え、恭真も背筋を伸ばす。二人は目配せをし、外へ向けてゆっくり歩き出した
アバター
2023/07/25 17:03
------------------------------------------------
 由野×恭真

「朽チ成シ 閻封蔵2」【半妖祓殺師恋愛帖】

------------------------------------------------
 漸く最終通路の中央、閻封蔵の入口の前に由野は辿り着いた。札と結界縄が真っ先に目に映る。門を護る仁王像まで、扉の両脇に置かれていた。
 閻封蔵は、外界から完全に遮断された闇の世界だ。唯一通ずるは、この扉だけ。
 解けて、と念じ、由野は扉に触れた。
 背後で感じた重扉の存在に、誰かが入ってくるのを恭真は感じた。
 蔵の中に設けられた、祠の様な、厨子の様な、四角い建物。廻り込んで正面の封殺札を剥がし、由野は扉を開いた。
 恭真のいる暗闇に、漸く光が差す。
「恭真さん。」
「…………。」
 微笑む恭真のその姿に、痞える胸をぐっと由野は堪えた。
 扉を開けてもまだ、頑丈な蜘蛛手格子がある。その向こうに恭真が居た。
 痩せた肩が、白衣の上からでもはっきりとわかった。覇気の無さはそれだけ霊力が失われているのだろう。だのに、これでもかという程張られた結界が腹立たしくなった。半妖だからといって衰弱している恭真へ、何故こんな酷い扱いをするのか。どうしても由野には納得が行かなかった。
 格子の入口を開け、中へ入る。と、由野は屈んだままで恭真に顔を寄せた。ぴくりとも動けない恭真に、そっと口唇を合わせる。今渡せるだけの霊力を全て、恭真へ注ぎ込んだ。
「……ンッ、」
 苦い表情で恭真は由野を押し返した。その非難する眼差しに、少し由野は安堵の笑みを零す。
「立てますか?」
 脚を戦慄かせながらも恭真は立ち上がった。
「…っ危ない!」
 ぐらつく身体を抱き止める。普段とは逆の立場に不謹慎ながら楽しくなる。何か言いたげに震える口唇を無視し、由野はその手で恭真の身体を抱き締めた。
 恭真の匂い、恭真のぬくもり。目を閉じてゆっくり感じていたい。けれど。
「…恭真さん。一緒に来て欲しい場所があるんです。」
「…コ…コ…から…出られ…た…ら……な…。」
 途切れ途切れの弱い声で、恭真は返した。
 無理だと分かっている。出られる筈は無い。だからこそ、恭真は茶番でも由野の望みを叶えてやりたいと願った。
アバター
2023/07/25 17:00
---------------------------------------------------
 由野×恭真

「朽チ成シ 閻封蔵」【半妖祓殺師恋愛帖】

---------------------------------------------------
 真闇の中で、空《くう》を恭真は見つめていた。自分が形を未だ保っている、その事が不思議な位だ。背には桧板の冷たさが布越しに伝わる。心地いい、と感じた。
 板の間の外側には、恐らく幾重にも封縛の結界が張り巡らされているのだろう。その波動が壁からも床からも伝わってくる。弱い呼吸を繰り返し、恭真は壁板に身を預けた。
 波動を受け続けるのが少し辛い。
 だがそれでも、不安も恐れも恭真には無かった。

 一方で。由野は封呪札が至る所に貼られた細長い通路を、一人歩いている。黒服に身を包んでいる所為か、通路全体の白さがやけに目立つ。時折眩みそうになるけれど、先日まで寝込んでいたのだから仕方ない。
 足早とまでは行かぬものの、確実に一歩ずつ、出来る限りの速さで進んでいく。
 片方の壁の向こうは鍛錬場。その反対側の壁を見つめ、由野は僅かに唇を噛み締めた。
 今歩いている場所は、伐妖本部の置かれている本社ビル。その中心に重厚な土蔵が据えられているのを、殆どの者は知らない。土蔵は“閻封蔵”と呼ばれている。それは、祓殺出来ない妖魔を封じ込める為に造り据えられたもの。閉じ込められたらもう、生きて出られない。そう云われる強力な結界で固められている。
 由野が知ったのは先日、目が覚めた後の偶然であった。そして今、由野の逢いたい人はそこに居る。

