豪華な家
- カテゴリ:自作小説
- 2018/09/07 11:11:26
大金持ちで、用心深い男がいた。
彼は政財界で謎の人物であった。
彼と直接あった人物は殆どいない。
彼は常に人と会う事を警戒していた。
家の戸締りを厳重にするため
セキュリティシステムを導入していた。
中に入るときにも
外に出るときにも
彼自身であることを確認するため
声と指紋を登録し、合言葉まで決めていた。
家の壁や窓はどんな強力な爆弾でもびくともしないよう
頑丈に作られており
内部の音声が外へもれないよう防音も完璧にしておいた。
ある日のこと、彼は家へ帰り風呂に入った後
夕食をとり、酒を飲んでいた。
暫くすると、床に水が流れてきたことに気がついた。
浴室の水道が出しっぱなしだったのだ。
あわてて水道を止めようと浴室へ向かったのだが
もう、大量の水があふれて浴室に近づくことが出来なかった。
彼は大声を出し、助けを呼ぼうとしたのだが
防音されているため、外の者達は気がつかなかった。
ドアを開け外へ逃げようとしたのだが
あわてているために合言葉が出てこない。
セキュリティシステムが働き、セキュリティ会社の
者達が駆けつけたのだが。
彼自身の指紋も声も持ち合わせていないので
開けることが出来ない。
非常事態なので、ドアを突き破ろうにも
とても歯が立たず。
彼らは、彼がその豪華な家の中で溺れ死ぬのを
防弾ガラス製の窓から見ているしかなかった。