⚔.涼香 さま専用*
- 2019/02/28 21:52:28
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名前[ふりがな]:桃瀬 斗真(ももせ とうま)
性別:男
年齢:22
職業(特筆すべきことがなければ未記入でも可):
性格:困った人がいたらほっとけない。
でもあとあとのリスクも考えつつ動くある程度は
頭が働くタイプである親しい人には
笑顔を向けるが嫌いなものや自分にとって害がありそうな人とは
作り笑いで乗り切っている
妹や弟など幼い子たちには好かれる雰囲気で年上からも
人柄の良さで可愛がられる
容姿:身長は170で髪の毛は茶色でふわっとしている、
左耳にピアスがあいていて
その時の近侍のイメージカラーに似た色のピアスをしている。
服は和服だったり気分によって色々変えている
歌仙や加州には服のセンスを褒められることがある
攻めor受け:受け
備考:桃瀬の家は代々の名家で小さい頃から剣術などの武道
そして所作などを学ぶということで舞や剣舞、花道に茶道と
必要以上の教育を受けて育っていた
上に兄がいてそちらが跡取りになるということで
自分は雑に扱われていた
兄ばかり大事にされそしてある程度物心がついた時に妹が生まれ
より一層親から愛されるということをされなかった。
できなければ物置に閉じ込められたりご飯を抜かれたり、
そんな生活を送っていた
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皆さまのキャラの名前: 桃瀬 斗真
管理人のキャラの名前:宗三、オール(固定)
シナリオ:兄の結婚が決まり家はお祝いムード全開
自分としても兄は大事な家族だし祝福はしていた
そんな中親に呼ばれ居間に行くといつまでこの家の穀潰しに
なっているつもりだと説教を受け
年齢も年齢なのだからこの家から出て行けと言われ家を追い出される
もともとバイトなど高校の時にこっそり貯めたお金などがあったし
まあ生きては行けるかと思っていた時に
政府の人間から声をかけられる。
審神者としての力も強いらしく政府としては
今すぐにでも来てほしいとのことだったので
そのまま審神者になることを受け入れる
そんな彼が配属になったのは元ブラック本丸であった。
ここの本丸の元主は多忙な出陣、無理難題を強いる
美しいものは閉じ込める、そして夜伽相手にしていたそんな主だった
主が病気でなくなりそこに自分がいけとのことだった
別に死んでも構わないしいいかと思い本丸に行くと
あからさまに漂う悪い気、そして殺気。
襲いかかってくる刀剣たちの攻撃を持っていた木刀でなぎ倒しつつ
こんのすけの教えで手入れをしたりしていくうちに
だんだんと打ち解けていく
その他(管理人に要望等あれば):
最初はブラック本丸ということなので
みんな斗真に敵意や恐れを持っているがだんだん手当を通じて
その感情がなくなっていくって感じで行きたいです
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*作成お疲れさまでございました
*奇数コメお願い致します
*糖度等は如何致しますか?
そういった表現内容にもしご希望あればお聞かせください
→~裏(規則に伴い原則キス表現まで、以上は時間を飛ばすなどの回避)
※ブラック本丸の要素が含まれる為、そういった表現有り
(暴力・性的表現(仄めかし)など)
平野はその瞳を見開いた。
まず最初に目に入るのは、真白い布団の上に横たわる鳴狐の姿。
一体、何があったというのだろうか…
次いで、部屋の隅…壁に寄り掛かるようにしては、自身の刀を抱きしめては
その身を小さくして丸まっている一期の姿。
…思わず、自身の刀を落としそうになった。
平野は、斗真へと視線を移すと、
「…主さま、これは……何か、あったのでしょうか…」
と、おそるおそる問うた。
といい鳴狐と一期の元へ彼を連れて行き
「お待たせしました。こちらです」
といいふた振りの前に平野を呼んで
平野は小さく息を吐いた。
そういうことではないのです、まるでそう言いたげに。
やがて、ある程度落ち着いた頃、平野はあたりを確認するように
見回しては、自分の腰元にある刀も、確かめる様に触れる。
一通り、確認作業のようなものが終わり、改めて平野は斗真の方を見る。
「それで……その、いち兄と叔父上様はどちらに…?」
それに言えば少しは信用してもらえると思いそう言ったのだ
まあ彼がそういうのならやめておくかと思い
僅かに慌てた様子で斗真へと歩み寄る。
「いけません、主さま!真名をそう軽々しく口にしてはなりません。
ここの男士の皆さまはいい人ばかりですが…稀に、敵軍が紛れ込むようなことがあるのです。
我々男士の姿に擬態して、此方側の情報を盗もうとします」
そこで言葉を区切ってから、
「真名は主さまにとってとても大切なものです…ですからどうか、
それを無暗に口にすることはお控えください」
そう言って、平野はその頭をぺこり、と下げた。
ようやく現れてくれたホッとしつつ
「来てくれてありがとうございます。ここの主人の斗真と申します」
といい頭を下げて
彼の呼ぶ声が、聞こえる。
…―
そして、斗真のいるこの本丸に、平野藤四郎が顕れた。
その地に、自身の足で降り立ち、目の前に居る斗真の顔を見る。
「呼び戻していただき、ありがとうございます。改めて、平野藤四郎と申します。
主さま、で宜しいのですよね?」
(ありがとうございます。それでは今からお呼びします)
といい霊力を注ぎはじめ彼を呼びはじめ
少しの間、沈黙した。 やがて、
"新たに来られた主さまでしたか…よくぞこのような場所においで下さいました
本当なら、審神者たる者を失った本丸は、残っている彼らも含めて消滅するのが定石です
ですが…そうですか、まだ…この本丸もその世界に残るというのですね……
僕たち刀は、その身を形作られる際にその鉄を熱しては鍛えます
なので、そのこと自体は別に良かったのです、ああでも……あの方たちはどうだったのだろうか
いえ、そんなことより…粟田口の中でも、意見がわかれております
もう一度そちらに行き、その身で自身を振るいたいと思う者、それから…
その身をこのままあるべき場所へと還して、眠りにつきたいという者……"
そこで平野は一度言葉を区切る。
小さく息を吸って、そして吐いては、
"主さま、平野藤四郎は前者です
ですから…どうか、その御力をつかい僕を呼び戻してはいただけませんでしょうか?
