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❝御寺居さんちの蔵の中❝
サークルの使い方
ラヴレター
2019/09/07 16:53:26
投稿者:
ުުޮ✿天花✿゜
君と僕の日常の詩 より
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弟子のナナヤ
2025/05/10 09:16
貴方がこれを読んでいる頃は、俺はもう傍に居ないのかもしれない。
それでも、伝えておきたいから、此処に残しておきます。
俺は、このひと月の短い間だったけれど、人間らしく生きられた。
カイのお陰なんだよ。全て。カイに出会わなければ、今でも未だ道具のままだったし、人間として生きる事なんて考えもしなかった。
生きて行こうと思えたのも、カイが傍に居てくれたからだ。
俺は最後の最期まで、諦めずに生きるよ。だって
辛い思いをさせてごめん。愛してくれて有難う。きっとわからず屋だと俺に愛想尽かしただろうけど。
俺はカイのお陰で今度こそ自由になれたんだ。今でも望めるならカイの傍に居たい。
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આかいり౨ઈ
2025/05/05 11:43
思わず突き上げたくなる魅力的な言葉だが。今夜の目的はユウの蜜をたっぷりと味わう事だ。その為に仕掛けたのに、ここで崩しては台無しになる。
グッとブレンは堪えた。そして、繊細なタッチで中の口を押さえ、蓋をする。
「クッ…ユウ、今夜は君の甘い蜜が飲みたい、と言ったろ。」
強烈な刺激にはならないかもだが、じわじわと浸透していくような疼きは感じている筈だ。何処までユウは耐えられるか、互いの根競べとなりそうだ。
子宮の中まで挿れてしまうと、こちらへの刺激も強くなりすぎる。溢れ出す蜜の熱を受けつつ、ギリギリの線を狙って入り過ぎない様に注意した。
「遠慮なく腰を落として良いんだぞ?」
腰の動きに合わせてグイと押し上げては留めて、額に汗を浮かべた顔でユウに挑発する笑みを見せる。ユウの吸い付きもあって、一層太さを増す分身が窮屈な通り道を目一杯押し広げた。限界を超える位、
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આかいり౨ઈ
2025/05/05 11:42
まくき
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ۥ三ツ又
2025/05/03 10:45
hgf
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ۥ三ツ又
2025/03/31 18:53
..
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ۥ三ツ又
2023/09/06 17:18
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ブレン × ユウ
「オイルマッサージ」
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ۥ三ツ又
2023/09/06 02:52
美容に良いとされている高級なローション。ブレンは手に入れたそれを眺め、色々と考えを巡らせていた。
ユウに使ってあげれば喜ぶだろうか。最近はなかなか肌に触れる機会を持てなかったから、その詫びに丁度良いかもしれない。疲れも溜まっているようだから、これでマッサージでもすれば、少しは機嫌を直してくれるかな。
密かにほくそ笑む。折角だから何処かのリゾート地のプライベートコテージにでも泊まって、ゆっくりと彼女の身体を解きほぐすも良い。そんな想像がブレンの頭の中を巡っていた。
そう、満天の星の下。松明に照らされて、揺れるヤシの葉影が煽情的な色を醸し出している。波打つプールサイドでは水面が赤く反射し、宵闇の帳を織り交ぜて揺らめいていた。
遠くに聞こえる鳥の声や、時折吹き抜ける風音、爆ぜる松明、たゆとう波音、それら野性味溢れる原始の音楽に重ねて、ヒーリングミュージックの静かな調べが心地よく合わさっている。
ブレンはユウの手を引いて、プールサイドに置かれた長椅子に腰を下ろした。彼女を連れ出したのは勿論、マッサージを施す為だ。
ココにおいで、と自らの膝上を指差す。きっとユウは戸惑うだろう。
だが素直なユウはきっと、
そのまま仰向けに寝そべった。
そのまま後ろから軽く彼女を抱きすくめる。
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弟子のナナヤ
2023/09/05 21:33
ブレンはユウの手を引いて、プールサイドに置かれた長椅子に腰を下ろした。彼女を連れ出したのは勿論、マッサージを施す為だ。
ココにおいで、と自らの膝上を指差す。きっとユウは戸惑うだろう。
だが素直なユウはきっと、
そのまま仰向けに寝そべった。
そのまま後ろから軽く彼女を抱きすくめる。
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ۥ三ツ又
2023/09/04 23:48
そう、満天の星の下。松明に照らされて、揺れるヤシの葉影が煽情的な色を醸し出している。波打つプールサイドでは水面が赤く反射し、宵闇の帳を織り交ぜて揺らめいていた。
遠くに聞こえる鳥の声や、時折吹き抜ける風音、爆ぜる松明、たゆとう波音、それら野性味溢れる原始の音楽に重ねて、ヒーリングミュージックの静かな調べが心地よく合わさっている。
ブレンはユウの手を引いて、プールサイドに置かれた長椅子に腰を下ろすと、そのまま後ろから軽く彼女を抱きすくめる。
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ۥ三ツ又
2023/09/04 23:40
そう、満天の星の下。松明に照らされて、宵闇の帳が煽情的な
揺れるヤシの葉の影と波打つプールサイドは、野性味溢れる原始の音楽に包まれていた。遠くに聞こえる鳥の声
ブレンはユウの手を引いて、プールサイドに置かれた長椅子に腰を下ろすと、そのまま後ろから軽く彼女を抱きすくめる。
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ۥ三ツ又
2023/09/04 23:26
美容に良いとされている高級なローション。ブレンは手に入れたそれを眺め、色々と考えを巡らせていた。
ユウに使ってあげれば喜ぶだろうか。最近はなかなか肌に触れる機会を持てなかったから、その詫びに丁度良いかもしれない。疲れも溜まっているようだから、これでマッサージでもすれば、少しは機嫌を直してくれるかな。
密かにほくそ笑む。折角だから何処かのリゾート地のプライベートコテージにでも泊まって、ゆっくりと彼女の身体を解きほぐすも良い。そんな想像がブレンの頭の中を巡っていた。
そう、満天の星の下。松明に照らされて、ベンチにプールサイドは
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આかいり౨ઈ
2023/08/26 02:29
美容に良いとされている高級なローション。ブレンは手に入れたそれを眺め、色々と考えを巡らせていた。
ユウに使ってあげれば喜ぶだろうか。最近はなかなか肌に触れる機会を持てなかったから、その詫びに丁度良いかもしれない。疲れも溜まっているようだから、これでマッサージでもすれば、少しは機嫌を直してくれるかな。
密かにほくそ笑む。折角だから何処かのリゾート地のプライベートコテージにでも泊まって、ゆっくりと彼女の身体を解きほぐすも良い。そんな想像がブレンの頭の中を巡っている。
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lisa
2023/08/15 15:43
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ベゼルト in ヴィータ
「細マッチョ」
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肌は白いままだった。髪はいつの間にか光を受けて輝く金色になっている。破れた服の合間から醸すその身体は、思いの外がっしりとしていて、しなやかに思えた手足は逞しさを増していた。
くっきりと浮き出た喉仏がゆっくりと水を飲み下していく。声音も心なしか低い。
「有難うございます。」
空になったグラスを受け取り、マーレンは新しい服を差し出した。
「とにかく着替えた方がいい。汚れてしまっているから。」
ヴィータ…と呼ぶべきか。目の前の相手に困惑しながら似た体格の体をまじまじと眺めた。こんな事が実際に起こるなんて、未だに信じられない。
落ち着きを取り戻したブレンが、ゆっくりとこちらへ戻ってくる。不機嫌さは相変わらず
「ベゼルト。」
嫌な表情を浮かべたまま名を呼ぶブレンに呼応して、彼の足元へ跪いた。
「申し訳ございません、ブレン様。」
首を垂れるその姿は、明主と騎士そのもの。二人の関係がより一層理解できるようだ。
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ۥ三ツ又
2023/08/02 17:32
-------
擢磨×おばば
「三ツ又の件」【化モノ譚 -ムシバミ-】
-------
「そう。御前さんだ。」
再び同じ声がした。聞こえた方に振り向くと、路地の入り口にほの暗く灯りが点っている。見るからに老婆という人物が、易の行燈を上げて座っていた。
「アレは、やめておきな。」
高齢の老婦人、というよりおばばの風情がしっくりくる。占い師らしき老婆はビタとも動かず、擢磨は彼女に釘付けにされて、足止めを喰らった。
「何なんだよ、アレって。」
不服そうに言葉を返す。思い当たるものは擢磨には無い。
「化ノモノ、だよ。」
ゾクン、と擢磨の身の毛がよだつ。そんな言い方をするのは限られていた。途端に警戒心で擢磨の心は埋め尽くされた。下手に言葉を返す相手ではない。黙ったまま、擢磨は老婆を睨みつける。
「三ツ又…アレは親に捨てられ、猫に食われた赤子だ。」
尋常じゃない動揺が、擢磨を襲い始めていた。
三ツ又の事がわかるのなら。考え様によっては、目の前に居るのは人間ではない、ということだ。
もう、昔みたいにそう簡単にヤラれることは無いが、今は朝壬も不調だし。不用意に物の怪との諍いを起こさぬ方が良い。あしらう術を探りながら、必死で擢磨は知恵を巡らせた。
老婆の、見えない表情が嘲り笑っているようにさえ、感じる。
「…なんで? アイツは猫だろうが。」
老婆はしたり顔の口元を見せて、当然の如くに擢磨に答えた。
「親の愛情の代わりを、食ろうた猫に求めたからだ。」
心臓を鷲掴みにされた。強い衝撃が走る。思わず擢磨は自分の胸に手を当てた。息苦しさに締め付けられるし、早鐘を打つ心の臓が痛くて堪らない。自ら鼓動を押さえ込むように、胸を掴んだまま擢磨は手を握りこんだ。
「…ふざ…けんな。」
怒りが擢磨を飲み込んでいく。握り締めた拳を、擢磨は持ち上げた。駄目と分かっているのに、吸い込まれるように、その拳が老婆の顔目掛けて突き進んでいく。老婆の哂いが眼に焼き付いてしまって、忘れられそうにない。
「……ぁっ!!?」
そのまま前のめりに路地へと擢磨は引き込まれた。…ように感じたが。
「あ…れ。」
擢磨は元の飲み屋通りに立っていた。周囲の賑わいは何も変わらない。狐に抓まれた様に、肌に張り付く厭な感覚だけが、擢磨の手元に残っている。
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ۥ三ツ又
2023/08/02 17:30
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擢磨×おばば
「三ツ又の件」【化モノ譚 -ムシバミ-】
-------
「そう。御前さんだ。」
再び同じ声がした。聞こえた方に振り向くと、路地の入り口にほの暗く灯りが点っている。見るからに老婆という人物が、易の行燈を上げて座っていた。
「アレは、やめておきな。」
高齢の老婦人、というよりおばばの風情がしっくりくる。占い師らしき老婆はビタとも動かず、擢磨は彼女に釘付けにされて、足止めを喰らった。
「何なんだよ、アレって。」
不服そうに言葉を返す。思い当たるものは擢磨には無い。
「化ノモノ、だよ。」
ゾクン、と擢磨の身の毛がよだつ。そんな言い方をするのは限られていた。途端に警戒心で擢磨の心は埋め尽くされた。下手に言葉を返す相手ではない。黙ったまま、擢磨は老婆を睨みつける。
「三ツ又…アレは親に捨てられ、猫に食われた赤子だ。」
尋常じゃない動揺が、擢磨を襲い始めていた。
三ツ又の事がわかるのなら。考え様によっては、目の前に居るのは人間ではない、ということだ。
もう、昔みたいにそう簡単にヤラれることは無いが、今は朝壬も不調だし。不用意に物の怪との諍いを起こさぬ方が良い。あしらう術を探りながら、必死で擢磨は知恵を巡らせた。
老婆の、見えない表情が嘲り笑っているようにさえ、感じる。
「…なんで? アイツは猫だろうが。」
老婆はしたり顔の口元を見せて、当然の如くに擢磨に答えた。
「親の愛情の代わりを、食ろうた猫に求めたからだ。」
