此岸 - 2
- 2017/03/28 22:02:57
「 Black Maria 」
大きな看板にそう書かれているレンガ造りの少し古びたアパート。
六階建て。壁に貼られたチラシには、
赤いクレヨンで元ある字を塗りつぶし入居者募集と書かれていた。
地下1階 - ジャック
B1号室 [ 丹丹 ]
B2号室 [ アンドロメダ ]
B3号室 [ Goth ]
B4号室 [ 遊々 ]
[ 娯楽室 ]
[ 食堂 ]
[ ランドリールーム ]
1階 -
[ 時計店 Bailey Mirror ] 白ナイト / アルバイト 霧島
[ 書店 白鷺堂] 黒ナイト
2階 -
[ 喫茶店 ] 白ルーク / アルバイト 丑円
[ 輸入品店 Modern Hideout ] 黒ビショップ / バイト エマ
全店、営業時間は朝-夕。
メンバーに限り従業員が店に居る場合は終日利用可能。
3階 - クラブ
1号室 [ クルト ]
2号室 [ 丑円遊 ]
3号室 [ アリス・オルコット / ユノ・カリスト ]
4号室 [ Adalgisa ]
4階 - ハート
5号室 [ 灰梁 六 ]
6号室 [ Kathleen / BerryBell ]
7号室 [ 霧島弥子 ]
8号室 [ エマ ]
5階 - ダイヤ
9号室 [ Harvest ]
10号室 [ 衣更月薫 ]
11号室 [ Elgar / 市ヶ谷鏡 ]
6階 - スペード
( エレベーターの6階はカードキーを通さないと押す事が出来ない )
12号室 [ クイーン ]
13号室 [ キング ]
屋上 - 集会所
( 屋上はドーム型の屋根になっており、
傍から見れば温室のようにも見える。
其処には全員分の椅子と机があり、会議や暇潰し等に使われる )
* 此方のトピックは基本的に日常ロール専用になります
* ロルは2行~1コメントに収まるまで
* ☆//^^;www♪等の記号は使用禁止です
* 確定ロル禁止です。これ一番大切。やめような!!!!!!!!!!!!!!!!
* 幹部キャラ以外は基本的に6階への立ち入りが出来ません
* 100コメントを取った方が次のトピを立てる様にお願いします
トピック更新します ロルは新しい方にお願いします
【 2階廊下 - クイーン 】
まさか声をかけたら転がってくるとは思うまい。
思わず片足を一歩後ろに引いてしまったが、仕方ない。
子供というのは常に大人の隙をつくものだと思い、気を取り直して。
「喫茶店でも行くか」
ぱたぱたと忙しない少年を諫めるように頭をニ、三度撫でる。
軽食ならそれで済むが、外食となると財布が厳しいようなそうでもないような。
敵対組織の存在もあるからか、出歩くのはあまり気が進まなかった。
二人の会話を聞きながら差し出されたものが何かわからず首を傾げる。
袋は食べ物じゃないことぐらいあるじに教えてもらったことがある。
紙袋もビニール袋も食べ物じゃないってしっているのだ。
なんてことを考えていたとき、
「あるじ?」
主の声が聞こえたとなれば顔を上げる。
パッと勢いよく上げたせいで盛大にソファから転げ落ちたが気にも留めない。
でんぐり返しからの起立をしてクイーンの元へ駆け寄った。
まるで忠犬のように。
「るる、腹がすいたのか?すいたのだ?空いた、です」
見えない尻尾を振りながら必死にアピールした。
著しい知能の低下により語彙力も言語力も少ないが身振り手振りで肯定を示す。
そしてお金の管理など当然できないというか持っていたっけ?状態なので金がないということも。
「かね、おかねがない。ないから、お腹も、空いた。すいていたです。
あるじ、あるじがいなかった、いないから待ってた。待ってた、ここ、ここで」
精一杯の語彙を披露して腕をぱたぱたとさせる。
伝わるか伝わらないか分からない彼の喋り方の特徴から、会話のときの不安はある。
無自覚だが彼が腕をパタパタさせるのは嬉しいときと不安なときの二択だ。
【 2階廊下 - クイーン 】
何がある、という訳もなく。
ふらりと立ち寄った階に見知った姿を見つければ近づくのが道理というもの。
実際に用があるのはこの階にある店なので、そのついでという感じだ。
「遊々。どうした」
小さく蹲るその様は髪色も相まってまるで針鼠のよう。
彼女が自主的に関わる数少ない相手であり部下である遊々。
子供だから面倒を見ているということはないが、それなりに構っている。
「腹が空いたのか?」
そういえば何も食べていなかったか、と記憶を探る。
暫くキングに呼び出されていたので彼のことは放っておいた、とは言い方が悪いか。
何にしろ危機なのには違いなく、子の胃袋と寂寥を満たさんことには始まらない。
傍に立つ女二人に馴染みはないから、恐らくは滅多に顔を合わすことのない白の駒だろう。
【 2階廊下 - クイーン 】
何がある、という訳もなく。
ふらりと立ち寄った階に見知った姿を見つければ近づくのが道理というもの。
実際に用があるのはこの階にある店なので、そのついでという感じだ。
「遊々。どうした」
小さく蹲るその様は髪色も相まってまるで針鼠のよう。
彼女が自主的に関わる数少ない相手であり部下である遊々。
子供だから面倒を見ているということはないが、それなりに構っている。
「腹が空いたのか?」
そういえば何も食べていなかったか、と記憶を探る。
暫くキングに呼び出されていたので彼のことは放っておいた、とは言い方が悪いか。
何にしろ危機なのには違いなく、子の胃袋と寂寥を満たさんことには始まらない。
「…」
ペコ、と頭を下げると来店時入ってきた扉から出ていく。
その腕には先ほど購入した商品がしっかりと抱かれていた。
フードを深くかぶり、人目を避けるようにして帰路…といっても同じ建物内だが
自室へと歩みを進める。
あれ、そういえばあの店のバイトさん、口がもごもごしていた…?
