ゆかいなユウレイ?
- カテゴリ:自作小説
- 2018/07/01 07:56:59
自殺表現ありです。
苦手な人はそっとブラウザバックをしてください。
透けた手のひらで僕の頬を包んで彼女は笑った。
白装束で満面の笑みを浮かべた彼女は、イマイチ恐ろしくなりきれていない感じがして僕も思わず笑ってしまった。
「うん。大復活だね。」
「え、それだけ? 愛しの妹が帰ってきたんだよ? しかも、ただ遠くから帰ってきたのではなく幽霊になってまで。泣いて再会を喜ぶシーンじゃない? これ。」
彼女は何を望んでいるのだろうか。泣いて喜ぶ感動の再会シーンだろうか。
表情に、態度に、出ないだけで、心の中ではすごく嬉しいと思っているのだけど。僕はこれから君のいない人生に絶望しか感じていなかったのだから尚更だ。
「いや、とっても嬉しい。約束を守ってくれてありがとう。」
そう言って僕は彼女を抱きしめようとした。だがまあ。案の定というかなんというか、するっと通り抜けてしまって、「きゃあ!」となぜか叫ばれたけれど。
そしてなんだかおかしくなって僕たちは顔を見合わせて笑った。
そりゃもう、バカみたいに。
彼女が死んだのはいつだったか。その時僕は抜け殻のようになってしまってそのあたりの記憶は結構あやふやだったりするのだけれど。
初夏だったと思う。君が川遊びに行ったきり帰ってこなくなったのは。
「ま、私も全然覚えてないんだけどね、そのあたり。なんていうか、すごく嫌だったね。死ぬのが。まあ、ポックリいっちゃてるわけですけれども。」
ふんわりと僕の横に浮かんだ君は唇をとがらせていた。
「死にたく、なかったなあ。」
ポツリ、とこぼされた言葉に胸をかきむしるような衝動と、なぜか安堵を感じた。
「今日はどうする?」
そう僕が問えば、
「何がしたいの?」
と、彼女は言った。
「なんでもいいよ、君のしたい風にすればいい。」
僕は答えた。
「ミツが自殺してしまってからヒロの様子が変よ。」
「それは、二人とも仲が良かったからなあ。」
唇を噛んで女が言えば、男が嘆息交じりに返す。
そんな二人の視線の先には、たった一人で目に見えない誰かと喋り続ける男が一人。
どうしようもできない自分に女は歯がゆい思いをしながら喋り続ける彼に言った。
「ご飯よ、ヒロ。」
「今日はユタカさんが好きなカレーよ。」
「おお、いいね。」
「やったな。今日はカレーだってさ。君、好きだっただろう____?」
「………ミツはカレー、好きだったかしら?」
***
どうしてこうなった!
本当はもう少し楽しい話にしようと思ったのですが。愉快な幽霊妹と振り回されるお兄ちゃんの話みたいな。川に遊びに言ったきりのあたりからもうシリアスになっちまってた、私の中で。
お母さんに当たる女性やユタカさんも娘の自殺にかなり傷ついていますがそれよりも先にヒロくんがおかしくなってしまったので自分がどうにかしなくちゃと正気です。少しドライすぎたかもしれない。
拙く胸糞悪い感じですが、見てくださった方ありがとうございました。