⚔.涼香 さま専用*3
- 2019/04/07 23:18:01
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名前[ふりがな]:桃瀬 斗真(ももせ とうま)
性別:男
年齢:22
職業(特筆すべきことがなければ未記入でも可):
性格:困った人がいたらほっとけない。
でもあとあとのリスクも考えつつ動くある程度は
頭が働くタイプである親しい人には
笑顔を向けるが嫌いなものや自分にとって害がありそうな人とは
作り笑いで乗り切っている
妹や弟など幼い子たちには好かれる雰囲気で年上からも
人柄の良さで可愛がられる
容姿:身長は170で髪の毛は茶色でふわっとしている、
左耳にピアスがあいていて
その時の近侍のイメージカラーに似た色のピアスをしている。
服は和服だったり気分によって色々変えている
歌仙や加州には服のセンスを褒められることがある
攻めor受け:受け
備考:桃瀬の家は代々の名家で小さい頃から剣術などの武道
そして所作などを学ぶということで舞や剣舞、花道に茶道と
必要以上の教育を受けて育っていた
上に兄がいてそちらが跡取りになるということで
自分は雑に扱われていた
兄ばかり大事にされそしてある程度物心がついた時に妹が生まれ
より一層親から愛されるということをされなかった。
できなければ物置に閉じ込められたりご飯を抜かれたり、
そんな生活を送っていた
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皆さまのキャラの名前: 桃瀬 斗真
管理人のキャラの名前:宗三、オール(固定)
シナリオ:兄の結婚が決まり家はお祝いムード全開
自分としても兄は大事な家族だし祝福はしていた
そんな中親に呼ばれ居間に行くといつまでこの家の穀潰しに
なっているつもりだと説教を受け
年齢も年齢なのだからこの家から出て行けと言われ家を追い出される
もともとバイトなど高校の時にこっそり貯めたお金などがあったし
まあ生きては行けるかと思っていた時に
政府の人間から声をかけられる。
審神者としての力も強いらしく政府としては
今すぐにでも来てほしいとのことだったので
そのまま審神者になることを受け入れる
そんな彼が配属になったのは元ブラック本丸であった。
ここの本丸の元主は多忙な出陣、無理難題を強いる
美しいものは閉じ込める、そして夜伽相手にしていたそんな主だった
主が病気でなくなりそこに自分がいけとのことだった
別に死んでも構わないしいいかと思い本丸に行くと
あからさまに漂う悪い気、そして殺気。
襲いかかってくる刀剣たちの攻撃を持っていた木刀でなぎ倒しつつ
こんのすけの教えで手入れをしたりしていくうちに
だんだんと打ち解けていく
その他(管理人に要望等あれば):
最初はブラック本丸ということなので
みんな斗真に敵意や恐れを持っているがだんだん手当を通じて
その感情がなくなっていくって感じで行きたいです
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*作成お疲れさまでございました
*奇数コメお願い致します
*糖度等は如何致しますか?
そういった表現内容にもしご希望あればお聞かせください
→~裏(規則に伴い原則キス表現まで、以上は時間を飛ばすなどの回避)
※ブラック本丸の要素が含まれる為、そういった表現有り
(暴力・性的表現(仄めかし)など)
江雪が静かな足取りで彼の元へと近寄って来る。
「…どこかへ…行かれていたのですか?随分と…荷物が多いですね」
彼が両手に持っているものを見て、江雪は小さく首を傾げる。
何か入り用なものでもあったのだろうか、ここの本丸にはない何かが必要だったのだろうか。
「…宗三が…以前より変わった様子でした。何を話されたのですか…?」
ここにやってきた目的を思い出して、江雪は彼に宗三とのことを問いかける。
おそらくだが、彼と何か話したことであのように変わったのだろう、と思っての事だった。
そして確実が手入れをするときに使う包帯や生活する上でタオルなどは使うと思いそれらを買い
あとはなんだろうと考えつついろんな店を回っていろんなものを買って早々と本丸に帰ってくる
自分の顔に手を持っていくと軽く頬に触れた。
少し間をおいてから、小さく息を吐いては「そんなことない」と言った。
「兄様の気のせいですよ…僕が楽しそうだなんて、あるはずないじゃないですか。
…まあ、このまま時がすすんでいって如何なるのかは…気になりはしますけどね」
「…そうですか。でも…あの頃よりもよく喋るようになりましたね…
楽しいわけじゃないくても…それでも、私は嬉しいですよ…」
なにを買おうかと考えつつ掃除をし
自分自身が病で床に臥せ、そのまま死に至るまでの間も変わらずだった。
そんな前の主が居なくなったこの本丸に、新たにあの人の子がやってきた。
正直、そこまでのものを期待はしていない。
それでも…もし、この本丸を変えることが出来たのなら。
「…なんて、いつになるんでしょうね。それは……」
「…宗三。何だか少し楽しそうですね…良かったです。理由はともあれ、貴方が
こうして元気そうなのは何よりです…」
「食材も買い揃えないとか」
といいつつ色々かたずけ
その全てはあの者次第だとそう言った。
あんなことを聞いた手前、本当はほしいこたえが返ってくるなんてことは
あまり考えていなかった。
案の定、彼はどちらとも言えないようなこたえを自分にくれたのだ。
「…そうですか。確かにそうですよね…この本丸にやって来ては、前の者とは違って
空気をかえたい、僕たちのことを手入れしたい、なんて言うんですものね…
今はただ…様子を見ることにした方が良いでしょうか…面倒事は嫌ですから」
まずは厨房へと向かう
食材の補給や掃除などを行いつつ
「今日のご飯どうしようかな」
宗三は小さく首を傾げた。
一体、あの者と何を話したのだろうか?
掛衾に包まるようにしながら眠っている小夜にちらりと視線を向けて、おもむろに口を開いた。
「…兄様は、このままこの本丸が変われると思いますか…?