心臓を鷲掴みにされた。強い衝撃が走る。思わず擢磨は自分の胸に手を当てた。息苦しさに締め付けられるし、早鐘を打つ心の臓が痛くて堪らない。自ら鼓動を押さえ込むように、胸を掴んだまま擢磨は手を握りこんだ。
「…ふざ…けんな。」
怒りが擢磨を飲み込んでいく。握り締めた拳を、擢磨は持ち上げた。駄目と分かっているのに、吸い込まれるように、その拳が老婆の顔目掛けて突き進んでいく。老婆の哂いが眼に焼き付いてしまって、忘れられそうにない。
「……ぁっ!!?」
そのまま前のめりに路地へと擢磨は引き込まれた。…ように感じたが。
「あ…れ。」
擢磨は元の飲み屋通りに立っていた。周囲の賑わいは何も変わらない。狐に抓まれた様に、肌に張り付く厭な感覚だけが、擢磨の手元に残っている。
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આかいり౨ઈ
2023/07/29 01:44
肌は白いままだった。髪はいつの間にか光を受けて輝く金色になっている。破れた服の合間から醸すその身体は、思いの外がっしりとしていて、しなやかに思えた手足は逞しさを増していた。
くっきりと浮き出た喉仏がゆっくりと水を飲み下していく。声音も心なしか低い。
「有難うございます。」
空になったグラスを受け取り、マーレンは新しい服を差し出した。
「とにかく着替えた方がいい。汚れてしまっているから。」
ヴィータ…と呼ぶべきか。目の前の相手に困惑しながら似た体格の体をまじまじと眺めた。こんな事が実際に起こるなんて、未だに信じられない。
落ち着きを取り戻したブレンが、ゆっくりとこちらへ戻ってくる。不機嫌さは相変わらず
「ベゼルト。」
嫌な表情を浮かべたまま名を呼ぶブレンに呼応して、彼の足元へ跪いた。
「申し訳ございません、ブレン様。」
首を垂れるその姿は、明主と騎士そのもの。二人の関係がより一層理解できるようだ。
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આかいり౨ઈ
2023/07/25 17:08
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由野×恭真
「朽チ成シ 閻封蔵3」【半妖祓殺師恋愛帖】
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今更、ほんの少し霊力を回復させても、結界を破る力など到底無い。せめて格子の際で由野を見送るだけでも。恭真は奥歯を噛み締め、身体に力を込める。
「じゃあ恭真さん。少し僕に付き合ってくださいね。」
笑いかける由野に、諦めた眼差しで恭真も微笑み返す。ゆっくりと由野は手を引いて、格子戸の外へ出た。繋いだままの恭真の腕も格子の外側へ出る。
腕に掛かる激痛を想像はしたが。何の変化も起きなかった。
不思議と身体が軽い。結界はどうしたのだろう。ピリリともしない腕に首を傾げ、そのまま体ごと格子を抜ける。
「恭真さん?」
「…いや。」
意外という表情を見せる恭真に、由野が声をかける。まだ恭真は周囲を窺い、首を回した。二人で蔵の扉を潜り、人工光に満ちた通路へ出る。
あまりに静か、だ。結界の外へ出たというのに、扉の前に立つ仁王像も二人を静観している。眩しすぎる光量に、恭真は軽い眩暈を覚えた。
ふらりと揺れる恭真の身体に、由野は驚き、すぐに支え直す。
「大丈夫ですか。」
「ああ。」
明るい光の元、改めて見る普段とは真逆な互いの様相は、恭真も可笑しく感じた。黒いスーツを着こなしている由野が変に思う。
「似合わないな。」
「恭真さんも、です。」
「…そうだな。」
お互いに互いの服装を見て、一頻り笑った。緊迫感の無い和やかな笑いが、それまでの焦燥心を癒してくれる。
由野は微笑んで恭真を見た。近づく顔貌はまた恭真にキスを施す。流れ込む霊力に慌て、恭真は由野を引き離した。
「心配性なんですね。この位は大丈夫。」
そう言うものの。由野の身体を思えば、心配するなという方が無理な話だ。
「シャンとして下さいね。その方が僕は楽で良いですよ。」
自分より大きい恭真さんを支えて歩く方が大変、と愚痴る由野の言葉に流石の恭真も文句を言えなかった。
「ああ、分かった。」
息を整え、恭真も背筋を伸ばす。二人は目配せをし、外へ向けてゆっくり歩き出した
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આかいり౨ઈ
2023/07/25 17:03
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由野×恭真
「朽チ成シ 閻封蔵2」【半妖祓殺師恋愛帖】
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漸く最終通路の中央、閻封蔵の入口の前に由野は辿り着いた。札と結界縄が真っ先に目に映る。門を護る仁王像まで、扉の両脇に置かれていた。
閻封蔵は、外界から完全に遮断された闇の世界だ。唯一通ずるは、この扉だけ。
解けて、と念じ、由野は扉に触れた。
背後で感じた重扉の存在に、誰かが入ってくるのを恭真は感じた。
蔵の中に設けられた、祠の様な、厨子の様な、四角い建物。廻り込んで正面の封殺札を剥がし、由野は扉を開いた。
恭真のいる暗闇に、漸く光が差す。
「恭真さん。」
「…………。」
微笑む恭真のその姿に、痞える胸をぐっと由野は堪えた。
扉を開けてもまだ、頑丈な蜘蛛手格子がある。その向こうに恭真が居た。
痩せた肩が、白衣の上からでもはっきりとわかった。覇気の無さはそれだけ霊力が失われているのだろう。だのに、これでもかという程張られた結界が腹立たしくなった。半妖だからといって衰弱している恭真へ、何故こんな酷い扱いをするのか。どうしても由野には納得が行かなかった。
格子の入口を開け、中へ入る。と、由野は屈んだままで恭真に顔を寄せた。ぴくりとも動けない恭真に、そっと口唇を合わせる。今渡せるだけの霊力を全て、恭真へ注ぎ込んだ。
「……ンッ、」
苦い表情で恭真は由野を押し返した。その非難する眼差しに、少し由野は安堵の笑みを零す。
「立てますか?」
脚を戦慄かせながらも恭真は立ち上がった。
「…っ危ない!」
ぐらつく身体を抱き止める。普段とは逆の立場に不謹慎ながら楽しくなる。何か言いたげに震える口唇を無視し、由野はその手で恭真の身体を抱き締めた。
恭真の匂い、恭真のぬくもり。目を閉じてゆっくり感じていたい。けれど。
「…恭真さん。一緒に来て欲しい場所があるんです。」
「…コ…コ…から…出られ…た…ら……な…。」
途切れ途切れの弱い声で、恭真は返した。
無理だと分かっている。出られる筈は無い。だからこそ、恭真は茶番でも由野の望みを叶えてやりたいと願った。
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આかいり౨ઈ
2023/07/25 17:00
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由野×恭真
「朽チ成シ 閻封蔵」【半妖祓殺師恋愛帖】
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真闇の中で、空《くう》を恭真は見つめていた。自分が形を未だ保っている、その事が不思議な位だ。背には桧板の冷たさが布越しに伝わる。心地いい、と感じた。
板の間の外側には、恐らく幾重にも封縛の結界が張り巡らされているのだろう。その波動が壁からも床からも伝わってくる。弱い呼吸を繰り返し、恭真は壁板に身を預けた。
波動を受け続けるのが少し辛い。
だがそれでも、不安も恐れも恭真には無かった。
一方で。由野は封呪札が至る所に貼られた細長い通路を、一人歩いている。黒服に身を包んでいる所為か、通路全体の白さがやけに目立つ。時折眩みそうになるけれど、先日まで寝込んでいたのだから仕方ない。
足早とまでは行かぬものの、確実に一歩ずつ、出来る限りの速さで進んでいく。
片方の壁の向こうは鍛錬場。その反対側の壁を見つめ、由野は僅かに唇を噛み締めた。
今歩いている場所は、伐妖本部の置かれている本社ビル。その中心に重厚な土蔵が据えられているのを、殆どの者は知らない。土蔵は“閻封蔵”と呼ばれている。それは、祓殺出来ない妖魔を封じ込める為に造り据えられたもの。閉じ込められたらもう、生きて出られない。そう云われる強力な結界で固められている。
由野が知ったのは先日、目が覚めた後の偶然であった。そして今、由野の逢いたい人はそこに居る。
そんな由野の事は知らずに、恭真は一人きり、小さな結界の中で微かに息をしていた。
恭真もまた、この蔵をずっと昔から知っていた。
初めて総帥に調伏されたあの日。誰の手にも負えずに、此処に封印されたのだから。
あの時は、怒りと憎しみで身体が引き千切れそうな程、辛かったというのに。
もう、全てを手放して良い程に穏やかな心持ちになれた今…むしろ安心感で満たされている。これも、由野に出逢えたからこそ。
…由野、無事で居るだろうか。
最後に、猫股へと変化したこの腕の中にいて、微笑みながら口付けてくれた。その愛しさを胸に、恭真はそっと目蓋を閉じた。
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આかいり౨ઈ
2023/07/25 16:47
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恭真×由野
「濡レ衣-夏祭り祓殺仕事 鼻緒」【半妖祓殺師恋愛帖 】
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はぐれてしまった二人を、階段の上から探す。精一杯目を凝らすものの、普段は見つけ易い爪牙でさえも人込の中に紛れて分からない。
「行くぞ。」
恭真は放っておけと言わんばかりに吐いた。由野は反論するように声を上げた。
「待ってください、恭真さん。」
折角皆で来ているのだ。バラバラになりたくない。
「埒が明かない。その内、あいつ等も戻ってくるだろう。」
それでも由野は諦めがつかない。いつも単独でいる恭真にしてみれば、これでもよく粘った方だ。そのまま恭真は歩き出し、その背を由野が追いかける。
「あっ!!」
よろめいて、でも辛うじて転ぶのは避けた。由野は足下に目を遣り、溜息を吐く。
「どうした。」
由野の悲鳴に恭真は足を止め、振り向く。不機嫌な表情はそのままだ。
「す、済みません。鼻緒が切れてしまって…」
フイ、とすぐに前を向いてしまった。そのまま恭真は行ってしまうだろうと、追い縋るのを諦める。歩けぬ足に、どうしようか由野は悩んでいた。
けれど。
「恭真、さん?」
「乗れ。」
目の前で背を向けしゃがむ恭真の姿に、由野は戸惑った。
「それでは歩けないだろう。だから乗れ。」
「でも…」
「つべこべ言うな。」
ぴしゃりと切る。冷たい言様と、目の前の気遣う行動が、ちぐはぐで。どちらが本当の恭真なんだろうか、と由野は分からなくなった。
いつも冷酷で協調性もなく、周りと馴染もうとしない恭真。だが、時折垣間見るこんな優しさが、恭真の本音の姿なんだとしたら。
どうして、こんなに冷たく振舞うのだろう。
「早くしろ。」
「あ…はい。」
由野は急かされるまま、恭真の背中に負ぶさった。
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***このコメントは削除されています***
આかいり౨ઈ
2023/07/25 13:11
肌は白いままだった。髪はいつの間にか光を受けて輝く金色になっている。破れた服の合間から醸すその身体は、思いの外がっしりとしていて、しなやかに思えた手足は逞しさを増していた。
くっきりと浮き出た喉仏がゆっくりと水を飲み下していく。声音も心なしか低い。
「有難うございます。」
空になったグラスを受け取り、マーレンはヴィータに新しい服を差し出した…つもりだった。
「とにかく着替えた方がいい。汚れてしまっているから。」
「ベゼルト。」
嫌な表情を浮かべたまま名を呼ぶブレンに呼応して、すぐさま彼の足元へ駆けつけ跪く。
「申し訳ございません、ブレン様。」
首を垂れるその姿は、明主と騎士そのもの。二人の関係がより一層理解できるようだ。
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આかいり౨ઈ
2023/07/25 13:10
肌は白いままだった。髪はいつの間にか光を受けて輝く金色になっている。破れた服の合間から醸すその身体は、思いの外がっしりとしていて、しなやかに思えた手足は逞しさを増していた。
くっきりと浮き出た喉仏がゆっくりと水を飲み下していく。声音も心なしか低い。
「有難うございます。」
空になったグラスを受け取り、マーレンはヴィータに新しい服を差し出した…つもりだった。
「とにかく着替えた方がいい。汚れてしまっているから。」
「ベゼルト。」
嫌な表情を浮かべたまま名を呼ぶブレンに呼応して、すぐさま彼の足元へ駆けつけ跪く。
「申し訳ございません、ブレン様。」
その姿は明主と騎士そのもの。二人の関係がより一層理解できる。
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આかいり౨ઈ
2023/07/25 13:04
肌は白いままだった。髪はいつの間にか光を受けて輝く金色になっている。破れた服の合間から醸すその身体は、思いの外がっしりとしていて、しなやかに思えた手足は逞しさを増していた。
くっきりと浮き出た喉仏がゆっくりと水を飲み下していく。声音も心なしか低い。
