自作4月 鍵 「桃色綿あめ」 後編
- カテゴリ: 自作小説
- 2017/04/30 20:39:27
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(ここからおばちゃん代理視点となります)
「俺もさ、よくわからないのよ」
ウサギ技師が天をつくような塔から望遠鏡を眺める。
ぎろんぎろん見渡して、それからコック姿の赤毛男――すなわち俺に先っぽを向けて。レンズ越しに見える赤い目をぱちくり...
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(ここからおばちゃん代理視点となります)
「俺もさ、よくわからないのよ」
ウサギ技師が天をつくような塔から望遠鏡を眺める。
ぎろんぎろん見渡して、それからコック姿の赤毛男――すなわち俺に先っぽを向けて。レンズ越しに見える赤い目をぱちくり...
しかしそれでも相手は全然驚かず、「こいつほんとにおいしくなさそうだよね、リンゴちゃん♪」の一点張りですよ。むかつくったらありゃしませんでした。
「あのう、あの谷は、メンジェールとはどえらく離れてますけど……エティアとスメルニアの国境に、メンジェール王国始祖たる食聖の祠...
(前編・中編は赤猫剣視点です)
「さて困りました」
そうですよねえ、と私は相槌を打ちました。
「あなたが食べた魂を引き出せと言われても」
困り顔の猫族紳士が腕組みをしてがっくり。この方は、私と共にわけのわからぬ連中に拉致されました、猫目さまです。
「私は、あなたの修理はできますが、ご主人...
岩窟の寺院に入る、ということは、俗世を捨てることを意味する。 ゆえに捧げ子は現世では死んだとみなされ、白い死装束を着て寺院に渡ってくる。 名を半分とられるのは、「生きてはいるが死者」であるため。 名が体をあらわすその通りに、捧げ子たちは半人前。蒼き衣をまとい、師の庇護と教えを受け、日々学ばねばなら...
口元になんとか笑みを作って礼を述べ、夢見の導師は急いで母子の家を出た。 念のため魔法の気配をおろし、指がなくても展開可能な階位の、物理遮断の結界を張る。 淡くまたたく青白い光の膜が、周囲に広がりチリチリかすかな音をたてる。 これでわが身はとりあえず安全だ。一回分の打撃ならこれで防げるだろうし、...