あの者が居た頃と違い、清浄な気に満ちたこの本丸で…僕たちは存在することができますか?」
「……さて、どうでしょうね。人の子というのはいつも愚かしく、短い生を必死に生きようと
抗っている生き物です…その短い生の中で、あの者がどうするのか…
私には想像することはできても、真実は如何なのかは分かりません…
全てあの者次第ですから……」
宗三は小さく首を傾げた。
一体、あの者と何を話したのだろうか?
掛衾に包まるようにしながら眠っている小夜にちらりと視線を向けて、おもむろに口を開いた。
「…兄様は、このままこの本丸が変われると思いますか…?
あの者が居た頃と違い、清浄な気に満ちたこの本丸で…僕たちは存在することができますか?」
「……さて、どうでしょうね。人の子というのはいつも愚かしく、短い生を必死に生きようと
抗っている生き物です…その短い生の中で、あの者がどうするのか…
私には想像することはできても、真実は如何なのかは分かりません…全てあの者次第ですから……」
「やっぱりまだこの本丸の空気よくないよな…」
あとは以前壊された鍛刀部屋がどうなったのかとふと思い
そっちに向かい部屋を出て歩いていく
「おや…今までとは違い、少し晴れ晴れとした顔をしていますね…何か、ありましたか…?」
すると江雪は、手元の布を繕っていた手を止めて宗三の方をじっと見つめる。
やがて、おもむろに手を伸ばして宗三の腕を掴んだ。
「…江雪兄様…?」
「傷が…癒えていますね。言わずとも分かります…あの者がやったのでしょう…?
…そうですか、あの言葉は偽りではなかったということですか…」
手当てにトラウマのある刀剣を手当てできたということにホッとしていて
「あとはどうしよう…空気はだいぶマシにはなっただろうし」
食べ物といっても自分の作ったものを刀剣たちが食べるか
といえばそこはなんとも言えない
次は掃除でもするかと思いつつ
この身と心に傷をつけたのは同じ人間なのに、そんな人間を頼るなんてことはしたくなかった。
…ただ、少しだけ興味が沸いたのだ。
「…あの者が、これからどうするのか…この本丸をどうするのか…見物させていただきましょう。
退屈で仕方がなかったですが…これでほんの少し、楽しみができましたね」
誰もいない廊下を歩きながら、そんなことをぽつりと呟いて
宗三は自分の部屋へと戻った。
そのことに対し
「手当てを受け入れてくれてありがとうございます」
と一礼をし彼を見送る
いつかはこの本丸の心身の傷を癒したいと思いつつ
傷の治った腕を見つめて、時折手の平を開いたり握りしめたりしては動きを確かめているようだ。
それから、正座している膝の上にそっと手を重ねる様にして置くと顔をあげた。
「僕たちの本分は刀を振るい、歴史を改変しようと目論む者たちを斬ることです…
だってそうでしょう?そのために僕たちは此方の世に呼ばれたはず…
それが全うできないのならばただの鈍と同じですよ、僕たち刀というのはそういうものです…
決して、人間に好き勝手されるためにここに居るわけじゃないのです…
貴方は手入れだけでもと言いますけど…簡単なことだとは思わないでください。
手入れと称して傷つけられるものだと思っている者もいます…僕もその一人でしたから。
手放しで信用しろというのは…とても難しいことです。…そろそろ僕は失礼します」
そう言って静かに立ち上がると、襖の方へと歩いていった。
そこで彼を一瞥してから、そっと襖を開けて部屋を出て行った。
「俺は…皆様のしたいようにしてもらいたかっただけです
戦いたいのなら力を貸して欲しいですし無理ならそのままでいいのです。ただ手当だけでいいので受けてもらいたいのです」
今治す、という言葉と共に彼の神気が自分の中に入り込んでくるのが分かった。
「…ひどいものでしょう。これも全部あの者が僕にしてきたことです…
最初は、どうせ振るわれることもないのだからもうどうだっていいと思っていました…
それは貴方がここに来たときも同じです…
…貴方だってきっと変わりないのだろうとばかり思っていましたから……
こうして傷を治しているの見て、その考えは少し変わりましたけどね…」
治してもらっている間、宗三は淡々とそんなことを話した。
見せられた痣や傷を見てかなりひどかったのがわかり悲しそうな表情をして
「今直します」
といい手当を始め
ただ、その事実を苦痛を、忘れて皆が笑えるような…そんな日常にしたいのだと彼は言った。
その言葉に、宗三は顔を少し逸らしては、口元を袖口で覆うようにした。
「…そうですか。いつか…いつか、貴方のそれが叶う日が、来ると良いですね…」
宗三は、すすす…と彼の前に出ると静かにその場に座り込む。
それから、着ている着物の袖をそっと捲り上げて彼の目の前に晒す。
「…お願いが、あります。僕のこれ、綺麗にしていただけますか…?
いつまでもこれを見ていると、何だか心も身体も死んでいくような…そんな気がするんです」
無数の痣と傷、何かできつく縛られた痕のようなものなど、
その腕だけでもひどく痛々しいものだった。
「それは当たり前です。誰しもが負いたくもない傷そして精神的苦痛を受けたのですから
忘れさせるというのはまだ無理かもしれません。完全に忘れなくてもただ俺はその苦痛を忘れていつか皆様が笑って過ごせるようなそんな日常にしたいだけなのです」
多分自分も憧れていたことであろう
自分の家では明るくだのそういうことはなかったのだから
はい、と頷いた。
それから、これは偽善だと思われるかもしれないが、自分はここの本丸の者たちのことを
心身ともに治療をしたいのだ、そう口にした。
それを耳にした宗三は、ふいっと顔を逸らした。
「…貴方のそれが、別に間違いだとはいいません。
ですが…それを容易に受け入れてもらえるとは決して思わないでください。
僕たちは、この本丸であの者に傷つけられた…辱められた…それはどうしたって事実です。
それをなかったことにするのは…とても、難しいことですから……」
「はい…!」
とまっすぐな視線でそういう
「俺はこんなこと言ったらまた偽善とか思われるかもしれないけどここの本丸の皆様の心身の治療をしたいです」
そのあと刀の姿に戻るもいい
だが怪我をしたまま人間を恨んだままというのを避けたかったのだ
きょとんとした表情で此方を見る彼に、宗三はため息をついた。
掴んでいた手を離して、僅かに眉を下げて困ったような表情で彼を見る。
「…深くは聞きませんけど……いや、おそらくは聞かれたくないのだと思いますけど…
自分を見失うことでいちばんお辛いのは他でもない、貴方自身ですよ。
もっと…心を強くお持ちなさい。とは言っても…僕に言えたことではないでしょうけど」
目があったときにはきょとんとした表情で
それもすぐハッとしたように
「すみません…!取り乱しました」
改めて目を合わせたときに彼の美しさを痛感し
それなのに、目の前の彼は突然錯乱し始めては、支離滅裂なことを口にし出した。
宗三は思わずその顔を顰めて、袖口で口元を覆う。
「……ほんとうに、面倒ですね貴方」
彼の傍まで歩み寄ると、ぐいっと頬を掴み自分の方に向かせる。
その瞳を合わせる様にしながら、宗三は口を開いた。
「貴方、今誰と話をしているんです?僕の姿、見えていますか?
