自作1月 鳥・卵 「王様のたまご」3/3
- カテゴリ: 自作小説
- 2017/01/31 21:35:12
『たしかに僕は他の貴族をおとしめようと悪いことをした。その報いだということは十分に分かっている。だがしかし、食べ物がまずいということは、それだけで相当こたえるものだろ?』
『それはそうですね。私も、あのハムパンはおいしくないと思いますよ』
『なあ、配られる食事に、ちょっと手を加えてもいいよなぁ?』
...
『たしかに僕は他の貴族をおとしめようと悪いことをした。その報いだということは十分に分かっている。だがしかし、食べ物がまずいということは、それだけで相当こたえるものだろ?』
『それはそうですね。私も、あのハムパンはおいしくないと思いますよ』
『なあ、配られる食事に、ちょっと手を加えてもいいよなぁ?』
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王弟殿下も青年と同じく、甘露を出す魔王の魅了の技にとらわれていた。ゆえに陪審員は完全な有罪とはしなかった。
王族の特権、継承権の剥奪。遠島への追放。
当初処刑はまぬがれぬと囁かれていただけに、判決を聞いたジャルデ国王はホッと胸をなでおろしたという。
『エティアは三権分立だからなぁ。王とて、い...
果てしなく続く大理石の床。白と黒の格子模様が、細長く南北に渡っている。
左右の壁には、細い扉がずらり。窓のないその廊下は地階なのだろう。等間隔に灯り玉が壁からせり出し輝いている。
赤毛の男がひとり、長い廊下をひたすらモップで磨きまくっている。
腰には銀の鎖。その手足には銀の枷。...
「魔法の気配は下りてないが……」
「ええ。実質的な危険はありませんが、よい雰囲気ではありませんね」
老婆は祭壇の前から少しも動かない。平伏しながら歌の文句を繰り返し唱えている。
しかしお参りに来た人々も床を掃く奉りびとも、その老婆にまったく驚く様子はない。皆そしらぬ...
せっかく登った山道をかなり下り、獣道のごとき細い迂回路を歩き。
やっと行き着いたその国は、寺院の向こう岸にある街よりはるかに狭かった。
四方八方鬱蒼とした森林のなかにある、猫の額ほどの平地。
そのわずかばかりの土地を真っ二つに割る太い大通りの両脇に、四、五階建ての木造の家々が林立している。
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