…まあ、気のせいだということにしよう。
「きっと大丈夫ですわ。キング様御強いですし」
ニコッと悪意のない無邪気な笑みを遊に向ける。対してユノは息をするようにシャッターを切る
まぁ相手は上司だ。あまり悪く言うのも良くないだろう。ユノはそう判断し口を閉ざすが写真は取る
勿論音はならない様に設定しているため、アリス自身気づいてはいない。いや若しかしたら気づいているかも
「相手はクイーン様なら、キング様は大丈夫ですわ」
「…」
ペコ、と頭を下げると来店時入ってきた扉から出ていく。
その腕には先ほど購入した商品がしっかりと抱かれていた。
フードを深くかぶり、人目を避けるようにして帰路…といっても同じ建物内だが
自室へと歩みを進める。
あれ、そういえばあの店のバイトさん、口がもごもごしていた…?
…まあ、気のせいだということにしよう。
[ 2階廊下 ‐ 丑円遊 ]
「 え、うわっ……キング…大丈夫ですか…? 」
引きずられている…。逆に言えば彼にそんなことができるクイーンが怖い。
何故この状態に至ったのか、気にならないと言えば嘘になるが、
昔から 触らぬ神に祟りなし と言うし、この件にはあまり触れないでおこう。
「アリス様。この人結構大丈夫みたいです」
「意識があるのなら、大丈夫ですわね!意識が無かったら助けようかと思いましたが、意識があるなら別に良いですわ!」
ぶっとび思考のお嬢様の従者。どうせキング様の事だから死んだと思っても3時間後ぐらいに
ひょっこりと生き返ってくるのだろう。それに意識があるなら大丈夫。それがアリスの基準となっている
娯楽室/アンドロメダ
「とびっきりの紅茶をご馳走するわ」
相変わらず何かを企んでいるような笑みだ。そう思いながら鮮やかに微笑んだ
机の上に置いてあった、本を手に持つと「有難う」そう言いながら開けられた扉を通った
地下にある娯楽室でも、雨がザーザーに降っていることが分かる。本当に面倒だ
[ 娯楽室 / アダルジィザ ]
「それは、それは。楽しみですね」
エスコートするように扉の前へ、先に扉を開けると「どうぞ」と彼女を促した。
独特な虹彩の瞳がにたりと笑う。特に何をたくらんでいるつもりもないのだが。
[ スペード13号室 - キング ]
えっ?痛い 普通に痛い 痛みの限りは常識の範囲を超越している いや僕の白衣挟まってる
言葉の羅列は頭に浮かぶが、こうも予測不能な事態が続いては思考が停止するのも仕方ない。
「 君ね、通信端末と僕のめがねに加えてエレベーターの修理代は洒落にならないぞ 」
いやいや角にぶつかってるし僕 遊々、どうしたとか以前に僕はどうした
猫を飼いたい等と駄々を捏ね説教(肉体言語)を食らうキング(成人男性)は意識を手放しかけていた。
「 世も末。全くだよ。君にまともな事を言われるとは思わなかったな 」
「それは、それは。楽しみですね」
エスコートするように扉の前へ、先に扉を開けると「どうぞ」と彼女を促した。
独特な虹彩の瞳がにたりと笑う。特に何をたくらんでいるつもりもないのだが。
[ スペード13号室 - キング ]
えっ?痛い 普通に痛い 痛みの限りは常識の範囲を超越している いや僕の白衣挟まってる
言葉の羅列は頭に浮かぶが、こうも予測不能な事態が続いては思考が停止するのも仕方ない。
「 君ね、通信端末と僕のめがねに加えてエレベーターの修理代は洒落にならないぞ 」
いやいや角にぶつかってるし僕 遊々、どうしたとか以前に僕はどうした
等と呑気に考えているキング(成人男性 組織のボス)は既に意識を手放しかけていた。
「 世も末。全くだよ。君にまともな事を言われるとは思わなかったな 」
アリスは元気に良かった。と少し安心したような笑みを浮かべると、またキングを見た
あまり表情を引きつらせることなどなかったが、これが・・・如何な物か。自分たちのボスが・・・
勿論クイーンも実質上司なのは違いないが、白に所属している自分の直属の上司はキングだ
「また何かやらかしたのでしょうアリス様。気にする事ではございません」
「はぁ・・・これが私達の上司・・・・ですか・・・」
ため息交じりに呟くアリス。勿論ユノも心の中では、大丈夫なんだろうか白は・・・と心の中で思っていた
「あるじ!」
パッと顔を上げてクイーンの方へ…落ちた。
自分がソファの上にいることすら忘れてあるじのほうへ行こうとした忠誠心。
それはソファからの落下で幕を下ろすかと思われたが、そのままでんぐり返しで起き上がった。
「あるじ、あるじ。どうした?どうした?まってた、あるじ、あるじ。おやつ!」
ぱたぱたと嬉しさを腕を動かすことで表現しながら引きずられるキングを見る。
一瞬、彼の顔がハテナマークに染まったことは言うまでもなかろう。
アリスとユノも恐らくハテナマーク、否…引きつっているかもしれない。
「お腹すいた、お腹、一緒ごはん。おやつ、おやつ食べたい、たべたい」
必死に自分の意思を伝えようと言葉を並べる。
これでも彼なりに流暢に伝えようとしているのだが副作用につれて言語能力は下がり続きだ。
通じろ――という念波が届けばいい。
「あら、クイーン様ではないですか」
倒れている遊遊に話しかけていると、白のポーンである自分とはあまり接点がない
黒の方のボスであるクイーン。そして引きずられている人を見ると、思わず顔を引きつらした
「キ、キング様・・・?」
「・・・・・・世も末ですねアリスお嬢様」
【 二階廊下 - クイーン 】
エレベーターに乗ると二階のボタンを押した。
そこまでなら何の変哲もない、日常の一コマで終わるのだが。
何故か片手にはキングをぶら下げている。引き摺っている、と表現した方が正しいか。
どちらにせよただ事ではないが、好き好んでトップの喧嘩に巻き込まれたくはないだろう。
「サンドバックねえ。随分と殴り甲斐がなさそうな」
暇だからと、どこかの店にでも顔を出しに行こうとした矢先。
到着した階には珍しく店の前ではなく、廊下に人影が複数ある。
何だろうと近づいてみればよく見知った顔が一人いた。
「遊々。どうした?」
白銀色の髪は蹲っていると小さな体格も相まって針鼠のよう。