何を勘違いしているのか知りませんけど…今ここには貴方と僕しかいません。
それ以外には、誰もいないんですよ。ちゃんとその目で確かめなさい」
穀潰しがここで休んでいてはまた怒られてしまう。閉じ込められて折檻される
殴られる
そんな負の感情の連鎖なのか
「俺は…まだできる…できるから…っ。ひとりにしないで」
そう言いつつその目からは涙が溢れ
できるから暗い部屋に閉じ込めないでくれ、殴らないでくれ、
いま目の前に誰がいるかもわかってない状態で
無理やりにでも身体を動かそうとする彼に、宗三は襖を開けて部屋に入ると
ぐいっと彼の腕を引っ掴み、布団の上に転がした。
「結構ですよ。ふらふらで動くのもお辛いなら横になっていなさい、見苦しいです。
どうせ急ぐようなこともないんでしょう、なら休んだって誰も咎めやしませんよ」
ちらりと机の上に視線を移して、しばしそれをじっと見つめた後に
もう一度彼の方に顔を向けると、再びため息をついた。
「事が片付いたようなので少し来てみれば…面倒な性格してますね、貴方」
寝ている自分を見てか怠惰と言われたしかにはたから見たらそうであろう
「そうですね。穀潰しはまた少し色々仕事をしますね」
先ほどの平野に見せた時同様に作り笑いを浮かべ布団から起き上がる
見るからに顔色は悪いのだが幼い頃のトラウマか
指摘されてしまったら倒れない程度に動かなければならないと思っていて
平野は、ぺこりと頭を下げてその場から去っていった。
それからしばらくの後、ふいに部屋の外からかたんと小さく音が聞こえた。
ゆらゆらと動く人影は、やがて襖に手をかけて少し控えめに開いた。
「音、止みましたね。おかげさまで、兄様もお小夜も普段通りに戻りました。
ところで…何故貴方はこんな時間から床についているのですか?怠惰ですね…」
少し開いたすき間から覗き込んできたのは、宗三だった。
その控えめな行動とは裏腹に、彼の口から出てくる言葉は容赦がなかった。
「ありがとうございます」
といい部屋を出る彼を見送り
平野は柔らかい笑みを浮かべた。
何か必要なものはあるかという問いかけに対して、彼は大丈夫だというように首を振った。
「かしこまりました。…それでは、僕は一度失礼させていただこうかと思います。
僕がここに居てもかえって気が休まらないでしょうし…ゆっくりお休みください。
もし何かあれば、いつでも名を呼んでくださいね。それでは」
ぺこり、と小さくお辞儀をしてから平野は静かに部屋を後にした。
今までの人生謝ってばかりだったなとふと思いつつ
「ありがとうございます平野様」
とそういい
必要なものはあるかという彼の質問に首を振り大丈夫だということを伝え
やがてその口を開いた。
「主さま、こういう時は別に謝ることはないのですよ。
そうですね…むしろ、ただ“ありがとう”とだけ言えば宜しいのです。
そうだ、お加減のほうはいかがですか?何か必要ならば僕が持ってきますが…」
依然として、少し眉を下げたまま彼の顔をじっと見つめながらそう問いかけた。
「すみません迷惑かけて」
と申し訳なさそうにいい
そんな中、目を覚ました彼に、傍についていた平野が気が付いた。
「…お目覚めですか。突然倒れられるので何事かと思いました…
叔父上には、先に休んで頂くように言って、前田もそれについていってもらいました
今ここにいるのは、僕だけとなります」
「ん」
と唸っていて
三日月はそれに足は止めず、そのまま去って行ってしまった。
その後、彼が突然地に伏したのを見て鳴狐は僅かに驚きを露わにさせる。
平野と前田もどうしたんだというように彼の元に歩み寄っては、小さく身体を揺する。
「主君、主君!…一体、どうしたというのですか…?」
「僕にも分かりません……どうしましょう」
「…二人とも、こっち。ここに寝かせてあげて」
床を整えて、そこに彼を横たえさせた。
と立ち去る三日月にそういい
まあ彼が起きて斬られなかっただけマシだろうとそう考えて
安心したのか気が緩み目の前は暗くなり、体は地面へと向かっていく
あれほどまでに動かすことも辛かった身体が、幾分か楽になったように感じられた。
三日月はゆっくりと上体を起こすと、自分の手を動かしながら確認をする。
「…以前の主という輩はこういった術を使うことをひどく厭うものであったが…
人には様々な種類がいるのだな。…とんだはた迷惑なやつよ」
傍に置いていた自身の刀を手に取り、起き抜けで少しふらつきながらも
その場に立ち上がると、彼を見下した。
「…決していい気になるなよ。このことで俺の上に立ったと思うな」
それだけ言い残して、三日月はその部屋から出て行った。
目の前が若干回って見えてきた
だがまだ片付けもあるし手当も残っているのだ
「これで…終わりです。」
残りの力を使い手当てをなんとか終えて
ただ純粋に心配だという表情でそんなことを口にした。
そんな彼の言葉に対して、三日月は「…ふん」と短く声を漏らすと、
再びゆっくりと顔を動かして、そっぽを向いた。
「…叔父上も、どこか痛いところなどはありませんか?
