なごり
- カテゴリ:小説/詩
- 2017/02/18 15:00:20
あの日
家族とは思わない
ただいま、は言わない
あの日、その家を出るときに誓った。
その家は、なじんだ家ではもはやなく、すでに帰る場所でもなかった。
夜に眠り、朝に出ていく、毎日の一部ではあったが
、夕に帰る場所ではなかった。
帰りたい、とふと呟く、その対象ではなかった。
帰りたいと思う場所を切望し、切望し、
けれど不思議と、家族という一連の馴れ合いを欲しいと思ったことはない。
その人達を、家族と言葉にも心にも思うことはない。
否定もわざわざしたりはしないが、あれはその塊として、
樽のそこに残った澱のようなもの、あったかもしれない、古いもの。
今は遠く、薄れた何かでしかない。
上澄みを救って皮をなめし、乾いた面に一枚かぶす。
あの日忘れて置いてきたそれを
騙し騙した
その濁り。
あの日の空も顔も心にはなく、
またいだ敷居の記憶もない。
あの日私は