もう一度…僕は主さまの傍に仕える者として、その身を振るいたいのです、お役に立ちたい…
そして…一期一振…いち兄や叔父上様に、もう一度、お会いしたいのです"
(そんな事になってたとは、あっえっと俺は引き継ぎできた審神者です
一応あなた方のことは鳴狐様と一期様から一部聞いていました。炉は熱かったでしょう。俺たち人間のせいで本当に申し訳ない。もう一度この本丸に俺は粟田口もそうだけど折れた刀剣達も呼び戻したい。)
平野は戻ってきてくれるのかわからないが素直に今の気持ちを述べ
安堵のような、小さく息をひとつついた。
“このような形でお話することを、お許しください
あなたは…新しく来られた主さま…もしくは政府の方でしょうか
ここで、こうして僕とお話されているということは、あなたは僕たち粟田口を
もう一度その手で呼ぼうとしているということ…ですよね
では、我らが長兄、一期一振にお会いされたことでしょう
ひどく…その心を擦り切らしていたことでしょう
実は、僕らがまだ数人残っていたころに、一度あの方はあちら側に堕ちたのです
どうにかそれを鎮めて、僕たち側に引き戻したものの…その時に、
残っていた者もすべて、その魂ごと消滅してしまいました
それ故に…あの方は自身をひどく追い詰めて、嘆き悲しむのです
そう…僕たちがいるここにもその声が届くほどに”
淡々とした口調で平野はそこまで話し終えると、
一度区切っては、小休憩をはさんだ。
(聞こえていますよ平野藤四郎様)
と彼に返答し
どこからか声が聞こえてくる。
それはまるで、頭の中に直接語りかけているような…そんな気がするものだった。
“ぁ…ぁ…き、こえていますか?……らの、…ひらの、とうしろうと申します”
途切れ途切れにきこえてくるその声は、おそらく自分の名前なのであろう、
平野藤四郎、と述べた。
全刀と話し合いたいそんな思いのままぺたりとその場に座り込み
結果が出たら多分彼らはこちらにコンタクトを取るだろうと思い
とりあえずはまずすべきこと
粟田口の子達の呼び戻しだ
必死に作り何度も呼びかけるということを繰り返し
思わず江雪も小夜も言葉を失った。
…彼は別にそこに居たわけでも、自分たちのように男士という立場にあるわけでもない。
なのにどうしてそこまでして自分たちのことを考えては、辛い顔をするのか…
理解が、できなかった。
やがて江雪は、踵を返しては最後に一言だけ口を開いた。
「…宗三のところへいかなければ。小夜、行きますよ……
…それから、今の話については…すぐにはこたえは出せません……それでは…」
江雪は小夜と一緒に、斗真の居る鍛刀部屋を後にしたのだった。
破壊はされていないはずだ休ませてあげてと聞くと
前任の審神者の夜伽か閉じ込めの被害が大きかったのかと考え
「でも行くあては暑い炎の中と聞いています。なぜ審神者のために仕えたあなた方がこんな目にあわねばならないのです…!大事な兄弟を目の前で折られ炉に入れられた粟田口派の刀剣だってなんでこんなに神様が心を痛めてしまうのです…」
と言ってるうちに自分が涙を流している事に気がつく
ただほんとうにここの刀剣たちは頑張ってくれていたのだ
その働きは帳簿を見たらわかるだからこそ炉になんて入れてというのはしたくないのだ
されど江雪と小夜は首を縦には振ることができなかった。
「いいえ…それはできません……前の主の悪行の数々……苦しめられる仲間や、そして我が弟…
それを見てきたのです…いくら貴方が良い人であっても…それを受け入れることはできません…」
「…僕たちとおなじ…宗三兄様はすごくつらい思いをしたんだ。
日に日に弱っていく兄様たちを…僕は見てきたんだ…ううん、そうすることしかできなかった。
だからもう…休ませて、あげてほしいんだ……」
とそういう彼の目には嘘偽りなく見え
そして彼がきてから少しづつ本丸の歪んだ空気も澄んだものになっているのはその肌で痛感するだろう
「消えるのならば多分政府は炉に入れて資材にしろと言いそうなんですよね、それならば刀解したと言う嘘の報告書だけ書いてこのままここにいる方が楽だとは思いますけどね」
江雪は、すぐにこたえた。
「私はこの本丸諸共消えたいです…ここに、いる意味が…ありませんから……
できるなら…小夜や宗三と一緒に…もう此の世から消えて眠ってしまいたいです……」
その瞳を伏せて、静かな声でそう言った。
それに続くように、小夜も口を開く。
「兄様の言う通りだよ、僕たちはここに留まる意味がないように思うんだ……
あの人もいなくなったんだ、僕たちだってもう……その役目を終えてもいいと思う」
ぶっちゃけてしまうとブラック本丸に認定されている本丸がこの本丸で
戦力は十分あるのに堕ちてしまうのはもったいないということで自分が派遣されてなんとかしてこいと言われたと言うことを話し
「あなた方は消えたいと思いますか?まだこの世にいたいですか?」
まあ政府からは刀は残せと言われているが刀の意思を聞きたいのでそんなことを聞く
江雪と小夜はそろって怪訝そうな顔をする。
「どうして…わざわざこんなところに来る必要が…?
何れ、ここも此の世の塵ひとつとなって消える定め、だったのに……」
男士達があつまる、ここ「本丸」は審神者なる者の霊力があるかないかがかなり重要視される。
審神者の清浄な霊力を受け取り、彼らはこの本丸という場所で存在することができ、
またその大きな役目として、「歴史改変」を目論む「時間遡行軍」と戦うことが定められている。
すなわち、審神者なる者を失った本丸は、その存在そのものを維持することが困難となり、
やがて彼ら諸共、「其処」から跡形もなく消えるのだ。
「僕たちの主だった人は……もう、いなくなったんだ…だから、僕たちも消える定めなんだ……」
そんな自分たちのところに、如何してこの彼がやってきたのか、
それが理解できないというような様子だった。
殺意を向けているのはあからさまに伝わってくる
なんと説明すればいいのだろう
敵ではないと言うべきか
「派遣された審神者もどきのようなものです。」
とりあえず審神者もどきということとここにきたのは鍛刀しにきたためだと説明して
鍛刀部屋に感じたことのない気配を察知した彼らが、
その場所へと足を運んだ。
「一体何を…そこでしておられるのですか……?」
「…入り込んでしまった人?…それとも、悪い人…?僕が、その首を落とそうか……?」
ひとりは細身の長身で、透き通るような水色の長い髪が特徴、
もうひとりはその長身の男に比べるとひどく小柄で、これまた青色の髪が特徴。
その小柄な少年が、なんとも物騒な言葉を口にしては、
己の刀を斗真へと向ける。