「有難うございます。」
空になったグラスを受け取り、マーレンは
「とにかく着替えた方がいい。汚れてしまっているから。」
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આかいり౨ઈ
2023/07/25 12:49
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ブレン×ヴィータ
「血反吐はき」 ※ブレンは精神的に、ヴィータは体質です
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背中から肺を突き破り、凶手がヴィータの躰を貫く。完全な油断であった。
「愚か者がっ!!」
思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らす。が、飲み込める様子はない。
ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽくなり、まるでそれは干からびていくようだった。
脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、その手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強める。それでも夥しく流れ出る血は、二人を赤く染め上げていく。張りを失くした豊乳がどんどん縮んで、平らで貧相な体に変わりつつあった。
穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。喉が微かに震え、上下に大きく動く。その感覚にブレンは唇を漸く離した。白い顔肌にべったりと塗れた赤い血が殊更に目立つ。ヴィータの体から流出していた血液は終息を見せ、貫通した体の傷口は新しい肉芽で埋まっていく。
危機は去った。かに見えた。
回復した身体を離し、ブレンは立ち上がった。見下ろす双眸が憔悴し、視線を逸らす様に彷徨い出す。そのままふらふらとブレンは離れていき、地面に蹲った。
ヴィータも一瞬は力強い眼光を宿したが、すぐに見開いた眼の瞳孔を窄めて口元を押さえた。上体を支える腕がわなわなと戦慄する。そして。
「ヴェええっっ!!」
二人同時に、揃って吐いた。
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***このコメントは削除されています***
આかいり౨ઈ
2023/07/25 12:46
背中から肺を突き破り、凶手がヴィータの躰を貫く。完全な油断であった。
「愚か者がっ!!」
思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らす。が、飲み込める様子はない。
ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽくなり、まるでそれは干からびていくようだった。
脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、その手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強める。それでも夥しく流れ出る血は、二人を赤く染め上げていく。張りを失くした豊乳がどんどん縮んで、平らで貧相な体に変わりつつあった。
穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。喉が微かに震え、上下に大きく動く。その感覚にブレンは唇を漸く離した。白い顔肌にべったりと塗れた赤い血が殊更に目立つ。ヴィータの体から流出していた血液は終息を見せ、貫通した体の傷口は新しい肉芽で埋まっていく。
危機は去った。かに見えた。
回復した身体を離し、ブレンは立ち上がった。見下ろす双眸が憔悴し、視線を逸らす様に彷徨い出す。そのままふらふらとブレンは離れていき、地面に蹲った。
ヴィータも一瞬は力強い眼光を宿したが、すぐに見開いた眼の瞳孔を窄めて口元を押さえた。上体を支える腕がわなわなと戦慄する。そして。
「ヴェええっっ!!」
二人同時に、揃って吐いた。
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આかいり౨ઈ
2023/07/25 12:35
背中から肺を突き破り、凶手がヴィータの躰を貫く。完全な油断であった。
「愚か者がっ!!」
思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み千切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らすも、飲み込める様子はない。
ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽく、干からびていくようだった。
脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、反対の手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強める。それでも夥しく流れ出る血は、二人を赤く染め上げていく。張りを失くした豊乳がどんどん縮んで、平らで貧相な体に変わりつつあった。
穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。喉が微かに震え、上下に大きく動く。その感覚にブレンは唇を漸く離した。白い顔肌にべったりと塗れた赤い血が殊更に目立つ。ヴィータの体から流出していた血液は終息を見せ、貫通した体の傷口は新しい肉芽で埋まっていく。
危機は去った。かに見えた。
回復した身体を離し、ブレンは立ち上がった。見下ろす双眸が憔悴し、視線を逸らす様に彷徨い出す。そのままふらふらとブレンは離れ、地面に蹲った。
ヴィータも
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આかいり౨ઈ
2023/07/25 12:24
背中から肺を突き破り、凶手がヴィータの躰を貫く。完全な油断であった。
「愚か者がっ!!」
思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み千切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らすも、飲み込める様子はない。
ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽく、干からびていくようだった。
脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、反対の手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強める。それでも夥しく流れ出る血は、二人を赤く染め上げていく。張りを失くした豊乳がどんどん縮んで、平らで貧相な体に変わりつつあった。
穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。
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આかいり౨ઈ
2023/07/25 12:24
背中から肺を突き破り、凶手がヴィータの躰を貫く。完全な油断であった。
「愚か者がっ!!」
思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み千切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らすも、飲み込める様子はない。
ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽく、干からびていくようだった。
脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、反対の手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強める。それでも夥しく流れ出る血は、二人を赤く染め上げていく。張りを失くした豊乳がどんどん縮んで、平らで貧相な体に変わりつつあった。
穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。
「ッァハ、」
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આかいり౨ઈ
2023/07/25 12:14
背中から肺を突き破り、凶手がヴィータの躰を貫く。完全な油断であった。
「愚か者がっ!!」
思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み千切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らすも、飲み込める様子はない。
ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽく、干からびていくようだった。
穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、反対の手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強めていく。そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。
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આかいり౨ઈ
2023/07/22 00:35
背中から肺を突き破り、凶手がヴィータの躰を貫く。一瞬の油断、であった。
「愚か者がっ!!」
思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンは即座に
血反吐はそのまま
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આかいり౨ઈ
2023/07/22 00:20
【触レテハナラヌ】
それは、城が建つよりもずっとずっと昔のこと。
小高い丘の向こう側に、森の主《ヌシ》は存在した。主に実体はなく、代わりに森の植物を意のままに動かすことが出来た。森自体が主の身体だとも言えた。
主は森の木々を繁らせ、その枝葉の先に豊かな果を実らせた。また、地面の上でそよぐ草達の花を綺麗に咲かせもした。そんな花や果実を求め、小さな鳥や動物たちが森の主の下《もと》を代わる代わる訪れた。
或る時、森の主は見慣れぬ生き物を見つけた。ヒト、と呼ばれるその動物は森の主の下へやって来て、足元に咲く草花に感嘆した。その表情が綻ぶ姿が、主にはまるで初めて見る美しい花が咲いていく様で。
その新鮮さに森の主は心が動かされた。
戯れに、樹上に生る果実をひとつ、ヒトの前に落としてみると、また嬉しそうに顔を綻ばせ、お礼にヒトは自らの名を森の主に教えて去って行った。
種族を区別するモノなら知っているが。個体を区別する、名前、というものが有るのは知らなかった。新しいことを知る、というのがこれ程心を躍らせるものだと、森の主は初めて知った。
最初に訪れたヒト『』は、それ以降、度々森の主の下を訪れるようになった。
森の主はその都度『』の色んな表情を見ようと、様々な事を試みた。例えば、『』の声に合わせて枝葉を揺らしてみたり、草花を躍らせてみたり。
一番の力作は、樹木の根を盛り上がらせて『』と同じ形を造ったことだ。勿論、森の主にはそれを自由に動かす事ができる。初めは『』も面白がっていた。楽しげに声を上げて、次第に声は荒く聞こえた。
去っていく『』の顔は、森の主には笑っているように見えた。
けれど。以来『』は森の主の下へ来なくなった。
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આかいり౨ઈ
2023/07/21 17:17
随分と時が経ってから、『』が森の主の下を訪れた。
小さかった体は大きくなり、『』の体にも実が生っている。森の主は全ての根が地面から這い出してしまいそうな勢いで、大層喜んだ。何よりもまた『』に会えたことが嬉しかったのだ。けれど、『』はそれ以上主の下へは近寄って来ない。
どうしたのだろう。怪訝に思う主は枝葉を蔓に変え、『』の体に伸ばした。途端。
鋭いナイフが主の伸ばした蔓をバッサリ切り落とした。
森の主は唖然とした。全く訳が分からない。何故こんな事になったのか、何故こんな事をされるのか。
『』の隣には『』と同じヒトの種族がいた。そのヒトは『』の前に立ち、ナイフを構えて森の主を威嚇している。不愉快な気分に主は森を身じろがせた。
急に襲った地揺れにヒトは立っていられず、体勢を崩す。主はその隙を逃さず見ていた。
邪魔だ、と。グンッと太枝をしならせて、ヒトを払い飛ばす。『』は地面にしゃがみ込んだまま、両手で口元を覆うようにして震えていた。
森の主が今度こそと蔓の先を『』に向けたその時。
『』が金切声を上げて逃げ出した。
待って。どうして逃げるの? そう伸ばした蔓を逃げ惑う『』の腕に絡ませると『』は狂ったように暴れまくる。離したくない。森の主は更に強く絡み付かせて己の元へ引き寄せようと、腕を締め上げた蔓を手繰り寄せた。