 そんな由野の事は知らずに、恭真は一人きり、小さな結界の中で微かに息をしていた。
 恭真もまた、この蔵をずっと昔から知っていた。
 初めて総帥に調伏されたあの日。誰の手にも負えずに、此処に封印されたのだから。
 あの時は、怒りと憎しみで身体が引き千切れそうな程、辛かったというのに。
 もう、全てを手放して良い程に穏やかな心持ちになれた今…むしろ安心感で満たされている。これも、由野に出逢えたからこそ。
 …由野、無事で居るだろうか。
 最後に、猫股へと変化したこの腕の中にいて、微笑みながら口付けてくれた。その愛しさを胸に、恭真はそっと目蓋を閉じた。
アバター
2023/07/25 16:47
------------------------------------------------------------------

 恭真×由野

「濡レ衣-夏祭り祓殺仕事 鼻緒」【半妖祓殺師恋愛帖 】

------------------------------------------------------------------

 はぐれてしまった二人を、階段の上から探す。精一杯目を凝らすものの、普段は見つけ易い爪牙でさえも人込の中に紛れて分からない。
「行くぞ。」
 恭真は放っておけと言わんばかりに吐いた。由野は反論するように声を上げた。
「待ってください、恭真さん。」
 折角皆で来ているのだ。バラバラになりたくない。
「埒が明かない。その内、あいつ等も戻ってくるだろう。」
 それでも由野は諦めがつかない。いつも単独でいる恭真にしてみれば、これでもよく粘った方だ。そのまま恭真は歩き出し、その背を由野が追いかける。
「あっ!!」
 よろめいて、でも辛うじて転ぶのは避けた。由野は足下に目を遣り、溜息を吐く。
「どうした。」
 由野の悲鳴に恭真は足を止め、振り向く。不機嫌な表情はそのままだ。
「す、済みません。鼻緒が切れてしまって…」
 フイ、とすぐに前を向いてしまった。そのまま恭真は行ってしまうだろうと、追い縋るのを諦める。歩けぬ足に、どうしようか由野は悩んでいた。
 けれど。
「恭真、さん?」
「乗れ。」
 目の前で背を向けしゃがむ恭真の姿に、由野は戸惑った。
「それでは歩けないだろう。だから乗れ。」
「でも…」
「つべこべ言うな。」
 ぴしゃりと切る。冷たい言様と、目の前の気遣う行動が、ちぐはぐで。どちらが本当の恭真なんだろうか、と由野は分からなくなった。
 いつも冷酷で協調性もなく、周りと馴染もうとしない恭真。だが、時折垣間見るこんな優しさが、恭真の本音の姿なんだとしたら。
 どうして、こんなに冷たく振舞うのだろう。
「早くしろ。」
「あ…はい。」
 由野は急かされるまま、恭真の背中に負ぶさった。
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/07/25 13:11
 肌は白いままだった。髪はいつの間にか光を受けて輝く金色になっている。破れた服の合間から醸すその身体は、思いの外がっしりとしていて、しなやかに思えた手足は逞しさを増していた。
 くっきりと浮き出た喉仏がゆっくりと水を飲み下していく。声音も心なしか低い。
「有難うございます。」
 空になったグラスを受け取り、マーレンはヴィータに新しい服を差し出した…つもりだった。
「とにかく着替えた方がいい。汚れてしまっているから。」

「ベゼルト。」
 嫌な表情を浮かべたまま名を呼ぶブレンに呼応して、すぐさま彼の足元へ駆けつけ跪く。
「申し訳ございません、ブレン様。」
 首を垂れるその姿は、明主と騎士そのもの。二人の関係がより一層理解できるようだ。
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/07/25 13:10
 肌は白いままだった。髪はいつの間にか光を受けて輝く金色になっている。破れた服の合間から醸すその身体は、思いの外がっしりとしていて、しなやかに思えた手足は逞しさを増していた。
 くっきりと浮き出た喉仏がゆっくりと水を飲み下していく。声音も心なしか低い。
「有難うございます。」
 空になったグラスを受け取り、マーレンはヴィータに新しい服を差し出した…つもりだった。
「とにかく着替えた方がいい。汚れてしまっているから。」

