Nicotto Town









『この黄色いのは?』

『総武線、地下鉄じゃないけど、これに乗ると海へ行けるんだ!』

『わぁー 太平洋ね!』

カラフルな地下鉄の案内図を見ながら君は興奮していた。

『地下鉄の地図ってとてもきれい!

たくさんの色を使って次々に乗りかえていくうちに

迷子になってしまいそう!』


虹からはぐれた色の帯

整頓された机の上が

アスファルトの街だとしたら

地下鉄は長い引き出しのようなもの

乱暴な手つきでしまわれると

中のものはゴチャゴチャになってしまう


つないだ手がなだれ込んで来た人たちで引き裂かれた

『あっ! 押さないで!』


みんな景色も無いのに暗い窓の外を見ているのはなぜ?

目を背け合ったまま虚ろな表情をしているのはなぜ?

小刻みに震える手で何かを耐えているのはなぜ?


あれほど楽しみにしていたのに

現実の地下鉄は色も無く

君は泣きべそだった

どこまでも続く空洞の中をめぐるのは

数え切れない足音の群れと

手から垂れ下がったカバンの波


無表情の人々は

危険で美しい虹に閉じ込められているのも知らず

運ばれていく









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