何かがペキバキ折れる音がした。『』が悲鳴を上げる。『』の腕が蔓のように伸びて捩じれていく。
強烈な悲鳴と共に、温かい赤い水が『』の体から噴き出した。鉄の錆びる嫌な臭いが辺りに広がった。森の主は驚いて締めていた蔓を弛めた。ゴト、と地面に落ちた腕はあちこち歪んでいて、『』と繋がっていた部分は千切れている。
森の主は慌てて落ちた腕を拾い上げ、千切れた場所へ戻した。
けれど、赤い水で濡れてしまったそこは、何度くっ付けても繋がらない。
か細い声で『』は言った。“タス…ケテ”と。
もう一人のヒトが『』に駆け寄り、何かを喋っている。再び主は蔓の先を切られてしまった。だが、蔓を切ったその手が光を操り、『』の赤い水を止めていく。苦しそうに歪んでいた『』の表情が少しずつ和らいでいく。
もう、主に蔓を伸ばす勇気は無かった。去っていく二人の背を茫然と見つめた。『』の無事を祈りながら。
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આかいり౨ઈ
2023/07/21 17:16
それは、城が建つよりもずっとずっと昔のこと。
小高い丘の向こう側に、森の主《ヌシ》は存在した。主に実体はなく、代わりに森の植物を意のままに動かすことが出来た。森自体が主の身体だとも言えた。
主は森の木々を繁らせ、その枝葉の先に豊かな果を実らせた。また、地面の上でそよぐ草達の花を綺麗に咲かせもした。そんな花や果実を求め、小さな鳥や動物たちが森の主の下《もと》を代わる代わる訪れた。
或る時、森の主は見慣れぬ生き物を見つけた。ヒト、と呼ばれるその動物は森の主の下へやって来て、足元に咲く草花に感嘆した。その表情が綻ぶ姿が、主にはまるで初めて見る美しい花が咲いていく様で。
その新鮮さに森の主は心が動かされた。
戯れに、樹上に生る果実をひとつ、ヒトの前に落としてみると、また嬉しそうに顔を綻ばせ、お礼にヒトは自らの名を森の主に教えて去って行った。
種族を区別するモノなら知っているが。個体を区別する、名前、というものが有るのは知らなかった。新しいことを知る、というのがこれ程心を躍らせるものだと、森の主は初めて知った。
最初に訪れたヒト『』は、それ以降、度々森の主の下を訪れるようになった。
森の主はその都度『』の色んな表情を見ようと、様々な事を試みた。例えば、『』の声に合わせて枝葉を揺らしてみたり、草花を躍らせてみたり。
一番の力作は、樹木の根を盛り上がらせて『』と同じ形を造ったことだ。勿論、森の主にはそれを自由に動かす事ができる。初めは『』も面白がっていた。楽しげに声を上げて、次第に声は荒く聞こえた。
去っていく『』の顔は、森の主には笑っているように見えた。
けれど。以来『』は森の主の下へ来なくなった。
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આかいり౨ઈ
2023/07/21 17:11
【孝子×ハク 獣耳と尻尾】
「あら。」
孝子が戻ってくると、ハクは転《うた》た寝をしていた。腰肌の見える格好で無防備に丸くなっている。孝子は畳んだばかりのバスタオルを、そっとハクの腰腹に掛けた。
こうして見ると顔立ちはまだ幼く、普通に街中にいる子供と何ら変わり無い。余程疲れたか、ハクはぐっすり眠っていた。孝子はハクの隣に腰を落ち着けて、髪を指で梳き撫でる。
流石に、あんな出来事の起った後なら、少々の物事は如何とも思わなくなった。人間ではない身体能力を見せられはしたものの、ハクが此処にやって来た当初よりは孝子も随分慣れたものだ。
指を滑らせた髪の中に、手触りの違う硬い髪が混ざっている。解そうと指で揉むと、急に其所の髪の毛が動いた。
「キャッ…」
驚いて思わず短い声を上げる。だが流石にもう動揺はしない。飛び出したのは、猫みたいな獣耳だった。立って暫く先端はピクピク動いたが、程なくペタンと伏せて髪の中に戻る。
孝子はもう一度指を伸ばして、耳の付け根をこそばす様に掻き解した。マッサージを施す気持ちで続けていると、気持ちよさげに寝顔が緩み、耳もだらしなく開いていく。
何だか楽しくなって、孝子は気分良くマッサージを続けた。その所為だろうか、孝子自身も腕がポカポカ温かくなった気がした。
「え、」
そう思ったのは自分の勘違いだったと、腕に目を遣って孝子は知った。気づかぬ間に伸びてきた黒い尻尾が、孝子の腕を探って巻き付いていた。髪同様の同じ毛並みの尻尾は、肌触り良く孝子の腕にじゃれついている。
それだけかと思ったら、更に尻尾は先が割れて、孝子の指を挟んで締める。
その感触は、赤ちゃんが指を握ってくるのとそっくりで。ハクの寝姿と併せもって、孝子は久々に萌えた。
な……な、なんて可愛いの!?
「母さん、あのさ…」
その時、無粋にも息子の幸保が部屋に入ってくる。と同時に、ハクの耳と尻尾を見て、強い口調で叱咤する。
「ハクっ!!」
途端にハクはがば、と起き上がり、慌てて耳と尻尾を仕舞った。
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આかいり౨ઈ
2023/07/21 17:07
【夢×幸保 予見】
浮遊感に包まれて、河嶋はきつく閉じた眼を開いた。辺りは一面薄闇に覆われていて、今自分が何処にいるのか分からない。
落ちているのか。いや、沈んでいるのか。水中の如く揺れる髪の毛先が、眼の端に映り込み、そうぼんやりと考える。
僅かに頭をずらして、己が飲み込まれていく先を見る。黒く歪《ひず》んだ靄の中に、幽かな光を感じた気がした。
まとわりつく気の重みに、体が思うように動かない。それでも身を捩って幸保は体勢を立て直した。
薄桜色の欠片が仄かに光を放っている。その事に気づいて幸保が手を伸ばすと、欠片が回転して小さな渦流を作った。そのまま渦流は人を形作り、惑わすように幸保の目の前で形を変える。
ニイ、サン… そう呟いた最期の千榛を映しているようで。
「ち、は…」
思わず声に出しかけて、幸保は躊躇い、俯いた。
千榛を選べば、恋友《はるあきら》を失う。東明を選べば、愛弟《ちはる》は完全に消えてしまう。
『何を躊躇う?』
聴こえた声に幸保は顔を上げた。渦水鬼は真摯に幸保を見詰めている。
『元々御前は愛弟を取り戻したかったのだろうに…』
己の望みを叶えろ。そう東明が訴えている気がした。
「ハルアキラ、俺は…」
戸惑い、口を開いたが、それ以上は紡ぐ言葉が見つからない。
鬼の姿身が揺らぎ、たゆとう様に周囲との境が消えていく。それに気づいて、慌てて幸保は叫んだ。
「待ってくれ!! ハルアキラ…っ!!」
伸ばした手の先で、大きくうねる渦に翻弄される鬼角が舞う。そして、そのまま耐え切れずに薄桜色の鬼角は砕けた。
そう。東明の角が、砕けた。
アラームが鳴り響く。けたたましく感じる電子音に、目を見開いたまま幸保は息を止めた。鳴り終わって漸く息を吐く。
だるい。寝ていた筈だが、肉体は異常に疲れている。緩慢に上体を起こし、片手で幸保は頭を抱えた。
観ていた夢の出来事は意味深で、ただの夢とは思えない。
『千榛を選べば、恋友《はるあきら》を失う。東明を選べば、愛弟《ちはる》は完全に消えてしまう。』
どういう意味なんだ。一体…
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ۥ三ツ又
2021/11/22 17:23
もう
カテゴリ:30代以上 2021/11/10 11:24:56
何度もすれ違い、傷付け逢ったはず愛の意味をお互いわかって居るのに、傷つけ。
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コメント
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ۥ三ツ又
2021/11/22 17:23
saa
カテゴリ:日記 2021/11/14 19:09:14
いまいるかんきょうはそれぞれちがうけ、てをかざそう
きみと、であったころ、おなじに
さあてをかざそう
げんじつではおもいどうりにならないこともあるだろう
いやなら、ここでは
さあ
いいかい
おれたちに、たがいに、
また、あるこう
おいで
繋ごう。
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.三叉
2021/08/08 10:19
ソフィーアンナ*/モナミ*/海野ミカ/柊/しぼやん**/エリーザカイ/桃山ミコ/リスタ/銀鈴/千代女/ティナジェルジュ/諸刃/水木あゆみ/リュバンシュライフェル/
呉羽/シャバトカーナ/鬼薊/にこちゃん/ジャンヌ/牡丹/マイコ/王女ヴィクトリア/北村ミク/彌生/ティファー/天王みちる/猫娘ペルシャ/オルタンス公女/ソラナ/
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.三叉
2021/08/08 09:48
。。。。。。。。。。。。。。。。。
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弟子のナナヤ
2021/07/24 17:57
Alailera ヨルバ語 無力
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.三叉
2021/07/24 00:42
nullum corpus 身体が無い
tantum colli 首のみ
aliiautem 体無し
INTACTILIS 無体
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弟子のナナヤ
2021/07/14 03:15
名前フラグ 10→無言 20→必要ない 30→好きに呼べ 100→ディルト
王子フラグ 無言 知らない 分からない 塔に幽閉
王女フラグ 無言 知らない 死んだ 80→生きてる 助けてくれ
至宝フラグ 無言 知らない 無いさ 栄光の太陽・至高の月玉
例女フラグ 無言 知らない 関係無い 彼女を助けてくれ 王女だ
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弟子のナナヤ
2021/07/14 03:13
名前フラグ 10→無言 20→必要ない 30→好きに呼べ 100→ディルト
王子フラグ 無言 知らない 分からない 塔に幽閉
王女フラグ 無言 知らない 死んだ 80→生きてる 助けてくれ
至宝フラグ 無言 知らない 無いさ 栄光の太陽・至高の月玉
例女フラグ 無言 知らない 関係無い 彼女を助けてくれ 王女だ
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弟子のナナヤ
2021/07/14 03:01
。。。。。。。。。。。。。。
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ުުޮ転嫁✿゜
2020/03/14 06:25
では、始めるぞ。
………ッ ………
顔色一つ変えないな。まだまだ、か。
まだ余裕がありそうだな。
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ުުޮ転嫁✿゜
2020/03/14 06:25
では、始めるぞ。
………ッ ………
顔色一つ変えないな。まだまだ、か。
まだ余裕がありそうだな。
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ުުޮ転嫁✿゜
2020/03/14 06:25
では、始めるぞ。
………ッ ………
顔色一つ変えないな。まだまだ、か。
まだ余裕がありそうだな。
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ުުޮ転嫁✿゜
2020/03/14 06:25
では、始めるぞ。
………ッ ………
顔色一つ変えないな。まだまだ、か。
まだ余裕がありそうだな。
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ުުޮ転嫁✿゜
2020/03/14 05:21
いや…だっ… やめ…ろぉ…っ ぁ…あね…う…ぇ…っ
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ުުޮ転嫁✿゜
2020/03/13 18:09
さあ、そろそろ素直に吐いたらどうだ? 辛さに耐えるのも飽いただろう?
俺が信じられないか。まあ、拷問に掛けてくる奴を信じろの方が無茶があるものな。
…別に信用しなくていい。ただ、こうしている間にも王子の命が危ういかもしれない。俺は王子を救出したいだけだ。彼の無事が確認できさえすれば、それ以上、お前に何かを強いるつもりはない。
お前だって早く解放されたいだろうに…。
…こ…ろせ…
まだ言うか。
…しら…ない…俺…はっ…ックぅ
王子の居場所がわからなくても、王女の御身がある場所くらい、せめてそれだけでもわからないか?
俺だって痛めつけて悦ぶ趣味は無い。
あ…ぁ……姉上ぇぇっ…いやだぁ…っ
あ…ね…上にぃ…手を…だすなぁっ
どうも錯乱しているようだ。幼児期に記憶が逆行しているのか?
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ުުޮ転嫁✿゜
2020/03/13 17:51
...............................