まだ子供だが、彼女が可愛がっている数少ない部下だ。
「主・・・?うーん・・・」
「あらあら・・・遊遊さんお菓子食べます?クッキーですけど」
まぁ主・・・キングの事か?分からないが誰かを待っているのだろう。というか顔色悪いな
そんな遊遊を見かねたのか、アリスが近づいてくるとポケットからクッキーの入った袋を取り出す
疲れたときは甘い物が良い。しかしイギリス産のクッキー。かなり甘い味付けになっている
娯楽室/アンドロメダ
「あらお茶のお誘い?良いけれど、私紅茶には煩いわよ?」
挑発するかのような言葉をいい、握られていない方の手で髪の毛を耳に掛ける仕草をする
触れられたことには特に気にした様子はないが、怪しく微笑むとすぐさま何時もの笑顔に戻る
紅茶マニアであるアンドロメダは世界各国の紅茶を集めて、声を掛けたりしてお茶会をしている
うーうーと子供が呻くような声を出していると名前を呼ばれて顔を上げる。
あるじ?あるじの声じゃない…あるじ、じゃない。
ならぽーんのひとかな、ぽーんのひとかな。
「おいるる、るる?こんなところ、ぼくはこんなところであるじをまってる。ぼくは」
話しかけてきたユノに虚ろな目線を向けて、小首を傾げる。
現状を彼なりに説明してみた。通じたかどうかは分からないが。
「 そうだ、レディ。今晩はお暇ですか? 」
もしよろしければ、お茶でも致しませんか。
そう気障に微笑みながら彼女の手に触れる。
さながらレディをエスコートする、紳士の上品な笑顔で。
[ スペード13号室 - キング ]
「 ………きみって、僕のことサンドバッグか何かだと思ってるよな 」
若干切れた唇の端。伝う柘榴色の雫を濡れた舌が掬うと、ゆっくりと壁に手を付く。
……暇もなく、ずるりとまた床に叩きつけられた。痛い。メガネが割れたらどうしてくれる。
また文句を言う暇もない様で、おやつ(?)の輸血パックを手に取ると引きずられていった。
「 痛い、まて、待て君まさか本気で暴れる気かやめ給え争いは何も生まない 」
「あら、あそこにいるのは・・・」
「・・・遊遊ですね。何故丸まっているのでしょうか・・・」
エレベーターから降りたアリスとユノは廊下を進んでいると、丸まっている人間を見つめた
あの灰色混じりの白銀色の髪は遊遊だと思い、アリスの問いに答えるユノは首を傾げる
お腹が減っているのだろうか。一応軽くお菓子は持ってきているが、あの様子では足りないだろう
アリスが困っていると、それにユノが気づいたのだろう。ゆっくり近づきしゃがみ込むと遊遊に話しかける
「おい遊遊。如何してこんな所で蹲っている」
【 スペード13号室 - クイーン 】
一歩、二歩と後退を始めた王を更に追い込むように女王は距離を詰めた。
チェスの盤上では幾度も見た景色だが、現実世界ではとても洒落にならない。
彼女は勿論素手であるが、それでも戦闘能力のない人間にとっては脅威なのだ。
「自分の面倒も見れない奴が、ペットを飼えるわけないだろ」
途中で飽きて誰かに押しつけるに決まっている、と自信満々に言い切る。
ただ、忠告を聞ける余裕があるかどうかは怪しいところ。
何故なら、返答を待たずに拳を勢いよく目の前にある頬に食い込ませたからである。
そのまま床に顔から着地するところを、白衣の襟首を掴んで持ち上げ。
それで満足したのか、別のことに興味が移ったのか。
事もあろうに襟首を握ったまま廊下に向かって歩き出した。
お腹がすいた、あるじはどこだろう。
そんな考えが始まりで部屋から飛び出たはいいものの此処はどこだろう。
階段を登って歩いていると、きっさてん、ゆにゅーひんてん、などがある。
しかしぼくはお金をもっていない。つまり、おみせにはいれない。
「あるじ…あるじ、あるじ?…しゅうしゅう?にんむ?おかし…おかし、あるじ……」
あるじどこ…おかし食べたい……そう言う相手すらいない寂しさ。
廊下の隅にちょこんと置かれたソファに寝転がる。
あるじ…どこ、あるじあるじ、どこどこ、と丸くなりながら空腹を堪えていた。
静かな部屋で一人ペタペタと小さな音を立てながら移動する。
そして小さなバッグからは明らかにサイズが違うYシャツを抜き取り袖に腕を通した。
「 .....питание... 」
ポツリと呟いたのはロシア語で”食べ物”。
いつまで眠っていたのだろう。自分でもよくわからない。
普通に歩けているからそんなに長くは寝ていないはず。
そう思いながらゆっくりと部屋のドアを開けた。
「そうね・・・月が居れば私はもっと美しくなれるのかしらね」
クスクスと穏やかに笑いながら、月の様に柔らかい金色の瞳がアダルジィザを見つめた
自分の手を絡めるようにしながら、よくそんな大きいケースを運べるわねと思う。
白い雪のような肌。全体的に白という言葉が似合う女性。一つ一つの動きがすべて美しい
「 ああ、これくらいしか友人が居ませんからね 」
くつくつ、と喉の奥で笑う。大きなケース、の言葉に反応しての事だろう。
茶化すような言葉を述べると彼女の方へ歩いていく。
読書の時間を邪魔してしまっただろうか。すみません、と一言掛けながら。
「 貴方の美しさに逃げ出してしまったのでしょう、月とは臆病な物です 」
「あらアダルジィザ。有難う褒めてくれて嬉しいわ」
扉が開いた音に反応すると、チラッとそちらを見た。するとそこに居たのはアダルジィザ
同じくこの組織の一人で仲間だ。パタンッと読んでいた本にしおりを挟み、閉じた
月が眩む程美しい・・・か。色んな人に美貌を称えられてきたが、褒められるのも何時だって嬉しい物だ
相変わらず大きなケースを背負っているのね。と少し苦笑して、声を掛ける
「今日は大雨だから、月が見えなくて残念だわ」
[ 娯楽室 / アダルジィザ ]
扉を開けると、退屈そうな顔で入ってきたのは不思議な虹彩をした人物。
大きなケースを背負い、胡乱な瞳が部屋の奥を捉える。
そこに写ったのは月のように美しい女性。彼女を見ると、ふわりと笑う。
「 こんばんは、レディ。今日も月が眩む程お美しい 」
「・・・・・・・・・・・・」
娯楽室に来たのは良いが、ビリヤードなどにも飽きたのかついに持参した本を読みだす
