自作2月 鬼 「食堂のおばちゃん」 後編
- カテゴリ:自作小説
- 2017/02/28 18:02:48
俺が前にもまして疑問符をとばしていると。左翼の料理長がやってきて、ジャルデ陛下がお召しであると告げてきた。
たまごのせ瓶をずいぶん堪能されたから、あたらしいレシピを考えろ、とか、そんな思し召しをいただくのかと思ったら。
「おばちゃん代理。なんかな、ついさっき、こんな報せが届いたんだが」
いつにもまして厳しい顔で、俺は陛下に密書らしき羊皮紙を見せられた。
そこにしたためられていたのは、ゆゆしき事態を告げる一報だった。
『寺院へ搬送中であった戦神の剣が、剣匠ネコメとともに拉致されたことが、判明せり。下手人は、メンジェール第三王子の一派である模様』
「なに……これ……」
俺の……剣が? 奪われた? しかもメンジェールって……なんで、ゴドフリートさんのふるさとの人に?!
「メンジェールって知ってるか? 王位継承を料理の腕で決める国」
はい。ついさっき知りました。
こくりとうなずく俺に、陛下はよしよしとうなずいた。
「なら、話は早い。この下手人だっていう第三王子の後ろには、スメルニアがついててなぁ。順当にいけば王位を継承するだろうって思われてる第一王子を負かそうとしてるんだ。って、俺んとこも同じ悪巧みしてるけどな。うちは第二王子推し。まぁ、王都にはスメルニアの密偵なんてわんさかいるから、どっかから剣を移送するって漏れたんだな。がはは!」
いや、がははじゃなくって……。エティアが肩入れしてる第二王子ってもしかして、ゴドフリートさんのことなのか? ってことは、おばちゃんが彼の師匠になってるってのは、ま、まさかの国策?!
し、しかしなんで、俺の剣がさらわれるんだ? ね、ネコメさんは無事なのか?!
「首をかしげるまでもなかろう。あの剣、人の魂をばかすか食っちまうだろ?」
「それは……思い知ってます。先の戦いでじゅうぶんに」
「あの剣な、いままでにそうとう、いろんなやつの魂を食ってきてるって話だ」
「それは、そうでしょうね……」
「しかも、かなり昔の奴の魂をためこんでるだろ」
「そう、らしいです」
「うん。それでさ、なんと食聖ホーテイの魂を食ってるって伝説がさ、まことしやかに伝わってるんだってよ。あのちっちぇー国に」
え? そ、それって。
「もし食聖の魂を剣から吐き出させて、第三王子の体に乗り移らせてだな、料理作らせたらどーなると思う? ちょっとやばくね? 王位継承を決める料理大会で、第三王子が勝っちゃうんじゃね? そうなると、ちょっと困るんだよなぁ」
お、俺の剣って、たしかに、魂の吐き出しも可能だったけど。で、でもっ。
「魂を吐き出す吐き出さないに関係なく、あいつは「すごく危険なもの」って、エティアの裁判所に認定されたじゃないですか!」
そう。あいつは、俺をかばって……
「そうなんだよ。しかもそれ、スメルニアの訴求がすごくってさ、うちの裁判所だけじゃなくって、大陸同盟にも認定されちゃってんだよ。だからとられちゃいましたーあははって、放っておけないんだよな。おまえなにやってんだよって、エティアが同盟に糾弾されちまう」
「うあああああ! なんですかそれー! い、一大事ですよね?」
「うん。ってことで、剣をとりもどすのに協力してくれないかね?」
「ええええっ?! い、いいんですかそれ、俺が助けて。俺があいつを助けていいんですか?!」
俺、いちおう罪人で執行猶予ついてるはずなんだけど。
ジャルデ陛下はきっぱりおっしゃった。
「いやむしろ、おまえじゃないと、だめじゃないかと」
「な……」
「だって主人だからな。呼べばほいほいと飛んできてくれるんじゃないかと思われるからさ、うん」
「い、いやそう簡単には」
「でもちょっと距離離れてても、会話できるだろ?」
「は、はい、たしかに……アンテナにはなれるかも」
これは、陛下の温情って考えるべきなのか?!
わからない。わからないが、剣とネコメさんを、助けにいかないと!
しかしなんてこった……
ジャルデ陛下はずいっと身を乗り出して、頭をかかえる俺に請け負ってくださった。
うむをいわさぬ笑顔で。
「心配するな。もちろん、俺様が最大限援護するよ。第二十四代主人どの」
こうして俺は、俺の剣をみずからとりもどすことになったのだが。
その大作戦?は、これから怒涛のように長い長い物語になる予感がして。しかもおばちゃんのみならず、ネコメさんの師匠であるウサギが大いに絡んできそうな気がして。
「な、なんか、救出隊とか、でかい団体ができる予感が……」
ちょっと、気が遠くなってしまうのであった。
―― 食堂のおばちゃん 了 ――
お読みくださりありがとうございます><
すめらがからんでくるとなると、それなりにまた強敵あらわるとか
珍料理でてくるとか、コンテストも波乱が起きまくるのでありましょうか…
おばちゃん代理、王様へのカウントダウン、開始?であります。
お読みくださりありがとうございます><
料理の腕で王様決めるとか、
いったいどんな国なんやメンジェール……;
でもジャルデ陛下もすめらの狐並みにちゃんとやることやってて、
脳筋だった少年時代よりかは、いくぶんましになっている模様であります・ω・>
(若かりしころ、アスパシオンの弟子にて活躍してますw)
お読みくださりありがとうございます><
料理大会までこぎつけました。さあこれから……!
チートスキルだけでなく剣の蓄積情報もバカにできませんので、
料理は何とかなると思いますが、問題はその後ですね@@;
がんばります。
お読みくださりありがとうございます><
すごく波乱万丈ですよね。でもまだ料理人w
これからあれになって最終的に王様になるとか、
まだまだ道はながいようなながくないような……
すでに別作品で言及されているアウトラインに沿いながら詳細を書いているのですが、
まだまだ波乱万丈が続きそうです@@;
お読みくださりありがとうございます><
親戚だったようです@@
ということは、英雄殺しの因子はおばちゃんからきてるのか、
それとも百人村の方の因子なのか、そこらへんが気になるところです。
お読みくださりありがとうございます><
そろそろクライマックス、いきたいところですよね。
あーなってこうなると結末だけは変更できないのでいろいろ考え中です。
ががが外伝ではございません。
同じ世界のお話なので、ぺぺちゃんたちもでてくるということなのですノωノ*
おばちゃん代理を主人公にした本編を、これをもとにして書こうと画策しています。
お読みくださりありがとうございます><
本編はあえて書かず多視点で番外編ぽいのを寄せ集めていく
オムニバス形式でやってきましたが、(そのため肝心の戦シーンとかまるっきりスルー)
今回は主人公のおばちゃん代理視点で、まるっきり本編モードです・ω・
本編をこの一人称形式で書くか三人称で書くか、現在迷っているところであります。
うーん、どちらがいいでしょうね・・;
焼きたてのパンの香りに混じって
仕掛け満載の思惑のにほいがしますねぃ^^;
思惑の渦巻く上昇気流の真っ只中におばちゃん代理。
どこまで飛ばされて行くのでしょう・・・
続きがとても楽しみです♪
折れた剣で鍋をかき回し自らの王国をつくるのか
次回を楽しみにしてます
戦場は厨房にあり!
しかしペペさんの外伝も長いお話ですね。