違反申告
ުުޮ転嫁✿゜
2020/02/13 04:15
部屋にはそれぞれ小姓が付いていて、好きにして良いとの事だった。廊下からもよく見える和室は、さながら見世小屋の様で。ある意味此処がそういう旅籠なのだと、今更気付いても既に金を支払った後ではバツが悪い。
「どうぞごゆるりと。」
そう言われ渡された小鍵に、つい障子や襖へと目を遣り回し、私は首を傾げた。何処に使うんだ? そんな疑問が浮かんだが、それは部屋の隅に立つ小姓を見てすぐに解決した。
彼は鎖で繋がれていた。歳は私より少し下…だろうか。もう十分に成人男子の為りをしていた。
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ުުޮ✿天花✿゜
2019/09/08 22:42
「だって・・・」
躊躇いがちに紡ぐ言葉の先を芳は口ごもる。恥ずかしげに染まる頬と不安に揺れる瞳に、察して裕河は尋ねなかった。今まで自分が避けてきた、その所為だろう。
祐河は手を伸ばし、湿り気を帯びている芳の頭髪に触れ、優しく撫で下ろす。いつもと同じ様に。
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ުުޮ✿天花✿゜
2019/09/08 07:26
躊躇いがちに紡ぐ言葉の先を芳は口ごもる。恥ずかしげに染まる頬と不安に揺れる瞳に、察して裕河は尋ねなかった。今まで自分が避けてきた所為だろう。
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ުުޮ✿天花✿゜
2019/09/08 07:22
シャワーを浴びた芳が、部屋に戻ってきた。緊張した面持ちで裕河を見つめる。洗い晒しの髪の匂いや、温まって上気した肌色が、いつも祐河の雄心を刺激し悩ませたが、今夜は少し違っていた。
「下着・・・穿いてこなかった、のか。」
体を包むように羽織った、バスタオルの下。芳の素のままの体が祐河の眼に映る。小さく、芳は祐河に向けて頷いた。
「だって・・・」
躊躇いがちに紡ぐ言葉の先を芳は口ごもる。恥ずかしげに染まる頬と不安に揺れる瞳に、敢えて裕河は尋ねなかった。
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ުުޮ✿天花✿゜
2019/09/07 22:36
シャワーを浴びてきた芳が、部屋に戻ってきた。緊張した面持ちで裕河を見つめる。洗い晒しの髪の匂いや、温まって上気した肌色が、いつも祐河の雄心を刺激し悩ませたが、今夜は少し違っていた。
「下着・・・穿いてこなかった、のか。」
体を包むように羽織った、バスタオルの下。芳の素のままの体が祐河の眼に映る。小さく、芳は祐河に向けて頷いた。
「だって・・・」
躊躇いがちに紡ぐ言葉の先を芳は口ごもる。恥ずかしげに染まる頬と不安に揺れる瞳に、敢えて裕河は尋ねなかった。
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ުުޮ✿天花✿゜
2019/09/07 22:24
シャワーを浴びてきた芳が、部屋に戻ってきた。緊張した面持ちで裕河を見つめる。洗い晒しの髪に濡れるうなじや、温まって上気した肌色が、いつも祐河の雄心を刺激し悩ませたが、今夜は少し違っていた。
「下着・・・穿いてこなかった、のか。」
体を包むように羽織った、バスタオルの下。芳の素のままの体が祐河の眼に映る。小さく、芳は祐河に向けて頷いた。
「だって・・・」
躊躇いがちに紡がれる言葉を
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ުުޮ✿天花✿゜
2019/09/07 17:46
シャワーを浴びた芳は
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ުުޮ✿天花✿゜
2019/09/07 17:46
シャワーを浴びた芳は
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ުުޮ✿天花✿゜
2019/09/07 17:45
シャワーを浴びた芳は
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管理人
ۥ三ツ又
副管理人
-
参加
停止中
公開
メンバー公開
カフェの利用
24時間
カテゴリ
自作小説
メンバー数
7
人/最大100人
設立日
2012年12月05日
それでも、伝えておきたいから、此処に残しておきます。
俺は、このひと月の短い間だったけれど、人間らしく生きられた。
カイのお陰なんだよ。全て。カイに出会わなければ、今でも未だ道具のままだったし、人間として生きる事なんて考えもしなかった。
生きて行こうと思えたのも、カイが傍に居てくれたからだ。
俺は最後の最期まで、諦めずに生きるよ。だって
辛い思いをさせてごめん。愛してくれて有難う。きっとわからず屋だと俺に愛想尽かしただろうけど。
俺はカイのお陰で今度こそ自由になれたんだ。今でも望めるならカイの傍に居たい。
思わず突き上げたくなる魅力的な言葉だが。今夜の目的はユウの蜜をたっぷりと味わう事だ。その為に仕掛けたのに、ここで崩しては台無しになる。
グッとブレンは堪えた。そして、繊細なタッチで中の口を押さえ、蓋をする。
「クッ…ユウ、今夜は君の甘い蜜が飲みたい、と言ったろ。」
強烈な刺激にはならないかもだが、じわじわと浸透していくような疼きは感じている筈だ。何処までユウは耐えられるか、互いの根競べとなりそうだ。
子宮の中まで挿れてしまうと、こちらへの刺激も強くなりすぎる。溢れ出す蜜の熱を受けつつ、ギリギリの線を狙って入り過ぎない様に注意した。
「遠慮なく腰を落として良いんだぞ?」
腰の動きに合わせてグイと押し上げては留めて、額に汗を浮かべた顔でユウに挑発する笑みを見せる。ユウの吸い付きもあって、一層太さを増す分身が窮屈な通り道を目一杯押し広げた。限界を超える位、
ブレン × ユウ
「オイルマッサージ」
------------------------------------------------------------------
ユウに使ってあげれば喜ぶだろうか。最近はなかなか肌に触れる機会を持てなかったから、その詫びに丁度良いかもしれない。疲れも溜まっているようだから、これでマッサージでもすれば、少しは機嫌を直してくれるかな。
密かにほくそ笑む。折角だから何処かのリゾート地のプライベートコテージにでも泊まって、ゆっくりと彼女の身体を解きほぐすも良い。そんな想像がブレンの頭の中を巡っていた。
そう、満天の星の下。松明に照らされて、揺れるヤシの葉影が煽情的な色を醸し出している。波打つプールサイドでは水面が赤く反射し、宵闇の帳を織り交ぜて揺らめいていた。
遠くに聞こえる鳥の声や、時折吹き抜ける風音、爆ぜる松明、たゆとう波音、それら野性味溢れる原始の音楽に重ねて、ヒーリングミュージックの静かな調べが心地よく合わさっている。
ブレンはユウの手を引いて、プールサイドに置かれた長椅子に腰を下ろした。彼女を連れ出したのは勿論、マッサージを施す為だ。
ココにおいで、と自らの膝上を指差す。きっとユウは戸惑うだろう。
だが素直なユウはきっと、
そのまま仰向けに寝そべった。
そのまま後ろから軽く彼女を抱きすくめる。
ココにおいで、と自らの膝上を指差す。きっとユウは戸惑うだろう。
だが素直なユウはきっと、
そのまま仰向けに寝そべった。
そのまま後ろから軽く彼女を抱きすくめる。
遠くに聞こえる鳥の声や、時折吹き抜ける風音、爆ぜる松明、たゆとう波音、それら野性味溢れる原始の音楽に重ねて、ヒーリングミュージックの静かな調べが心地よく合わさっている。
ブレンはユウの手を引いて、プールサイドに置かれた長椅子に腰を下ろすと、そのまま後ろから軽く彼女を抱きすくめる。
揺れるヤシの葉の影と波打つプールサイドは、野性味溢れる原始の音楽に包まれていた。遠くに聞こえる鳥の声
ブレンはユウの手を引いて、プールサイドに置かれた長椅子に腰を下ろすと、そのまま後ろから軽く彼女を抱きすくめる。
ユウに使ってあげれば喜ぶだろうか。最近はなかなか肌に触れる機会を持てなかったから、その詫びに丁度良いかもしれない。疲れも溜まっているようだから、これでマッサージでもすれば、少しは機嫌を直してくれるかな。
密かにほくそ笑む。折角だから何処かのリゾート地のプライベートコテージにでも泊まって、ゆっくりと彼女の身体を解きほぐすも良い。そんな想像がブレンの頭の中を巡っていた。
そう、満天の星の下。松明に照らされて、ベンチにプールサイドは
美容に良いとされている高級なローション。ブレンは手に入れたそれを眺め、色々と考えを巡らせていた。
ユウに使ってあげれば喜ぶだろうか。最近はなかなか肌に触れる機会を持てなかったから、その詫びに丁度良いかもしれない。疲れも溜まっているようだから、これでマッサージでもすれば、少しは機嫌を直してくれるかな。
密かにほくそ笑む。折角だから何処かのリゾート地のプライベートコテージにでも泊まって、ゆっくりと彼女の身体を解きほぐすも良い。そんな想像がブレンの頭の中を巡っている。
ベゼルト in ヴィータ
「細マッチョ」
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肌は白いままだった。髪はいつの間にか光を受けて輝く金色になっている。破れた服の合間から醸すその身体は、思いの外がっしりとしていて、しなやかに思えた手足は逞しさを増していた。
くっきりと浮き出た喉仏がゆっくりと水を飲み下していく。声音も心なしか低い。
「有難うございます。」
空になったグラスを受け取り、マーレンは新しい服を差し出した。
「とにかく着替えた方がいい。汚れてしまっているから。」
ヴィータ…と呼ぶべきか。目の前の相手に困惑しながら似た体格の体をまじまじと眺めた。こんな事が実際に起こるなんて、未だに信じられない。
落ち着きを取り戻したブレンが、ゆっくりとこちらへ戻ってくる。不機嫌さは相変わらず
「ベゼルト。」
嫌な表情を浮かべたまま名を呼ぶブレンに呼応して、彼の足元へ跪いた。
「申し訳ございません、ブレン様。」
首を垂れるその姿は、明主と騎士そのもの。二人の関係がより一層理解できるようだ。
擢磨×おばば
「三ツ又の件」【化モノ譚 -ムシバミ-】
-------
「そう。御前さんだ。」
再び同じ声がした。聞こえた方に振り向くと、路地の入り口にほの暗く灯りが点っている。見るからに老婆という人物が、易の行燈を上げて座っていた。
「アレは、やめておきな。」
高齢の老婦人、というよりおばばの風情がしっくりくる。占い師らしき老婆はビタとも動かず、擢磨は彼女に釘付けにされて、足止めを喰らった。
「何なんだよ、アレって。」
不服そうに言葉を返す。思い当たるものは擢磨には無い。
「化ノモノ、だよ。」
ゾクン、と擢磨の身の毛がよだつ。そんな言い方をするのは限られていた。途端に警戒心で擢磨の心は埋め尽くされた。下手に言葉を返す相手ではない。黙ったまま、擢磨は老婆を睨みつける。
「三ツ又…アレは親に捨てられ、猫に食われた赤子だ。」
尋常じゃない動揺が、擢磨を襲い始めていた。
三ツ又の事がわかるのなら。考え様によっては、目の前に居るのは人間ではない、ということだ。
もう、昔みたいにそう簡単にヤラれることは無いが、今は朝壬も不調だし。不用意に物の怪との諍いを起こさぬ方が良い。あしらう術を探りながら、必死で擢磨は知恵を巡らせた。
老婆の、見えない表情が嘲り笑っているようにさえ、感じる。
「…なんで? アイツは猫だろうが。」
老婆はしたり顔の口元を見せて、当然の如くに擢磨に答えた。
