銀の狐 金の蛇21 精霊刀(前編)
- カテゴリ: 自作小説
- 2017/08/23 07:17:49
「獅子犬! 散れ!」
ソムニウスはとっさに小精霊を魚の前に呼び、ぱっと千々に散らした。 破裂玉のごとく粉みじんになった光に驚いて、魚がのけぞりどぶんと水中に沈む。 これでいっときしのげるだろう。 しかしこのほぼ水に埋まった空間が、少し前まで枯れ地だったとは驚きだ。
「私、韻律の音波を使って水道だっ...
「獅子犬! 散れ!」
ソムニウスはとっさに小精霊を魚の前に呼び、ぱっと千々に散らした。 破裂玉のごとく粉みじんになった光に驚いて、魚がのけぞりどぶんと水中に沈む。 これでいっときしのげるだろう。 しかしこのほぼ水に埋まった空間が、少し前まで枯れ地だったとは驚きだ。
「私、韻律の音波を使って水道だっ...
Nous n'irons plus au boisⅠ(もう森へはいかない①)*********************「ほんと、うちのご主人さまは超奥手よねー」 窓辺で寝そべる長毛の猫がぼやきます。その首には、蒼い石が嵌っている首輪。「今日も贈り物をこっそり召使いにことづてただけで、恋文はなし。あれ...
地表の木造の家も、そこにほどこされた彫刻もそれなりに立派なものだ。 しかし高性能な一角獣や美しく光る碑文の技術には及ばない。
(あれはエティアやスメルニアの文化が入り混じったもの。いや、退化したものの寄せ集めだ。この古い文化が失われてしまったのは惜しい)
ソムニウスが差し出す匂い袋をくんくん嗅い...
『会いたかった。ずっと会いたかった。そなたが来るのを、ずっとずっと待っていたんだよ。ああ、そんなにおびえないで。天使に会わせてあげるから』 見目良いその人はそう言った。ほんとに会わせてくれるのかとおずおず聞き返したら、晴れやかな微笑みを向けてくる。 そうして、抱っこされた。まるでお姫様のように。
...
桜の花びらかと思ったら違った。 白いふわふわした綿蟲が天から散り落ちている。 風に揺られて雪のように、ふうわりふうわり。 蒼い湖の上に降って、ゆっくりゆっくり沈んでいく。 (ここは舟の上?)
小さな舟。船べりにいる自分は……とても小さい。見れば白い死装束を着ている。 ...