「ベゼルト。」
 嫌な表情を浮かべたまま名を呼ぶブレンに呼応して、すぐさま彼の足元へ駆けつけ跪く。
「申し訳ございません、ブレン様。」
 その姿は明主と騎士そのもの。二人の関係がより一層理解できる。
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/07/25 13:04
 肌は白いままだった。髪はいつの間にか光を受けて輝く金色になっている。破れた服の合間から醸すその身体は、思いの外がっしりとしていて、しなやかに思えた手足は逞しさを増していた。
 くっきりと浮き出た喉仏がゆっくりと水を飲み下していく。声音も心なしか低い。
「有難うございます。」
 空になったグラスを受け取り、マーレンは
「とにかく着替えた方がいい。汚れてしまっているから。」

アバター
2023/07/25 12:49
------------------------------------------------------------------

 ブレン×ヴィータ

「血反吐はき」 ※ブレンは精神的に、ヴィータは体質です

------------------------------------------------------------------

 背中から肺を突き破り、凶手がヴィータの躰を貫く。完全な油断であった。
「愚か者がっ!!」
 思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らす。が、飲み込める様子はない。
 ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽくなり、まるでそれは干からびていくようだった。
 脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、その手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強める。それでも夥しく流れ出る血は、二人を赤く染め上げていく。張りを失くした豊乳がどんどん縮んで、平らで貧相な体に変わりつつあった。

 穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
 そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。喉が微かに震え、上下に大きく動く。その感覚にブレンは唇を漸く離した。白い顔肌にべったりと塗れた赤い血が殊更に目立つ。ヴィータの体から流出していた血液は終息を見せ、貫通した体の傷口は新しい肉芽で埋まっていく。
 危機は去った。かに見えた。
 回復した身体を離し、ブレンは立ち上がった。見下ろす双眸が憔悴し、視線を逸らす様に彷徨い出す。そのままふらふらとブレンは離れていき、地面に蹲った。
 ヴィータも一瞬は力強い眼光を宿したが、すぐに見開いた眼の瞳孔を窄めて口元を押さえた。上体を支える腕がわなわなと戦慄する。そして。
「ヴェええっっ!!」
 二人同時に、揃って吐いた。
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/07/25 12:46
 背中から肺を突き破り、凶手がヴィータの躰を貫く。完全な油断であった。
「愚か者がっ!!」
 思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らす。が、飲み込める様子はない。
 ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽくなり、まるでそれは干からびていくようだった。
 脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、その手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強める。それでも夥しく流れ出る血は、二人を赤く染め上げていく。張りを失くした豊乳がどんどん縮んで、平らで貧相な体に変わりつつあった。

 穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
 そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。喉が微かに震え、上下に大きく動く。その感覚にブレンは唇を漸く離した。白い顔肌にべったりと塗れた赤い血が殊更に目立つ。ヴィータの体から流出していた血液は終息を見せ、貫通した体の傷口は新しい肉芽で埋まっていく。
 危機は去った。かに見えた。
 回復した身体を離し、ブレンは立ち上がった。見下ろす双眸が憔悴し、視線を逸らす様に彷徨い出す。そのままふらふらとブレンは離れていき、地面に蹲った。
 ヴィータも一瞬は力強い眼光を宿したが、すぐに見開いた眼の瞳孔を窄めて口元を押さえた。上体を支える腕がわなわなと戦慄する。そして。
「ヴェええっっ!!」
 二人同時に、揃って吐いた。
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/07/25 12:35
 背中から肺を突き破り、凶手がヴィータの躰を貫く。完全な油断であった。
「愚か者がっ!!」
 思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み千切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らすも、飲み込める様子はない。
 ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽく、干からびていくようだった。
 脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、反対の手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強める。それでも夥しく流れ出る血は、二人を赤く染め上げていく。張りを失くした豊乳がどんどん縮んで、平らで貧相な体に変わりつつあった。

 穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
 そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。喉が微かに震え、上下に大きく動く。その感覚にブレンは唇を漸く離した。白い顔肌にべったりと塗れた赤い血が殊更に目立つ。ヴィータの体から流出していた血液は終息を見せ、貫通した体の傷口は新しい肉芽で埋まっていく。
 危機は去った。かに見えた。
 回復した身体を離し、ブレンは立ち上がった。見下ろす双眸が憔悴し、視線を逸らす様に彷徨い出す。そのままふらふらとブレンは離れ、地面に蹲った。
 ヴィータも
 
