名前を消した男 19
- カテゴリ: 自作小説
- 2011/04/30 21:28:24
僕は寒さで目を覚ました
悪い夢をみてうなされていたので、寒いのに額に少し汗をかいていた
ペットボトルを見ると水で一杯になり、飲み口から透明な水が溢れ出していた
僕はすぐにそれをつかむと、口に含み上を向いて一気に喉の奥に流し込んだ
冷たい地下水が食道を伝わって、お腹のなかに流れこんでいくのが分かる
気...
僕は寒さで目を覚ました
悪い夢をみてうなされていたので、寒いのに額に少し汗をかいていた
ペットボトルを見ると水で一杯になり、飲み口から透明な水が溢れ出していた
僕はすぐにそれをつかむと、口に含み上を向いて一気に喉の奥に流し込んだ
冷たい地下水が食道を伝わって、お腹のなかに流れこんでいくのが分かる
気...
三陸鉄道北リアス線のトンネルは海岸沿いを走る列車のために掘られたものだ
線のほとんどがトンネルのため谷と駅がある場所からしか外に出ることができなかった
真木沢海岸から島越までにはもうひとつ谷があったがそれ以外は駅まですべてトンネルである
列車だと3分ほどの距離である
コンクリートに覆われたトンネル内...
僕は寒さを感じた
体はすでに寒さに反応して震えていたが、意識にはのぼってきていなかったのだ
人間の死体を見たのと津波の恐怖が僕を狂わせたのだろう
「寒い」
僕はそう呟いて泥まみれの手袋をした両手を見た
そして左手には拳銃を握っていることに気がついた
その重さが本物の拳銃だということを僕に伝えているが...
僕は気がつけば車のフロントガラスに顔を近づけ、中の人の頭の近くのガラスを必死で手袋をした平手でたたいていた
「大丈夫ですか」
何度も僕は呼びかけた
けれど車の中の二人に反応はなかった
「死んでる。もうだめだ」
僕はそうひとり呟いた
『このままほっておこう。かかわらないほうがいいかも』
そう思って立ち...