体調はよろしいようですが…どうか先ほどのような、無理はなさらないでくださいね?」
「…ありがとう、前田。大丈夫、心配しないで…」
と起きた三日月にそういい
焦りも怯えもなくただ心配だという表情でそういい
彼がそんなことを問いかけた。
「…大丈夫。その…ごめんね。……ありがとう」
ぺこり、と小さく頭をさげて鳴狐は少し小さな声でそう言った。
それからしばらくして、ぴくりと三日月の指先が僅かに動く。
ゆっくりとその瞳を開けば、数度瞬きを繰り返してから顔を僅かに動かした。
「……ふん、他ならぬお主なんぞに助けられるとはな」
「お怪我の方は大丈夫ですか?体調はどうです?」
と鳴狐に声をかけつつ自分は三日月の手当てをしていて
彼に手伝いをお願いされた前田と平野はこくりと頷いて、
彼の指示通りに行動をした。
手当ての道具など必要なものを用意して、彼が二人にそれぞれ手入れを施していく。
少しして、比較的傷の浅い方であった鳴狐がゆっくりと瞳を開けた。
よろよろとその上体を起こすと、自身の手の平を見つめる。
「っん……ここ、は。傷は……ない」
鳴狐が意識を取り戻したことに、傍にいた前田と平野がほっと胸をなで下ろした。
今の彼らの攻撃ならばなんとか受け止めることができた
持っていた木刀で三日月と鳴狐のみぞおちあたりを打ち気絶をさせ
「前田様、平野様お手伝いお願いします」
とりあえず手当ての道具があったから霊力を使って治していくが時々足りないものを持ってきてもらったりなどをお願いしていたのだ
その身体をおしては、自分から離そうとしている。
…が、その手には力が入っておらず、殆ど添えるだけとなっていた。
そんな時、鳴狐に向かって何者かが部屋から駆けてくる。
固いものがぶつかり合う小気味のいい音が、その場に響いた。
「ッ…」
「其方から仕掛けたくせにもう終いか…?威勢はどうした、ほら…立て」
少し鳴狐から離れると、三日月はその髪をかき上げる様にしながら
鳴狐とその周りに居る彼らに冷たい視線を向けた。
鳴狐もだが、三日月も結構な手負いだった。
元々あった傷に巻かれていた複数の包帯はどれも解れて、血が滲んでいる。
それにあわせて、鳴狐から受けた傷からも、鮮血が滴り落ちているのだ。
装束の裾や袷は乱れて、髪飾りもその髪をぐしゃぐしゃになってしまっている。
短い呼吸を繰り返しながら、それでも三日月のその瞳の鋭さは変わらなかった。
「なんだ?お前たちも其方に味方するか?っは…言っておくが先に仕掛けたのは此奴だぞ」
「っ一期のこと、謝って…!せっかく、またいつも通りに戻れそうだったのに…!」
ぐっと立ち上がると、鳴狐はそのまま三日月の方に思いきり斬りかかる。
彼の方に駆け寄りつつ彼の見ていた部屋を見ていて
平野と前田はこくりと頷いた。
彼の後に続き、宗三に言われた部屋へと向かえば
言い合いをする声や大きな物音などはしなかった。
だが、確かにそこには何者かがいるというのは気配で分かった。
「…主君、御下がりください。ここは僕たちが先に様子をみて……っうわ!?」
前田が斗真の前に立ち、そう言ったその時だった。
閉められていた襖ごと、何者かが吹っ飛んだのだ。
襖と一緒に庭に飛ばされた者は、少しした後にむくりと起き上がる。
「叔父上っ!?」
彼の特徴とも言える面頬は粉々になり、その装束も所々破れて
傷口から血がたれている、彼のお供の狐も傍にいなかった。
彼は、その双眸でまっすぐに部屋がある方向を睨むように見る。
鮮血の滴るその手には自身の刀がしっかりと握られていた。
「では一緒に来てください」
といい言われた場所へ向かっていく
宗三は大きなため息をつくと、「出来るだけ早くにお願いします」と、
それだけ言い残して去っていった。
宗三の姿が見えなくなった後で、前田と平野が心配そうな表情を浮かべて彼を見る。
「主君…お一人で行くのは危険です、僕たちもお供します」
「まずはその件の部屋に行きましょう」
平野はそう言って立ち上がると、それにつづくように前田もその腰をあげた。
「そうですねすぐにとは言えないかもですがなんとかしますね」
といい
とにかくやることが沢山あるなと思い
一期や鳴狐の傍にいることが必要なのかもしれないと言った。
それにこくりと頷いた二人は、しかしすぐ後に眉を下げた。
「…叔父上、一体どこに行かれたのでしょう。心配ですね…」
「いち兄は出会ったときと同じようにお部屋の隅で自身の刀を抱えて座り込んでしまって…」
どうしましょう、と考え込んでいた…その時。
無遠慮に彼の部屋の襖が開かれて、眉をつり上げて不機嫌さを露わとさせている宗三が
斗真を睨むように見た。
「ちょっと…いいですか。僕たちの隣の部屋で…
馬鹿みたいに言い合いをしている方が居られますよ。
お節介を焼くのがお好きなんでしょう?だったら、早く何とかしてきなさいな」
「宗三さん…そんな言い方は……」
「…お小夜の気がたってしまって仕方がないんですよ。兄様もぶつぶつと呟いては
ひとりの世界に入ってしまわれましたしね…早くどうにかしてください」
一期や鳴狐の傍にいることが必要なのかもしれないと言った。
それにこくりと頷いた二人は、しかしすぐ後に眉を下げた。
「…叔父上、一体どこに行かれたのでしょう。心配ですね…」
「いち兄は出会ったときと同じようにお部屋の隅で自身の刀を抱えて座り込んでしまって…」
どうしましょう、と考え込んでいた…その時。
無遠慮に彼の部屋の襖が開かれて、眉をつり上げて不機嫌さを露わとさせている宗三が
斗真を睨むように見た。
「ちょっと…いいですか。僕たちの隣の部屋で…馬鹿みたいに言い合いをしている方が居られますよ。
お節介を焼くのがお好きなんでしょう?だったら、早く何とかしてきなさいな」
「宗三さん…そんな言い方は……」
「…お小夜の気がたってしまって仕方がないんですよ。兄様もぶつぶつと呟いては
ひとりの世界に入ってしまわれましたしね…早くどうにかしてください」
「そうですね…今は一期様や鳴狐様のそばにいたほうがいいかもしれません」
一期はもちろん鳴狐にもダメージはあっただろう
自分だと気を許してもらえてないからそれならば家族がいた方がいいだろうと思いそういい
少しして話し終えた後、平野と前田は互いに顔を見合わせてはその口を引き結んだ。
それから、再び彼の方に視線を戻すとその口を開いた。
「主君…お話してくださり、ありがとうございました。
僕たちも、お供すれば良かったですね…さぞ、大変だったことでしょう」
「前田…それは言わずとも主も良くお分かりの事でしょう。
今はそれよりも…これから、どうするおつもりなのですか?
