Nicotto Town



10月自作 (月見)「玻璃の珠」後編

 

 がら開きのトラックの窓から、びゅうびゅう風が吹き込んでくる。

 青空の下に、真っ赤な砂漠が広がっている。

 道なき道を、トラックは走る。ひたすらに。地平線の向こうを目指して。

 つらなる砂丘。孤空を飛ぶ鳥。はるか遠くに、ラクダの列。

 えっ? 隊商? これは……夢?

 あ……違う。私、夢を叶えたんだ。

 一所懸命働いて、お金を貯めて。トルコから始まるトラックツアーに参加したんだっけ。

 すごいな、この砂漠。はてしない。どこまでもどこまでも続いてる。

終わりがない。このままずうっと、この景色だといいな。

だって風が気持ちいいんだもの。熱くて乾いてて顔を焼いてくるのに、全然汗が出ない。

窓から身を乗り出す。髪が後ろになびく。

 ああこの旅、ずっとずっと続くといいな……。

 

*** *** *** *** *** 

 

すばらしい色合いの珠ができましたね。

 赤の砂漠に蒼の空。渦巻く風の中で輝く魂の、なんと美しいこと。

 ええ、作るのは簡単なのです。

思いっ切り、この白銀の管を吹く。

ほんとうにただそれだけで。

種も仕掛けもございませんよ。

一たす一は二であるように、夜が明ければ朝が来るように、

これは当然の結果なのです。

殻は儚く、触れると割れてしまいそうですが、なかなかどうして頑丈なのです。 

中にいる者が出たいと思わない限り、珠の中に広がる夢幻は消えないでしょう。

これでおしまいにしたいと思わない限り。

 

清らかで哀しい魂には、似合いの器だと思いませんか?

そうですよね。今にも消えてしまいそうな、守ってあげたくなるような魂にはうってつけのゆりかごです。大事に抱いてお帰りなさい。

古い器は、どうすればいいかって?

それはあなたにお任せしますよ。

とっておいてもよいし、溶かしてもよいし、なんなりと。

私だったら残しておきたくはありませんね。手首に傷跡がたくさんついた体なんて。

動く手足が必要なら、新しいのを作ります。

ええ、それは吹くだけの珠とは違ってかなり難しいですが。

あなたならきっと作れるようになるでしょう。

お友達を心から心配し、深く愛しているあなたなら。きっと。

がんばってくださいね。大いに期待していますよ。

百年ぶりの弟子たるあなたに、玻璃の光の加護がありますように。

アバター
2020/11/01 18:47
走馬灯の結末……
アバター
2020/11/01 06:40
これは、ガラスの何が出来たのですかね?

コップかな?




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