警戒…というよりは、そこには殺意が滲んでいるような気さえしたのだった。
「粟田口の誰か刀剣が来てくれればいいけど」
と願いつつ鍛刀をはじめていく
おそらくだが、鍛刀場か、そのあたりだろう…
彼なりに、気を遣ってくれているのだろうが、生憎とそれに感謝の気持ちや
言葉を口にできるほど、余裕なんてものはなかった。
そんな中、鳴狐は彼にひとりで行かせてしまっても大丈夫だろうかと
ひとりハラハラとしていた。
ここには、鳴狐のようにすぐに彼の事を受け入れてくれるような刀は
そう多くない…むしろ一期のような態度をとる方が多いはずだ。
身体を動かそうとしたが、思ったより深い傷であったことと、思いのほか
疲労している自身の身体は、うまく言うことが聞かなかった。
鳴狐は、一期の方に顔を向けてはじっと見つめる。
その意図を汲んだのか否か、一期は首をふるふると振った。
「…嫌です」
「まだ、何も言ってない…」
「おおよそ分かります。でも嫌です、今の私は私がよく分からない……
またいつその理性を手放してしまうのか、分かりません」
一期のその言葉に、鳴狐は辛そうな表情を浮かべてはその口を噤んだ。
それから、鍛刀場にもし彼が行ったのなら、そこに近い部屋はどこの刀派だったかと
その頭を悩ませた。
少しでも何かあればできるはずだ
この2振りの兄弟をなんとか呼びたい
それか自分が新しく鍛刀かなど考えて
そうだ、確かに彼の言う通りなのだ、でも……
鳴狐も一緒にいけば、また皆で共にいられるね、なんて考えたこともあった。
それはいけないことだと、分かっているはずなのに。
それを唆す自分と、必死に踏みとどまろうとする自分とが居る。
一期は、俯いたままその肩を震わせては涙を零す。
弟たちの刀身はなるのか、という問いかけに鳴狐は口を噤んだ。
どうしよう、と鳴狐は一期の方へと視線を向けては、また斗真に戻す。
そのしばしの沈黙を壊すように、一期が口を開いた。
「…いませんよ。私の前で折れた弟たちは、皆…炉にいれられ炎と共に溶けました。
悲鳴が…彼らの声が…聞こえてきたような……そんな、気がいたしました。
私は…その手を必死に伸ばしました…声を、張り上げました…けれど、届かなかった」
こんなに傷ついてボロボロな彼を放っておくなどできはしないのだ
「あなた様まで居なくなったら鳴狐様はどうするのです!?あなたを同じ道を辿るのですよ
あなたが居ないと鳴狐様が悲しみます。俺のとこだって本当は来るのが怖かったはずなのにやってきました
そして俺が来た時のあなた様の対応をごめんとまで言ったのですよ」
大事な兄弟を失ってというのはわかる
だが鳴狐まで一人になったらそれこそ家族がバラバラになる
「鳴狐様その弟様たちの刀身などもないのでしょうか」
せめて刀身があればかけたなら直せる
いくらバラバラになっていても力を使えば直せるのだ
皆が笑顔で、とても賑やかで…愛おしい弟たちが居た頃は、
一期はいつだって、どんなことでも頑張れた。 だけど……
あの光景は、その心に重くのしかかり…そして、容易く一期の心を壊した。
頭の中も、見える世界も何もかも色がなくて…
あの子たちを夢に見てしまうから、もうずっと眠ることすらできなくて。
…自分が、ここに居る意味は……果たしてあるのだろうか?
だんだんと暗くて黒い思考の中へと落ちていく一期は、顔をあげないまま、
「……もう、私のことなんて、放っておいてください」
突き放すように、掠れた声でそう口にした。
「理性を失うのは家族に危険があったからでしょ、そりゃ誰だって怒りで我を忘れたり大事なものを守るためだったら理性なんて失う。だからそういうときはごめんって一言言えばなんとかなるもんですよ」
穀潰しの自分にはわからないがそういうことであろうと思うつつ一期にそういい
その瞳を開いた。
そんな彼に、狐はぎゅうっと引っ付いては「よかった、よかった…!」と繰り返す。
狐の頭を優しく撫でながら、鳴狐はゆっくりとその上体を起こした。
「ありがとう。…ごめんね、もう、大丈夫」
斗真の方に顔を向けては、そう口にした。
少しして、鳴狐はきょろきょろと辺りを見回しては、一期の姿をとらえる。
そんな彼に、鳴狐は「おいで、おいで」と手招きする。
…が、一期はそれに首を縦には振らなかった。
さらにその身を小さくするようにしては、
「……行きません、行けません…私は、もう…だめ、なのです。
簡単に理性を失い、他者に刃を向ける……私は、もう……だめなのです」
「早く治れ…!」
思ってたより深いのか手当てにも時間がかかり斗真の額にも汗が浮かぶ
そんなことをするうちにようやく鳴狐の怪我が治り
が、彼の本体は無事なので折れるというようなことはない。
そんな彼に、一期はひどく震える手を伸ばした。
その顔を青ざめさせては、瞳からぼろぼろと涙を零した。
「あぁ、ぁぁ……私の、前で…もう、誰かが……っのは、見たく、ない……っ」
譫言のようにぶつぶつと小さく呟きながらも、手を貸すことには同意のようで、
斗真と一期、それとお供の狐は、鳴狐のその身を
粟田口の大部屋へと運んだ。
ばさり、ばさり…と鳴狐が横になるための布団を、押し入れから引っ張り出していく。
やがてそれを敷き終えて、鳴狐をそこに優しく横たえさせた。
それが終わると、一期は彼らから一番遠い部屋の片隅で、鞘に戻した状態の自身の刀を
その腕に抱き締める様にしては、その身を丸くするように座り込んだ。
代わりに目の前に見えたのは自分の代わりに一期の攻撃を受ける彼の姿
「鳴狐様!」
パッとすぐに駆け寄り
「一期一振様申し訳ないですがお手をお貸しください。ここでは手当てができません」
絶望した彼にそういい
今は早く手当てをしないといけない
とりあえず着ていた上着で鳴狐の怪我の止血をしつつ容体をみて
…いけない、今の一期はきっと関係なしに斬りかかるだろう。
折角の新しい主、優しい彼を…鳴狐は失いたくない。
どうしようか、と考えていると斗真が一期を落ち着かせるように声を掛けた。
そうしながら、近付いていく彼に、一期は必死にそれを拒んだ。
「やめろっ、やめろ……っ!!来るな、来るなっ…来る、なぁぁああっ!!」
一期がその刀を振り上げては、斗真目掛けて振り下ろした。
…その刹那。
斗真の身に来るはずだった衝撃は、いつまでたっても来ないまま。
代わりにその目に映ったのは、斗真を庇い、一期の斬撃をその身に受けて立つ鳴狐の姿。
ぎりぎり急所は外したようで、それでも肩あたり…腕からは鮮血が滴り落ちる。
その光景に、思わずお供の狐は悲痛な叫びをあげた。
「鳴狐ぇっ!!」
その声と共に、鳴狐はその顔を一期へと向ける。
自分の身に斬り込んでしまっている刀身を、無事な方の手でぎゅっと握る。