もし…僕たちにも出来ることがあるのなら…精一杯、お手伝いします」
だがすぐに
「実は」
といい起こったことを話す
それを踏まえてこの二振りがどう返すかを待っていた
平野と前田は部屋へ入ると、襖を静かに閉めて彼の向かいの位置に正座をした。
「その…先ほど随分と憔悴したいち兄が部屋に戻ってこられました。
その時、三日月さまも一緒だったのですが…一体、何があったのでしょうか?」
「二人とも顔色が悪くて…大きな音がしましたし……叔父上も部屋に戻られなくて…」
「どうぞお入りください」
といい襖を開けて二振りを迎える
部屋には色々な本丸の事例やなんだなどが記された本とパソコンで調べていたものがあり
平野と前田が居た。
少しの間、声をかけてもいいものか否か考えている様子だったが、
やがて前田が、少しおずおずとその声をかけた。
「あ、あの。主君…今、よろしいでしょうか?その、お話したいことが、あって……」
二人には彼に聞きたいことがいくつかあった、
その為にここにやって来た、という感じだった。
部屋でまた色々と勉強していて
彼は自分を責めるなと言った。
彼自身の部屋へと戻るその後を、少し追いかける様にして
鳴狐は歩を進めた。
やがて自分の部屋の前に着くと、鳴狐はそこで足を止めて
彼の背中に声をかけた。
「…ありがとう、主。頑張ろう…ね」
それだけ言って、鳴狐は部屋へと入っていった。
とそういい彼も自分の部屋へと向かっていく
勝手なことをして、そして嫌な思いをさせてしまったとその頭を下げて謝った。
彼のその言葉と行動に、鳴狐はぐっとその唇を噛み締めるようにすると
ぎゅっと掌を握りしめる。
「…大丈夫。別に、主は悪くない。……きっと、三日月さまも辛いんだと、思う」
そう、あれらの行動すべてが決して無意味だということはないはずだ。
三日月にだって、それから一期にだって…何か思うところがあるのだ。
ただ…どうすることも出来ない、不甲斐ない自分が、許せなかった。
「あっ鳴狐様!」
と呼びかけて追いかけ
勝手なことをしてそして嫌な思いをさせて申し訳ないと頭を下げて謝っていて
三日月の言葉が、決して分からないわけではない…その心が、
決して理解できないわけではないのだ、でも…
「…ここ、少しの間封鎖しておこう。きっと、彼らの他にも…
ここを見たくない、って刀は…いると、思う。
鳴狐も、しばらくは…ここに、来たくないや……」
どこか弱弱しくそう口にすると、少し外の空気を吸ってくると、そこを後にしたのだった。
「時間をかけてなんとかするしかないかもしれませんね」
鍛刀部屋はトラウマになってる刀剣が多いのがわかっていて
さてどうするかと小さく呟く彼の声に、鳴狐はその意識をはっと戻した。
自分でも知らないうちに、放心してしまっていたようだ。
「あ、主…!どうするの……っ一期、それから三日月さまも…一体、どうすれば…ッ」
「鳴狐、落ち着くのですよぅ!鳴狐がここで取り乱してはいけませぬぞ!
…そう焦る気持ちは、分からなくも…ありませんが……」
「さてどうするかな」
と独り言をつぶやく
三日月には信用されるまでも時間がかかる
それまでに彼が刀解を望みそうだ
尚も座り込んでいる一期の傍へと寄り、目線を合わせる様にしゃがみ込むと
本体を握る彼の手を、三日月は軽く握った。
「一期や一期、今日のところは控えてまた日を改めるとしよう。
何、どうせやるのならば御前様が少しでも万全の時が良いだろう。
さあさ、部屋へと戻るとしようか」
そう言って一期の身体を支える様にして共に立ち上がると、
今にも取り落としてしまいそうな一期の本体と、自分の刀とを一緒にぎゅっと握り
今居る部屋を出て行った。
三日月に信用されるのはしばらく時間がかかりそうだなと思いつつ
一期は、どくりと心の臓がざわつくのが分かった。
弟たちを引き合いに出すなど、なんと狡いことか……
しかし、その言葉を聞きいれようとする自分と、そうしたくない自分とが
ひどく鬩ぎ合っていることが分かった。
そんな二人の様子を傍で見ていた三日月が、大きなため息を吐いた。
「おい小童、あまり俺たちを騙るようなことは慎んでもらおうか。
お前のその言葉で、今一期はこうして苦しんでおる…ああ、こわやこわや。
やはり人間はどこまでも狡猾だ、信用ならん生物だなぁ」
「前田様も平野様も自らの意思で俺に呼んでほしいと願ってくれた
その思いを全てなかったことにするとおっしゃっていますか?