ギリシャ出身のアンドロメダ。月と雪が交じり合って生まれたと称される程の美貌を持つ美女
そんな儚い美貌を持つ癖に、その儚げな容姿を裏切るくらい喜怒哀楽がはっきりしている
「 落ち着きたまえ。暴力に訴えれば僕が言う事を聞くと思ったら大間違いだ 」
― それにね、話せば分かる。
椅子から立ち上がると、言葉とは裏腹に後退りしながら彼女に向かって続けた。
「 僕は猫を飼いたいと言ったんだ。自分で餌をやれるしきちんと面倒も見る 」
不味い。非常に不味い。何が不味いって今この場に味方がいない事だ。
この部屋では呼ぶことも、或いは誰かを待つことも出来まい。非常に不味い。
【 スペード13号室 - クイーン 】
役目を終え、暇そうに頬杖をついていた女王は不意に聞こえた真面目な声色に居住まいを正した。
組織の存続に関わる話なのか、あるいは以前に交戦した連中に関することだろうか。
彼女にしては珍しく、静かに王の言葉に耳を傾けていたが。
徐に立ち上がると拳を握り、肘を後ろに引く。
「よし、もういっぺん言ってみろ」
言わねば殴る、言っても内容次第では殴り飛ばす。
最早女の中で暴力に訴えることは決定事項であり、誰が何と言おうと覆せない現象なのだ。
残念ながら止めれる者どころか、この部屋には二人しかいない。
「……ああ、結構よ。ブラックでいいわ」
指輪を眺めながらゆったりとした様子でそう答える。
視線を爪に移して、昨夜塗っておいたネイルのよれや剥がれているところがないか等
どうでもいい事を気にしていた。ひとつも、そのような所はなかったのだが。
「 お子様は余計です、お子様は 」
ふと現れた空間を見る。まるで吸い込まれるようなその黒から咄嗟に目をそらした。
ちらりともう一度、苺色がそれを見る。六の仕草からして、危険な物には見えない。
「 ……これに?」
少し不安げな目でその空間に本の束を放り込む。
中を覗き込むように、少しだけ赤いヒールの爪先を伸ばした。
[ スペード13号室 - キング ]
「……さて、皆居なくなってしまったな。君に話しておかなくちゃならない事がある」
珍しく、いつも人を舐め腐ったような色をしている瞳は真剣みを帯びた。
足を組み直すと、真っ直ぐクイーンの方に向き直る。
「 ……猫をね、飼おうと思うんだけど 」
「偉そうなお子様だねぇ~」
すかした感じで此方も一言多く言うと音もなく黒い円状の空間の裂け目を出現させた。それはとてもではないが何か不安を感じてしまうような真っ黒なモノであったが、六はそこに慣れたような感じで持っていた分の本を放り込んだ。
「じゃ、そこの穴に入れてくださいませ~。お嬢様?」
キザでウザったいこの野郎ではあるが、穴を実体化させた位置を相手の身長の丁度良い所にしたりと根は紳士的な部分があったり、と。逆にその優しさのような物が此方を混乱させ、彼の実質性というものを隠してしまってるのだが。
どうやら気に入ってもらえたようで内心安堵する。
コッソリ自分も食べてる?いやいやそんなことはありません決してそのようなモゴモゴ。
「またのご来店をお待ちしております」
右手を左胸に当てて自然な動作で会釈をする。
その際に口元がモゴモゴしていたことなど誰も気付かないはずだ。ああ、そのはずだ。
何度目かのお湯を注ぎ終えて、サーバーに落ちるのを待つ。
まだお湯が残るうちにサーバーを取り出し、コーヒーをカップにゆっくりと注いだ。
フィルターを処分し、カップをソーサーに乗せる。
そして、どこかぼんやりとした様子の彼女に問いかけた。
「ミルクと砂糖はどうする?」
その片手間に、戸棚からパンを取り出す。
夜だから、野菜の鮮度は落ちてしまっているだろうか。それでも、冷蔵庫の中の作りすぎてしまったサンドイッチを出すよりはいいだろう。
「クッ・・・・」
鼻血が出そうになるのを必死に堪える。アリス様の前で鼻血何て出すわけには行かない!
そう思い必死に落ち着かせるが、負ける物かと目線で語りポケットからまた一枚の写真を取る
まだアリスと共にイギリスにいた頃、家のプールで遊んでいるアリスの写真。まだ7,8歳だと思われる
水色の水着を着て、白い肌が輝かしく水に塗れた金髪の髪の毛が肌に張り付いていて色っぽい
幼女趣味の人間がいれば、迷わずこの写真を奪い取る物だろう。ユノは断じて幼女趣味ではない
「クッ・・・・」
鼻血が出そうになるのを必死に堪える。アリス様の前で鼻血何て出すわけには行かない!
そう思い必死に落ち着かせるが、負ける物かと目線で語りポケットからまた一枚の写真を取る
まだアリスと共にイギリスにいた頃、家のプールで遊んでいるアリスの写真。まだ7,8歳だと思われる
水色の水着を着て、白い肌が輝かしく水に塗れた金髪の髪の毛が腕に張り付いていて色っぽい
幼女趣味の人間がいれば、迷わずこの写真を奪い取る物だろう。ユノは断じて幼女趣味ではない
『驚かせてしまったので、持っていってください』
「…」
手のひらの上のそれをジッと見つめる。
何も言わず、視線を反らさず。傍から見れば少し奇妙だろうか。
ただただ見つめているようにも見えるし、貰った物を品定めしているようにも見える。
「…ありが…と」
やっと口を開いたかと思うと、早速その独特の色合いをしたキャンディーを口の中に放り込んだ。
分かりにくいがどことなく満足そうな表情をしているので気に入ったのだろう。
まあ、そもそも甘ければ何でもよいという彼女の性質をばっちりおさえた
このキャンディーで喜ばないはずはない。
[ エレベーター → 2F 輸入品店 ‐ 丑円遊 ]
「…カハァッ…!!」
ユノが殺気と共に繰り出した1枚の写真、そのダメージは大きかった。
吐血。そして血の涙。アリスには気づかれていないが、彼女の背後で行われるユノと遊の精神的戦闘。
此方も負けじと反撃に出る。
彼が上着の胸ポケットから出したのはまたもや1枚の写真。
アリスが子猫を撫でている写真だ。さらに、よく見ると風が良い感じに吹いていて所謂ベストショット。
これは数日前尾こ…散歩をしていた時に偶然撮れた写真…。
フハハハハハ、こんな奇跡的な写真…羨ましかろう!!!僕はこれを拡大、引き伸ばして壁に飾っている!!!!!