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/07/25 12:24
 背中から肺を突き破り、凶手がヴィータの躰を貫く。完全な油断であった。
「愚か者がっ!!」
 思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み千切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らすも、飲み込める様子はない。
 ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽく、干からびていくようだった。
 脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、反対の手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強める。それでも夥しく流れ出る血は、二人を赤く染め上げていく。張りを失くした豊乳がどんどん縮んで、平らで貧相な体に変わりつつあった。

 穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
 そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/07/25 12:24
 背中から肺を突き破り、凶手がヴィータの躰を貫く。完全な油断であった。
「愚か者がっ!!」
 思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み千切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らすも、飲み込める様子はない。
 ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽく、干からびていくようだった。
 脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、反対の手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強める。それでも夥しく流れ出る血は、二人を赤く染め上げていく。張りを失くした豊乳がどんどん縮んで、平らで貧相な体に変わりつつあった。
 穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
 そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。
「ッァハ、」
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/07/25 12:14
 背中から肺を突き破り、凶手がヴィータの躰を貫く。完全な油断であった。
「愚か者がっ!!」
 思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み千切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らすも、飲み込める様子はない。
 ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽく、干からびていくようだった。
 穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
 脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、反対の手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強めていく。そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/07/22 00:35
 背中から肺を突き破り、凶手がヴィータの躰を貫く。一瞬の油断、であった。
「愚か者がっ!!」
 思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンは即座に

血反吐はそのまま
アバター
2023/07/22 00:20
【触レテハナラヌ】

 それは、城が建つよりもずっとずっと昔のこと。
 小高い丘の向こう側に、森の主《ヌシ》は存在した。主に実体はなく、代わりに森の植物を意のままに動かすことが出来た。森自体が主の身体だとも言えた。
 主は森の木々を繁らせ、その枝葉の先に豊かな果を実らせた。また、地面の上でそよぐ草達の花を綺麗に咲かせもした。そんな花や果実を求め、小さな鳥や動物たちが森の主の下《もと》を代わる代わる訪れた。