それから、鳴狐はその顔に何とも綺麗で、柔らかい笑みを浮かべた。
「一期、大丈夫だから。もう、一期と鳴狐…それに皆を傷つける人はいないよ。
それに…この人は、とっても、とっても、いい人。だから、大丈夫」
そう言って、鳴狐はその体勢を崩しては、前にいた一期に倒れ込むように気を失った。
それを支えきれるわけもなく、一期は鳴狐と一緒に、壁へとその背中を打ち付けては
その場に崩れ落ちた。
一期は、絶望を浮かべた顔のまま、彼の名前を、震える声で口にする。
「な、き…ぎつ、ね……?」
そんなことはさせたくない
そう思い鳴狐を押し切り一期の前にたつ
「もう前任はおりません。心配する必要はないのです」
あなたがあんな前任のためにその心を墜とすのはダメだといい近づき
どこか辛そうにする斗真に、鳴狐も心が痛んだ。
優しく撫でる彼の手のぬくもりに、鳴狐はこくりと小さく頷いた。
…一期だって、本当はこんなむやみに他者を傷つけるような性格ではないのだ。
それをよく知っているだけに、彼がここまで追い込まれてしまっていることに、
何もできないと…鳴狐はその心が悲鳴をあげ、痛くて痛くて仕方がない。
鳴狐は、斗真の背を優しく撫でながら、一期の方に顔を向ける。
「一期、大丈夫だから。ここにあの人は居ないから……、一期?」
「叔父上、叔父上…それから離れてください、その人が…その人が、いるから…
私、わたし、の…大切な、あの子、たちが……やらなきゃ、私が、やらなきゃ……」
ひどく暗い、絶望した表情を浮かべては、その瞳から涙を流す。
綺麗な金色だった瞳も今は濁ってしまっており、彼自身もひどく辛そうにしている。
一期は、持っていた刀を鞘から刀身を抜き、その鞘を床へ投げ捨てる。
そしてその切っ先を、彼らへと向けた。
「いち、ご…っ」
鳴狐は、いやいやと頭を振っては斗真を庇う様に前に出る。
やめさせないと、鳴狐がこの子を止めないといけない…
斬られなかっただけましだがやはり腹部は痛むだが彼らの悲しみに比べたらなんてことはないのだ
「大丈夫ですよ。そんなに泣きそうな顔をしないでください」
そういい鳴狐の頭を優しく撫で
鳴狐もその目を見開いた。
当然、一期がそれを大人しく受け入れるわけもなく、その身を叩いては抵抗する。
「やめ、ろっ…やめろっ!触るな、触るな…っ!!」
やがて自身の手では抵抗にならないと思ったのか、佩刀していた本体を
刀身は鞘から抜かずに、柄の先で斗真の腹を突いた。
その衝撃に僅かでも怯んだ隙を見逃さなかった一期は、彼の身体を押しのけては
壁際まで距離をとった。
それを見ていた鳴狐は、慌てたように斗真に駆け寄った。
「…大丈夫?」
心配そうに斗真の顔を覗き込む。
そこで、斗真の瞳から透明な雫が零れていることに気が付いた。
もしかして…泣いて、くれてるのだろうか……?
上手に泣けない、不器用な彼の代わりに…
鳴狐は、ひどく泣きそうな顔をしては斗真を見る。
その言葉が胸に刺さる、そんな状態で今まで耐えていたのか
だから眠れないというのも無理はない、はじめにあそこまで警戒されても仕方ない
「ごめんなさい」
そう一言いうと一期のそばにより斬られるのを覚悟して抱きしめてそのまま治療する
少しでも外の怪我は癒えるようにと願いつつ
その目からは涙が流れていて
同情ではないがその場面はきっと辛かったものだとおもい
斗真の問いかけにその首を横に振る。
そんな斗真の足元に彼の狐がやってきては、その肩へとのぼる。
そしてそっと耳打ちした。
「…我ら粟田口の短刀は皆すべてここには居られません。脇差も含め……
一期殿の目の前でその刀身を折られたのですよ」
「鳴狐様…この刀派の短刀は…?」
と鳴狐に粟田口の短刀が何振りいるのかを聞いてみる
きっと結果は予想通りだとは思うのだが
ただ静かに見ているだけだった。
…だが、やがて彼の行動の意味が、理解できたのか、否か、
一期は斗真の下げるその頭を、ぐぐっと押しのける様にする。
それを見た鳴狐は、慌てたように一期の腕を掴んでは窘める。
「一期!だめ、それはだめ!」
鳴狐の言葉が聞こえているのかいないのか、
一期はその手を止めようとはしないようだった。
そのまま、彼の口から枯れはてた声が聞こえてくる。
「どうして、どうして…そんなことしても弟はかえってきません…こない、こない……っ」
どうやら斗真が頭をさげているのは、謝っていることは分かったものの、
その内容は理解できなかったようだった。 否、聞こえていないのか。
ただ単に謝られただけと勘違いしている一期は、掴む手を離さない。
「一期、一期!落ち着いて…大丈夫だから、落ち着いて、一期!」
やっとのことで、その手を離させては、ぎゅうっ…と一期のその身を抱きしめては
そのまま斗真から距離を置かせた。
とりあえず食べるものはありそうだと思いつつささっと作ろうと思っていた矢先に鳴狐を呼ぶ声
確か一期一振だっただろう自分に斬りかかってきたあの刀剣
聞くと寝れていないだのあの子たちを見てしまうと聞くからに前の審神者がおったのだろう
なんて罰当たりそして大事なものを失った一期と家を出された自分の境遇が少し重なったのか
そっと彼のもとに近づき
「鳴狐様の帰りが遅くなったのは俺が原因です。」
心配させてしまい申し訳ありませんといい深々と頭を下げ
だがそこに特に人影があるわけでもなく、ひどくがらんとしていた。
鳴狐が貯蔵庫…もとい冷蔵庫に歩み寄っては中身を確認する。
幸い、食べるものは豊富にあるようだった。
お揚げ…いなり寿司に必要な材料を引っ掴んでは取り出していく。
…すると厨の暖簾の近くにひとつの人影ができる。
ひどく憔悴しきったその顔を、おもむろに鳴狐へと向ける。
「叔父上……このような、ところで…何をされているんです……?」
…その声を聞いて、鳴狐は彼に駆け寄る。
そうだった、厨に一番近い場所に、粟田口の大部屋があるんだったというのを思い出す。
彼のことだから、鳴狐の戻りが遅いのが不安になったのだろう。
やつれた頬を優しく撫でながら、鳴狐は
「一期、ごめんね。寝てたの?鳴狐が遅いから心配になっちゃったんだよね?」
鳴狐の優しく語りかけるような声に、一期は尚もぼーっとしながらも
「寝て、ません…あの子たちが、出てきてしまうから……叔父上、も…なにか、あったのかと…っ
ちゃんと、いますよね…?これは夢などでは、ないですよね……?」
「うん、うん。鳴狐はちゃんといるよ。狐もいる。だから大丈夫だよ…」
頬をよしよしと優しく撫でる。
「どうせならここら辺も一気に掃除したいな」
淀んだ空気を感じてそう呟き
おともの狐を肩へとのせて、鳴狐はすくりと立ち上がる。
