行き止まり
- カテゴリ:小説/詩
- 2025/07/06 22:56:58
人は永遠の友情とか、永遠の愛とか言うが
辿りつけない永遠より
触れる柔らかい行き止まりがいい
永遠を夢見るのと現実を受け入れるのは矛盾しない
人は理想を追い求めるだけではない
赤ちゃんは羊水の海で
母親の胎内の壁を蹴って安心する
だれも赤ちゃんの頃を覚えてはいないが
壁を感じることで心音が安定するという
人はこの世に生まれた瞬間
「永遠」と言う罠にとり囲まれる
まるで麻薬のように
何かに手招きされているかのように
永遠を見るために
さあ目を開けなさい 愛しい人よ!
闇に慣れた目が眩しそうにうすく開かれると
おぼろげな柵は取り払われた
以来、時の外に暮らす昔話や
夢の奥に消えていく小道や
水溜りに映る空の青さが
永遠と果てしなき夢を人々に注ぎこみ続けた
しかし、永遠が相対化された今
ボロボロになった永遠をしまうのだ
なつかしい胎内の闇から太古の海へ
浮遊していく自分を感じる
世界がどんなに揺れても手を伸ばせば
やわらかい行き止まりが守ってくれる