 或る時、森の主は見慣れぬ生き物を見つけた。ヒト、と呼ばれるその動物は森の主の下へやって来て、足元に咲く草花に感嘆した。その表情が綻ぶ姿が、主にはまるで初めて見る美しい花が咲いていく様で。
 その新鮮さに森の主は心が動かされた。
 戯れに、樹上に生る果実をひとつ、ヒトの前に落としてみると、また嬉しそうに顔を綻ばせ、お礼にヒトは自らの名を森の主に教えて去って行った。
 種族を区別するモノなら知っているが。個体を区別する、名前、というものが有るのは知らなかった。新しいことを知る、というのがこれ程心を躍らせるものだと、森の主は初めて知った。
 最初に訪れたヒト『』は、それ以降、度々森の主の下を訪れるようになった。
 森の主はその都度『』の色んな表情を見ようと、様々な事を試みた。例えば、『』の声に合わせて枝葉を揺らしてみたり、草花を躍らせてみたり。
 一番の力作は、樹木の根を盛り上がらせて『』と同じ形を造ったことだ。勿論、森の主にはそれを自由に動かす事ができる。初めは『』も面白がっていた。楽しげに声を上げて、次第に声は荒く聞こえた。
 去っていく『』の顔は、森の主には笑っているように見えた。
 けれど。以来『』は森の主の下へ来なくなった。
アバター
2023/07/21 17:17
 随分と時が経ってから、『』が森の主の下を訪れた。
 小さかった体は大きくなり、『』の体にも実が生っている。森の主は全ての根が地面から這い出してしまいそうな勢いで、大層喜んだ。何よりもまた『』に会えたことが嬉しかったのだ。けれど、『』はそれ以上主の下へは近寄って来ない。
 どうしたのだろう。怪訝に思う主は枝葉を蔓に変え、『』の体に伸ばした。途端。
 鋭いナイフが主の伸ばした蔓をバッサリ切り落とした。
 森の主は唖然とした。全く訳が分からない。何故こんな事になったのか、何故こんな事をされるのか。
 『』の隣には『』と同じヒトの種族がいた。そのヒトは『』の前に立ち、ナイフを構えて森の主を威嚇している。不愉快な気分に主は森を身じろがせた。
 急に襲った地揺れにヒトは立っていられず、体勢を崩す。主はその隙を逃さず見ていた。
 邪魔だ、と。グンッと太枝をしならせて、ヒトを払い飛ばす。『』は地面にしゃがみ込んだまま、両手で口元を覆うようにして震えていた。
 森の主が今度こそと蔓の先を『』に向けたその時。
 『』が金切声を上げて逃げ出した。
 待って。どうして逃げるの? そう伸ばした蔓を逃げ惑う『』の腕に絡ませると『』は狂ったように暴れまくる。離したくない。森の主は更に強く絡み付かせて己の元へ引き寄せようと、腕を締め上げた蔓を手繰り寄せた。
 何かがペキバキ折れる音がした。『』が悲鳴を上げる。『』の腕が蔓のように伸びて捩じれていく。
 強烈な悲鳴と共に、温かい赤い水が『』の体から噴き出した。鉄の錆びる嫌な臭いが辺りに広がった。森の主は驚いて締めていた蔓を弛めた。ゴト、と地面に落ちた腕はあちこち歪んでいて、『』と繋がっていた部分は千切れている。
 森の主は慌てて落ちた腕を拾い上げ、千切れた場所へ戻した。
 けれど、赤い水で濡れてしまったそこは、何度くっ付けても繋がらない。
 か細い声で『』は言った。“タス…ケテ”と。
 もう一人のヒトが『』に駆け寄り、何かを喋っている。再び主は蔓の先を切られてしまった。だが、蔓を切ったその手が光を操り、『』の赤い水を止めていく。苦しそうに歪んでいた『』の表情が少しずつ和らいでいく。
 もう、主に蔓を伸ばす勇気は無かった。去っていく二人の背を茫然と見つめた。『』の無事を祈りながら。
***このコメントは削除されています***
アバター
2023/07/21 17:16
 それは、城が建つよりもずっとずっと昔のこと。
 小高い丘の向こう側に、森の主《ヌシ》は存在した。主に実体はなく、代わりに森の植物を意のままに動かすことが出来た。森自体が主の身体だとも言えた。
 主は森の木々を繁らせ、その枝葉の先に豊かな果を実らせた。また、地面の上でそよぐ草達の花を綺麗に咲かせもした。そんな花や果実を求め、小さな鳥や動物たちが森の主の下《もと》を代わる代わる訪れた。

 或る時、森の主は見慣れぬ生き物を見つけた。ヒト、と呼ばれるその動物は森の主の下へやって来て、足元に咲く草花に感嘆した。その表情が綻ぶ姿が、主にはまるで初めて見る美しい花が咲いていく様で。
 その新鮮さに森の主は心が動かされた。
 戯れに、樹上に生る果実をひとつ、ヒトの前に落としてみると、また嬉しそうに顔を綻ばせ、お礼にヒトは自らの名を森の主に教えて去って行った。
 種族を区別するモノなら知っているが。個体を区別する、名前、というものが有るのは知らなかった。新しいことを知る、というのがこれ程心を躍らせるものだと、森の主は初めて知った。
 最初に訪れたヒト『』は、それ以降、度々森の主の下を訪れるようになった。
 森の主はその都度『』の色んな表情を見ようと、様々な事を試みた。例えば、『』の声に合わせて枝葉を揺らしてみたり、草花を躍らせてみたり。
 一番の力作は、樹木の根を盛り上がらせて『』と同じ形を造ったことだ。勿論、森の主にはそれを自由に動かす事ができる。初めは『』も面白がっていた。楽しげに声を上げて、次第に声は荒く聞こえた。
 去っていく『』の顔は、森の主には笑っているように見えた。
 けれど。以来『』は森の主の下へ来なくなった。