「こっち、ついてきて」
部屋を出て、廊下を歩いていく。
道中、誰かに会うなんてこともなく、相変わらず静けさばかりだった。
鳴狐はそれにはもう慣れてしまっているようで、特に何か言うわけでもなく、
ひたすら厨へとその足を運んだ。
厨房案内してもらいたいんですけどいいですかといい
「……いなり寿司」
「お揚げが久しぶりに食べとうございますなぁっ…このところ、口にしておりませんから」
やがて二人は、斗真に視線を移しては、じーっと見つめる。
まるで一緒にお揚げを食べよう、とでも言いたげな顔で、だ。
「あの…鳴狐さんとお供の狐さんは何か食べますか?」
自分がお腹が減ったわけだし彼らも何か食べるなら作りたいと思い
「どうだろう…厨によくいる刀も今は居ないから…いい、のかな」
鳴狐が首を傾げて、考える素振りを見せる隣で、
「主殿であればよろしいのでは?もし何かあればこの鳴狐も共にその頭を下げましょうぞ!」
おともの狐がそう言った。
その言葉に、鳴狐も小さく頷いては、
「…そうだね。うん、大丈夫だよ。何かあったら主は鳴狐が守るから」
「そうだここの厨房とかって俺が立ち入っても大丈夫ですかね」
ふとそう思い
鳴狐は小さな声で「…そう」と言っては、その顔を俯かせた。
「おやおやっ、鳴狐は照れておられるようですな~っ」
「狐、言わなくていい」
狐の腹をくすぐるように撫でると、おともの狐は高めの声をあげる。
「っひゃわ!?ああ~~そこはやめてくだされっ、鳴狐ぇ!」
こういう風に誰かから何かしてもらうというのは久しぶりだと思っていて
お茶を用意してくれた鳴狐に優しく微笑んで
「お茶、あんまり上手にいれられなかったけど。平野や鶯丸様の方がずっと上手…」
鳴狐がそんな風に、どこかしゅんっ…とした様子で呟くように言った。
そんな彼の座っている膝を前足でぺしぺしと叩いては、
「なにを仰いますか!鳴狐も必死に練習したではありませんか!」
おともの狐が励ますようにそう言った。
「ありがとうございます」
来てお疲れ様といった鳴狐にそう返し
お茶をもらい飲みつつ早く全刀剣を直したいがどうしようかと考え
本体を持って、彼の部屋を後にした。
「主、おつかれさま」
彼らが出て行ってしばらくした後、ひょこりっと鳴狐が顔を出した。
その手には盆が握られており、どうやら斗真にお茶をいれてきたようだった。
彼の足元には、おともの狐も一緒にいた。
本体を持って、彼の部屋を後にした。
「主、おつかれさま」
彼が出て行ってしばらくした後、ひょこりっと鳴狐が顔を出した。
その手には盆が握られており、どうやら斗真にお茶をいれてきたようだった。
彼の足元には、おともの狐も一緒にいた。
未だにこの感覚になれなくて
「治ってよかったです。」
とホッとしたようにそういい
とりあえずこれで4振り
まだあと何十もいる刀を全部直したいそしてゆくゆくはその心の傷を癒してあげたいと思い
…何とも仲の良いことだ。
そんな中、特に何もないと分かったことに、特別嬉しそうにしているのが
山姥切だった。
堀川と山伏をじっと見てから、やがて斗真の方へと視線を移す。
「…ありがとう。兄弟を治してくれて。本当に、ありがとう」
彼にしては珍しいほどに、感情を素直に表に出している。
その様子に、堀川も山伏もとても嬉しそうにしていた。
「ありがとうございます、主さん!何だか…身体が軽くなったように思います」
「拙僧もである。主殿、心より感謝する!」
治ったかと思いつつ帳簿を眺めてみると3振りの横にあった重症の文字は無くなっていて
「どこか違和感あったりなどはしませんか?」
抱き合ってるところ申し訳ないが確認しないといけないのだ
山姥切は思わず涙が出てきてしまうそうになった。
自分のすぐそばで、親しい者が、壊れていくのをみるのは本当に辛かった。
でも、山姥切にはどうすることもできなくて…
やがて、彼の霊力により三人の傷も、本体のものもだんだんと癒えていく。
時間をかけて、ゆっくりと。
すると、あんなにも濁ってしまっていた堀川と山伏の瞳に、
以前のような光が宿っていることに気が付いた。
「っ兄弟……!!」
山姥切は、そんな二人を、両腕で…ぎゅうっと抱きしめた。
そんな彼に、堀川も山伏も山姥切の背を優しく擦りながら、三人で互いに良かったと
言葉を掛け合っていた。
帳簿を見ると全員がほぼ重症
そして頭を下げてくる山姥切に
「安心してください。全員治すつもりで来ているので」
といい少し時間をかけてだがゆっくりと確実にその場にいた3振りを治し
失礼します、と部屋へと足を踏み入れる。
斗真と向き合ったあと、さっそくとばかりに堀川がひとつ前に出てきては
彼にお願いをする。
「主さん!お願いします、兄弟の体調をよくしてあげてください!」
「拙僧からもお願いするのである、主殿!兄弟を助けてあげてほしいのである」
堀川、山伏が口々にお願いする、そんな中、
山姥切は、斗真の方をじっと見つめている。
その顔に特に表情はなくて、無表情…というのが当てはまるようなものだった。
山姥切を優先する堀川や山伏だって、確かに傷を負っているはずなのに、
まるで自分のことはいいから、というようなものが見受けられた。
それに、堀川は「体調が悪い」なんて言ったが、山姥切を見れば、
体調が、というよりも彼の片腕がない事の方が、余程大事なのではないかと言いたくなる状況だ。
すると、しばらくじっと見つめていた山姥切がその口を開く。
「…兄弟たちは、度重なる出陣と暴力、自分や周囲の望まぬ待遇にその心を壊してしまった。
だから、頼む…俺のことよりも、兄弟たちを、助けて…ほしい」
山姥切は、ごつんっ…と床に頭を打ち付けるほどにその頭を斗真に向けて下げた。
自分の腕なんて、本当は手入れができればすぐにできるものなのだ。
これは、出陣で疲労して、視界が霞んでいたところに不意打ちを受けたことによるものだった。
でも、この二人のものは…
あとは本丸の汚れの取り方など自分で調べ物をしていた矢先に木枠が叩かれ呼ばれる
「どうぞお入りください」
といい自分から刀剣たちを迎え入れる
お茶の一つくらい出せたらいいのだがその余裕はなく
さっそく、鳴狐とそのおともの狐がこの本丸の男士たちの部屋を
回っては、斗真がお願いしたことを伝えていた。
全員に伝え終わり、鳴狐は縁側でその腰を落ち着かせて休んでいると。
斗真の部屋へと、向かう複数の影を見つける。
あれは…
…―
「ほら兄弟、ここまで来たんだから…お願いしてみよう、ね?」
「しかし…俺のような写しより…他にもっと、あるだろう……」
「いやはや、このようななりでは、流石の拙僧も笑い飛ばすことは出来んぞ!