嫌いなはずの人間。審神者に願いを乞うほどあなた様に会いたかったのではないのですか?
それを全て無下にするということになりますよ」
嫌いであるはずの人間に頼むのだ余程の覚悟があったのだろう
パタパタと一期の近くに行きそう話し
すぐにその顔を俯かせて口を噤んでしまった。
そんな中、三日月は己の刀を見つめながら思考を巡らせていた。
「半端に怪我をしても消えることは出来んかったからなぁ…はてさて、如何したものかな。
…一期や、あちらで俺と勝負でもするか?もちろん、真剣で…だ」
傍らで座り込んでいる一期に対して、目線を合わせる様にしゃがみ込むと
三日月は異様なほどに綺麗な笑みを浮かべながらそんなことを言った。
一期は、僅かにあがる息を整えようと試みながらも三日月の方へと顔を向けた。
「勝負、ですか…?」
「ま、待って…一期!本当に、それでいいの…?せっかく、前田や平野も此方に戻ってきたのに…」
堪らず、声をあげた鳴狐はぱたぱたと一期らの居るところへと駆け寄っていった。
そんな彼に対して、一期は少し乾いた笑いを漏らした。
「私…別に此方に戻ってくることを望んでいたわけではないのですよ。
ねぇ叔父上…貴方も、それからあの子たちも…みんな一緒に、彼方に還りましょうか。
そうすれば…粟田口、兄弟みな一緒に居れますよ…ね?」
こてり、僅かに首を傾げては笑みを浮かべた。
戻りたければ自分の霊力につられて刀剣が何かコンタクトを取る
たしかになくなってしまったがまた直すことはできるのだ
ただ今の問題とするならば刀剣としての役割をしたくないと言う刀剣たちだろう
意思を変えろとは言わないがせめて人間を恨んだままというのをなんとかしたいと考えていて
やがて件の場所に冷却水を持ってくると、躊躇なく炉へと放り込んだ。
赤々と燃えていた炉の炎はたちまち元気を失くして、その姿を消してしまった。
「あぁ……」
扉の近く、後ろに控えていた鳴狐のお供の狐が悲痛な声を小さく漏らした。
鳴狐は、この光景を目の当たりにして決して止めようとはしない彼の方に、ちらりと視線を向けた。
次第に、辺りは見るも無残な様子へとなり果ててしまい、そこでやっと三日月は手を止めた。
彼の傍らには、へたりと座り込む一期が居り、それはひどく疲弊しているのが見受けられた。
「これで…この忌々しい場所へと喚ぶことは出来まい。次は…俺たちが本霊へと還ることか」
ただただこんなになるまで追い詰めていたと言うことをその身に受け止めていて
きっと戻ってくる意思がある刀剣がいたのなら自分になにかしらコンタクトを取るだろうし無理して呼ぶと言うこともしたくなかったからある意味この行動はいいのだろうと思いつつ
一番近くにあった、刀を鍛えるのに必要な資材が置いてあった台座に対して
躊躇なく刀を振るい、ガラガラと音を立てて壊した。
「三日月殿……」
呟くように彼の名前を口にした一期は、ぎゅっと己の刀を胸に抱きしめながら
冷却材の方を見て、炉の方に視線を移した。
…未だ、赤々と燃えているその炉の炎に、どくりと心の臓が音を立てる。
「消さなければ……あの火を、赤を……わたしの、弟…たちが……」
ふらふら、と冷却水のある方へと向かっていくと、その器をずりずりと引きずり始める。
炉の方へ、少しずつ…それを運んでいく。
万全でない為に、あがる息とふらつくその身を支える人物が居た。
「御前様、どれ…俺が手を貸そう。あの炎を消したいのだろう?
そうだなぁ…それがお主にとっては当然の判断だろうなぁ」
「ここを壊してあなた様の気が晴れるのであればよろしいのですが
もしかしたらこちらに戻る意思のある刀剣様だっていらっしゃると思います。なので今しばらくここを壊すのは考え直してもらえないでしょうか?」
ここを使うのはあくまでも意思疎通できそしてこちらに戻る意思のある刀剣しか呼ばない
という趣旨を話し
あとは各刀剣が望んでいる刀と精神的干渉をはかるということを話し
まあ多分今の三日月に通じるかはわからないが
その手に持った刀を振るい、備え付けられている祭壇、資材、様々なものを
手あたりしだいに壊して、壊していった…
「っは、ぁ…は、っ…みか、づき……どの」
その息をひどく切らしながら、鍛刀部屋の扉を開けて一期がやって来る。
その手に己の刀が握られているのに気が付いて、三日月は僅かにその口元に笑みを浮かべる。
「ほう…一体それで何をしようと言うのだ、御前様?……む、お主も来たか…小童」
二人に遅れて、斗真とその後ろに鳴狐がやって来た。
三日月のその言葉に、一期が一瞬顔を向けるが、すぐに三日月へと向き直した。
「一期様!」
と呼びかけて
どこか遠くで大きな物音がした。
物音、というよりは…何かを破壊しているような…轟音だ。
その時、着の身着のまま…長襦袢に羽織を羽織っただけの一期が、
自身の刀をその手に持っては、部屋を飛び出していった。
「っ?!…いち、一期…っ?」
驚愕の表情を浮かべる鳴狐の傍に、平野と前田が駆け寄って来る。
「いち兄…大きな音を聞くなり血相をかえて……少し、怖かったです」
「……っ!主さま、あちらの方向は僕たちを呼び戻してくれた場所…鍛刀部屋などが
あるところではないでしょうか…?」
ある事に気が付いた平野が、少し遠くで音がする方を指差しながら
僅かに震える声で言った。
「あー怖かった」
久しぶりの威圧の態度や冷酷な視線だったから少しは緊張していたのだ
「三日月様も刀解を望むのか…どうするべきか」
いっそのことこの本丸を一気に作り変えるか
政府からは残せと言われているがどうするべきか
閉じ込めるという発言もあった
もう少し対策を考えなければと考え
三日月は嫌悪を露わにさせて、声を上げた。
「黙れ、黙れ黙れ!俺たちのことを考えていると言うのならば今すぐこの箱庭を壊せッ!
