【物語】肆
- 2017/04/24 21:04:12
投稿者:五月雨♪*。
オリチャをする為のトピです。
オリチャの基本
↓↓
場所
名前「台詞」
行動、心情etc…
移動できる場所
↓↓
街(まだまだ内容は考え中)
【甘味処】【霧崎事務所】【神社】【櫻樹病院】【かんざし屋】
各キャラの家や住みか(ご自由にどうぞ!(同居も可))
家の表記
【圭織宅】 【糸乃の屋敷】
山、海(山に囲まれる海のある田舎をイメージしています)
リクエストがありましたら【雑談】まで!
お姉ちゃんみたいに、と言われ少し驚いたように目を見開く美幸。しかし、すぐに嬉しそうに笑えば七夜の髪を撫でるように頭に手を置く。
美幸「そっかぁ、七夜ちゃんは私よりずっと素敵な人になれると思うよ?」
嘘や偽りなく、本心でそう言う美幸。
私よりもずっと賢く生きていけるだろう。そう、思っている。
晴哉の返事を聞き満足そうに笑う弥彦。久しぶりにあそこに顔を出すのもいいだろうと、店の者が知らぬうちに妖や硲者のたまり場となっている甘味処を思い出しニヤリと口角をあげる。
弥彦「じゃあ、行こうか」
晴哉、牙音に向かいそう言えば病院からは背を向け、甘味処へと歩き出す。
七夜「いつか、お姉ちゃんみたいなステキな大人になるんだ!」
そういう美幸のよこでぴょこんと髪の毛を揺らしてそういった。
優しくて、元気で、可愛くて。
私の憧れでもあったのです。
こいつ今絶対、殺すって言いかけたな……と医者らしからぬ言葉に呆れのため息が出る。こいつにはこいつなりの美徳があるらしくそれを穢す者には容赦がないな、と改めて思う。
晴哉「まあ、事務所に戻る気は起きないし、お前と一緒っていうのは気に食わないけど、いいよ。暇だし。」
付いていてやる。と随分と上から目線でそう言う。黛さんの菓子に比べれば甘味処の菓子はとてもしょぼく見えるが仕方がないだろう。どうせ帰れば黛のおはぎが待っているのだから久しぶりに甘味処に行くのもいいだろう。
随分と大人しくなった争いを微笑ましく眺めながら茶を啜る美幸。仕事はどうしたのか。どうせ大して人は来ないのだから好きにしていいだろうと能天気に笑っている。
美幸「感情が豊かなのは子供の特権だからねぇ」
何となく人間では無いとこを察しているが相手がどれだけ歳上なのかまでは察しきれていない美幸。間延びしたような口調で笑いかける。
ボキボキと、人間の関節がなる音とは違い歪で耳障りな音を立てながらズレた関節を戻していく。最後にゴキン、と首を鳴らせばスッキリしたような表情をする。
弥彦「まあ、あの犯人はいずれ殺…ん゛、探すとして牙音の言う通り気分転換にでも出掛けようか」
不穏な事を言いかけながらもにこりと笑いながら告げる。
最後に君もどうだい?と晴哉に問いかけた。
暴走の止まった弥彦をみて驚いたように目を見開く。
珍しい、あいつはこうも簡単に暴走を辞めるなんて、と言うより助手の奴も加担しない事もあるんだね、と思っている。
晴哉「明日は槍が降るね」
弥彦に対しても牙音に対しても失礼な事を静かに呟く。
牙音「いえ」
珍しいあんな顔は多分始めて見た気がする
着物新しいの仕立てるか買うかしなきゃな
牙音「それよりも・・・甘味処で団子とか食べませんか?」
先ほど甘味処に行ったのだが来てしまい何も食べれなかった
一人でも寂しかったし
牙音の声にピタリと言葉を止める。腐っても医者。患者という言葉に暴走が停止した。ふう、と深く息を吐けば目線を下のやり右手で額を抑える。角を仕舞い、変化を解いた。再び正面を向けばボロボロな着物以外は特に可笑しい所は無くいたって普通の人間の姿になっていた。
弥彦「はあ、久々に殺意が湧いたよ。すまないね牙音」
珍しく邪気のない、困ったような、自分に呆れたような笑顔を作りながら笑う。
牙音「主が・・・暴走しだしてる・・・」
途中参戦・・・いうよりも途中から来た私は今の状況があまりわかっていない
角に腕の変形目の変化殺意と怒りここまでくると暴走しか考えられない
牙音「主!!こんなところで暴れると患者が・・・」
一応ここにも患者という者が数人いるのだ
此処を破壊してしまえば元も子もないし自分が抑えられる気がない
どうやって抑えもうか・・・
タマ「(めっちゃ真っ直ぐに鉄砲玉が飛んでいったニャン)」
静寂の中、にゃんこは目を見開いてつぶやいた。
もうこれ以上の言葉はあるだろうか。
【甘味処】
七夜「こども……」
ぼそり、と呟いた。
あくまでも相手は先祖レベルで年上なのだが。
天を仰ぎ、大袈裟に叫ぶ弥彦。その様子に先程までの好奇心は全く見えない。あるのは、怒りと殺意。目は黒く、腕も変化仕掛けている他、額の辺りから角のような突起物が生えて居るように見える。
弥彦「実に不愉快だ!解体した妖を元に戻す事をしていればさらに情報が得られるというのにそのまま放置?殺して処分?酷いね!硲者は一定の数を食らった者にしか手を出さないというのにこいつはなんだい?警告の無しの攻撃?嗚呼、きっと陰陽師か愉快犯の人間か…これだから人という生き物は……」
未だに続く弥彦の暴走。周りには人が少なくなってきているというのに関係なしに喋り続ける奇行ぶり。これでも医者である。
武政「勝手に立つからさ~」
不機嫌そうな顔をして頬杖をつく。
喧嘩っ早いのは分かっている。分かっているのだがどうしても抑えきれない。
勝手に腹を立てて、勝手に不貞腐れるのがいつものこと。
事務所へと向かう道中、やはり好奇心には勝てなかった小鬼。前を歩く糸乃の着物を少しつまみ引っ張る。
深く深呼吸をし、決心してように口を開く。
小春「なあ、ま…さっきの女の人を娶るって本当か?!」
言葉選びが不器用な小春。とんでも無いことを言ってのけるが自分が何を言ったのか気がついていない様子。
一瞬、舞花さんといいかけたがそれをまるで初めて会いましたという雰囲気を出すのに精一杯だったのだ。
近寄ってきた黛に弥彦には絶対に見せないであろう警戒心の欠片もない笑顔で笑いかける。
晴哉「そうだね、お願いするよ」
式神だけじゃ頼りないところがあったからか黛の申し出に否定はせずにそう答える。
自分は弥彦の暴走を止めなければ……
糸乃達が事務所に戻ると言うならば自分も戻るべきか考えるように手を頬に添え首を傾げ周りを見渡す。そこで、晴哉がここに残る雰囲気である事に気がつく。
タッと晴哉の方に小走りで近寄り話しかける。
黛「糸乃さん達が戻られるようだから私も先に戻ってるね」
弥彦さんの暴走を止めるのを頑張って、という意を込めて笑いかける。敬語が抜け固くない言葉遣いは相手が歳下だからであろうか。
七夜「疲れるなら腹を立てなかったらいいのに。」
嫌味でもなんでもなく、子供の思った率直な感想。
もぐもぐと落雁をはおばりながら、大人しくなった横のヤツを
チラッとだけ見る。
武政「……腹立てたら疲れた」
七夜の言葉を特に気にすることもなく、椅子に腰を下ろす。
何が独りぼっちだ。何が憐れんでやるだ。
お前みたいな奴に憐れんでもらっても、ちっともいい気はしない
牙音「あっ・・・・」
やっぱり変化の時間は長く持たないなぁ扉を開ける前に元に戻っちゃったじゃないか
見つからないうちにそっと出ようと扉に手をかける
少し光が中に入ってたが気にせずゆっくりと外に出る
タマ「(触るらぬ神に祟りなし……とはいいますが触ってみたいのです!)」
やっちゃう?聞いちゃう?
