鏡
- カテゴリ:小説/詩
- 2025/07/08 21:37:39
自分自身にさえ打ち明けられないことを
誰にうちあけようとしているのか
自分自身を割ることのできぬ鏡は
誰かに壊されることを夢見る
しかし誰も鏡を割りに来てくれない
映った自分の姿を見ては去っていく
鏡に過去はない
いつも今だけを映している
だが誰も見ていない時の鏡に
何が映っているかを見た者はいない
鏡に恋人を与えよう
お互いに見詰め合うがいい
相手を自分の中に容れて
空洞の反復が永遠のかなたへ続いていく
その中に何かを置き忘れたくなるので
子どもが産まれてくる
鏡が割れると破片の数だけ空ができる
つながっていない別々の空には
同じ数の太陽や月さえも
太陽神アポロンと
月の女神アルテミスが
いま美しい弓を引き絞って
巨大な鏡の前に立っている