要らぬ、要らぬ要らぬ!このような俺たちを苦しめてきた場所など…要らないっ!」
三日月はその刀身を鞘から引き抜くと、彼らの居る部屋の襖…木枠の部分に、
思いきり斬りかかった。
途端、その衝撃で襖は壊れて、音を立ててその場に崩れ落ちた。
「気を変えていくだと?そんなの必要ない、今すぐに俺たちを刀解し、此の世から解放しろ!
人間などにいいように扱われるだけのこの身も、ただ閉じこめるだけのこの箱庭も…ッ
全部、全部…要らぬっ!!」
普段の彼には似つかわしくない程にその言動はひどく荒々しかった。
濃紺の装束を翻しながら、三日月はどこかへと走り去っていく。
その両の手に、それぞれ自身の鞘と抜き身の刀を携えて、彼はその場を後にしたのだった。
確かに自分勝手な行動をいたしました。それで一期様がなどど浅はかなかんがえでした
お怒りになられるのも無理はない。ですがこの空気を変えていくため頑張っていきたいのです」
とまっすぐな目線でそのままいい
ふいっとその顔を部屋の奥へと向ければ、丁度彼方も自分を見ていたのか、
ばちりと一期とその目と目が合った。
依然として、三日月はその口元に袖口を当てたまま、片方の手で己の刀の柄を握る。
「…一期や。御前様はそれで良いのか?ここに居るのと同じ人間がお主の大切な兄弟を、
その手で…御前様の目の前で、無残に殺されたのだぞ?
なのに御前様は…そのようにしおらしくなってしまって……まさかこの者を赦す気では居るまいな?」
「三日月、さまッ…やめて…一期は今やっと……っ!」
鳴狐の悲痛な叫びにも耳を貸す様子はなく、三日月はただただ一期を見ている。
そんな三日月の瞳に、一期は酷く絶望したような表情を浮かべると、その頭を抱える。
…ふと、彼の両脇に居る平野と前田を目にしては、三日月は僅かにその瞳を見開いた。
が、すぐさまその瞳には怒りといった感情が宿り、斗真を睨むように見る。
「お主…あの子らをこの世に呼び戻したのか?こんな何の光もない、ただただ狭く暗い箱庭に…
なんと可哀想に……望む極楽にもいけず、再びこの世にその生を戻されるとはな…
まこと、惨いものよなぁ」
ふいっとその顔を部屋の奥へと向ければ、丁度彼方も自分を見ていたのか、
ばちりと一期とその目と目が合った。
依然として、三日月はその口元に袖口を当てたまま、片方の手で己の刀の柄を握る。
「…一期や。御前様はそれで良いのか?ここに居る人間がお主の大切な兄弟を、
その手で…御前様の目の前で、無残に殺されたのだぞ?
なのに御前様は…そのようにしおらしくなってしまって……まさかこの者を赦す気では居るまいな?」
「三日月、さまッ…やめて…一期は今やっと……っ!」
鳴狐の悲痛な叫びにも耳を貸す様子はなく、三日月はただただ一期を見ている。
そんな三日月の瞳に、一期は酷く絶望したような表情を浮かべると、その頭を抱える。
…ふと、彼の両脇に居る平野と前田を目にしては、三日月は僅かにその瞳を見開いた。
が、すぐさまその瞳には怒りといった感情が宿り、斗真を睨むように見る。
「お主…あの子らをこの世に呼び戻したのか?こんな何の光もない、ただただ狭く暗い箱庭に…
なんと可哀想に……望む極楽にもいけず、再びこの世にその生を戻されるとはな…惨いものよなぁ」
「まあ騙されていると感じるかもしれませんね。今はあなた様にとって俺はにくい人の子
そして口ではなんとも言えるのは事実でございます。できることであれば皆様の心身の傷を癒したいと堂々と言いたいですがあくまでも審神者ができるのは傷の治療
そのお心に抱える闇は俺がはらえるならはらいますし一期一振様のように弟と叔父が解決するというものもありますから」
あろうことか自分の前に立ちはだかった。
決して臆することなく、彼は自分の思いをしっかりと言葉にして三日月に伝える。
それにただ静かに耳を傾けていた三日月は、全て聞き終えた後に、
声をあげて笑いを漏らした。
それから、その口元に袖をあててその双眸で斗真をじっと見据えた。
身体の底から冷えるような、金縛りにあったような感覚さえ覚える彼のその視線…
「このような外れの箱庭にやって来るからどんな輩が来たのかと思えば……
救いようのないお人好しだったな。お主のその力は真に治癒の力なのか?
そう言って俺たちを騙しては取り込ませて、いいように利用してるやもしれんなぁ…
人の子の心は移ろいやすいのでなぁ、俺はそんなお主が信用できん。
それに俺たちは刀だぞ?こうして人のなりをしていてもその本分は刀にある…
刀が人を恨むなど、よくある話だ…そうだなぁ、左文字のはまさにそれではないか。
お主は、そんな闇まで全て取り除こうと言うのか?