と期待の目で小春を見る。もちろん、聞くときは自分も一緒なのです。ええ!
パタパタと興奮してしっぽを不利なが。
お咎めなしと分かっても小春のモヤモヤは取れないまま。
追求しても大丈夫なものなのか、あまり探りすぎると怒られる物なのか。はたから見たら変な顔に見える表情で考える。
小春「なあ、あの女の人との関係って聞いても大丈夫だと思うか?」
糸乃には聞こえぬよう、タマに小声でたずねる。
怒る神様を前に、くす…と口角を上げる。
七夜「すると、やっぱりオマエはひとりぼっちになるね。
だぁれもいない世界で、悠久にも似た時間をオマエは過ごすことになる。」
「憐れんであげるよ、祟り神。」にやにやと笑いながら武政を見る。
そこまでするなら、オマエの先を案じて同情してやってもいい。
でも、どうせこの祟り神はそんな事出来ないだろう。きっと。
圭織「いいねぇ。そうしようか!!」
今日はどれだけ汚れても許すことにしよう
後で前言撤回てしてそうだけど気分がいいんだ
武政「……いつかお前ごと世界を消滅させてやる」
なんか癇に障る言い方をされたので流石の温厚さもなくなる。
苛立ったせいか、外の雨が強くなった。
そうだ、雨と言えばあれしかないだろう。
菊「みずたまり!」
みずたまりに入ってばしゃばしゃしたい。
そんな子供の願望が急に噴き出してきたのだ。
圭織「傘があるから歩くだけでもいいじゃないか」
久々に外に出れて嬉しいのだ母がいた時はめったに外に出れなかった
だから今が嬉しいのであろう顔の表情が少し緩んでいる
圭織「嫌ならいいんだがな家に帰ってお餅食べるのもいいなぁ」
今団子を食べているのは数えない お餅はお餅団子は団子という考えだ
七夜「え?蛇女じゃなくて粘着質変質者っていってほしい?」
武政の執拗で執着的な性格を捉えて言ったであろうこの言葉。
それにしても言葉の選択が酷すぎる。
七夜「あっ、いや、別に仲良くないもん。
私はお姉ちゃんだけで充分だもん。こんなやついらない。」
不満げに膨れてそう言った。
さっきまで邪悪な気配を感じていたのが随分と可愛らくしなったなぁと呑気に思いながら2人の様子を見ている。
喧嘩の間に挟まれているような気がするけどまあいいか、と微笑みながら様子を見ている。
美幸「まあ、喧嘩するほどって言うしね…」
小さくボソリと呟いた独り言。
喧嘩した事があまり無いから見ていて新鮮だなぁとしか思っていない。
武政「蛇女は言い過ぎだ!」
彼女は真実を言ったまでだ。文句は言えない。
今すぐ食ってやりたいけどこの店を壊すわけにもいかない。
武政「ぼっち……」
ぼっちだけは勘弁してください、という表情で笑う。
まぁ当分そうはならないだろうけど。
七夜「何となくで隠されるし殺されるこっちの身になりやがれ!
この人さらい!蛇女!祟り神め!」
まぁ、子供らしい色んな罵倒文句が出たが周りの客にはただの
姉妹ケンカか親子ゲンカにしか見えないであろうこの緊張感のなさ。
美幸お姉さんに身を寄せ、
「オマエなんてずーっと未来永劫ぼっちになっちゃえー!」と囃し立てる。
未来永劫ぼっちで居てくれなきゃ困る。隠されたあとでは遅いもの。
武政「ないない。ちょっと可愛かったからさ」
スルーされた場所もあったが
なんとなく空気を読んで次の問いに答えた。
武政「なんとなくだ」
何故殺したいと聞かれても、ぱっと思い浮かぶ理由はそれだけだった。
気の向くままに殺すこと、祟ること。私にとっては単に遊びでしかなく
長い間生きている私にとっての退屈しのぎなのだ
七夜「………さっきお姉ちゃん祟ろうとか考えてたくせに。」
じっとりと武政を睨む。
お姉ちゃんと私が喋っている様子を見ているコイツは時々そんな顔をしてる。さっきも。
絶対同情してやらないけど寂しそうだもの。
七夜「っ……!そもそも、オマエはどうして殺したいわけなの?」
何言ってんだこいつ、と思ったけれど無視して聞いてみた。
武政「もともと人に手は出さないよ」
手を出していたのは昔であって、今はしていない。
……とは言っても祟ることは私の仕事でもある。
人間が悪い行いをすれば罰は必要になるから。
武政「ここにいるよ」
と自分を指差してにっこりと笑う。
但し、それが心からのものかどうかは顔を見ればわかるものだった。
蛇の妖魔はしつこいとは聞いていたけれど。
七夜「………じゃあ人間に手を出さないって約束できるなら。」
これでどうだ、とばかりに意気込む。
流石の蛇女でもこれなら諦めるだろう。
人に手を出せない、つまりは人には祟れない。
七夜「殺すって言われて逃げないバカがどこにいるのよ!」
逃げなくていい、なんてふざけたことを吐かす祟り神に
ため息混じりにご黄を強める。
武政「えっ、嫌だって?」
当然の答えに、驚いたふりをする。
そのような答えが返って来ても、しつこくするのが蛇女。
武政「逃げなくていいじゃん」
今まで上手く隠してきた子よりも相当難しそうだ。
相手にしてきた年が違うからだろうか。
ご主人が颯爽と街の方へ戻ってゆくのをポケー……と眺める。
タマ「(お咎めなしっぽいですね!)」
良かったですな!と小春の肩にちゃっかり乗りながら。
ところで、人の肉とは美味しいものなのでしょうか?
