街は僕を包んで喚く(わめく)
- カテゴリ:日記
- 2025/07/09 21:48:33
今、再び目にする高く険しい山々
荒涼とし、変わり果てた人の気配のない風景
それまでの眺めが地上の静けさと結ばれる
僕らは彷徨っていたのか
山や谷を見下ろしながら
弧空を漂い行く雲のように
いきなり僕の目に飛び込んできたのは
群れをなし金色に咲き乱れる水仙たち
湖のほとり、木々の下
そよ風にゆられ軽やかにそよぐその姿
天の川のきらめく星屑のように
一瞥、幾千を超える群れが
僕を手招く
波もまた傍らで歌っている
花たちは清らかな波より陽気だ
うつろな物思いにふけっていた僕は
閃く水仙たちの歓びの歌に包まれて
実の熟するには早い季節に
ひそかに咲き乱れる花の息吹を
都会のざわめきのさなかにいても
物憂い心に幾たびも沸いたあのやさしい感覚
ささやかな名もない、憶えてもいない親切な愛の行為
さらに純粋な精神にまで流れ込んで
血管を収縮させ 心臓を高鳴らせ
僕を立ち直らせてくれる感動的な人の行為
この不可解な世界の重さを一瞬忘れさせてくれる人の行為
おとなしくしていてくれ
僕の苦悩よ
灰色の大気は街を包んで
青白い一つの星が瞬く
古い衣装を纏う過ぎ去った歳月
未練、悔恨そういう無表情の感情が
快楽をあさるように手招きしている
瀕死の太陽は夕べに閉ざされ
心も呪縛されたように繋がれていく
街は僕の周りで喚いていた