Nicotto Town



3月自作 たんぽぽ 「食聖」3/3


 夜風が中庭に吹き降りていた、あの夜。
 ゴドフリートことフーシュ殿下は、真摯な顔で憂いた。

『ジャルデ陛下に言われた。そなたは信用してよい味方、事情を話してよいと。だから腹を割って話そう。実は……我が兄、王太子フライヒの料理は、どれも塩辛い』

 作る者の性格は、如...

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3月自作 たんぽぽ 「食聖」2/3

『食聖ホーテイはなんでも食べてしまう人だったと、いわれております。
 だれもがふだん見むきもしないものでも、おいしく調理してごちそうにしてしまうのです。
 そんなホーテイのこどもたちもみな、遺言に従って、名だたる料理人になりました。
 そのなかのひとりルーテイは、南の大国バナーラ王の料理人となり、半...

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3月自作 たんぽぽ 「食聖」1/3

 わが名はフーシュ。母国の言葉で「魚」という意味だ。
 わが国では、料理の腕、調理の才能こそが何ものにもまさる価値ある技能とされており、食材の名をつける親が実に多い。とくにフライヒとフーシュ、つまり共通語でいうところの「肉」と「魚」は、一、二をあらそう人気の名だ。
 肉料理と魚料理、どちらも甲乙つけ...

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銀の狐 金の蛇 8話「啓示」(後編)


 眉根を寄せて、顔中皺だらけの最長老が聞いた。

『なぜそなたの母親は、そんなことを?』
『母さまは、夢で、いってたの。絶対ぬいだらだめよって!』
『む……』   
――『なんとまあ。あの子、あなたと同じ種類の力の持ち主ですか?』

 ハッとするテスタメノスに促されるま...

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銀の狐 金の蛇 8話「啓示」(前編)

 ソムニウスはしばらくの間、思考できなかった。
 完全に意識が飛んでいたのだろう。
 沈んでいたおのれを引きあげてくれたのは、囁くような歌声だった。  


『兄はクラミチ走る森
 両のかいなをケガミにくわれた』 


 どこかでだれかが、歌っていた。


『姉はクラミチ眠る石
 両のくるぶしケガミ...

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