猫は肉食ですが人の肉は食べたことないのです。
しばらく奇行・暴走を繰り返してる弥彦をぼんやりと眺めながら対処法を考えていると向こう側で糸乃が動き出すのが見えた。
晴哉「戻るのかなぁ?弥彦の暴走を止めるか事務所に戻るか…」
その二択に迷いながら首を傾げる。自分が居なくなれば弥彦の暴走は止まらないし…。事務所には式神が居るからいいか、とここにいる事にした様子。
糸乃「………成る程。」
小春の方を向くと何やらやましい事でもあるのか、頗る嫌そうな顔をしているのが伺える。
はてさて、何を隠しているのやら。
思わず此方の顔付きも悪くなってしまうが、隣の黛から飛んできた返答に暫しの間を置いて腑に落ちたように小さく頷いて見せて。
確かに己も子供を誑かす際は甘味をよく使うような気がしないでもない。
甘味に喜び例によって喰った子供も……。
そんな物騒な事を頭の片隅に、止めた脚を再び動かして。
小春の側まで行けばゆるく背を叩き、
「ほれ、先の店まで戻るぞ。」
と声を掛けては向こう側へ見える街へと再び戻って行き。
舞花さんがなんとか誤魔化してくれないかなぁ等と思いながらタマの言葉に耳を傾ける。
小春「まあ、奥の手は舞花さんとの関係を問いただせば何とかなるか?」
人間の肉を無理矢理食わされたりなど無いといいなぁと表情を顰めながら言う。
個人的にも硲者をあまりよく思ってなさげな糸乃がわざわざ事務所に行っているのが気になっているというのもある。
隠されてくんない?なんて軽くいう目の前のヤツ。
その言葉に見を固くしながら
七夜「やだ。」
即答した。
隠されてから殺されるなんてやだ。
ていうかまず隠されるっていうのがやだ。
七夜「隠されたら逃げられないじゃん。」
何されても文句の言いようがない。
相手の領域に入りたくはない。
氷雨「見ててね?」
ニコリと笑い、何かを小声で唱えた。
そしてゆっくり手を開くと……、
氷雨「どう?すごいでしょ!」
手のひら数センチ上に火の玉が浮かんでいる。
ゆらゆらと焔が揺れる。
種も仕掛けもありません!と自慢げに氷雨は言った。
【櫻樹病院】
タマ「(ニャッ!?無理ですよ小春サマ!ご主人にはタマの足でも敵いますまい!
返って怒られちゃいますぅ……)」
猫のくせにぶんぶん首を振って止める。
素直に謝るが吉なのです。
余計に罪と罰が増えてしまうのです。
一緒にタマも怒られますぅ!と糸乃を尻目に小声で話す
遊ばれてくれるという許可が出たが
少しの間沈黙し、拳で手を打った。
武政「やっぱ、平和に隠されてくんない?」
戦いを好まぬ性格故か、そのような甘ったるい発言をする。
七夜が好きなのか、それともただ単に隠したいだけか。
その答えに少なからずとも安堵する。さすが妖怪寄りの神様といったところか。
「殺す」だけならまだいい。
あの狂ったヤンデレ共……いや、日本の神様とは違ってどうやら幾分か脳ミソはマシらしい。
七夜「だいじょうぶよ、お姉ちゃん。……ちょっとびっくりしただけだから。」
依然変わりなく美幸に引っ付いているが、体の震えは治まってる。
表情から恐怖の色は消えたが、変わりに緊張感が張り付いていた。
「……遊んでほしいなら遊ばれてやりますが。違う場所で」
ここで暴れられるのはお姉ちゃんが困っちゃう。
それに、ちょっと相手してやらねば隠されたら後の祭りだ。
武政「殺す」
一瞬顔から笑顔が消えた。
優しい奴は傍に置いてくれるかもしれないが、私は違う。
武政「……なんてね。少し遊んでもらうだけさ」
消えた笑顔が元に戻るが、冗談で言ったのではない。
もしも本当に彼女を隠したならば私はそうするだろう。
会話がいまいち噛み合って無い。黛はすぐにそれを感じ首を傾げながら遠くにいる小春に目を向けるとあからさまに動揺している様子。
あ、と納得したように微笑みながら糸乃に向かう。
黛「ええ、まあ。子供は誰でも甘味が好きでしょう?」
診た訳では無く、よく来るから解っているのであるが黛はそれを伝えない。隠しているのなら言わない方が良いだろうと。
本当の事は言わないが、嘘をついている訳でもない万能の答え方で返す。
バレるのも問題だと思うけどなぁ、と微笑ましく笑いながらそう思っている。
会話がいまいち噛み合って無い。黛はすぐにそれを感じ首を傾げながら遠くにいる小春に目を向けるとあからさまに動揺している様子。
あ、と納得したように微笑みながら糸乃に向かう。
黛「ええ、まあ。子供は誰でも甘味が好きでしょう?」
診た訳では無く、よく来る解っているのであるが黛はそれを伝えない。隠しているのなら言わない方が良いだろうと。
本当の事は言わないが、嘘をついている訳でもない万能の答え方で返す。
バレるのも問題だと思うけどなぁ、と微笑ましく笑いながらそう思っている。
不幸でないならば幸せという考えの小春は人間は皆不幸なんだな…等とずれた思いを抱いた。
しかし、黛の声が聞こえたのか、ゲッと顔をしかめる。
小春「今のうちに逃げるか…」
どうせ家に帰れば会うのだと言うのに今は回避しようとする小春であった。
糸乃「む…あゝ、そうさな。
小春は特に喜ぶであろう…が、よくわかったな。
小妖怪はやはり人間みたく視やすいか?
