6月自作 アジサイ「嫉妬」
- カテゴリ: 自作小説
- 2020/06/30 23:56:56
庭にしとしと、雨が降っておりますんで、本日、舞のお稽古は延期です。 うちがそう申し上げますと、姫さまは、ぶっくりふくれっ面にならはりました。 姫さまは来週、弘徽殿の御方にお呼ばれしておりまして、そこで舞を披露したいと、ありていにいえば、弘徽殿の御方に見せつけたいと、思し召してはったから...
庭にしとしと、雨が降っておりますんで、本日、舞のお稽古は延期です。 うちがそう申し上げますと、姫さまは、ぶっくりふくれっ面にならはりました。 姫さまは来週、弘徽殿の御方にお呼ばれしておりまして、そこで舞を披露したいと、ありていにいえば、弘徽殿の御方に見せつけたいと、思し召してはったから...
それからぶつぶつと文句を垂れ流しつつ、うちは仕方なく、姫さまの御家が抱えてはる絵師の中で、一番の腕を持ってはる御方に白羽の矢を立てました。 それは賀茂という名の方で、姫さまの父君のためにしばしば、いとうるわしい天体の図などを、色鮮やかに描いてはるのです。 事情を話しますと、賀茂さまはニ...
一つ下の条《じょう》にお住いの若君が、ねこま憑きにならはった。 という噂が舎人《とねり》から舞い込んだもので、うちの姫さまは本日、ころころ笑い転げはっております。 畳台に扇をバシバシ、何ともはしたないご様子にて、乳母《めのと》さまも、女中のうちも、呆れ顔。せやけどまあ、いたしかたござい...