アバター
2023/07/21 17:11
【孝子×ハク 獣耳と尻尾】

「あら。」
 孝子が戻ってくると、ハクは転《うた》た寝をしていた。腰肌の見える格好で無防備に丸くなっている。孝子は畳んだばかりのバスタオルを、そっとハクの腰腹に掛けた。
 こうして見ると顔立ちはまだ幼く、普通に街中にいる子供と何ら変わり無い。余程疲れたか、ハクはぐっすり眠っていた。孝子はハクの隣に腰を落ち着けて、髪を指で梳き撫でる。
 流石に、あんな出来事の起った後なら、少々の物事は如何とも思わなくなった。人間ではない身体能力を見せられはしたものの、ハクが此処にやって来た当初よりは孝子も随分慣れたものだ。
 指を滑らせた髪の中に、手触りの違う硬い髪が混ざっている。解そうと指で揉むと、急に其所の髪の毛が動いた。
「キャッ…」
 驚いて思わず短い声を上げる。だが流石にもう動揺はしない。飛び出したのは、猫みたいな獣耳だった。立って暫く先端はピクピク動いたが、程なくペタンと伏せて髪の中に戻る。
 孝子はもう一度指を伸ばして、耳の付け根をこそばす様に掻き解した。マッサージを施す気持ちで続けていると、気持ちよさげに寝顔が緩み、耳もだらしなく開いていく。
 何だか楽しくなって、孝子は気分良くマッサージを続けた。その所為だろうか、孝子自身も腕がポカポカ温かくなった気がした。
「え、」
 そう思ったのは自分の勘違いだったと、腕に目を遣って孝子は知った。気づかぬ間に伸びてきた黒い尻尾が、孝子の腕を探って巻き付いていた。髪同様の同じ毛並みの尻尾は、肌触り良く孝子の腕にじゃれついている。
 それだけかと思ったら、更に尻尾は先が割れて、孝子の指を挟んで締める。
 その感触は、赤ちゃんが指を握ってくるのとそっくりで。ハクの寝姿と併せもって、孝子は久々に萌えた。
 な……な、なんて可愛いの!?
「母さん、あのさ…」
 その時、無粋にも息子の幸保が部屋に入ってくる。と同時に、ハクの耳と尻尾を見て、強い口調で叱咤する。
「ハクっ!!」
 途端にハクはがば、と起き上がり、慌てて耳と尻尾を仕舞った。
アバター
2023/07/21 17:07
【夢×幸保 予見】

 浮遊感に包まれて、河嶋はきつく閉じた眼を開いた。辺りは一面薄闇に覆われていて、今自分が何処にいるのか分からない。
 落ちているのか。いや、沈んでいるのか。水中の如く揺れる髪の毛先が、眼の端に映り込み、そうぼんやりと考える。
 僅かに頭をずらして、己が飲み込まれていく先を見る。黒く歪《ひず》んだ靄の中に、幽かな光を感じた気がした。
 まとわりつく気の重みに、体が思うように動かない。それでも身を捩って幸保は体勢を立て直した。
 薄桜色の欠片が仄かに光を放っている。その事に気づいて幸保が手を伸ばすと、欠片が回転して小さな渦流を作った。そのまま渦流は人を形作り、惑わすように幸保の目の前で形を変える。
 ニイ、サン… そう呟いた最期の千榛を映しているようで。
「ち、は…」
 思わず声に出しかけて、幸保は躊躇い、俯いた。
 千榛を選べば、恋友《はるあきら》を失う。東明を選べば、愛弟《ちはる》は完全に消えてしまう。
『何を躊躇う?』
 聴こえた声に幸保は顔を上げた。渦水鬼は真摯に幸保を見詰めている。
『元々御前は愛弟を取り戻したかったのだろうに…』
 己の望みを叶えろ。そう東明が訴えている気がした。
「ハルアキラ、俺は…」
 戸惑い、口を開いたが、それ以上は紡ぐ言葉が見つからない。
 鬼の姿身が揺らぎ、たゆとう様に周囲との境が消えていく。それに気づいて、慌てて幸保は叫んだ。
「待ってくれ!! ハルアキラ…っ!!」
 伸ばした手の先で、大きくうねる渦に翻弄される鬼角が舞う。そして、そのまま耐え切れずに薄桜色の鬼角は砕けた。
 そう。東明の角が、砕けた。

 アラームが鳴り響く。けたたましく感じる電子音に、目を見開いたまま幸保は息を止めた。鳴り終わって漸く息を吐く。
 だるい。寝ていた筈だが、肉体は異常に疲れている。緩慢に上体を起こし、片手で幸保は頭を抱えた。
 観ていた夢の出来事は意味深で、ただの夢とは思えない。
『千榛を選べば、恋友《はるあきら》を失う。東明を選べば、愛弟《ちはる》は完全に消えてしまう。』
 どういう意味なんだ。一体…
***このコメントは削除されています***
アバター
2021/11/22 17:23
もう
カテゴリ:30代以上 2021/11/10 11:24:56
何度もすれ違い、傷付け逢ったはず愛の意味をお互いわかって居るのに、傷つけ。