奴は人の食う飯がやたら好きなのだ。」
僅かに着物の突っ掛かる感覚に足止め、声のした方へと顔やる。
そういえば何やら甘味を作っていたな、と店での工程を思い出せばひとつ頷いて。
然し次には腑に落ちぬ疑問が浮かび、先程までの己のいぬ間にそのような話でもしたのだろうか、と脳内で仮定してみる。
だがそれでは間の抜け過ぎではないだろうか、此奴に限ってそれは…となれば後は相手の"視る"力を使ったとしか考えられない。
首を少し傾げた後に尋ねてはチラリと小春と交互に見て。
今のままで充分幸せ、と聞いてこれまた不思議そうにしっぽを揺らす。
タマ「(小春サマは人とは違うのですね!)」
普通の人々は幸福を求めてこれみよがしに触ってくる。
だから、みんな不幸なんだと思っていたのです。
不穏な空気をそろそろ感じ始めたのか首を傾げ、珍しく眉間に皺が少しよる。
怯えている?何に?恐らく会話内容的には武政に対してだろうとは思っているがそれがどうしてかは察しきれていない様子。
美幸「…大丈夫?」
安心させるように笑いかけるが効果はあるのだろうか?
お茶でも用意しようと思ったが、今はここを離れない方が良いと判断したようで動くことは無い。
ぎゅっ、と美幸の服の袖を握る。
裾を握る手には力は入らず、小刻みに震えている。
浅く呼吸を繰り返すが、一向に震えは止まらない。
七夜「隠して、どうするの?」
ケタケタ笑う祟り神は、私には不気味に感じられた。
何も知らないお姉ちゃんは明るい客だと思うのだろうか?
震える声で問う。
私を隠して、アイツに利益があるとは思えない。
菊「お外は雨だよ」
外に目をやると先程よりも弱い雨が降っていた。
草履を履いているので足がびちゃびちゃになってしまう。
外で走り回れないことを凄く残念に思った。
武政「どうしたどうした」
様子がおかしい七夜を見てケタケタ笑う。
彼女が神隠しにあったという過去を何故か知っているのだ。
知らない内に会ったのか、それとも噂で聞いたのか。
七夜「………ぇ」
目を見開いて凍りついたようにその場から動かない。
縫い付けられたように武政から目を離せない。
なんで、それを、お前が?
その声を出す前に美幸に落雁を詰め込まれ声にはならなかった。
でも、美幸に声をかけられて幾分か体の硬直が解ける。
七夜「っあー……ごめんね、お姉ちゃん」
取り繕うように明るい声を出した。でも、声に力は篭っていない。
その向こうで瞳が揺れる。殺意から恐怖へ。彼女の感情は忙しい。
幸運?と聞いて首を傾げる。何をそんなに頑張っているのかわかっていない様子で言う。
小春「いや、今のままで充分幸せだし…」
特にこれと言った望みは無いな〜と独り言のように言う。
強いて言うならば飯が食べたい。
小春は食べ物以外はあまり興味がないのだ。
梶「手品??」
まず手品という物をあまり知らない
だからこそ見てみたと思った
先ほどの質問と何か関係があるのだろうか??
【甘味処】
圭織「そうだよ。それを食べたらどこか行こうか」
なっ!と付け足して微笑む
雨の日に外を歩くのはなかなかに楽しい
隣で物騒な喧嘩をしているが自分たちに被害が及ばなければいいのだ
お菊に傷はつけたくないからいざとなったらお札かな
あそこは安全だしと思っていたらお茶をこぼした
圭織「あ」
冷たいものでよかった
少し服にかかってしまったがどうせ雨に濡れるんだと気にしないことにした
【櫻樹病院】
牙音「もう出てもいいかな」
そろっと音を出さないように出て行く
このままゆっくりと建物の外に出れるかな
窓からは絶対出れない 入るのは簡単だったな
いない、と聞いて「ニャンですと!?」とお髭をピンと伸ばした。
そして余計なお世話にも、もしかしたら行き遅れるんじゃ……などと考え出すにゃんこ。
あーだめなのです。難しいこと考えるとおつむが痛くなるのです。
タマ「(こ、小春サマにもタマめが幸福を頑張って運ぶのですー!)」
赤ちゃんを運ぶのはコウノトリ、恋人を運ぶのがにゃんこ。
この猫は一体何を勘違いしたのやら。
武政「それとも、現とは離れた場所に隠してやろうか」
つまりは、「神隠し」ということだ。
自分を睨みつけ声を荒げる彼女を見ても怯まず
ただただ面白そうに七夜を見るのだった。
会話を聞きながら物騒な子たちだなぁ、としみじみ思っている。七夜のが崩れているのも怒ったら誰でも口調が悪くなるよね!程度にしか思っていない。
美幸「喧嘩ばっかりしていると幸運が逃げちゃうよ」
ニコニコと空気の読まない発言。とりあえず七夜を落ち着かせようと思ったのか頭を撫でながら貰った落雁を七夜の口に詰めようとする。
背を向けた糸乃にあ、と思い出したように近づき着物の袖を摘み止める。
黛「あ、の!おはぎ作ったんですが、持って帰られませんか?」
小春くん達も喜ぶと思いますし。
事務所に置いてきたおはぎの事を思い出し、そう告げる。うっかり小春がよく来ている事を遠回りに言ってしまっているが黛は小春がよく来る事を糸乃の知っていると思っての言葉である。
背後で弥彦がやや暴走気味なのはこちら側にとっては日常茶飯事なので特に気にしていない様子。
祟る、という単語に体をビクリと強張せる。祟が怖いのではない。
神様や妖怪に何かされる事が怖い。それでも素直に「怖い」やら
「やめて」やら言えず、強情にも目の前の自分の格上をにらみ付けては
七夜「やれるものならやってみろよ。妖程度の祟り神風情が。」
美幸の前というのをすっかり忘れて、声を荒げたのに少女は気が付かない。
武政「無理でしょ」
その発言に対し、不敵に笑ったまま七夜の肩を掴んだ。
八つ裂き?なんとまぁ面白いことを言ってくれる。
武政「その前に、お前を祟ってやるわ」