兄弟みんな、主殿に頼んできっちりとなおしてもらうのである!」
山伏の手には、大事そうに抱えられた国広三兄弟分の三振りの刀。
堀川が山姥切の手をぎゅっと握り、山姥切が逃走してしまうのをやんわりと阻止する。
堀川は、空いた手の方で、彼の部屋の襖を、木枠部分を控えめに叩いた。
「主さーん、僕たち、お願いがあって来たんです!」
せめて誰かが来てくれたら嬉しいが厳しいものだろうなと思いつつ
明日誰も来なかったら掃除でもするかと思い
やがてこくりとその首を縦に振った。
「承知致しましたっ!わたくしと鳴狐が、皆さまの元へお伝えしに参りましょう!」
「…そうだね。お話、できるといいけど」
快諾してみせたおともの狐とは対照的に、鳴狐自身の方は
若干言い淀む様な、そんな返事の仕方だった。
「ではではっ!今日は遅いですから、明日から!皆さまのお部屋を回り、新しい主殿が
傷の手当てをしたいという旨をお伝えしましょうぞ、ささっ!鳴狐も!」
「うん、そうだね。それじゃ、今日は一度おやすみするね。また明日、主」
鳴狐はおともの狐を抱えると、襖の方へと向かう。
そこでもう一度斗真の方を振り返って、軽く頭を下げると部屋を後にした。
「申し訳ないのですがこの本丸の皆さまに新しい審神者が皆様の手当てをしたいと言っているとお伝えしてもらいたいです
もし一人で怖いのなら誰かとともにでもいいので」
それは絶対に避けないといけないので、何かないか…鳴狐と狐は頭を悩ませる。
一番穏和そうなのは、古備前…それから大太刀兄弟に、貞宗あたりだろうか…
ああでも、伊達の名を組む刀も、もしかしたら気難しいかもしれない。
「…とりあえず、左文字と三条は避けようね。あのあたりは…特に、ひどいから」
何、とは言わないがおおよそ伝わるだろう。
身体の…というよりは、むしろ心の傷の方が大きいのだ。
そんな彼らに、今のまま手当てさせてと頼んでも断られる…いや、門前払いだろう。
下手すれば刀を向けられる、それは嫌だった。
「主、が…今、話したい刀とか、いる?」
こてり、小首を傾げて鳴狐は問いかけた。
手当ての礼にという意味ではないのだが何かいい案ないかという思いでふとかれらにいい
なんとも嬉しそうな顔をしては、つづけて嬉しそうな声をあげる。
「ほほーうっ!やはりそうでございましたか!いやはや、感謝してもしきれぬとは
まさにこのことでございますなぁ…鳴狐、わたくしめの為にも
色々と看病をしてくれていたのですが、足の傷が特に酷くございましたので…」
引きずるようにして歩く彼を見るのは、何とも心苦しいものがありました、
おともの狐はそう話した。
そんなおともの狐に、鳴狐はその額をつんっ…と軽くはじいた。
「それは別に言わなくていい、なおったんだから。あと狐、ちょっとうるさい。
休んでる人もいるから、静かにしてて」
「体に違和感などはありますか?」
と鳴狐に聞いたあと鳴狐のお供のきつねがやってくる
「えぇおれが手当てさせてもらいました」
と狐にそういい
鳴狐は自分の身体の具合を確認した。
彼が、机上にあった帳簿に視線を移したので、鳴狐もそれを覗き込んだ。
…そうだ、自分の負傷によりあの子も具合が悪くなってしまっていたのだが、
もしかしたら…
ふと、襖の外、廊下から小さな足で襖の木枠部分をかりかりと引っかくような音がした。
「鳴狐ぇっ!わたくしめの傷も癒え、すっかり元通りになりましたぞ!鳴狐は如何ですか?
ここを開けてくだされぇっ!」
少し高めの声が、その小さな影から発せられる。
鳴狐が、「ちょっと待ってて」と斗真に一言断りをいれて、襖を少し開ける。
すると、開いたすき間から何だか見覚えのある狐がにゅっと部屋へ入ってきた。
「狐も元気になった、よかったね」
「はい、ご覧のとおりでございますぞ!
ややっ、もしや貴方様が鳴狐の傷を癒してくれたのですか?」
とてとて、斗真の元に狐…おともの狐が歩み寄って来る。
手入れなんて初めて行うので必死におこなっていた
「治ってよかったです」
帳簿を確認すると鳴狐の重症の文字はなくなっていて
すると、刀身の傷や至るところにあった傷がみるみるうちに癒えては
鳴狐自身の身体も、手入れされる前と比べて、随分と軽くなったように思えた。
目に見えた変わったことに、鳴狐は僅かながらその瞳に光を宿した。
「すごい。傷、なおったね。主、すごいね」
というというとすぐに回復していて
分かった、と小さく頷いた。
…―
一度自室へと戻り、本体を手にした鳴狐が、斗真の居る部屋へと戻ってきた。
「これ、鳴狐の刀」
はい、と斗真の方に手渡した。
一応手当てだから刀がないと困るのだ
刀を持ってきてくれてから手当てをしようと思っていて
前の主とは違って、とても優しい人のように思えた。
そんな彼に、鳴狐はこくんとひとつ頷いてみせた。
「うん、よろしくお願いしたい、です。鳴狐は、どうすれば、いい?」
手当てをするのだから、何かしなければならないだろうか?
本体は自身の部屋に置いてきているので、それが必要なら取りに戻らねばならない。
「ありがとうございます。死のうとはしないですよあっそうだ手当てしたいのですが受け入れてもらえますでしょうか?」
自分を信用してくれたのであろう鳴狐にそう手当てをしたいとのことを伝え
鳴狐は、ほんの少しきょとん…とした。
だって、あの場面なら普通は恐怖だったり、異様だと感じる方が殆どだろう。
しかしこの目の前にいる彼は、自分たちを手当てしておけば良かった、そう言ったのだ。
そんな彼に、度肝を抜かれたのだった。
それから、鳴狐の問いにこたえた彼の話は、決して待遇が良いものではなかったようだ。
そんな彼に、ほんの少しその身を這いずるように寄せては、そっと手の上に自分のそれを重ねた。
「こんな、ところだけど。鳴狐は、あなたのこと、嫌ったりしない。
だから、死のうだなんて、悲しいこと…言わないで、ね?」
ほんの少しその眉を下げて、悲しそうな表情を浮かべては斗真をじっと見つめる。
「ほぼというか全員中傷以上…というか重症の方が多いじゃないですか!
あーくそあのときいた面々だけでも手当てしたかったな…いやでも下手に何かしたらそれこそ火に油か」
と一人でブツブツといい
「いやー断ることもできたと思うんですけど家からは穀潰しだと言われ勘当されてますし帰るあてなどなかったですし。穀潰しならばそれらしく最後は誰かの役に立って死のうかと思ってました」
鳴狐は控えめにその顔に笑みを浮かべた。
…とは言っても、顔のおおよそは面頬で覆い隠されているので、
そんな彼の表情の変化は本当に微々たるものとしか感じられなかったが。
顔をあげて、座り直した鳴狐は、
部屋に備え付けられている文机の上にある紙を見つめては口を開く。
「…そこに、鳴狐たちの帳簿…みたいなの、あると思う。
そこに…今の鳴狐たちの状態が記されている、と思う」
その紙面には、彼らの簡単な紹介と、彼らの今の状態が記載されていた。
…破壊されて折れてしまった者、重傷の者などは、それぞれ名前の横に記されていた。
鳴狐や先ほど相手をした鶴丸、今剣や一期も皆重傷と記載されている。
「それ、見て…今の鳴狐たちのこと、分かってもらえればうれしい」
鳴狐は、少しその顔を俯かせては、言葉をつづけた。
「…大変なところ、来ちゃったね。審神者って、断ること…できないの?
