薔薇園へようこそ 「ティリンの竪琴」1
- カテゴリ: 自作小説
- 2017/12/16 01:42:19
#薔薇園へようこそ https://shindanmaker.com/763378 さらわれてきたのは薔薇園だった。
誰かの白い手が唇にそっとふれたとたん、ティリンは新雪の色の薔薇に変わってしまった。快活なつぼみ、そのいくえもの花弁の奥にひそむ誠実さ、そして悲観主義。よい夢を、と誰かが微笑した。 ...
#薔薇園へようこそ https://shindanmaker.com/763378 さらわれてきたのは薔薇園だった。
誰かの白い手が唇にそっとふれたとたん、ティリンは新雪の色の薔薇に変わってしまった。快活なつぼみ、そのいくえもの花弁の奥にひそむ誠実さ、そして悲観主義。よい夢を、と誰かが微笑した。 ...
はじまりは、凶夢だった。 湖と、舞いおりてくる死神。周囲に広がる真っ赤な血。 ほぼ死を予見させる恐ろしいものだった。 しかし。夢見の的中率は低い。最長老に馬鹿にされるほど、「見えない部分」がある。
『チル。未来は決まっている。決して変えられない』
すべてを見通す人はそう鼻で笑う。今回のこともきっ...
「さて、水量の調節弁はどこでしょうかね」「カディヤ! 状況はわかったっ。とりあえずいったんこちらに――」「ああ、水を吸い上げてる管を切っちゃいましょうか。それが一番簡単ですよね!」
弟子の雰囲気が異様だ。なにやらひどく楽しげに見える。 弟子は抱えている刀をふりかぶりながら、ぎゅんと降りてきた。 巨...
「カディヤ! 待ちなさい!」
岩戸をすりぬけたソムニウスの脇を、小精霊の光り玉がぎゅんと飛ぶ。 瞬間、あたりの様相がぼうっと浮かび上がった。 そこはとてつもなく大きな空洞だった。 垂れ下がる鍾乳石のカーテンは極光を固めたよう。地から突き立つ鍾乳石は円錐形で、ところどころで天から垂れるものと繋がって...