うわぁ、とあからさまに引いた様子を隠しもせず全面的に出す晴哉。キレるとは思ってはいたけどここまで気持ち悪いとは思わなかったと言いたげな表情である。
晴哉「あれで名医者って言われるから世も末だよねぇ」
式神の若紫にい言うと彼女は可笑しそうにくすくすと笑う。
犯人の詳細は入っていないがこちらが把握する前にあいつは解決しそうなどと他人事のように眺める。他人事であながち間違ってはいないが。
拘束が解けた瞬間、弥彦は人並み以上の速さで落ちていた書類の元へと走り出した。落ちている書類にしばらく目を通すようにその場で固まるが不意に肩を震わせ、小さな笑い声が上がる。
弥彦「嗚呼、実に、許し難い!」
その目は先程のように黒く変色し笑っているものの目は笑っていなかった。
「妖を解体してそのまま?何故だ!解体し、元の姿に戻すまでが解体した者も義務と言うものだろう!妖には妖の可能性がある、それを元の姿に戻さずに正確な情報が得られるとも?否!得られる訳がないだろう!何故それが解らない!?人間ならまだしも妖は治癒力が高い、元の姿に戻す何てなんて事無いだろう?何故、何故それが出来ないというんだい?嗚呼、そうか、こいつの目的は研究じゃない、ただ玩具で遊ぶ子供もよいに解体出来れば良いのか?笑死!そんな欲の為に妖を複数殺めてきたのか?だったらお前を解体してやる」
殆ど息継ぎ無しで言い放った言葉。狂ったように言葉を繰り返す弥彦には先程までは無かった殺意を周囲に撒き散らし天を仰ぐ。力を抑えきれ無いとでも言うように眼球は黒いまま、腕は変化とまでは行かないが爪が硬く尖っていた。
糸乃「まぁそれならば…、借りは作らないに越したことはないからな。」
捲し立てるように話す相手に此方も少し驚いたような顔をしては再び納得いかぬような顔で妥協するように言葉を紡ぐ。
それより此方こそ、そのように借りを作ったであろうか、とすら疑問に思い。
既にこのやり取りを何度もしている所為か何方がいつどの様な借りを作ったのかという記憶は最早曖昧な様で。
「嗚呼…しまった。買い出しに来ただけで酷く寄り道をしてしまったな…。
また時間があれば其方に寄らせてもらうとしよう。
今日は本当に世話になったな。」
結局思い出したのは全く別の事であり、頭を抱える様に負傷していない掌で顔を覆う様にしては溜息を深く吐く。
軽い礼もそこそこにくるりと方向転換しては戯れる2匹の元へゆらりと歩き出した。
糸乃も黛もよく知っている小春からすれば2人のやり取りはとても複雑であった
突っ込むべきか放っておくのが正解か、アワアワし少々変顔である
それからタマの質問に?が浮かぶ
小春「オレ?いや、いないけど…」
と言うか、そんな暇なんて無かった。
小春にとって色欲よりも遥かに食欲が優先されるのだからあたりまえだ。
タマ「(いいですね!いい雰囲気なのですぅ!)」
すっかり興奮しきって小春の腕の中で楽しそうにモゾモゾする猫。
モゾモゾ……というより頬ずりするというか……?
取り敢えず嬉しそうにしている。
タマ「(小春サマも想い人はいます?)」
それは、視ろと言う事なのか。黛は薄く目を閉じゆっくり開ける。先程のように真っ暗に塗りつぶされるのではなく、うっすらと青い膜が貼ったような目になる。細心の注意を払い他の感情が自分の中に入って来ないよう糸乃の体調を伺う。
黛「本当に、大丈夫のようですね」
ようやく一安心したように息を深く吐く。
それから次に言われた糸乃の言葉に一瞬首を傾げ慌てたように続ける。
「借りなんて作ってません!まだこちらも十分に返せていないというのに」
安心したり、慌てたりと今日の黛はよく感情が動く。
七夜「そんなことしたら、アンタの体を八つ裂きにしてやる」
お姉ちゃんには聞こえないよう、武政に身を寄せて。
闘争本能剥き出しの、明確な殺意が瞳には宿っていた。
それはね。お姉ちゃんや参拝客には見せない、本当の顔。
どうのこのガキには冗談は通じないらしい。
面白くない。
糸乃と黛のやり取りを見て一番の感想はそれだった。
それなりに深い関係であったことは何となく事務所に来ている時から分かってはいた、分かってはいたがそれを理解しろと言われれば無理だ。
年齢に合わず、少しブスくれたような表情をし若紫に問う。
晴哉「そう言うのはさ、邪魔しちゃうのが一番だよねぇ」
にこお、と悪戯を思いついた子供のように笑い弥彦を拘束していた式神に指示を出す。
「橋姫、総角、そいつ放していいよ」
糸乃「"視た"ままよ。問題ない。」
チラリ、と目だけ其方に向けてみればいつもと変わらぬ小さい花が見える様な表情を向けていた。
己を責めぬ相手にホッとした様な、無責任な己に罪悪感を抱く様な、そんな気持ちで揺れる中ゆっくりと目を細めた顔を相手の方へ向ける。
ツキリといま痛んだのは間違いなく腕や掌ではない気がした。
「先程は小春とタマが世話になったな。
よく知りもしないを妖2匹も………また借りが出来てしまったか…?」
何やら騒いでいる様子の2匹の姿が視界の端に入ってしまえば面倒を任せてしまったことに小さく息を吐き。
右も左も分からぬ様子のあの2匹の事だ、
変な事を口に出しておらねば良いが。
もしかすれば杞憂かも知れぬ事を浮かべつつ肩をすくめて見せて。
ビクリ、と黛と糸乃の様子をみて石化。
目を見開き、阿呆のように口元が半開きになる。
小春「え、あ、はあ?!」
小春混乱している!ただしきちんと小声です。
タマの娶るとかいう話は本当だったのか…などと1人で納得している様子。
菊「ほんとに?」
てっきり逃げて行ってしまうと思っていたため疑わしかったが
お母さんがいう事は本当なのだろう、と団子を少しずつ口に入れ始めた。
圭織「あーあーゆっくりお食べよ団子は逃げやしないから」