 いいね♪ コメント(0) 違反申告する
コメント
***このコメントは削除されています***
アバター
2021/11/22 17:23
saa
カテゴリ:日記 2021/11/14 19:09:14
いまいるかんきょうはそれぞれちがうけ、てをかざそう

きみと、であったころ、おなじに

さあてをかざそう
げんじつではおもいどうりにならないこともあるだろう
いやなら、ここでは

さあ
いいかい

おれたちに、たがいに、
また、あるこう

おいで

繋ごう。
***このコメントは削除されています***
アバター
2021/08/08 10:19
ソフィーアンナ*/モナミ*/海野ミカ/柊/しぼやん**/エリーザカイ/桃山ミコ/リスタ/銀鈴/千代女/ティナジェルジュ/諸刃/水木あゆみ/リュバンシュライフェル/


呉羽/シャバトカーナ/鬼薊/にこちゃん/ジャンヌ/牡丹/マイコ/王女ヴィクトリア/北村ミク/彌生/ティファー/天王みちる/猫娘ペルシャ/オルタンス公女/ソラナ/
アバター
2021/08/08 09:48
。。。。。。。。。。。。。。。。。
アバター
2021/07/24 17:57
Alailera  ヨルバ語  無力
アバター
2021/07/24 00:42
nullum corpus   身体が無い
tantum colli    首のみ
aliiautem      体無し
INTACTILIS    無体
アバター
2021/07/14 03:15
名前フラグ 10→無言 20→必要ない 30→好きに呼べ 100→ディルト
王子フラグ 無言   知らない   分からない     塔に幽閉
王女フラグ 無言   知らない   死んだ  80→生きてる 助けてくれ
至宝フラグ 無言   知らない   無いさ  栄光の太陽・至高の月玉
例女フラグ 無言   知らない   関係無い 彼女を助けてくれ 王女だ
***このコメントは削除されています***
アバター
2021/07/14 03:13
名前フラグ 10→無言 20→必要ない 30→好きに呼べ 100→ディルト
王子フラグ 無言   知らない   分からない     塔に幽閉
王女フラグ 無言   知らない   死んだ      80→生きてる 助けてくれ
至宝フラグ 無言   知らない   無いさ      栄光の太陽・至高の月玉
例女フラグ 無言   知らない   関係無い   彼女を助けてくれ 王女だ
アバター
2021/07/14 03:01
。。。。。。。。。。。。。。
***このコメントは削除されています***
アバター
2020/03/14 06:25
では、始めるぞ。

………ッ ………

顔色一つ変えないな。まだまだ、か。

まだ余裕がありそうだな。

***このコメントは削除されています***
アバター
2020/03/14 06:25
では、始めるぞ。

………ッ ………

顔色一つ変えないな。まだまだ、か。

まだ余裕がありそうだな。

***このコメントは削除されています***
アバター
2020/03/14 06:25
では、始めるぞ。

………ッ ………

顔色一つ変えないな。まだまだ、か。

まだ余裕がありそうだな。

アバター
2020/03/14 06:25
では、始めるぞ。

………ッ ………

顔色一つ変えないな。まだまだ、か。

まだ余裕がありそうだな。

アバター
2020/03/14 05:21
いや…だっ… やめ…ろぉ…っ ぁ…あね…う…ぇ…っ
アバター
2020/03/13 18:09
さあ、そろそろ素直に吐いたらどうだ? 辛さに耐えるのも飽いただろう?