「親の愛情の代わりを、食ろうた猫に求めたからだ。」
心臓を鷲掴みにされた。強い衝撃が走る。思わず擢磨は自分の胸に手を当てた。息苦しさに締め付けられるし、早鐘を打つ心の臓が痛くて堪らない。自ら鼓動を押さえ込むように、胸を掴んだまま擢磨は手を握りこんだ。
「…ふざ…けんな。」
怒りが擢磨を飲み込んでいく。握り締めた拳を、擢磨は持ち上げた。駄目と分かっているのに、吸い込まれるように、その拳が老婆の顔目掛けて突き進んでいく。老婆の哂いが眼に焼き付いてしまって、忘れられそうにない。
「……ぁっ!!?」
そのまま前のめりに路地へと擢磨は引き込まれた。…ように感じたが。
「あ…れ。」
擢磨は元の飲み屋通りに立っていた。周囲の賑わいは何も変わらない。狐に抓まれた様に、肌に張り付く厭な感覚だけが、擢磨の手元に残っている。
擢磨×おばば
「三ツ又の件」【化モノ譚 -ムシバミ-】
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「そう。御前さんだ。」
再び同じ声がした。聞こえた方に振り向くと、路地の入り口にほの暗く灯りが点っている。見るからに老婆という人物が、易の行燈を上げて座っていた。
「アレは、やめておきな。」
高齢の老婦人、というよりおばばの風情がしっくりくる。占い師らしき老婆はビタとも動かず、擢磨は彼女に釘付けにされて、足止めを喰らった。
「何なんだよ、アレって。」
不服そうに言葉を返す。思い当たるものは擢磨には無い。
「化ノモノ、だよ。」
ゾクン、と擢磨の身の毛がよだつ。そんな言い方をするのは限られていた。途端に警戒心で擢磨の心は埋め尽くされた。下手に言葉を返す相手ではない。黙ったまま、擢磨は老婆を睨みつける。
「三ツ又…アレは親に捨てられ、猫に食われた赤子だ。」
尋常じゃない動揺が、擢磨を襲い始めていた。
三ツ又の事がわかるのなら。考え様によっては、目の前に居るのは人間ではない、ということだ。
もう、昔みたいにそう簡単にヤラれることは無いが、今は朝壬も不調だし。不用意に物の怪との諍いを起こさぬ方が良い。あしらう術を探りながら、必死で擢磨は知恵を巡らせた。
老婆の、見えない表情が嘲り笑っているようにさえ、感じる。
「…なんで? アイツは猫だろうが。」
老婆はしたり顔の口元を見せて、当然の如くに擢磨に答えた。
「親の愛情の代わりを、食ろうた猫に求めたからだ。」
心臓を鷲掴みにされた。強い衝撃が走る。思わず擢磨は自分の胸に手を当てた。息苦しさに締め付けられるし、早鐘を打つ心の臓が痛くて堪らない。自ら鼓動を押さえ込むように、胸を掴んだまま擢磨は手を握りこんだ。
「…ふざ…けんな。」
怒りが擢磨を飲み込んでいく。握り締めた拳を、擢磨は持ち上げた。駄目と分かっているのに、吸い込まれるように、その拳が老婆の顔目掛けて突き進んでいく。老婆の哂いが眼に焼き付いてしまって、忘れられそうにない。
「……ぁっ!!?」
そのまま前のめりに路地へと擢磨は引き込まれた。…ように感じたが。
「あ…れ。」
擢磨は元の飲み屋通りに立っていた。周囲の賑わいは何も変わらない。狐に抓まれた様に、肌に張り付く厭な感覚だけが、擢磨の手元に残っている。
くっきりと浮き出た喉仏がゆっくりと水を飲み下していく。声音も心なしか低い。
「有難うございます。」
空になったグラスを受け取り、マーレンは新しい服を差し出した。
「とにかく着替えた方がいい。汚れてしまっているから。」
ヴィータ…と呼ぶべきか。目の前の相手に困惑しながら似た体格の体をまじまじと眺めた。こんな事が実際に起こるなんて、未だに信じられない。
落ち着きを取り戻したブレンが、ゆっくりとこちらへ戻ってくる。不機嫌さは相変わらず
「ベゼルト。」
嫌な表情を浮かべたまま名を呼ぶブレンに呼応して、彼の足元へ跪いた。
「申し訳ございません、ブレン様。」
首を垂れるその姿は、明主と騎士そのもの。二人の関係がより一層理解できるようだ。
由野×恭真
「朽チ成シ 閻封蔵3」【半妖祓殺師恋愛帖】
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今更、ほんの少し霊力を回復させても、結界を破る力など到底無い。せめて格子の際で由野を見送るだけでも。恭真は奥歯を噛み締め、身体に力を込める。
「じゃあ恭真さん。少し僕に付き合ってくださいね。」
笑いかける由野に、諦めた眼差しで恭真も微笑み返す。ゆっくりと由野は手を引いて、格子戸の外へ出た。繋いだままの恭真の腕も格子の外側へ出る。
腕に掛かる激痛を想像はしたが。何の変化も起きなかった。
不思議と身体が軽い。結界はどうしたのだろう。ピリリともしない腕に首を傾げ、そのまま体ごと格子を抜ける。
「恭真さん?」
「…いや。」
意外という表情を見せる恭真に、由野が声をかける。まだ恭真は周囲を窺い、首を回した。二人で蔵の扉を潜り、人工光に満ちた通路へ出る。
あまりに静か、だ。結界の外へ出たというのに、扉の前に立つ仁王像も二人を静観している。眩しすぎる光量に、恭真は軽い眩暈を覚えた。
ふらりと揺れる恭真の身体に、由野は驚き、すぐに支え直す。
「大丈夫ですか。」
「ああ。」
明るい光の元、改めて見る普段とは真逆な互いの様相は、恭真も可笑しく感じた。黒いスーツを着こなしている由野が変に思う。
「似合わないな。」
「恭真さんも、です。」
「…そうだな。」
お互いに互いの服装を見て、一頻り笑った。緊迫感の無い和やかな笑いが、それまでの焦燥心を癒してくれる。
由野は微笑んで恭真を見た。近づく顔貌はまた恭真にキスを施す。流れ込む霊力に慌て、恭真は由野を引き離した。
「心配性なんですね。この位は大丈夫。」
そう言うものの。由野の身体を思えば、心配するなという方が無理な話だ。
「シャンとして下さいね。その方が僕は楽で良いですよ。」
自分より大きい恭真さんを支えて歩く方が大変、と愚痴る由野の言葉に流石の恭真も文句を言えなかった。
「ああ、分かった。」
息を整え、恭真も背筋を伸ばす。二人は目配せをし、外へ向けてゆっくり歩き出した
由野×恭真
「朽チ成シ 閻封蔵2」【半妖祓殺師恋愛帖】
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漸く最終通路の中央、閻封蔵の入口の前に由野は辿り着いた。札と結界縄が真っ先に目に映る。門を護る仁王像まで、扉の両脇に置かれていた。
閻封蔵は、外界から完全に遮断された闇の世界だ。唯一通ずるは、この扉だけ。
解けて、と念じ、由野は扉に触れた。
背後で感じた重扉の存在に、誰かが入ってくるのを恭真は感じた。
蔵の中に設けられた、祠の様な、厨子の様な、四角い建物。廻り込んで正面の封殺札を剥がし、由野は扉を開いた。
恭真のいる暗闇に、漸く光が差す。
「恭真さん。」
「…………。」
微笑む恭真のその姿に、痞える胸をぐっと由野は堪えた。
扉を開けてもまだ、頑丈な蜘蛛手格子がある。その向こうに恭真が居た。
痩せた肩が、白衣の上からでもはっきりとわかった。覇気の無さはそれだけ霊力が失われているのだろう。だのに、これでもかという程張られた結界が腹立たしくなった。半妖だからといって衰弱している恭真へ、何故こんな酷い扱いをするのか。どうしても由野には納得が行かなかった。
格子の入口を開け、中へ入る。と、由野は屈んだままで恭真に顔を寄せた。ぴくりとも動けない恭真に、そっと口唇を合わせる。今渡せるだけの霊力を全て、恭真へ注ぎ込んだ。
「……ンッ、」
苦い表情で恭真は由野を押し返した。その非難する眼差しに、少し由野は安堵の笑みを零す。
「立てますか?」
脚を戦慄かせながらも恭真は立ち上がった。
「…っ危ない!」
ぐらつく身体を抱き止める。普段とは逆の立場に不謹慎ながら楽しくなる。何か言いたげに震える口唇を無視し、由野はその手で恭真の身体を抱き締めた。
恭真の匂い、恭真のぬくもり。目を閉じてゆっくり感じていたい。けれど。
「…恭真さん。一緒に来て欲しい場所があるんです。」
「…コ…コ…から…出られ…た…ら……な…。」
途切れ途切れの弱い声で、恭真は返した。
無理だと分かっている。出られる筈は無い。だからこそ、恭真は茶番でも由野の望みを叶えてやりたいと願った。
由野×恭真
「朽チ成シ 閻封蔵」【半妖祓殺師恋愛帖】
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真闇の中で、空《くう》を恭真は見つめていた。自分が形を未だ保っている、その事が不思議な位だ。背には桧板の冷たさが布越しに伝わる。心地いい、と感じた。
板の間の外側には、恐らく幾重にも封縛の結界が張り巡らされているのだろう。その波動が壁からも床からも伝わってくる。弱い呼吸を繰り返し、恭真は壁板に身を預けた。
波動を受け続けるのが少し辛い。
だがそれでも、不安も恐れも恭真には無かった。
一方で。由野は封呪札が至る所に貼られた細長い通路を、一人歩いている。黒服に身を包んでいる所為か、通路全体の白さがやけに目立つ。時折眩みそうになるけれど、先日まで寝込んでいたのだから仕方ない。
足早とまでは行かぬものの、確実に一歩ずつ、出来る限りの速さで進んでいく。
片方の壁の向こうは鍛錬場。その反対側の壁を見つめ、由野は僅かに唇を噛み締めた。
今歩いている場所は、伐妖本部の置かれている本社ビル。その中心に重厚な土蔵が据えられているのを、殆どの者は知らない。土蔵は“閻封蔵”と呼ばれている。それは、祓殺出来ない妖魔を封じ込める為に造り据えられたもの。閉じ込められたらもう、生きて出られない。そう云われる強力な結界で固められている。
由野が知ったのは先日、目が覚めた後の偶然であった。そして今、由野の逢いたい人はそこに居る。
そんな由野の事は知らずに、恭真は一人きり、小さな結界の中で微かに息をしていた。
恭真もまた、この蔵をずっと昔から知っていた。
初めて総帥に調伏されたあの日。誰の手にも負えずに、此処に封印されたのだから。
あの時は、怒りと憎しみで身体が引き千切れそうな程、辛かったというのに。
もう、全てを手放して良い程に穏やかな心持ちになれた今…むしろ安心感で満たされている。これも、由野に出逢えたからこそ。
…由野、無事で居るだろうか。
最後に、猫股へと変化したこの腕の中にいて、微笑みながら口付けてくれた。その愛しさを胸に、恭真はそっと目蓋を閉じた。
恭真×由野
「濡レ衣-夏祭り祓殺仕事 鼻緒」【半妖祓殺師恋愛帖 】
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はぐれてしまった二人を、階段の上から探す。精一杯目を凝らすものの、普段は見つけ易い爪牙でさえも人込の中に紛れて分からない。
「行くぞ。」
恭真は放っておけと言わんばかりに吐いた。由野は反論するように声を上げた。
「待ってください、恭真さん。」
折角皆で来ているのだ。バラバラになりたくない。
「埒が明かない。その内、あいつ等も戻ってくるだろう。」
それでも由野は諦めがつかない。いつも単独でいる恭真にしてみれば、これでもよく粘った方だ。そのまま恭真は歩き出し、その背を由野が追いかける。
「あっ!!」
よろめいて、でも辛うじて転ぶのは避けた。由野は足下に目を遣り、溜息を吐く。
「どうした。」
由野の悲鳴に恭真は足を止め、振り向く。不機嫌な表情はそのままだ。
「す、済みません。鼻緒が切れてしまって…」
フイ、とすぐに前を向いてしまった。そのまま恭真は行ってしまうだろうと、追い縋るのを諦める。歩けぬ足に、どうしようか由野は悩んでいた。
けれど。
「恭真、さん?」
「乗れ。」
目の前で背を向けしゃがむ恭真の姿に、由野は戸惑った。
「それでは歩けないだろう。だから乗れ。」
「でも…」
「つべこべ言うな。」
