藤島奈緒子は閑静な住宅街の2階建てアパートに住んでいた。今日は、秋雨前線と台風の影響で、朝から一日雨降りである。午前中は、昨日受けた就職採用面接の嫌な記憶に苛まれ続け、何をしても、繰り返し憶い出してしまう自分に辟易していた。
階段を上がって最初の部屋だ。東南に窓がある角部屋だから朝日も入る気持ちのい...
何気ない言葉の入力から…話が始まる。身の周りの話、過去の話、エッセイ、小説…感じたままに書いてみたいと思う^^
藤島奈緒子は閑静な住宅街の2階建てアパートに住んでいた。今日は、秋雨前線と台風の影響で、朝から一日雨降りである。午前中は、昨日受けた就職採用面接の嫌な記憶に苛まれ続け、何をしても、繰り返し憶い出してしまう自分に辟易していた。
階段を上がって最初の部屋だ。東南に窓がある角部屋だから朝日も入る気持ちのい...
独身サラリーマンの恒夫は27才。田舎の実家から通勤しているが、今日は東京の大学時代の同級生、元婚約者の美香が来ていた。行方不明の彼女から突然の電話があったのが昨日。休日だし、話がしたいから、恒夫の地元でデートしよう…と。
昼下がり。恒夫が、通勤用の小型車で駅に出向くと、美香は、以前と変...
『ママ…ママ…』両側に森林がどこまでも続く一本道を7才の少女が歩いていた。道は緩やかな起伏を繰り返し、前も後ろも先の方でカーブしてて、その先は見えない。両側の木々の上には山も高圧鉄塔も見えず、道路には電柱はおろか標識も白線もない。ただ舗装された黒い道が、延々と続いていた。...
理江は大学3年。演劇部の1年後輩『耕太』とは、もう2年の付き合いである。アイドル事務所でもあるまいに、部内の恋愛は禁止という規則だった為、2人の交際は秘密であった。
理江は長女だった。親には妹弟の世話を押し付けられ、何となく親を冷たく感じて育っていた。3年前に家を離れる時は心底喜んだものだ。比べる妹...
8月初旬の事である。信明は施餓鬼法要の為、妻子を置いて実家に来ていた。実家は古くて大きな木造家屋。母は他界し、家には父が一人で暮らしていた。だいぶ足腰が弱ってた父は、信明が帰ると、痛んできた家の修繕を頼むようになっていた。
『最近、離れの物置小屋が酷くてな。屋根の穴だけでも頼む』信明の父親は、定年ま...