この店のコーヒーは丁寧に淹れられているな、と来るたび思う。
やはり丁寧に淹れたコーヒーは、インスタントコーヒーやドリンクバーのコーヒーと比べ
深みや香りが全く違うのだ。
忙しくない日は、こうして静かな場所でゆっくりするのもいいかもしれない。
手を傾け、指輪が光に反射してきらきらと光るのをぼうっと眺めつつ、
コーヒーとサンドイッチの出来上がりを待っていた。
「俺らなら、大丈夫でしょう」
話の重さで大分眠気が飛んだのか、先程に不気味な笑顔とは一転いつものように
眉を下げ、頼りなさそうな笑顔を浮かべる。
大丈夫、と言っているがこの笑顔では信用できないだろうが、これでも彼は幹部の一人なのだ。
「はーい、いってきまーす」
不意に琳霞の呟きを耳にして、自身もぼんやりとした頭で考えてみる。
(……そういえば、夜は寝てしまう事が多いからな。今日はたまたま起きていたが――やはり、たまには目を覚ましているのもいいのかもしれない)
ドリッパー、フィルター、そしてサーバー。諸々のセットを終え、挽き終えた豆をスプーンでフィルターに運ぶ。
その上からゆっくりと、82度に熱したお湯を円を描くようにして注げば、心なしかこの部屋の悪臭が薄らいだ気がした。
……茶道でもそうだ。お湯を注ぐ瞬間が、一番落ち着きを感じる。
キングの発言を咀嚼するように静かに理解してから頷く。
要するに、Harvestが言った通りだろう。
「ええ、己の出来る限りを尽くします」
いつも通りの微笑みを浮かべながら把握の意を示した。
――
[ 2階・輸入品店 ・ エマ ]
「確かにお預かりしました」
キリッとした無表情で出されたお金を受け取る。
うん……合ってるかどうか分からないけどお釣りとかいるのかな。
お釣り…そう私も買い物をするとお釣りをもらう。
つまり、会計時にお釣りを渡さなければいけないというのは常識なのだ。
いやでもピッタリ渡してきてたらどうしよう、と思った結果。
「驚かせてしまったので、持っていってください」
独特な色合いから着色料がふんだんに使われていることが分かるキャンディ。
見た目からして美味しくなさそうだが実のところ凄く美味しい袋入りのお菓子を手渡した。
お釣りを渡す:但しお金でとは言っていない。
キングの発言を咀嚼するように静かに理解してから頷く。
要するに、Harvestが言った通りだろう。
「ええ、己の出来る限りを尽くします」
いつも通りの微笑みを浮かべながら把握の意を示した。
猫、という言葉にぴくりと反応する。
普段無表情を貫いてるがこの時ばかりは口元を緩ませて目はキラキラと輝いていた。
猫に限ったことではないが動物好きの自分にとって猫を飼いたいという要求は賛成としか言いようがない。
…と、そうだ、ここに集まった本当の理由は依頼だ、危うく猫を飼うか否かの会議を始めるところだった。
思考回路を猫の事から依頼へと切り替えキングの紡ぐ言葉ひとつひとつに集中し其方へと耳を傾ける。
数人殺しても構わないという一言に思わず身震いした。
それはもちろん恐怖からではなくこれから起こることに対しての期待からだったが。
「 なるほど…わかりました。必ず探り出します。 …ふふ、楽しみ。 」
あどけない笑顔でそう言った。
まるで明日の遠足が楽しみで楽しみで仕方がない、という小学生のように。
「 ああ、そういう事さ。場所は把握したね。では各自、宜しく頼むよ 」
ははは。しかし此方には奥の手がある。そう、さっき僕が三時間掛けて作成した猫布教資料。
足を組みかえると、机の上で人差し指がくるりくるりと円を描いた。
その行為には何らかの意味があったようだが、果たして。眼鏡を人差し指が押し上げる。
「 君。君はこれを持っておいてくれ 」
そう声を掛け、ゆっくりと立ち上がるとHarvestに手渡したのは小さな通信機。
噛んで、飲んで、何となく理解。
彼方へ流された飼い猫の件は、無慈悲なまでにジョークだったのだろう。南無南無。
地図を確認し、一度目を閉じる。開く。
その間に頭の中を駆け巡ったのは、如何にシンプルな手順で終わらせるか。という事。
まあ4人で、凝ったことができるとも思えないし、己の力は殺傷と破壊方面でしか役に立たないし。
「向こうさんの考えてる事、チャチャっと抜いてトンズラッスね。」
りょーかい、キング。と。
至って変わらない空気を纏うこの男、緊張感のない痩せ型の黒。
これでも、こんなのでも、幹部の一人なのだ。驚くべきこと事に。
「・・・・・・・!」
「・・・・・・・♪」
楽しそうにニコニコ笑っているアリスに対して、今にでも殺そうとするほどの殺気に満ちているユノ
するとユノはソッとポケットに手をやり一枚の紙を取り出す。どうやら写真のようだ
アリスはこちらには気づいていない事をいいことに、近くにいる遊に向けてその写真を見せる
その写真には、まだ幼い頃のアリスが写っていた。赤いドレスを着て薔薇園で笑っている
ニヤリと笑い『羨ましいだろう!所詮貴様はこの組織に入ってアリス様を好いた者!にわかと言うものだ』と
声には出してはいないが、明らかに遊を嘲笑っている。当の本人は気づいていないが
「大丈夫…」
パクパクとしていた口からやっと言葉が出る。
商品を受け取ると、先ほど店主が提示した金額をカウンターに置く。
そして、フードを下に引っ張り深くかぶり直すと、小さく一度頭を下げた。
「じ、じゃあ…これで…」
[ スペード13号室 - キング ]
「 相手が攻撃を仕掛けてくるかどうかは定かでないが、恐らくは。
向こう側も壱組織だ。くれぐれも、死人が出る前に戻って来たまえ 」
通信器は、渡しておいた方がいいだろうか。この人数なら、ひとつで十分な気もする。
幹部のどちらかに渡しておくのが得策だろう。この場合、夜目が利くHarvestの方か。
そんな事を考えながら、手にしているのは跡の付いた小さな名刺大の紙切れだった。
嘲るような目で、まるで豚小屋でも見るような目でその紙切れをしばらく眺める。
― 何か聞きたいことは、 ともう一度四人の顔を見て問いかけた。紫色の、その瞳が。