隣の会話に耳を傾けながら自分のみたらし団子を食べつつお茶を飲む
少し振っている雨帰りが厄介そうだな・・・と思ったが一応和傘を持ってきたので大丈夫だろう
武政「私、一応神様だから」
転生なんて結構簡単だ、と思っているだけである。
下級の祟り神で妖怪の私には到底出来っこない。
武政「試しにアンタを妖怪にしてやろうか」
失敗すれば存在もなくなってしまうだろう。
……いや、それは嘘である。そもそもできない。
嘲笑い、「そんなこと、不可能にきまってる。」と言おうとした矢先。
七夜「……お姉ちゃん?」
急に頭を撫でられた事に邪悪な笑顔は引っ込み、
不思議そうに首を傾けて美幸を見上げる。
不思議だけど、お姉ちゃんに撫でられるのは嫌じゃない。
むしろ心地よくて美幸に少しもたれ掛かるようにして体を傾ける。
七夜「そんなの、どうやってするの?」
それでも目の前の相手に不満そうな顔をしながら、
当初の予定よりは大分穏やかに言葉を話した。
【櫻樹病院】
撫でられて満足そうに目を細めながら、
ご主人の様子に「(円満解決なのです!)」とにゃんにゃん言いながら。
タマ「(これは……!!)」
そして、ご主人と黛の様子にいちいち興奮し、
しかし邪魔はいけないと小春の耳元、小さな声でにゃんにゃん騒ぎ立てるにゃんこ。
今日もやっぱりこの世は平和なのです。
糸乃が近寄って来た時、敵意が無いことは重々承知の上だったが影で拘束など無礼な事をしたと思っているようで一瞬身体を硬直させる。
しかし、向けられた言葉は予想とは全く違った者で、安堵からか肩の力がぬけた。
黛「私は大丈夫です。それよりも糸乃さんは大丈夫なのですか?」
安心したように微笑み、それから少し心配そうに問いかける。
相手を視る、即ち、他心通の力を使えば相手の状況など簡単に解ってしまうが黛はそれを良しとせず、出来るだけ言葉での返事を待った。
糸乃「然し……いや、ならば忠告として受け取っておくがよい。
私の縄張りに手を出せば次こそ命は無い、とな。」
素直に此方の謝罪を受理する気はないらしい。
それに何やら面倒臭そうにも見えた。
呆れ半分、煮え切らない半分で小さく息を吐けば改めて言葉を返し、そして踵を返す様にして黛の元へと向かう。
途中、此方を見ていたはずの妖2匹…タマと小春の方へ眼を向けては心配を掛けた、とばかりに毒を受けた方の軽く手を挙げて振って見せ。
その掌は紅斑こそ見られるが回復の兆しは見えている様で、己もひと安心である。
漸く黛の前まで戻ると先程隠しもせず敵意を向けてしまった所為か眼を向けることができず横を向いたまま、
「手間を掛けた……け、怪我はないか…?」
と恐る恐る尋ねる。
何故か吃ってしまいそうな口調に羞恥すら覚えては尚更顔が向けられなくなった様で。
腕を組む様にして両手を反対の袖へ突っ込めば居心地悪そうに顔を顰める。
いくら鈍い美幸でも流石に違和感を感じ始めたようで首を傾げた。
美幸「人間……?」
疑問に思いながらも何処か不安そうな七夜を放っておけるはずもなくニコニコと笑いながら頭を撫でる。
妖も硲者も存在は知っているのでいてもおかしくはないなぁという感じであった。
足元に来たタマを抱き上げ、望み通り頭を撫でてやる。
小春「まあ、そうだな…」
元々頭はよく出来ていない小春に難しい事を考えるのは不可能であった。
この頃は街によく降りているせいか昔のように本能で動く事が少なくなって来たことを実感。
体力や勘が鈍っていないといいなぁと思う。
武政「……そうか」
私は好きで祟り神になったわけじゃないけれど
嫌われるのには何の文句も言えない。
……と考えているうちにいいことを思いついた。
武政「じゃあ、人間になればいいのか」
人間になれば姿で怖がられることもない。
祟り神と恐れられることもない。
そんなに嫌いか、と言われ目つきが鋭くとがる。
七夜「人の生命を何とも思ってない。
人を自分の気分一つで振り回すお前らはキライ。」
ぎゅっ、と袴の裾を握りしめて俯いた。
キライ、というより正直苦手だ。神様に隠されて人の理を離れてしまったのだから。
その気になれば条理を反すことだってできる。
妖怪も、神様も、私は苦手。
七夜「あっ……ごめんなさい。」
美幸の優しい声にハッと顔を上げ、慌てて謝る。
胸の突っかかりが残る中、「心配しないで!」と曖昧に微笑んだ
少し驚いたような表情をし、すぐに笑う。
美幸「七夜ちゃんは物知りなんだね〜」
寄り付かないでいい神様ってなんだろう…
疑問が残るが突っ込む気はない様子。
やっぱり2人は喧嘩中なのかなぁと思っている。
「喧嘩は駄目だよぉ」
間延びした気の抜けそうな声でそういう。
武政「祟るだけではないぞ私は」
もちろん神様としての役割も果たします。
ただ生贄が貰えなくて腹が立ったらそりゃ仕返したくはなりますよ。
武政「そんなに私が嫌いか、七夜」
すべてが無に達している彼女を見ながら少し不満そうな顔をする。
嫌われて当然だが、嫌われることがあまり好きではないようだ。
あのね、と調子づいたように少しだけ、ほんのちょっぴり言葉を強める。
七夜「さくらの「さ」は稲、「くら」は神様の座る御座を示すんだって。」
だからね、桜は神様の依り着く場所で、人は豊作を祈願して……」
ふと、入ってきたお客さんに目をやる。
七夜が数秒固まったのは言うまでもない。
七夜「依りつかなくていい神様がきた」
無表情、無感情、棒読みで呆然と呟いた。
【櫻樹病院】
タマ「(考えすぎるとおつむが痛くなっちゃうのですよ?)」
ニャーン!と少しだけ声を上げて鳴く。
撫でてー!と小春の足元に絡みつきながら。
このにゃんこは飯が貰えれば充分で特にそれ以上に主人を思っていない?
