Nicotto Town


nekomeのつぶやき☆


恋は舞い降りる天使の羽のように~初夏~(14)

 春菜の姿が校舎に消えると、杏樹は再び歩き出した。
杏樹は春菜に出逢ったことで、かえって新しい一歩を踏み出す勇気をもらったような気がした。
顔を上げて、校門の鉄の扉についている天使のレリーフを見上げた。

  (さよなら!天使。ごきげんよう・・・。みんな。)

 開かれた門をくぐりぬけ、セミ時雨の中、バス停までの道のりをゆっくり歩いていった。
 
 

 その夜は、早く帰宅した両親と久しぶりに夜遅くまで話した。(その夜、兄の亨は、帰ってこなかった。)
学校のこと、鈴羽での生活。今までのこと。
智子も隆も、しばらく会わないうちに随分と成長した娘の様子に目を細めた。


 その夜、杏樹はベッドに入りながら、鈴羽村へと思いをはせた。
 

 
 さて、翌朝。    鈴羽村では・・・・。

 夕べ、美里蘭の経営する”スナックみさと”で喬介と飲んでいた龍太郎は、
店の駐車場に停めた自分の車の中で目覚めた。
 6月とはいえ、鈴羽村の朝は冷え込む。
起き上がって、何気なくフロントガラスを見るとワイパーに一枚の紙が挿んである。
窓を開けて、そっと取ってみると、
  
  (別荘にて・・・・。)

書かれていたのはこの一言だけだった。
だが龍太郎には、誰が挟んで行ったのかすぐに分かった。

  (蘭・・・・さん。)

 龍太郎は倒していた運転席のシートを起こすと、顔をパンッと1つたたいて、車のエンジンをかけた。
窓をいっぱいに開け、駐車場から出ると、明るい朝日がフロントガラスにまぶしくかがやいた。

 
 家に戻ると、早起きの源さんは外の流しで顔を洗っているところだった。

  「おう!夕べは楽しかったか?久しぶりの飲み会だったずら?」

  「飲みすぎてしまって・・・。車で寝てきたんです。」

  「そうか・・・。ん?今日・・ずら?美術展に行くのは?」

  「はい・・・・・。」

  「そうか。おい、それはそうと、朝飯の支度をしてくれるか?」 
 
 龍太郎は、慌てて家に入るとすぐに台所にたった。
味噌汁用の大根を切りながら、龍太郎はさっきのメモを思い出していた。

 美里蘭の別荘は、鈴羽村から離れた隣町の別荘地の中にある。
この別荘の存在を知っている者はほとんど居ない。
だから、二人はそこで何回か逢瀬を重ねていたのだ。

 
  <そう、杏樹が来るまでは・・・・・。>

 杏樹のことを考えたら、胸の奥のほうで何かがチクッとするのを感じた。

  (・・・・・・。俺は・・・。)

 味噌汁と漬物で簡単に朝食すませると、龍太郎はアトリエも兼ねている自分の部屋に行った。
部屋の中で、出展する作品の荷造りを始めた。
 
 この展覧会は、龍太郎の卒業した大学の教授、鳥越の私設美術館で開かれる。
源さんのことを知っている鳥越は、卒業生だった龍太郎にも声をかけたのだ。
源さんの勧めもあり今回出展することを決めたのだった。
だが、専門の運送業者に頼むとかなりの出費である。それゆえ、龍太郎は自分で運ぶことにしたのだ。
荷造りが終わると、普段はめったに乗らない自分の4WDに、作品をそっと運び込んだ。
その日の夕方、準備を終えた龍太郎は源さんにあいさつをした。

  「そろそろ行きます。」

  「うん。気をつけてな。鳥越さんによろしく言っといてくれや。」

  「はい、いってきます。」

 源さんに頭を下げると、心の奥が痛んだ。
本当は明日出発すればいいのだが、蘭の別荘に今夜行くために早く出てゆくのだ。
なんだか今回は後ろめたい気持ちがする。
別荘へと向かう道を走りながら、龍太郎の心は揺れた。

  (いいのか、このままで・・・・。)


 隣町に入り、国道をはずれ別荘地の中の道を走ってゆくと、奥まったところにある蘭の別荘が見えてきた。
玄関の明かりと、部屋の明かりが周りの木立の中にぽっかりと浮かんでいる。
こじんまりとした別荘の裏手に龍太郎は4WDを停めた。
玄関の呼び鈴を鳴らすと、鍵が開けられた。

  「いらっしゃい!待ってたわ。」

 蘭は、龍太郎を招き入れると扉を閉めた。

  「明日は早いの?」

  「あぁ。道が込まないうちに、インターまで行かないと・・・。」

  「じゃぁ、すぐに夕食ね。準備は出来ているわ。」

 萌黄色のサマーセーターとジーンズ姿の蘭は、店に居るときとは違いごく薄い化粧をしているだけだった。
蘭は、エプロンを取ってキッチンにたった。
鍋からは美味しそうな匂いが漂っている。
 
 以前、東京でシェフをしていただけあって彼女の腕前は確かだ。
東京の店に勤めていたとき、そこのオーナーと結婚した。
しかし、いろいろあって離婚し、7年前に鈴羽村へ戻ってきたのだった。
村の顔役だった父親に、今の店をだしてもらい今に至っている。
龍太郎と知り合ったのは、4年前源さんが龍太郎を店につれてきたときだった。
そうして3年前から、二人の関係は続いていた。

  「いい匂いだ・・・。」

 キッチンに立つ蘭に龍太郎はそう声をかけ、後ろからそっと手を回して優しく抱きしめた。

     ~つづく~

#日記広場:自作小説

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2010/01/22 03:13
あぁなんか20代前半なような気がしてましたw
そうですよね~29で彼女いなかったら・・・ムフフ

最近生徒と接していて思うのですが、高校生までのほうが大人よりも成熟している面があるというか
なんなんですかね、生徒を見ているとものすごく癒されます。
何が言いたいのかというと、歳の差カップル最高!ってことですw
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2010/01/20 20:12
ぬぁあああああΣ(0口0;)
こんな展開アリですかぁいっっ!!!???
龍太郎ッッ!!!杏樹ちゃんは良いのかぁあああよぉおおお(◎д◎;)ξ

 あはぁ〆(・ω・c)続き 楽しみにしてますよぉ~
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2010/01/20 14:13
〆(・ω・。)作者のつぶやき・・・。

 最初は迷ったんですが、29歳にもなって彼女もいないなんてのはおかしい(?)と思いまして・・・。
この出来事は今後の展開にも、関係ありますし・・・|ω・`)コッソリ・・・。
  今後を、乞う!ご期待!
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2010/01/19 01:51
えぇ~~(>_<)

龍太郎もそんな人なの・・・?

つ、続きが気になります^_^;

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2010/01/16 23:14
(゚ ▽゚ ;)エッ!! 急になんだか大人の世界で~~~びっくり~~
どうなるんだ~~~!
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2010/01/16 00:49
なんですとーー!!!蘭さんと!!!
あ~どうするんだ龍太郎><続きが気になる~☆
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2010/01/15 15:23
ええええええええええええええええええええええええええええ(,, ゚Д゚)<そんなぁ!龍ちゃぁぁぁぁん!!!!
杏樹が天使さんにサヨナラしとる時に何しとんぢゃい!!!w

さて、どうなりますやら♡



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