「 ああ、そうだ。大切な事を言っていなかったね。今回の目的は敵の動向を探る事。
彼らは〝何かをする為〟に倉庫まで集まる様だが、人数や目的は把握していない。
必要とあらば数人殺しても構わない。何をしようとしているのか、それを調べてくれ 」
猫がうんたら、部屋がどうたら……という会話の内容は全く頭に入ってこなかった。
中途半端に寝てしまったせいか頭がぼうっとする。
緊張感のないあくびをすると、本題という言葉を聞いてはっとして、
頬をつねって眠気を覚まそうとした。
「…………分かりました」
地図を覗き込み、印のついた場所を確認する。
この調子でできるだろうか、と考えたが、そのような状況では嫌でも目が覚めるだろう。
[ 喫茶店 - 琳霞 ]
コーヒーの良い香りが漂ってくる。本来、喫茶店の香りはこんなものだ。
豆をミルで砕いたときの、この香りが好きだった。癒しの時間、とも言うべきか。
「こんな夜にコーヒーを飲む人なんて、やっぱりいないのね」
ぽつりと独り言を呟く。
黒の駒の人が少しはいると思ったのだが、周りを見回す限り客は自分ひとりしかいない。
自分が来た時に店は閉まっていたようだから当たり前か、と
水滴の垂れる窓をぼうっと見つめていた。
本題に入る前の小話は彼の持ち前のスルースキルを駆使して、
少し大きな地図が広げられたあたりでキングの言う本題に耳を傾けた。
ガラスのペンで丸が付けられた場所を見ると、何の用事か表事ではないことがすぐに分かった。
抑も、chess clockが集められた時点で表事ではないことは明らかなのだが。
「ご随意のままに」
自分の戦闘力は決して高いとは言えない。
無意識に顎に手を持っていき少し考える素振りをしながら説明の続きを待った。
本題に入る前の小話は彼の持ち前のスルースキルを駆使して、
少し大きな地図が広げられたあたりでキングの言う本題に耳を傾けた。
ガラスのペンで丸が付けられた場所を見ると、何の用事か表事ではないことがすぐに分かった。
抑も、chess clockが集められた時点で表事ではないことは明らかなのだが。
「……相手方は何人ほどか確認はされてます?」
自分の戦闘力は決して高いとは言えない。
無意識に顎に手を持っていきながらポツリと最初に気になったことを聞いてみた。
「コーヒーと、サンドイッチだな。分かった」
残り少ないコーヒー豆を戸棚から引っ張り出し、コンロ脇に置かれた古い手挽きミルを手繰り寄せる。普通は客が来ない時間帯なので、豆を挽くところから始めなければならない。
一人分を想定した量の豆を入れ、ハンドルを回す。
(……いい加減、業務用を買った方がいいかもしれないな)
ここにあるのは家庭用の古びた手挽きミルだ。大切に使っているのでまだまだ現役だし、欠陥なんてどこにもない。
……唯一あるとすれば、一杯分挽くのにも結構な時間と体力を要することだろうか。ハンドルだって軽くはないのだ。
「 ……痛覚はリンクしていないが些か痛い気がする。痛い様な気がする 」
猫を飼いたいとは後々きちんと要求するにして。その為の猫プレゼン資料まで用意したのだ。
躾てくれれば、と言う言葉に軽く同意をしながら彼女を見るが、完全にスルーされているので。
「 で、本題だが…… 」
かろうじて物を置くスペースのある机に広げられたのは、一枚の少し大きな地図だった。
名ばかりはキングだが、彼とも彼女とも言い難いその細い指は、とある場所を指差した。
「 此処。元は武器の貿易に使われていた港だ。今は廃墟になっている倉庫に、用がある 」
軽くインクをつけたガラスのペンで丸印を付けると、各四人の顔を見渡した。
「 地図の場所まで、行って欲しい。 恐らく剣を交える事になるだろう 」
【 スペード13号室 - クイーン 】
影の周囲を漂う紫の目を身を乗り出して掴んだ。
指の間に収まったむにむにと弾力のある目玉を少々虐めてやる。
床に投げたらスーパーボウルのように跳ねるだろうか。
そうだったら面白いが、きっと無残に潰れるであろう。
仕方がないので指先で抓む程度にしておく。
「帰っていいか?」
影のソファにゆったりと腰かけた女王は退屈そうだ。
退屈、とはまた違う。呆れているのかもしれない。
屁理屈で部屋の汚さを誤魔化したり、猫を飼いたいと言い出す目の前の人物に対して。
とても組織を率いる片割れだと思いたくはない、とでも言いたそうな顔をしていた。
「躾てくれればいいんじゃないッスかね?」
そういう事なんだろうか、果たして。
漁れば在庫の中から犬か猫の気持ちは分かるだろうけど、店に侵入されたら困る。
商品の他にも、色々、倒されたり乗られると困るのだ。例えば裏とか、入ったら潰れるか神隠しだ。
と、輸入ついでに知った各国文化の言葉?みたいなものを頭の中でかき回す。
ついでに足場も確保する。散らかしちゃってスンマセン?ん?片付けちゃって??
わっかんねぇわ。
「でしょうね~。ちょっと急いじゃったッスよ」
そういえばバイト、うまくやってるだろうか。
正直エマに任せっきりで不安じゃないかと言われれば不安しかない。
経営赤字までは予想の範囲内だが、テロリスト襲撃後みたいになってたら解雇する予定ではあった。
[ スペード13号室 - キング ]
「 いいや、それは違うね。良いかい、この部屋は片付いているんだ。少なくとも僕に取ってはだが、
僕はどの書類どの書物がどの場所に置いてあるかを全て明確に記憶している。置いたら其処に戻す。
それはつまる所片付いていると言う状態なんだ、君が今踏み付けた書類三枚と本二冊以外は 」
要するに何が言いたいかと言えば投げてある本を再び投げてるのはその投げられた場所が
本にとっては定位置である……と、非常に回りくどい言い訳をした所で入ってきたのはルークだった。
彼女が何を踏みつけたか彼は見ていない筈だが、発言の理由は足元を見れば分かることだろう。
紫色の目がくるくると何かを抗議するように、影の周りを回っていた。
― あ、そうだ。猫飼ってもいい?