だって、こんなとこ、誰も来たいなんて、思わないよ…?」
「頭をあげてください」
あからさまに神の領域である本丸に立ち入ったのは自分
しかも前の審神者が散々だと人間に悪意を持つに決まっている
「おれが気にしてないのでいいんですよ」
斗真を見上げる様に見つめる。
「…ありがとう」
短くお礼を口にして、彼は少し這うようにして斗真の部屋へと入っていく。
中へと入り、暫くしてその腰を落ち着かせると、
鳴狐は、その瞳を斗真の顔へと向けてはじっと見つめる。
やがてその頭を、ぺこり、と下げては、
「…ごめんね。一期も、悪気があったわけじゃ、ないんだ。許して、あげて」
そして鳴狐と名乗る彼の声には聞く覚えがあった
最初に自分が危なくなったとき助けてもらった刀だ
粟田口の打刀で叔父上と言われていたなと政府の書類と来たときの彼の呼ばれ方を思い出し
「今開けますね」
といい襖を開け
その者は、襖の前にたどり着くと、控えめに襖の木枠をこんこんと叩いた。
「……鳴狐。ここ、開けてほしい。話、ある」
その控えめで、小さな声で、鳴狐は斗真へと声をかける。
相も変わらず彼のおともの狐ではなく、彼自身が言葉を口にしていることに
何とも不思議な感じがする。
とりあえず今日は疲れたし明日から本丸の浄化作業を行おうと思い
政府からもらった書類を出し眺めていて
ほんの少し見つめては、ふいっと逸らし踵を返した。
「……それじゃ俺はこれで。きみに色々と言ったのは単なる気まぐれだ。勘違いするなよ」
それだけ吐き捨てる様に言って、鶴丸は自室があるところへと去っていった。
「わざわざ忠告と伝言ありがとうございます」
三条と左文字後で部屋に戻った後にでも刀剣の名簿で確認して見なければなとおもい
過激派がそこの2つなのかと心の片隅におき
…が、それを気取られぬようにすぐに常の状態に戻した。
彼がここに来た目的を聞き、鶴丸は一瞬その瞳を丸くした。
「驚いた…こんなところに何だって関わろうとするんだか。
浄化作業がしたいってんなら俺は別に止めないが…ああ、だがこの状況を
皆が知ってるわけじゃないぞ。錯乱していた一期も把握しているか怪しいところだし、
意識を手放し眠ってしまった者もいるからな…ある程度の者には伝えておいてやるが、
俺も正直ずっと動いていられるわけじゃないんでな…ああ、そうだ一つだけ、」
そこで鶴丸は一度だけ言葉を切り、ひとつ息を吐いた。
「きみに忠告しておいてやろう。…三条の者と、左文字の者には不用意に近付かん方がいい。
それこそ、きみのその首がとぶかもしれんなぁ」
鶴丸はそう言いながら、己の首に手をあてて、横に引いては
その言葉を行動に表して見せてやった。
今剣が行った方を見て
話をしてくれた鶴丸と自分だけになり
「別に墓なんぞいりませんよ死ねば皆土か何かにかえるんですから
それは変わりません」
好きにして構わないと言われて
「あっそうだ一応俺が来たのはみんな知ってるんですよねならば俺はこの本丸の浄化作業を行うときしか外には出ないということと手当てして欲しいものは来て欲しいとお伝えいただけないでしょうか」
ここの本丸の掃除などはやらないといけないし手当ても望むものがいれば行いたいと思いそういい
さも興味がなさそうに、つまらなさそうな表情を浮かべた今剣は、
「とじこめたってどうせでてくるんです。それか、だしてだしてとなくんです。
だから、ぼくはそんなことわざわざやらないし、やりたくありません」
今剣はそれだけ言うと、くるっと踵を返して本丸の方へと去っていった。
…ここには今、斗真と鶴丸のみ、一期と鳴狐も先ほど中に入れと言ったときに戻らせた。
鶴丸の問いにこたえるように、自身がここにきた敬意を簡単に話してくれた。
それを聞いた鶴丸は、何とも言えないような、呆れたような表情を浮かべる。
「人っていうのは、いつの世もそんなもんだよな…
ああでも、だからってここをわざわざ死に場所にすることもなかっただろう。
悪いがこんな調子じゃ、きみの墓をつくってやることも出来ないからなぁ…」
いつもと変わらないような、飄々とした様子ではあるが、やはり鶴丸にもその身に
色々と傷は抱えていて、如何にも目の前の彼を素直に受け入れてやることができないのだ。
「…まあ、政府に恩があってここを出られんっていうのなら、好きにしてくれて構わないが…
だからってその命粗末にしてくれるなよ?あいつの言い分じゃないが、せっかく授かった命だ、
簡単に捨てようなんて考えないでくれ、それじゃ…俺もそろそろ休むとするかな……
何か今言っておきたいことでも他にあるかい?」
「奇襲が不安なら俺を閉じ込めておけばいいのでは?」
それで不安が取れるのであれば多少は我慢できる
「審神者になったのは成り行きです。元の家からは穀潰しと言われ勘当されそこで政府の方に拾っていただいたまでのこと。穀潰しの自分であればもうどこに行っても構わないせめて誰かの役に立って死ぬならいいかと思ったまでです」
と鶴丸の目をまっすぐと見つめそういい
一期は反応しなかったものの、鳴狐は小さくこくんと頷いてみせた。
その際に、木刀も遠くへと放ったのでおそらくだが本当に彼には
自分たちに対する敵意はないのだろう、そんな風に考えた。
そんな鳴狐の後ろから、幼い声と少し成長した青年のような声がする。
「わかりませんよ、きしゅうされるかもしれません…そのひとがまだてきではないと、
しんようできたわけではありません」
今剣は、そう言って鳴狐たちの隣にとてとてとやってくると
赤い瞳で、斗真をじっと見つめる。
「今剣の言う通りだぜ、鳴狐。ま、落ち着いたらってことらしいからな…
一期もそんな状態だし、一度中に戻ろうぜ。ほら、きみたちもな」
真白い装束を身に纏った彼…鶴丸は、斗真を一瞥してから
少し離れた場所に人だかりをつくっていた男士たちに声をかけた。
そんな中で、青い衣をまとった小さな少年…小夜は、斗真を遠くからじっと見つめた後、
くるっと踵を返して、ある一室へと入っていった。
「さて、俺たちに何をするわけでもないってんならどうしてわざわざこんなところに
きみはやって来たんだい?…審神者になりたいだけなら、他にもあっただろう」
鶴丸は、斗真と目線を合わせる様にして、その金色の双眸を彼に向ける。
言葉の端々に、やはりどことなく刺々しいものが含まれているように感じられた。
「傷つけるつもりなんて一切ありません」
といい木刀を遠くへ放り
また別の刀が来て彼を落ち着かせたのかと思いつつ話を聞くと叔父上と言っていたということはこの2人は家族のようなものだろうかと思いつつも
「落ち着いたらでいいので傷の手当てをさせてもらってもいいでしょうか?」
と恐る恐る聞く
またパニックを起こされても心配なのでそう聞いた
ー
わかりました!!