…人間風情が、俺たちを救おうなど……所詮は、あの者と同じ人の子に変わりない癖に……」
最後の一言、三日月はその言葉を口にする際にふいっとその顔を逸らしては俯かせた。
美しくもはかないそんな印象を三日月からは受ける
斗真もバカではないすぐに彼が三日月宗近であることはわかった
怯えている鳴狐を自分の後ろに隠すようにして彼の前に立つ
「聞き方次第では無理強いしているようにとらわれたとおもいます、手当てを望まないのはわかりますですがこのままその御身が滅ぶまま人間を恨んでいただきたくはないのです。別に力でねじ伏せるつもりなどございませんしいざあなた方刀剣男士様が刀を抜けば俺なんかでは到底かなわないでしょう。」
もし襲い掛かられたら受け身を取ることはできるが所詮それまでなのだ
「本音を申し上げます三日月宗近様。俺としては怪我をしている方は全員治したいのです
そのあと俺の始末を考えて欲しいです猶予期間をいただけたらありがたいとは思ってます。俺だって穀潰しでこのままここでボロボロの刀剣男士様に斬られるよりせめて完全に皆様の怪我を治してから役目を全うしてからせめてきられれば俺も穀潰しではなくなると思います」
まあ俺個人の意見は今は関係ないかもしれないですがといい
本心はただ治したいというだけだというのは三日月も斗真の表情を見ればわかるであろう
そう言ってのける彼に、鳴狐は僅かにその唇を噛んだ。
今、自分に本当に出来ることは、一体何だろうか…?
主のことを呼ぼうとして、思わず息が詰まりかけた。
「主………ッ?!」
「ほう、我々に楯突こう…とな。はっはっは、身の程知らずな小童よなぁ」
口元にその濃紺の袖をあてて、声をあげて笑いを漏らした。
怯える鳴狐と、見慣れぬその顔をじっとその月の宿る瞳で見下した。
…ここ、粟田口部屋は、主な通りとなる廊下と面している部屋だ、
当然、そこを通り道にする刀は多い。 …三日月も、その一人だった。
腰元に佩刀している己の本体の柄を手でおさえるように触れながら、
少しの間、三日月はただじっと見ていた。
…大体、三日月は今こうして動けるわけがない。
満足な清浄なる気もなくて、その身は酷使されたが故に、ぼろぼろな筈…
何より、恐ろしいほどに見目麗しい彼は……きっと…
「この本丸という箱に清浄な気を満ちさせようとする、それは結構、結構。
だがなぁ、あの人の子のことがある故に、その身に触れられることをひどく嫌う者ばかりよ。
それを無理強いしようなど…ん?お主、もしや叩っ斬られたいか?」
にっこり、とこの世のものとは思えない程の綺麗な笑みを浮かべながら、
己の刀からは一向に手を離さずに居る。
鳴狐は、片時も彼から目を離さないように、じっと見つめている。
「聞こえたぞ?どうやらその腕に覚えがあるようじゃないか。
はは、俺たちを力でねじ伏せるつもりか?…答えよ、小童」
ここの空気を浄化してもし自分に何かあったとしてもきっと穀潰しではなくなったし少しは役に立てただろうし後悔はないのだ
それに怪我をしたとしてもそれは仕方ないことだと思っているということを伝え
自分たちのことを放ってはおけないのだと言う彼に、
鳴狐は僅かに瞳を見開いた。
すぐに、その眉を下げて再び表情を曇らせる。
「でも…主の事、傷つけちゃうだけだよ。そんなこと、鳴狐は嫌だ」
やがて、小さくふるふると首を横に振ると、じっと彼の方を見つめる。
でも穀潰しの自分は少しでも何か恩返しをしないといけないのですといい
あとはただただ自分があんな状態になってる刀剣を放っておくことなんてできないのだ
それでも目の前の彼は、自分たちを救おうとすることを諦めなかった。
…どうして、そこまで頑張れるの?
鳴狐は、そう問いかけそうになるのを、慌ててぐっと飲み込んだ。
最初に、“左文字と三条には関わらない方がいい”と、鳴狐は言った。
彼らは、自分たちのような他の刀たちと比べて、殊更に心身ともに負った傷が深いのだ。
一期をはじめ、粟田口のことだけでこれほどまでに、彼に負担をかけてしまっているのに
それなのに、更になんて…何とも酷な話だった。
鳴狐は、少しだけ己の唇を噛むと、意を決したように言った。
「…左文字と、それから三条には、関わらない方がいい」
彼のことを、不用意に傷つけることは決して望んでいない。
だから…そこの二つの刀派よりも、他に目を向けてほしかった。
「とりあえず左文字の刀剣様がたにはあったときにまずは謝罪してなんとかこの世を去るのだけはやめてほしいっていうのは伝えました。」
あんな業火の中に入れるなんて酷なことだからなんとか考えを変えてもらいたいのだ
「危ういあの刀剣様は怪我もしていて…できるならなおしたいんですよね」
それは宗三であることに気が付いた。
江雪や小夜が、此方の世に留まることに疲れたのだと言ったことを
鳴狐は聞いて、その顔を曇らせる。
この本丸では、無理な出陣や遠征などの他に無理難題を強いた。
更には、見目麗しいものには、自身の欲を満たすためだけの夜伽の道具として
扱われた者もいる…中でもひどかったのが、その宗三なのだ。
だが、それを目の前の彼に話すわけにはいかない…
そう思った鳴狐は、小さく首を振って、その顔をあげる。
「……そっか。早く、どうにかしないとね」
特徴を話す斗真の話ですぐに宗三だと鳴狐は気がつくだろう
何もなかったといえば嘘にはなるが左文字兄弟はもうこの世に疲れたと言ってたり
斗真から左文字の兄弟に出くわしたことを聞かされた。
彼の様子を見る限り、何かあったようには思えないが……
「…そう。何も、なかった?」
やはり心配なことに変わりはなかった鳴狐は、
少しその眉を下げて、彼の身を案じた。
ふと思い出したことがあり
鳴狐に左文字の刀剣にあったことなど彼がいないときに起こったことを一応鳴狐には全て話していて
共に頑張ろうと、彼はそう言った。
斗真のその言葉に、鳴狐はこくりと頷いた。
「…そうだね」
今は出来ない事でも、何れはまた出来る様になる…
またあの頃のように、一期や藤四郎の兄弟たちと一緒に、
楽しく笑い合える日が来ることを、心からそう願う。
鳴狐は、心の中で祈りをささげる様に、そう思った。
「今は無理でも俺もみんなの笑顔が見たいので頑張ります」
だから一緒に頑張りましょうとそういい