なんの脈絡もない質問を唐突に投げかけた後で、彼は順に入ってきた面々を見渡した。
「 やぁ。夜遅くにご苦労さま、だ。集まって貰った理由は察しの通り依頼だが、今回は少し違う 」
そう、今回はいつもとは違うのだ。普段は黒、白と分けて呼び出される筈なのだから。
それに何より、今日は会議室でなく直接私室に呼び出された。その意味は、何処にあるのだろう。
「 いいや、それは違うね。良いかい、この部屋は片付いているんだ。少なくとも僕に取ってはだが、
僕はどの書類どの書物がどの場所に置いてあるかを全て明確に記憶している。だから置いたら其処に戻す。
それはつまる所片付いていると言う状態なんだ、君が今踏み付けた書類三枚と本二冊以外は 」
要するに何が言いたいかと言えば投げてある本を再び投げてるのはその投げられた場所が
本にとっては定位置である……と、非常に回りくどい言い訳をした所で入ってきたのはルークだった。
彼女が何を踏みつけたか彼は見ていない筈だが、発言の理由は足元を見れば分かることだろう。
紫色の目がくるくると何かを抗議するように、影の周りを回っていた。
― あ、そうだ。猫飼ってもいい?
なんの脈絡もない質問を唐突に投げかけた後で、彼は順に入ってきた面々を見渡した。
「 やぁ。夜遅くにご苦労さま、だ。集まって貰った理由は察しの通り依頼だが、今回は少し違う 」
そう、今回はいつもとは違うのだ。普段は黒、白と分けて呼び出される筈なのだから。
それに何より、今日は会議室でなく直接私室に呼び出された。その意味は、何処にあるのだろう。
突如、それは雨音のみが聞こえるこの静かな場所に鳴り響いた。
音の正体は自身が胸ポケットへと大切にしまい込んでいた対局時計からだった。
ジリリ、と鳴り響く嫌な音、この音は依頼の招集の時の合図だ。
喫茶店の店主が去りリーゼリアと2人きりになった今、彼を1人残して去るのは気が引けたが依頼となれば致し方ない。
「 …すみません、いってきます。」
そう言い軽くぺこりと一礼すれば足早にその場を去った。
[ 集会場 → スペード13号室 弥子 ]
招集の合図を聞いて、幹部でもなんでもない自分は普段入ることは決して許されることないキングの部屋へと恐る恐る足を踏み入れた。
周りを見渡せばどうやら1番最後となってしまったようで。
「 失礼します…遅くなってすみません。 」
顔はいつもと変わらず無表情の彼女だが遅れてしまったことに申し訳なさを感じたようで少し深めに頭を下げながらそう言葉を吐いた。
取り敢えず混乱する頭を抑える。
ぶんぶんと首を横に振られたことからきっとダメだったのだろう。
ゲームソフトを梱包しながら冷静になろうとしてもダメだったキャシーが帰ったらclauseにしよう。
そして店主が戻ってくる前にopenにして仕事してましたが?と言えばバレない。はず。
「驚かせましたか、すみません…この店は人員不足が深刻でして思わず」
とりあえずごめんよ、みたいな感じで商品を手渡した。
相変わらずの無表情だが申し訳なく思っているのは本当なのでぺこりと頭を下げながら。
店主が出した値段通りの金銭を計算することすら危うい私はこの時点で己の危機を感じている。
未だに口をパクパクさせているキャシーを見て、首を傾げて思わず問いかけた。
「息できてます?」
その状況を作り出した本人に心配されるとは如何なることだろうか。
キャシーの前で手を振りながら大丈夫かな、となっていた。
店主が出した値段を見るなり、食い気味で『か、買う…ッ…』とカウンターに勢いよく手をついた。
ほぼそれと同時になりだした音、それはベルの音。わたしの嫌いな音。
このベルが鳴ったら、少なくとも自室からは出なければならないからだ。
その音が自分を呼び出すものでないとわかると、安堵のため息と共に店主を見送った。
『………良かったら、働きませんか』
ふいにかけられた言葉。
ほんの一瞬遅れて意味を理解すると、これでもかという勢いで首を横に振る。
『私には無理!』と言いたいのだろうが、口をパクパクとさせているあたり声も出ないらしい。
[ 3階廊下→エレベーター ‐ 丑円遊 ]