今後ともよろしくお願いします
ひどく冷静に、落ち着いた様子で男士たちに言葉を掛ける彼に対して、
一期はその瞳を若干見開いた。
だが、ならば何故この人の子は木刀などを所持しているのか?
まさかそれを使ってまた自分たちを傷つけようとでも言うのだろうか…
ぎりっ…一期はその唇を強く強く噛みしめては、刀を握る手に力を込める。
唇が切れてその口端から赤い血を流しながら、一期は、
「では何故そのようなものを持っているのです…どうして、どうして…
私たちがこんなにも傷つかなければならないのか…どうして、どうして…っ」
それはどこか、悲しみと憎しみに我を忘れてしまっているように見受けられた。
そんな時、一期の目元をそっとその手で覆い隠しては、凛とした静かな声で、
「一期、一期。落ち着いて…彼は、あの人じゃないよ。だから落ち着いて、一期」
優しく語りかける様に声を掛ける鳴狐。
常なら、その肩におともの狐が居る筈で、その狐が彼の代わりに喋ることが殆どだが、
なぜかそのおともの狐は、彼の肩にはいなかった。
「叔父、上……?」
そんな鳴狐の声を聞いてか、一期はほんの少し落ち着きを取り戻す。
斗真に向けていた刀もそっとおろしては、その場にへたり込んだ。
*
いえいえ、滅相もございません..
ご無理のない範囲で、やっていただければと思いますので
そのような感じで、どうぞよろしくお願い致します。
お答えいただきありがとうございました..❀
承知致しました。
もし、お話をすすめていく中で何か気になること等が出て来ましたら、
その時は遠慮なく仰っていただければと思います..✿
訪れた本丸をみてその空気の悪さそして自分に突き刺さる憎悪などの悪い感情が溢れている
そんな中弟の破壊を悲しむ一期が刀を振るってきた
「落ち着いてください刀の神様。俺は無理な出陣をさせるためにここに来たのではありません」
持っていた木刀で受けそう言い
信用されないのは彼らの表情や声を聞けばわかるが今は彼らの疲弊しきった心と体を回復させたいのだ
「信じていただけなくても結構です。ただ皆様方は俺を利用すればいいのです。怪我を直すのとここの本丸の空気を綺麗にして皆様がそれでも俺はいらないと思うのであれば回復した後に切り捨ててくださって構いません」
どうせもう自分には居場所がないのだそれならば別にもうこの世に悔いはない
ーー
こちらこそロルや心境など勉強中で稚拙な表現などがあると思われます
それでもお付き合いいただけると幸いです
私も基本雑食ですので地雷などはありません
訪れた本丸をみてその空気の悪さそして自分に突き刺さる憎悪などの悪い感情が溢れている
そんな中弟の破壊を悲しむ一期が刀を振るってきた
「落ち着いてください刀の神様。俺は無理な出陣をさせるためにここに来たのではありません」
持っていた木刀で受けそう言い
信用されないのは彼らの表情や声を聞けばわかるが今は彼らの疲弊しきった心と体を回復させたいのだ
「信じていただけなくても結構です。ただ皆様方は俺を利用すればいいのです。怪我を直すのとここの本丸の空気を綺麗にして皆様がそれでも俺はいらないと思うのであれば回復した後に切り捨ててくださって構いません」
どうせもう自分には居場所がないのだそれならば別にもうこの世に悔いはない
正しくは主だった人が病によってこの世から去った。
しかしその者の死を悲しむ者は、誰一人としていなかった。
そう…だってあの方の行った数々の所業を、我々は決して許しはしないのだから―
清浄とは程遠い気がその本丸を深く深く包み込み、息をするのも苦しいと感じるほどだ。
そんな中に、一人…外の世界からやってきた者がいるらしい。
今まで感じたことのない気配に、その本丸の男士たちは皆その光のない眼に憎しみを宿す。
許さない、許さない…仮にも神である我々にしたこと、その身をもって思い知るがいい。
門をくぐりぬけた一人の男…斗真をじっと見つめる複数の視線。
皆その手に自身の本体である刀を持っていた。
男士たちは皆ひどく疲弊しており、その身も満身創痍という表現が正しいようだった。
そんな中、斗真に切っ先を向けながら前へと出てくる影がひとつ。
その瞳に憎悪を宿し、涙を流しては斗真を見つめる。
「お帰りくだされ、お帰りくだされ…名も知らぬ人の子殿。
弟…私の弟……無理な出陣により、私の弟たちは目の前で折れていきました。
許せません、許せません…貴方もそうなのでしょう?そうなのでしょう?
また私たちに無理を強いろうとお考えになって…!いっそここでそのお命頂戴します…っ!!」
頭を振りながら、その男…一期は斗真へと一気に距離を詰めてはその刀を振るう。
その刀には彼の悲しみと憎悪ばかりが込められているように感じられた。
*
稚拙な文章、表現ではございますが精一杯努めさせていただく所存でございますので
何卒、お付き合いよろしくお願い致します。。
「ブラック本丸」については、特に規則は設けておりませんので大丈夫です。
ただ、あまりにも…な表現はもしかしたら無意識に避けるかもしれません。
場合によっては、グロ表現やそういった表現が出てくるかと思いますが、
そういったものの耐性等は如何なものなのでしょうか。
当方は何でもいける謂わば雑食人間なので、やれることは全力でやらせていただくつもりです。
ただ、こういった内容は難しい等といった地雷があれば
事前にお聞かせいただけると幸いです。
設定の作成、諸々お疲れ様でございました。
「相互」の場合は、キャラ設定のところにも記載してあるとおり、
受けと攻め、両方お作りいただきますようよろしくお願い致します。
両方のトピが作成でき次第、お話の方をすすめさせていただきますね..
急かすわけではまったくございませんので、涼香さまの好きなタイミングで
設定が作成できしだい、随時対応させていただきたいと思います..
もしその設定を作成するにあたって、何か不明瞭なところがございましたら
お気軽に、当サークルの「質問板」までお越しくださいませ。
長々と稚拙な文章、大変失礼致しました。
これからどうしようと思っていた時に政府に審神者としてその才能を活かしましょうと言われて審神者になったのだろう
あれよこれよと話が進み新規の本丸という話も出たのだが今問題になってるブラック本丸をどうするかと担当職員が嘆いていたのを聞き
「そのブラック本丸でいいいっすよ俺」
となにも考えずそういう
政府としては大助かりだが心配もあるのか木刀など身を守るものは持たせてくれることになった
そんな状態でブラック本丸へと向かう
ーー
設定遅くなり申し訳ありません
糖度は裏も入れつつで行きたいです
というかいけるとこまで裏でって感じですかね
ブラック本丸希望しましたが大丈夫でしょうか