ぴしゃりと切る。冷たい言様と、目の前の気遣う行動が、ちぐはぐで。どちらが本当の恭真なんだろうか、と由野は分からなくなった。
いつも冷酷で協調性もなく、周りと馴染もうとしない恭真。だが、時折垣間見るこんな優しさが、恭真の本音の姿なんだとしたら。
どうして、こんなに冷たく振舞うのだろう。
「早くしろ。」
「あ…はい。」
由野は急かされるまま、恭真の背中に負ぶさった。
くっきりと浮き出た喉仏がゆっくりと水を飲み下していく。声音も心なしか低い。
「有難うございます。」
空になったグラスを受け取り、マーレンはヴィータに新しい服を差し出した…つもりだった。
「とにかく着替えた方がいい。汚れてしまっているから。」
「ベゼルト。」
嫌な表情を浮かべたまま名を呼ぶブレンに呼応して、すぐさま彼の足元へ駆けつけ跪く。
「申し訳ございません、ブレン様。」
首を垂れるその姿は、明主と騎士そのもの。二人の関係がより一層理解できるようだ。
くっきりと浮き出た喉仏がゆっくりと水を飲み下していく。声音も心なしか低い。
「有難うございます。」
空になったグラスを受け取り、マーレンはヴィータに新しい服を差し出した…つもりだった。
「とにかく着替えた方がいい。汚れてしまっているから。」
「ベゼルト。」
嫌な表情を浮かべたまま名を呼ぶブレンに呼応して、すぐさま彼の足元へ駆けつけ跪く。
「申し訳ございません、ブレン様。」
その姿は明主と騎士そのもの。二人の関係がより一層理解できる。
くっきりと浮き出た喉仏がゆっくりと水を飲み下していく。声音も心なしか低い。
「有難うございます。」
空になったグラスを受け取り、マーレンは
「とにかく着替えた方がいい。汚れてしまっているから。」
ブレン×ヴィータ
「血反吐はき」 ※ブレンは精神的に、ヴィータは体質です
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背中から肺を突き破り、凶手がヴィータの躰を貫く。完全な油断であった。
「愚か者がっ!!」
思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らす。が、飲み込める様子はない。
ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽくなり、まるでそれは干からびていくようだった。
脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、その手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強める。それでも夥しく流れ出る血は、二人を赤く染め上げていく。張りを失くした豊乳がどんどん縮んで、平らで貧相な体に変わりつつあった。
穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。喉が微かに震え、上下に大きく動く。その感覚にブレンは唇を漸く離した。白い顔肌にべったりと塗れた赤い血が殊更に目立つ。ヴィータの体から流出していた血液は終息を見せ、貫通した体の傷口は新しい肉芽で埋まっていく。
危機は去った。かに見えた。
回復した身体を離し、ブレンは立ち上がった。見下ろす双眸が憔悴し、視線を逸らす様に彷徨い出す。そのままふらふらとブレンは離れていき、地面に蹲った。
ヴィータも一瞬は力強い眼光を宿したが、すぐに見開いた眼の瞳孔を窄めて口元を押さえた。上体を支える腕がわなわなと戦慄する。そして。
「ヴェええっっ!!」
二人同時に、揃って吐いた。
「愚か者がっ!!」
思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らす。が、飲み込める様子はない。
ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽくなり、まるでそれは干からびていくようだった。
脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、その手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強める。それでも夥しく流れ出る血は、二人を赤く染め上げていく。張りを失くした豊乳がどんどん縮んで、平らで貧相な体に変わりつつあった。
穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。喉が微かに震え、上下に大きく動く。その感覚にブレンは唇を漸く離した。白い顔肌にべったりと塗れた赤い血が殊更に目立つ。ヴィータの体から流出していた血液は終息を見せ、貫通した体の傷口は新しい肉芽で埋まっていく。
危機は去った。かに見えた。
回復した身体を離し、ブレンは立ち上がった。見下ろす双眸が憔悴し、視線を逸らす様に彷徨い出す。そのままふらふらとブレンは離れていき、地面に蹲った。
ヴィータも一瞬は力強い眼光を宿したが、すぐに見開いた眼の瞳孔を窄めて口元を押さえた。上体を支える腕がわなわなと戦慄する。そして。
「ヴェええっっ!!」
二人同時に、揃って吐いた。
「愚か者がっ!!」
思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み千切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らすも、飲み込める様子はない。
ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽく、干からびていくようだった。
脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、反対の手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強める。それでも夥しく流れ出る血は、二人を赤く染め上げていく。張りを失くした豊乳がどんどん縮んで、平らで貧相な体に変わりつつあった。
穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。喉が微かに震え、上下に大きく動く。その感覚にブレンは唇を漸く離した。白い顔肌にべったりと塗れた赤い血が殊更に目立つ。ヴィータの体から流出していた血液は終息を見せ、貫通した体の傷口は新しい肉芽で埋まっていく。
危機は去った。かに見えた。
回復した身体を離し、ブレンは立ち上がった。見下ろす双眸が憔悴し、視線を逸らす様に彷徨い出す。そのままふらふらとブレンは離れ、地面に蹲った。
ヴィータも
「愚か者がっ!!」
思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み千切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らすも、飲み込める様子はない。
ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽく、干からびていくようだった。
脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、反対の手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強める。それでも夥しく流れ出る血は、二人を赤く染め上げていく。張りを失くした豊乳がどんどん縮んで、平らで貧相な体に変わりつつあった。
穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。
「愚か者がっ!!」
思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み千切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らすも、飲み込める様子はない。
ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽく、干からびていくようだった。
脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、反対の手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強める。それでも夥しく流れ出る血は、二人を赤く染め上げていく。張りを失くした豊乳がどんどん縮んで、平らで貧相な体に変わりつつあった。
穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。
「ッァハ、」
「愚か者がっ!!」
思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンはその身を即座にヴィータの元へ走らせる。彼女の肉体が崩れ落ちる寸での所で抱き留めた。苦々しくも自らの手首を噛み千切り、滴る血液をヴィータの口元へ垂らすも、飲み込める様子はない。
ゴフッと血反吐がヴィータの口から吹き零れる。黒かった髪や褐色の肌が生命力の低下を示すように、徐々に白っぽく、干からびていくようだった。
穿たれた傷は心臓も血瘤痕(rosette lump)も外れている。まだ、間に合う筈だ。ブレンは心底嫌悪の表情を浮かべ、自らの血を啜った。そして閉まる筋力の無くなったヴィータの口唇を手で支え、口移しで強引に喉奥へと血液を送り込む。
脇から腕を通してヴィータの上体を抱え上げ、反対の手で血瘤痕(rosette lump)に触れて生命力を強めていく。そんなブレンの必死さに、だらりと垂れ下がったままだったヴィータの手がほんの僅かに反応した。
「愚か者がっ!!」
思わず吐き出た激昂をヴィータへ向けるも、ブレンは即座に
血反吐はそのまま
それは、城が建つよりもずっとずっと昔のこと。
小高い丘の向こう側に、森の主《ヌシ》は存在した。主に実体はなく、代わりに森の植物を意のままに動かすことが出来た。森自体が主の身体だとも言えた。
主は森の木々を繁らせ、その枝葉の先に豊かな果を実らせた。また、地面の上でそよぐ草達の花を綺麗に咲かせもした。そんな花や果実を求め、小さな鳥や動物たちが森の主の下《もと》を代わる代わる訪れた。
或る時、森の主は見慣れぬ生き物を見つけた。ヒト、と呼ばれるその動物は森の主の下へやって来て、足元に咲く草花に感嘆した。その表情が綻ぶ姿が、主にはまるで初めて見る美しい花が咲いていく様で。
その新鮮さに森の主は心が動かされた。
戯れに、樹上に生る果実をひとつ、ヒトの前に落としてみると、また嬉しそうに顔を綻ばせ、お礼にヒトは自らの名を森の主に教えて去って行った。
種族を区別するモノなら知っているが。個体を区別する、名前、というものが有るのは知らなかった。新しいことを知る、というのがこれ程心を躍らせるものだと、森の主は初めて知った。
最初に訪れたヒト『』は、それ以降、度々森の主の下を訪れるようになった。
森の主はその都度『』の色んな表情を見ようと、様々な事を試みた。例えば、『』の声に合わせて枝葉を揺らしてみたり、草花を躍らせてみたり。
一番の力作は、樹木の根を盛り上がらせて『』と同じ形を造ったことだ。勿論、森の主にはそれを自由に動かす事ができる。初めは『』も面白がっていた。楽しげに声を上げて、次第に声は荒く聞こえた。
去っていく『』の顔は、森の主には笑っているように見えた。
けれど。以来『』は森の主の下へ来なくなった。
小さかった体は大きくなり、『』の体にも実が生っている。森の主は全ての根が地面から這い出してしまいそうな勢いで、大層喜んだ。何よりもまた『』に会えたことが嬉しかったのだ。けれど、『』はそれ以上主の下へは近寄って来ない。
