Nicotto Town


タッチャン■


豪華な家


大金持ちで、用心深い男がいた。

彼は政財界で謎の人物であった。

彼と直接あった人物は殆どいない。

彼は常に人と会う事を警戒していた。

家の戸締りを厳重にするため

セキュリティシステムを導入していた。

中に入るときにも

外に出るときにも

彼自身であることを確認するため

声と指紋を登録し、合言葉まで決めていた。

家の壁や窓はどんな強力な爆弾でもびくともしないよう

頑丈に作られており

内部の音声が外へもれないよう防音も完璧にしておいた。

 

ある日のこと、彼は家へ帰り風呂に入った後

夕食をとり、酒を飲んでいた。

暫くすると、床に水が流れてきたことに気がついた。

浴室の水道が出しっぱなしだったのだ。

あわてて水道を止めようと浴室へ向かったのだが

もう、大量の水があふれて浴室に近づくことが出来なかった。

彼は大声を出し、助けを呼ぼうとしたのだが

防音されているため、外の者達は気がつかなかった。

ドアを開け外へ逃げようとしたのだが

あわてているために合言葉が出てこない。

セキュリティシステムが働き、セキュリティ会社の

者達が駆けつけたのだが。

彼自身の指紋も声も持ち合わせていないので

開けることが出来ない。

非常事態なので、ドアを突き破ろうにも

とても歯が立たず。

彼らは、彼がその豪華な家の中で溺れ死ぬのを

防弾ガラス製の窓から見ているしかなかった。

 

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