Nicotto Town



12月自作 『鐘・刀』「見者アドウィナ」前編

 こんこんと白い雪が降る中、大広場に弔いの鐘が鳴り響く。  正面にそびえる王宮から聞こえるそれは、悲痛な悲鳴のようだ。  嗚咽のごとき、重く低い音色。聞けば聞くほど憂鬱になる――   西の大国エティア。 王都エルジにて王が急逝したのは、王都で雪まつりが開かれた直後のことであった。...

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11月自作 (冬支度) お米のお札2/2

  その晩も女の良人は床から出られず、苦しそうにうんうん唸っていた。  何日も寝たきりのせいで、手足の節々が痛むという。  かわいそうにと女は、娘と一緒に良人の体をさすってやった。  そうして翌日、日が傾くのをじりじりそわそわ待って、市場へ出かけた。  五色の吹き流しが下がるお店に...

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11月自作/ (冬支度)お米のお札1/2

 火鉢を出したのだけれど、炭がなかった。  ほんわりと柔らかな熱を手のひらに当てるのは心地のよいもの。雪が降ってからなぞと悠長なことを思わずに、毎年蔵から引っ張り出している。  母さんごめんなさいと、娘が厨房で、両手にはあはあと息を吹きかけながら茶碗を洗っていた。吐く息が真っ白だ。 「買いに行...

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