いえいえ、タマはただの楽観主義なのです。
七夜の言葉に首を傾げる。
美幸「え、何でだろ?」
んん?と考えるよう右手顎に当てて考えるよう頭を捻るが、大して賢い理由でもない彼女にその答えが出てくるわけが無かった。
「あ、おかえりなさい?」
戻ってきた、ならいらっしゃいより、おかえりだろうとお客様を敬う心には少し欠けている美幸であった。
武政「終わったし、いいか」
木の上で見物していたが一件落着の様だったのでその場から離れた。
街への道を駆けて、再び甘味処に顔を出す。
【甘味処】
武政「武政さんが戻ってきたぞ」
入り口をくぐり、楽しそうに笑った。
桜の次はツツジの時期だな、とツツジ模様の落雁を見ながら思う。
神社は何故かいつの時期でも花が咲いているように工夫がされていた。
提案は誰だか知らないけど、管理しているのは私だ。
七夜「あ、そういえばね。お姉ちゃんは、どうして桜の下でお花見をするか知ってる?」
ふと思い出したように唐突に聞いた。
ぱくり、とツツジ模様の落雁を口に入れるとほのかな甘みが口にふんわりとける。
なぜ、相手が謝っているのにわざわざさらに煽るのか、あいつには自殺願望でもあるのか?
晴哉は変な物を見る目で弥彦を見た。
相手は拘束を解いて欲しそうにしているが今それを解けばめんどくさそうになるのは目に見えていた。
晴哉「……今日は本当に厄日だった」
せっかくの日曜日だったのに。
まだ、昼手前だが晴哉にとっては今日が終わったも当然な程に疲れが溜まっていた。
だから弥彦の拘束は解かない。
完全な八つ当たりだった。
タマの声にへらりと苦笑いのような、少し無理のある笑顔で笑う。
小春「今日は色々ありすぎだからな」
本当に死なないのだろうか。先程もかなり危なかったのでは?
そんな不安が除けていないようで不安がぐるぐると回る。
弥彦に本当に殺意があったら今頃どうなっっていたのか。
考えるだけで寒気のする話だ。
悪いヤツ、と聞いて喧嘩?としか発想出来ない美幸。
一応、一般人として妖とは縁の遠い位置にいるので当たり前といえば当たり前な反応だ。
だが、それでも1度神隠しにあった身。危機感が無さすぎる。
美幸「…雨?」
この時期は降ったりやんだりするからすぐ止むかな。
そんな風に思いながら客で賑わう店内を見る。
桜が散って仕舞う前にお花見したいなぁ等呑気に考えながら。
おや、と片眉を上げる。
少し意外だった。梶くんは神様とか信じてなさそうだと勝手にも思い込んでいたから。
氷雨「そう。神様もきっと喜ぶよ。」
ふにゃっと柔らかく微笑む。
いつでも頬がゆるゆるだから遜色変わりないかもしれないけど、
神主をやっている身としてはありがたいね、働いてないけど。
氷雨「じゃあ、そんな梶くんにちょっとした手品を見せてあげよう!」
爽やかにニッと笑い意気込む。寝間着なのが惜しまれるくらいに爽快な笑顔だ。
ぱちぱちとまばたきをして糸乃から目線を外し、
ふわぁっとあくびをしながら体を伸ばす。よく猫のとる行動だ。
タマ「(今日はずっと不安そうな顔をしてマスネ!)」
空気を読まない、若しくは読めないにゃんこは不思議そうに呟いた。
何故不安そうな顔をするのでしょう?
どう転んでも、ご主人が負けることはあっても死ぬことはないだろうに。
尻尾も微妙な位置に留まっていた。
両腕を捕獲され、とても不格好のまま糸乃の反応を見て少し驚くように目を見開く。
それから、フッと面白い物を見つけたかのように笑いかける。
弥彦「律儀だねぇ、君も。僕は確信犯で君を煽った。妖怪の解体をしているのも事実だ。妖を殺した数だって両手だけじゃ数え切れないんだよ?」
「それに、いい資料は入ったし、私としては満足したんだ。君に殺される理由はあっても謝られる理由は無いね」
そろそろ離してはくれないか、と言う目で晴哉の式神を見る。
腕が変な方向で固定されているから痺れて来ているのだ。
それよりも、晴哉の持ってきた書類が見たい。
弥彦の興味は完全に反れていた。人間は飽きやすい生き物だ。
牙音「終わったのか?」
物陰から少し顔を出してみてみる
いざとなれば効かずとも呪いをかけることは可能である
年はわからずとも外見ははっきり今見えている
ただ強さ的にも少しだけ不幸を振りかかけることしかできないだろう
例えば擦り傷で血が出るとか・・・
牙音「でも・・・主が血を欲しているならそれもアリなのか??」
【神社】
梶「信じてるよ!今僕の店に客が来ているのも此処の神様のおかげかもしれないからね」
微笑みながらそういう
何回かここに繁盛を願いに来ているのだ
絶対とは言えないが基本その時は繁盛している
それが晴哉の弥彦に対する印象だった。自分で言えた事じゃないが、気味の悪い笑顔と掴み所のなく突発的な反応に晴哉がニコリと上げた口角を引き攣らせる程だった。
これ以上騒がれるのは避けたいと思った晴哉渋々ながらも弥彦を自分の事務所に招いた。
「それで?何か聞きたい事でもあるんじゃないの?」
ニコっと、営業用の笑顔を浮かべながら弥彦に言う。
事務所の中は解決していない書類で散らかっていて、薄暗い。あるのは辛うじて弥彦と晴哉が座る場所が確保されている程度の隙間だ。
この有様は元々、書類が届くだけや式神が記してきた紙が届くだけなので人はあまり入って来ず客に気を使う必要が無かったからか。
小春「……おっさん?」
いつもとは違う様子に不安そうな表情で歩き出しや糸乃を見る。
何があったのかは1部しか見ていない小春には糸乃が頭を下げる理由が思い当たらなかった。
ギュッと着物を握って、糸乃、弥彦2人の様子を見守っている。
糸乃「ふっ、威勢がよいな…そのつもりはない。」