どうしたのだろう。怪訝に思う主は枝葉を蔓に変え、『』の体に伸ばした。途端。
鋭いナイフが主の伸ばした蔓をバッサリ切り落とした。
森の主は唖然とした。全く訳が分からない。何故こんな事になったのか、何故こんな事をされるのか。
『』の隣には『』と同じヒトの種族がいた。そのヒトは『』の前に立ち、ナイフを構えて森の主を威嚇している。不愉快な気分に主は森を身じろがせた。
急に襲った地揺れにヒトは立っていられず、体勢を崩す。主はその隙を逃さず見ていた。
邪魔だ、と。グンッと太枝をしならせて、ヒトを払い飛ばす。『』は地面にしゃがみ込んだまま、両手で口元を覆うようにして震えていた。
森の主が今度こそと蔓の先を『』に向けたその時。
『』が金切声を上げて逃げ出した。
待って。どうして逃げるの? そう伸ばした蔓を逃げ惑う『』の腕に絡ませると『』は狂ったように暴れまくる。離したくない。森の主は更に強く絡み付かせて己の元へ引き寄せようと、腕を締め上げた蔓を手繰り寄せた。
何かがペキバキ折れる音がした。『』が悲鳴を上げる。『』の腕が蔓のように伸びて捩じれていく。
強烈な悲鳴と共に、温かい赤い水が『』の体から噴き出した。鉄の錆びる嫌な臭いが辺りに広がった。森の主は驚いて締めていた蔓を弛めた。ゴト、と地面に落ちた腕はあちこち歪んでいて、『』と繋がっていた部分は千切れている。
森の主は慌てて落ちた腕を拾い上げ、千切れた場所へ戻した。
けれど、赤い水で濡れてしまったそこは、何度くっ付けても繋がらない。
か細い声で『』は言った。“タス…ケテ”と。
もう一人のヒトが『』に駆け寄り、何かを喋っている。再び主は蔓の先を切られてしまった。だが、蔓を切ったその手が光を操り、『』の赤い水を止めていく。苦しそうに歪んでいた『』の表情が少しずつ和らいでいく。
もう、主に蔓を伸ばす勇気は無かった。去っていく二人の背を茫然と見つめた。『』の無事を祈りながら。
小高い丘の向こう側に、森の主《ヌシ》は存在した。主に実体はなく、代わりに森の植物を意のままに動かすことが出来た。森自体が主の身体だとも言えた。
主は森の木々を繁らせ、その枝葉の先に豊かな果を実らせた。また、地面の上でそよぐ草達の花を綺麗に咲かせもした。そんな花や果実を求め、小さな鳥や動物たちが森の主の下《もと》を代わる代わる訪れた。
或る時、森の主は見慣れぬ生き物を見つけた。ヒト、と呼ばれるその動物は森の主の下へやって来て、足元に咲く草花に感嘆した。その表情が綻ぶ姿が、主にはまるで初めて見る美しい花が咲いていく様で。
その新鮮さに森の主は心が動かされた。
戯れに、樹上に生る果実をひとつ、ヒトの前に落としてみると、また嬉しそうに顔を綻ばせ、お礼にヒトは自らの名を森の主に教えて去って行った。
種族を区別するモノなら知っているが。個体を区別する、名前、というものが有るのは知らなかった。新しいことを知る、というのがこれ程心を躍らせるものだと、森の主は初めて知った。
最初に訪れたヒト『』は、それ以降、度々森の主の下を訪れるようになった。
森の主はその都度『』の色んな表情を見ようと、様々な事を試みた。例えば、『』の声に合わせて枝葉を揺らしてみたり、草花を躍らせてみたり。
一番の力作は、樹木の根を盛り上がらせて『』と同じ形を造ったことだ。勿論、森の主にはそれを自由に動かす事ができる。初めは『』も面白がっていた。楽しげに声を上げて、次第に声は荒く聞こえた。
去っていく『』の顔は、森の主には笑っているように見えた。
けれど。以来『』は森の主の下へ来なくなった。
「あら。」
孝子が戻ってくると、ハクは転《うた》た寝をしていた。腰肌の見える格好で無防備に丸くなっている。孝子は畳んだばかりのバスタオルを、そっとハクの腰腹に掛けた。
こうして見ると顔立ちはまだ幼く、普通に街中にいる子供と何ら変わり無い。余程疲れたか、ハクはぐっすり眠っていた。孝子はハクの隣に腰を落ち着けて、髪を指で梳き撫でる。
流石に、あんな出来事の起った後なら、少々の物事は如何とも思わなくなった。人間ではない身体能力を見せられはしたものの、ハクが此処にやって来た当初よりは孝子も随分慣れたものだ。
指を滑らせた髪の中に、手触りの違う硬い髪が混ざっている。解そうと指で揉むと、急に其所の髪の毛が動いた。
「キャッ…」
驚いて思わず短い声を上げる。だが流石にもう動揺はしない。飛び出したのは、猫みたいな獣耳だった。立って暫く先端はピクピク動いたが、程なくペタンと伏せて髪の中に戻る。
孝子はもう一度指を伸ばして、耳の付け根をこそばす様に掻き解した。マッサージを施す気持ちで続けていると、気持ちよさげに寝顔が緩み、耳もだらしなく開いていく。
何だか楽しくなって、孝子は気分良くマッサージを続けた。その所為だろうか、孝子自身も腕がポカポカ温かくなった気がした。
「え、」
そう思ったのは自分の勘違いだったと、腕に目を遣って孝子は知った。気づかぬ間に伸びてきた黒い尻尾が、孝子の腕を探って巻き付いていた。髪同様の同じ毛並みの尻尾は、肌触り良く孝子の腕にじゃれついている。
それだけかと思ったら、更に尻尾は先が割れて、孝子の指を挟んで締める。
その感触は、赤ちゃんが指を握ってくるのとそっくりで。ハクの寝姿と併せもって、孝子は久々に萌えた。
な……な、なんて可愛いの!?
「母さん、あのさ…」
その時、無粋にも息子の幸保が部屋に入ってくる。と同時に、ハクの耳と尻尾を見て、強い口調で叱咤する。
「ハクっ!!」
途端にハクはがば、と起き上がり、慌てて耳と尻尾を仕舞った。
浮遊感に包まれて、河嶋はきつく閉じた眼を開いた。辺りは一面薄闇に覆われていて、今自分が何処にいるのか分からない。
落ちているのか。いや、沈んでいるのか。水中の如く揺れる髪の毛先が、眼の端に映り込み、そうぼんやりと考える。
僅かに頭をずらして、己が飲み込まれていく先を見る。黒く歪《ひず》んだ靄の中に、幽かな光を感じた気がした。
まとわりつく気の重みに、体が思うように動かない。それでも身を捩って幸保は体勢を立て直した。
薄桜色の欠片が仄かに光を放っている。その事に気づいて幸保が手を伸ばすと、欠片が回転して小さな渦流を作った。そのまま渦流は人を形作り、惑わすように幸保の目の前で形を変える。
ニイ、サン… そう呟いた最期の千榛を映しているようで。
「ち、は…」
思わず声に出しかけて、幸保は躊躇い、俯いた。
千榛を選べば、恋友《はるあきら》を失う。東明を選べば、愛弟《ちはる》は完全に消えてしまう。
『何を躊躇う?』
聴こえた声に幸保は顔を上げた。渦水鬼は真摯に幸保を見詰めている。
『元々御前は愛弟を取り戻したかったのだろうに…』
己の望みを叶えろ。そう東明が訴えている気がした。
「ハルアキラ、俺は…」
戸惑い、口を開いたが、それ以上は紡ぐ言葉が見つからない。
鬼の姿身が揺らぎ、たゆとう様に周囲との境が消えていく。それに気づいて、慌てて幸保は叫んだ。
「待ってくれ!! ハルアキラ…っ!!」
伸ばした手の先で、大きくうねる渦に翻弄される鬼角が舞う。そして、そのまま耐え切れずに薄桜色の鬼角は砕けた。
そう。東明の角が、砕けた。
アラームが鳴り響く。けたたましく感じる電子音に、目を見開いたまま幸保は息を止めた。鳴り終わって漸く息を吐く。
だるい。寝ていた筈だが、肉体は異常に疲れている。緩慢に上体を起こし、片手で幸保は頭を抱えた。
観ていた夢の出来事は意味深で、ただの夢とは思えない。
『千榛を選べば、恋友《はるあきら》を失う。東明を選べば、愛弟《ちはる》は完全に消えてしまう。』
どういう意味なんだ。一体…
カテゴリ:30代以上 2021/11/10 11:24:56
何度もすれ違い、傷付け逢ったはず愛の意味をお互いわかって居るのに、傷つけ。
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コメント
カテゴリ:日記 2021/11/14 19:09:14
いまいるかんきょうはそれぞれちがうけ、てをかざそう
きみと、であったころ、おなじに
さあてをかざそう
げんじつではおもいどうりにならないこともあるだろう
いやなら、ここでは
さあ
いいかい
おれたちに、たがいに、
また、あるこう
おいで
繋ごう。
呉羽/シャバトカーナ/鬼薊/にこちゃん/ジャンヌ/牡丹/マイコ/王女ヴィクトリア/北村ミク/彌生/ティファー/天王みちる/猫娘ペルシャ/オルタンス公女/ソラナ/
tantum colli 首のみ
aliiautem 体無し
INTACTILIS 無体
王子フラグ 無言 知らない 分からない 塔に幽閉
王女フラグ 無言 知らない 死んだ 80→生きてる 助けてくれ
至宝フラグ 無言 知らない 無いさ 栄光の太陽・至高の月玉
例女フラグ 無言 知らない 関係無い 彼女を助けてくれ 王女だ
王子フラグ 無言 知らない 分からない 塔に幽閉
王女フラグ 無言 知らない 死んだ 80→生きてる 助けてくれ
至宝フラグ 無言 知らない 無いさ 栄光の太陽・至高の月玉
例女フラグ 無言 知らない 関係無い 彼女を助けてくれ 王女だ
………ッ ………
顔色一つ変えないな。まだまだ、か。
まだ余裕がありそうだな。
………ッ ………
顔色一つ変えないな。まだまだ、か。
まだ余裕がありそうだな。
………ッ ………
顔色一つ変えないな。まだまだ、か。
まだ余裕がありそうだな。
………ッ ………
顔色一つ変えないな。まだまだ、か。
まだ余裕がありそうだな。
俺が信じられないか。まあ、拷問に掛けてくる奴を信じろの方が無茶があるものな。
…別に信用しなくていい。ただ、こうしている間にも王子の命が危ういかもしれない。俺は王子を救出したいだけだ。彼の無事が確認できさえすれば、それ以上、お前に何かを強いるつもりはない。
お前だって早く解放されたいだろうに…。
…こ…ろせ…
まだ言うか。
…しら…ない…俺…はっ…ックぅ
王子の居場所がわからなくても、王女の御身がある場所くらい、せめてそれだけでもわからないか?
俺だって痛めつけて悦ぶ趣味は無い。
あ…ぁ……姉上ぇぇっ…いやだぁ…っ
あ…ね…上にぃ…手を…だすなぁっ
どうも錯乱しているようだ。幼児期に記憶が逆行しているのか?
「どうぞごゆるりと。」
そう言われ渡された小鍵に、つい障子や襖へと目を遣り回し、私は首を傾げた。何処に使うんだ? そんな疑問が浮かんだが、それは部屋の隅に立つ小姓を見てすぐに解決した。
彼は鎖で繋がれていた。歳は私より少し下…だろうか。もう十分に成人男子の為りをしていた。
躊躇いがちに紡ぐ言葉の先を芳は口ごもる。恥ずかしげに染まる頬と不安に揺れる瞳に、察して裕河は尋ねなかった。今まで自分が避けてきた、その所為だろう。
祐河は手を伸ばし、湿り気を帯びている芳の頭髪に触れ、優しく撫で下ろす。いつもと同じ様に。
「下着・・・穿いてこなかった、のか。」
体を包むように羽織った、バスタオルの下。芳の素のままの体が祐河の眼に映る。小さく、芳は祐河に向けて頷いた。
「だって・・・」
躊躇いがちに紡ぐ言葉の先を芳は口ごもる。恥ずかしげに染まる頬と不安に揺れる瞳に、敢えて裕河は尋ねなかった。
「下着・・・穿いてこなかった、のか。」
体を包むように羽織った、バスタオルの下。芳の素のままの体が祐河の眼に映る。小さく、芳は祐河に向けて頷いた。
「だって・・・」
躊躇いがちに紡ぐ言葉の先を芳は口ごもる。恥ずかしげに染まる頬と不安に揺れる瞳に、敢えて裕河は尋ねなかった。
「下着・・・穿いてこなかった、のか。」
体を包むように羽織った、バスタオルの下。芳の素のままの体が祐河の眼に映る。小さく、芳は祐河に向けて頷いた。
「だって・・・」
躊躇いがちに紡がれる言葉を