___フッ、愚かなユノめ…思い通りにならなくて悔しいかっ…!!
なんていう本音は微塵も出さずに笑顔で『では、参りましょうか』とアリスに手を差し出す。
きっとこの本音はユノにしか伝わっていないだろう。そう、思考回路が似ている彼にしか。
___フッ、愚かなユノめ…思い通りにならなくて悔しいかっ…!!
なんていう本音は微塵も出さずに笑顔で『では、参りましょうか』とアリスに手を差し出す。
きっとこの本音はユノにしか伝わっていないだろう。そう、思考回路が似ている彼にしか。
店主が出した値段を見るなり、食い気味で『か、買う…ッ…』とカウンターに勢いよく手をついた。
ほぼそれと同時になりだした音、それはベルの音。わたしの嫌いな音。
このベルが鳴ったら、少なくとも自室からは出なければならないからだ。
その音が自分を呼び出すものでないとわかると、安堵のため息と共に店主を見送った。
『………良かったら、働きませんか』
ふいにかけられた言葉。
ほんの一瞬遅れて意味を理解すると、これでもかという勢いで首を横に振る。
『私には無理!』と言いたいのだろうが、口をパクパクとさせているあたり声も出ないらしい。
眠りについた直後、ポケットに入れっぱなしにしていた対局時計のベルが鳴り響く。
驚いて飛び起きると、ベッドの端から勢いよく細い体が転げ落ちた。
「いっ………てえ………!!」
その勢いでサイドテーブルの足に腕をぶつけ、床に頭をぶつけてしまったようだ。
じんじんと痛む頭をぶつけてない方の手でさすると、怠そうに対局時計を取り出した。
…依頼の招集のベルだ。軽く身支度を整えながら、部屋を出た。
エレベーターに乗り、ふらついた足取りで招集のかかった部屋に入る。
「………………………こんばんは…」
いつものへらへらとした笑みを作ろうとしたのか口元が笑うが、
暗い声も相まってかなり不気味な笑みとなってしまっていた。
【 スペード13号室 - クイーン 】
ブーツの底がぐしゃりと一枚の紙を踏みつけた。
邪魔そうに払えば、被害は拡大するばかりで。
しばらくすると彼女の周囲の床だけは綺麗になった。
無残な形になった紙や靴跡のついた本が、端に追いやられているのを見なければ。
「どうでもいいけど、人を呼ぶなら片づけな」
足の踏み場を無理矢理にでも作ると次は座れる場所がないかと目視で探す。
彼女をここに呼び出した部屋の主がそのような気遣いをしているとも思えないが、
最悪、山積みになった大型本の上にでも乗っかろうかと考えて、ふとその動きが止まった。
足元から這い出てきた無数の影が彼女に纏わりつき、一人用のソファのような形状に変化したからだ。
流石に部下の前で無様な姿を見せるのは良くない、とでも言いたいのか。
女王はつまらなそうに鼻を鳴らした。
「え」
ベルの音に対してではない。
普段の収集とは違う音だが自分が呼ばれてないため気にしてなかった。
問題はそのあとの店主の言葉である。
「まってくださ―――――」
あとで呪おう。
カウンターから抜けて去っていった店主の後ろ姿を目に焼き付けながら誓う。
数秒固まっていた彼女が再起動し、まずキャシーの方向に目線を向けた。
「………良かったら、働きませんか」
ほんまに助けてくれ…という色が彼女の双眸に宿っていた。
ここで彼女の苦手分野を振り返ってみよう…頭脳系である。
お金の計算?当然できません。
怒られて解雇されたら収入がなくなる、致命的な問題だ。
裏の接客ならなんとかできる、表の商品も値段も覚えていない。
勝手に値引きを口にしたのを根に持っているのか大人げない店主だ全く…呪う。
この時点で彼女はキャシーのことをお客様から同じ黒のポーンとして見ていた。
いやだって私に店を任せたら一日で大赤字だと思うんです。
必死に「店主が給金出すと思うから」「いっぱい商品あるしバイト値引きとか」とか言いつつ。
本能が警報を鳴らしている、この店を私に任せたらやばいと。
[ クラブ1号室→スペード13号室 - クルト ]
紅茶を飲んでいた手を止めてソーサーに置く。
対局時計が閑散とした自室に鳴り響いたのを聞いて古びたロッキングチェアから立ち上がった。
我らがキングの部屋に行くべく身嗜みを整えてすぐに部屋から出た。
「こんばんは、失礼します。お呼びのようで?」
軽く2人と1人に会釈して中に入る。
既に先を越されていたようだったが特に気にせずいつも通りの微笑みで挨拶した。
【 スペード13号室 - クイーン 】
ブーツの底がぐしゃりと一枚の紙を踏みつけた。
邪魔そうに払えば、被害は拡大するばかりで。
しばらくすると彼女の周囲の床だけは綺麗になった。
無残な形になった紙や靴跡のついた本が、端に追いやられているのを見なければ。
「どうでもいいけど、人を呼ぶなら片づけな」
足の踏み場を無理矢理にでも作ると次は座れる場所がないかと目視で探す。
彼女をここに呼び出した部屋の主がそのような気遣いをしているとも思えないが、
最悪、山積みになった大型本の上にでも乗っかろうかと考えて、ふとその動きが止まった。
足元から這い出てきた無数の影が彼女に纏わりつき、一人用のソファのような形状に変化したからだ。
流石に部下の前で無様な姿を見せるのは良くない、とでも言いたいのか。
―ジリリ、と振動。
引っ張り出してみると、対局時計のベルの音。
音によって詳細は変わるが、今回の場合は…
「エマさーん、バイト!僕呼ばれたんで、後任せますね~。どうぞよろしく!」
そちらはごゆっくり、とキャシーに接客用スマイル。
サービス価格も設定したし、後のことは任せて構わないだろう。というか、任せる。
店長業務と天秤にかければ至極当然だが、半分ぐらい意趣返しである。
このバイトに、接客の手伝いを任せた意味で採用した覚えはない。意味は分かるな?ざまあみろ。
カウンターを抜けて、キングの私室を目指した。
《 輸入品店 → スペード13号室 -Harvest 》
「呼ばれて飛び出て、どうもこんばんはッス。お二人共」
途中私室に戻って準備を済ませた後、軽い足取りで入室する。
といっても些細なものなので、表向き特に変化はないのだが。
― 三秒 一秒 三秒
白のナイト、黒のビショップ。そして白のポーンである二人、弥子とクルトの懐中対局時計。
それが各々、ジリリと耳障りな音を立てて鳴り出した。依頼の招集が掛かった合図だった。
普段、依頼の招集に鳴るのは二秒が三回続くベル。だが、今日は違う音。
この音は、スペードの13号室… つまりキングの私室に来いと言う意味だ。
普段はカードキーを通さなければ六階へ降る事は出来ないが, このベルが鳴った時は別。
オートロックで開いている為エレベーターで真っ直ぐ彼の部屋に向かうことが出来るだろう。
【 スペード13号室 - キング 】
「 さて、一番乗りは誰になるかな。……ねェ?ミミズ 」
ふわりと、何時か読んだ絵本の芋虫の様に彼は楽しげに透き通った白い紫煙を吐き出した。
煙草の色濃い部屋は、他人を招く事を一切考えていないような彼の私室は、
凡ゆる紙束と書物、得体の知れないホルマリン漬けの標本etcと足の踏み場が無さそうだが。
― 三秒 一秒 三秒
白のナイト、黒のビショップ。そして白のポーンである二人、弥子とクルトの懐中対局時計。
それが各々、ジリリと耳障りな音を立てて鳴り出した。依頼の招集が掛かった合図だった。
普段、依頼の招集に鳴るのは二秒が三回続くベル。だが、今日は違う音。
この音は、スペードの13号室… つまりキングの私室に来いと言う意味だ。
普段はカードキーを通さなければ六階へ降る事は出来ないが, このベルが鳴った時は別。
オートロックで開いている為エレベーターで真っ直ぐ彼の部屋に向かうことが出来るだろう。
【 スペード13号室 - キング 】
「 さて、一番乗りは誰になるかな。……ねェ?ミミズ 」
ふわりと、何時か読んだ絵本の芋虫の様に彼は楽しげに透き通った白い紫煙を吐き出した。
煙草の色濃い部屋は、他人を招く事を一切考えていないような彼の私室は、
凡ゆる紙束と書物、得体の知れないホルマリン漬けの標本etcと足の踏み場が無さそうだが。