Nicotto Town



自作2月 鬼  「食堂のおばちゃん」 後編

  俺が前にもまして疑問符をとばしていると。左翼の料理長がやってきて、ジャルデ陛下がお召しであると告げてきた。
 たまごのせ瓶をずいぶん堪能されたから、あたらしいレシピを考えろ、とか、そんな思し召しをいただくのかと思ったら。

「おばちゃん代理。なんかな、ついさっき、こんな報せが届いたんだが」

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自作2月 鬼  「食堂のおばちゃん」 中編

陛下のありがたい思し召しで王宮一階厨房のパン係になって、二週間すぎた。
 日がたつにつれ、俺の疑問はいやますばかりだった。なにせ食堂のおばちゃんは、たしかに食堂のおばちゃんのはずなのに、俺のことをまったくすこしも覚えていないようなのだった。

『おばちゃん?!』
『おまえは…&hell...

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自作2月 鬼  「食堂のおばちゃん」 前編

 忘れもしない。あれは五年前のこと。
 短い夏のおわりに、両親をなくした。
 父はかなりな晩婚で、俺が生まれたときには、すでに五十を越えていたらしい。心臓は丈夫だったが、脳の血管が弱っていたようだ。雪がしんしん降る夜、洗い場でたおれたままいってしまった。
 母はうさぎのように、さびしくなると死んでし...

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銀の狐 金の蛇 6話 晩餐(後編)

「いーえ、私のことはお気になさらず。まあでも、あの赤いビロードの服を着てくれば、文句なしにあなたの隣に座れたでしょうけどね!」

 投げやりな冗談を放つ弟子に、師は思わず苦笑いを漏らした。

「いやいや、あれを着るには育ちすぎだろう」 

 失礼なもてなしに憤る気持ちは出てこない。弟子が代わりに怒っ...

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銀の狐 金の蛇 6話 晩餐(前編)

 突然の捕り物のために、ソムニウスと弟子は礼拝堂の片すみに退くのを余儀なくされた。
 笑い声すさまじい老婆が地下房へ押し込まれたあと、神官たちは詳しい事情を男たちから聞きだしたのだが、みな口々に喚きたてるうえに訛りがきつい。
 そのうえ彼らは時折ちらちらと、黒い衣の導師に怯えた視線を投げてきた。

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