自作小説倶楽部4月投稿
- カテゴリ: 自作小説
- 2025/04/30 23:32:07
『彼の微笑み』
「ツネ婆さんが亡くなったなら。明日帰るよ」「どこに?」彼の言葉に間抜けにも私はそう応じてしまった。「故郷に帰る」に決まっている。しかしツネ婆さんが住んでいた田舎が私の故郷かというと、そうではない。「婆さん」と呼んでいるが彼女は私の大伯母あたりの親戚らしい。私とツネ婆さんの正確な関係は...
『彼の微笑み』
「ツネ婆さんが亡くなったなら。明日帰るよ」「どこに?」彼の言葉に間抜けにも私はそう応じてしまった。「故郷に帰る」に決まっている。しかしツネ婆さんが住んでいた田舎が私の故郷かというと、そうではない。「婆さん」と呼んでいるが彼女は私の大伯母あたりの親戚らしい。私とツネ婆さんの正確な関係は...
『理想的な依頼人』
夫人は優雅な仕草で紅茶を入れ、俺の前にカップとソーサーを置いた。「ハンネならもっと美味しい紅茶が入れられるのだけど、今は私ので我慢してくださいね」インスタントコーヒー派で紅茶の味なんてわかりません。と言おうかと思ってやめる、誠実な営業活動にふざけた態度は不要だ。代わりに突然の訪問...