毒が体内で変換されていく中、未だ己を身体を蝕びつつあり視界をぼやかし邪魔をしてくる。
相手の元へ向かう最中何度も目眩に見舞われるが逸れでも歩みは止めなかった。
ピタリ、とそれを止めたのは相手の目の前。
痛みが顔を歪めるほどは気にならなくなった丁度この頃に鼻で笑いつつ肩を竦めて見せながら上記を答える。
「先程までの勘違い…すまなかった。
だがわかってくれ、
貴様が此処の患者を護るように…
私にも護らねばならぬものがあるのだ。」
視線をややそらし、泳がせた後に覚悟を決めたように真正面から相手を見つめる。
いつもの寄せられた眉に真剣な眼差しは変わらない、が少なからず其処には敵意が籠っていなかった。
非礼の許しを請う様に軽く頭を下げ、地を見つめる視線は何を思うか。
不覚にも硲者に頭を下げるなど…といった自尊心の塊は顔を見せなかった。
七夜「てっ、照れてないもん。あいつ悪いやつだし」
言葉が後半になるにつれてだんだん濁っていく。
怒ったような顔……というよりは拗ねた様な顔で湯呑みに映る自分の顔を見ていた。
だって祟り神だもん。人を祟る悪いやつだし……
なんて何故か言い訳じみた事を考えながら肩を落とした
七夜「あれ、今日って雨の予報だっけ?」
突然聞こえてきた雨音に視線を湯呑みから外し外を見る。
この時期の雨は嫌いだ。桜を散らしてしまうから。
【神社】
氷雨「いやぁ〜、なんとなく?」
やっぱり、時代が進むに連れて妖怪の存在も薄くなって来てるのだろうか。
ゆっくり首を傾げながらそう思った。
可哀想、とかは特に思わないもので表情が変わることはなかったけど。
氷雨「うーん、じゃあ神様は信じる?」
人は気づかないのかもしれない。
いま、降ってきた雨もどこかの神様のいたずらに振らせた祟り雨だなんて。
こいつ、懲りることなくまた煽って…
そんな風に呆れながら2人の様子を眺める。感知の出来ない晴哉は周りに妖が集まっている事を知りません。
ただ、何となく何かが居るとは思っているのか護衛で読んだ若紫はそのままでいる。
晴哉「あの性格は誤解されて当然だよね」
若紫の頭を撫でながらつぶやくように言う。
晴哉の式神には大きく別けて感情のあるものと無いものがある。若紫はその中でもある方に分類され、主に撫でられる事が嬉しいように笑って見せた。
祟が…?あまり馴染みの無い単語が聞こえて首を傾げる。
ただ、呑気なものでニコニコと笑いながら七夜の話を聞いている。
美幸「…ふふ、照れ隠し…かな?」
きっとそうではないが、美幸の目にはそう映るのだ。
仲良く思われたくない子って居るよね、好きだからこそ…とか。
きっと本人に伝えれば否定されるであろう事を考えていた。
七夜「余計なお世話よ!」
去ってゆく祟り神にめいいっぱいの大きな声で悪態をついておく。
このクソババア!なんて言葉はお姉ちゃんの前では言っちゃだめだ。
せめてお姉ちゃんの前では良い子にしていなきゃ。
息荒くため息をつき、溜飲を下げるようにしてゆっくり息をはく。
やっと静かにのんびりお茶が飲める、と湯呑みを手に持ったとき。
「あ、別に友達何かじゃないからね。タダの祟が……タダの知り合いだから!
仲良くなんてないからねっ!」
何かを思い出したかのように美幸に突発的に話し始めた。
そう、勘違いされちゃったら困るのだ。
あわあわと身振り手振りで「仲悪いです」ということを伝える。
それは子供らしくなんとも抽象的なもので、伝わったかどうかは謎であるが。
馴染む、という言葉を聞いてやっぱり妖に人間の作った毒薬は足止めにしかならないなぁ、と晴哉の式神に拘束されたまま呑気な事を考えていた。
というより、彼の血液欲しい等と未だに諦めていない様子。
だが、ここには少し人や妖が集まりすぎてもう、先程のような状況にはならないだろうと少し残念に思う。
こちらに向かって来た糸乃にニコリと笑いながら首を傾げる。
弥彦「まだ、やるかい?」
そんな様子では無さそうだと思いながらも、冗談を言うように尋ねる。
それから、晴哉がバラバラに散らばしていた紙の内容が気になりそちらに目を通す。鬼の目を移植したからか、視力は人並み以上だが白目が黒くなるのは防ぐ事は出来ない。
『妖・解体・死体』
そんな文字を追ううちに先程までは無かった殺意がゆっくりと芽生えてきた。
糸乃「構うな…じき毒も馴染む。」
駆け寄って来た数人。
誰かに心配される己が何故か惨めに見えて、黛と小春の方へと痛む方とは逆の手をかざす形で制す。
"馴染む"というのは別段虚言ではなく、熱を持ったように腕全体は酷く痛むが妖故に掌の傷は既に回復しつつあり、己の知り得なかった毒も少しずつ己のものへと変えていって。
もう100年ほど前の己ならもっと早く治せたであろうに、と爺臭い事を思うのはここ最近人を喰う回数がめっきり減っているのと、やはり掟を破っている事による反動なのだろう、と自嘲気味に痛みで歪んだ顔へ微かに苦笑を浮かべて。
そして目の前に現れた式神。
荒事が嫌いと見える家主殿にさてどんな仕打ちをされるのか、と内心諦め半分の様子でいたのだが。
ひらひらと舞い落ちてくる紙に目を瞬かせ、地面に落ちた紙の文面を目でなぞり…そして納得した。
成る程、己はとんでもない人違い…いや、硲者違いをしていたらしい。
元よりこの件について店に寄ったはずが聞けぬ間に思わぬ出来事が起こってしまい完全な勘違いをしてしまう大失態。
_嗚呼、情け無い。
身体の力が抜けていくと共に大きな溜息をひとつ零してしまう。
間を置いてゆるりと立ち上がり、ふらつく身体に鞭打って弥彦の方向へと歩き出す。
戦意はない、とはがりに妖気は随分と落ち着いた様子を示していた。