俺が信じられないか。まあ、拷問に掛けてくる奴を信じろの方が無茶があるものな。
…別に信用しなくていい。ただ、こうしている間にも王子の命が危ういかもしれない。俺は王子を救出したいだけだ。彼の無事が確認できさえすれば、それ以上、お前に何かを強いるつもりはない。
お前だって早く解放されたいだろうに…。

…こ…ろせ…

まだ言うか。

…しら…ない…俺…はっ…ックぅ

王子の居場所がわからなくても、王女の御身がある場所くらい、せめてそれだけでもわからないか?
俺だって痛めつけて悦ぶ趣味は無い。


あ…ぁ……姉上ぇぇっ…いやだぁ…っ
あ…ね…上にぃ…手を…だすなぁっ

どうも錯乱しているようだ。幼児期に記憶が逆行しているのか?
アバター
2020/03/13 17:51
...............................
アバター
2020/02/13 04:15
 部屋にはそれぞれ小姓が付いていて、好きにして良いとの事だった。廊下からもよく見える和室は、さながら見世小屋の様で。ある意味此処がそういう旅籠なのだと、今更気付いても既に金を支払った後ではバツが悪い。
「どうぞごゆるりと。」
 そう言われ渡された小鍵に、つい障子や襖へと目を遣り回し、私は首を傾げた。何処に使うんだ? そんな疑問が浮かんだが、それは部屋の隅に立つ小姓を見てすぐに解決した。
 彼は鎖で繋がれていた。歳は私より少し下…だろうか。もう十分に成人男子の為りをしていた。
アバター
2019/09/08 22:42
「だって・・・」
躊躇いがちに紡ぐ言葉の先を芳は口ごもる。恥ずかしげに染まる頬と不安に揺れる瞳に、察して裕河は尋ねなかった。今まで自分が避けてきた、その所為だろう。
祐河は手を伸ばし、湿り気を帯びている芳の頭髪に触れ、優しく撫で下ろす。いつもと同じ様に。
***このコメントは削除されています***
アバター
2019/09/08 07:26
躊躇いがちに紡ぐ言葉の先を芳は口ごもる。恥ずかしげに染まる頬と不安に揺れる瞳に、察して裕河は尋ねなかった。今まで自分が避けてきた所為だろう。
アバター
2019/09/08 07:22
シャワーを浴びた芳が、部屋に戻ってきた。緊張した面持ちで裕河を見つめる。洗い晒しの髪の匂いや、温まって上気した肌色が、いつも祐河の雄心を刺激し悩ませたが、今夜は少し違っていた。
「下着・・・穿いてこなかった、のか。」
体を包むように羽織った、バスタオルの下。芳の素のままの体が祐河の眼に映る。小さく、芳は祐河に向けて頷いた。
「だって・・・」
躊躇いがちに紡ぐ言葉の先を芳は口ごもる。恥ずかしげに染まる頬と不安に揺れる瞳に、敢えて裕河は尋ねなかった。
***このコメントは削除されています***
アバター
2019/09/07 22:36
シャワーを浴びてきた芳が、部屋に戻ってきた。緊張した面持ちで裕河を見つめる。洗い晒しの髪の匂いや、温まって上気した肌色が、いつも祐河の雄心を刺激し悩ませたが、今夜は少し違っていた。
「下着・・・穿いてこなかった、のか。」
体を包むように羽織った、バスタオルの下。芳の素のままの体が祐河の眼に映る。小さく、芳は祐河に向けて頷いた。
「だって・・・」
躊躇いがちに紡ぐ言葉の先を芳は口ごもる。恥ずかしげに染まる頬と不安に揺れる瞳に、敢えて裕河は尋ねなかった。

***このコメントは削除されています***
アバター
2019/09/07 22:24
シャワーを浴びてきた芳が、部屋に戻ってきた。緊張した面持ちで裕河を見つめる。洗い晒しの髪に濡れるうなじや、温まって上気した肌色が、いつも祐河の雄心を刺激し悩ませたが、今夜は少し違っていた。
「下着・・・穿いてこなかった、のか。」
体を包むように羽織った、バスタオルの下。芳の素のままの体が祐河の眼に映る。小さく、芳は祐河に向けて頷いた。
「だって・・・」
躊躇いがちに紡がれる言葉を
***このコメントは削除されています***
アバター
2019/09/07 17:46
シャワーを浴びた芳は
***このコメントは削除されています***
アバター
2019/09/07 17:46
シャワーを浴びた芳は
***このコメントは削除されています***
アバター
2019/09/07 17:45
シャワーを浴びた芳は



管理人
ۥ三ツ又
副管理人
-
参加
停止中
公開
メンバー公開
カフェの利用
24時間
カテゴリ
自作小説
メンバー数
7人/最大100人
設立日
2012年12月05日

Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.