青い薔薇の魔法(4)
- カテゴリ: 自作小説
- 2019/05/25 01:45:19
師に事情を話してから一週間後、エルクは師から眼鏡をもらった。 鍛冶工房にいる黒き衣のゼクシスに、特注で作ってもらったものだ。 近視になったからだとラデルには説明したけれど、ギヤマンのレンズには特殊な膜が貼られている。 (幽霊だけ見えなくなるなんて、すごい!) 眼鏡をはずすと、回...
師に事情を話してから一週間後、エルクは師から眼鏡をもらった。 鍛冶工房にいる黒き衣のゼクシスに、特注で作ってもらったものだ。 近視になったからだとラデルには説明したけれど、ギヤマンのレンズには特殊な膜が貼られている。 (幽霊だけ見えなくなるなんて、すごい!) 眼鏡をはずすと、回...
(はじめはぼんやり、影のようなものが見えるだけだった)(でも何日かしたらくっきりはっきりしてきて)(あっちにもこっちにも、うじゃうじゃいる……)(ほら、こっちをにらんでる) エルクが必死に頼んだので、師は口を閉じてくれた。 ラデルに講義で使う巻物を探すよう命じた師は、...
朝餉を食べ終えたあと、ラデルはエルクを図書室にいざなった。 二階にある図書室は、岩穴がいくつもつながっている構造で、とても広い。 壁は一面、岩をくりぬいた本棚だ。木製の書棚も、森のようにうっそうと、何列もそびえている。 書物が痛むのを防ぐため、窓はひとつも作られていないが、室内はとて...
きらめく湖水が足もとに寄せてくる。 まっ正面から吹いてくるのは、くるくる踊る、生暖かい風。 「上も青。下も青」 目をこらして、岸辺に立つ子はそうつぶやいた。 踊る風の向こうにある、晴れわたった空と、目の前に広がる湖の境目を、じっと見つめながら。 それから、自分が羽...