アスパ番外編 ほむらちゃんと私 第3話(後編)
- カテゴリ:自作小説
- 2016/04/14 22:39:10
かくして。
いけにえの巫女は最低あと六十五年ほど待たなければいけなくなり。
死者の神殿にて、祈りと修練の日々を過ごすこととなりました。
神たる青年は男たちも余っているからもういらないと仰ったので、以降、いけにえの儀式は行われないことに。
ほむらさんは神様のお墨付きをもらって晴れて少女の守護剣となり、倉庫から出されていつも一緒。
私もなぜか神のしもべとして、祭壇にまつられることになってしまいました。
大団円。
ええ、大団円です。
よろこばしいことに、すべてほむらさんの望み通り。
「さて、御神酒をもってこようぞ」
まあ、少女から毎日お酒をもらえて、満足ではあるのですが。
『ご主人さま、おともを』
「大丈夫、すぐそこの控え室からとってくるだけじゃ。ほむらちゃんはここにいなさい」
『はーい』
あの太陽の神さまは週に一回ほどこの神殿にやってきます。
少女の幸せそうな顔といったらもう……。
しかし神様が本当にいるなんて。ほんとびっくりですよ。
『あら、いないわよぉ』
え? 何をおっしゃるんですかほむらさん。
あの時ほんとに、神殿から出てきたじゃないですか。
まばゆい光輝く青年が。そんで少女にちゅうしたじゃないですか。
ちゅう。
しかも今は、週一でデートですよ?
『まさかエクスちゃんも、幻を照射できるなんてねえ。手足がないからできないと思ってたわ』
え?
エクスちゃん、も?!
『でもあれ、ただの記録でしょ? あたしのは違うわよ』
とたんに。
祭壇がぺかりと光り。
あの全身ましろに輝く青年が現れてひらひら手を振ってきました。
『あ、神さま――』
『やほーう。これ、あたしの本体』
え?!
『正確には、剣になる前の、生前の姿? 実体はないんだけどさ、韻律は使えるし。強いわよぉ?』
え……
ちょ……
ま……
『神様なんて、いるわけないじゃなーい。エクスちゃんたら、自分も同じ手使ったくせに、まさかだまされちゃったの? てっきりばれてると思ってたわー。んもう、かわいいわね』
そ、そん。な……!!
『まさかエクスちゃんが加勢してくれると思わなかったわー。動かない3D幻像でクオリティはイマイチだったけど、ほんとありがとね♪』
ま、まるで本物のように動きまわってますよね、神さま。
し、信じられない……なにこれっ。メニスの剣、どこまで高性能なの。
じゃ、じゃあ、あのお涙頂戴の、ご主人失った話とか、は?
まさか、う、う、うそ?
『うそじゃないわ。あれはほんとうの話よ。私、目の前で幼いご主人さまを失ったことがあるの。あの子を思いだすと今でも涙がとまらないわ……。私にもっと力があれば……』
ああ……なんて哀しげな声。光り輝く青年が辛そうにうなだれて……。
『だからもう二度と、ご主人さまを死なせないと心に決めたの。
そのためには、なんだってするわ。なんだってね』
か、神さまが、ほむらさんっていうことは……は……
『ふふふ。そうよ。あたし、ご主人さまと婚約しちゃったってことよねえ♪』
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
『また口づけさしあげようっと。ご主人さま、とっても喜んで下さるからぁ♪』
うああああああああああああああああああああああ!!
ちゅう!!
うら若き乙女と!!
ちゅう!!
うああああああああああああああああああああああ!!
う、うらやましい!!
必殺神殺しぶちかましてやりたいほどうらやましい!!!!
ていうか。
なぜほむらさんのご主人さまが女子だらけなのか、今わかったような気が……
うああああああああああああああああああああああ!!
3Dイケメン!! 3Dで動くイケメン!!!!
ちょっと! 作った人どこ! 早く私も改造してっ!!
イケメン出せるようにしてえええええっ!!
あ。ああ……そういえば。
喰っちゃってました。腹いせに。
忘れてました。だいぶ昔の、ことなので。
一万一千年前……。
いちまん……。あっちはごまん……。
一万年って、やっぱりまだ、だいぶ昔じゃない……んですね。
まだまだ我が身は未熟。精進しないと……いけないんですね。
「ただいまじゃ、ほむらちゃん。エクスどの、本日の御神酒じゃ」
あ……蒼い髪のお嬢さん。おかえりなさい。あり……ありがとうございます。
あ、なんていうかその。
あなたさまはにこにこで。幸せそうで。なによりです。ええ、ほんとなによりです。
額の印、ほんと嬉しそうに時々さわってますもんね。あう……。
「感謝の言葉は、神さまに申し上げるように。これからもよく、わらわの神に仕えてたもれ」
仕える……。
あ。私――!
『もちろんですとも、ご主人さま。エクスちゃんは末永ーく、あなたさまの神さまにお仕えしますわ』
ほむらさんの、手下にされて、しまった?!
うあああああああああああああああああああああ!!
み、認めません! 却下です!
剣の主人が剣なんて!!
絶対認めません――!!
この時。
私は誓ったのでありました。
いつか私も必ずや。イケメン投影装置を装着し、うら若き乙女を主人としてみせると。
そして。いつかほむらさんと私の立場を、逆転させてみせると。
おのれええええええっ!!
きっと実現させてみせますとも!
私はまだたった一万と一千歳。まだ伸び代があるはず!
って私が三万歳になったらあっちは七万歳?
……。
……。
えっと。勝てる気がしな……い、いえ!
決心したそばからひるんではいけません。
力をたくわえましょう。とにかくがんばりましょう。
ほむらさんを、ぎゃふんといわせるまで。
『エクスちゃん、祝詞の時間よ。みんなで楽しく歌いましょ♪』
「ほむらちゃんはよい声で歌ってくれるからな。わらわの神さまも大満足じゃ。ほれエクスどの、歌おうぞ」
『は、はい……』
こうして私はそれから数十年ほど、リア充極まりないほむらさんの下僕としてこき使われることになり。
とある日、お使いに出されて拉致られて。
最終的には、エティアの北の辺境にしばし落ち着く事になるのですが。
しかもほむらさんはそれ以降も実に何世紀にもわたって私の天敵として、私をひどく悩ませるのですが。
それはまた別の、長い長いお話となるのでございます。
めでたし、めでたし?
ほむらちゃんと私 ―― 了 ――
ご高覧・コメントありがとうございます><
さすが年の功、ほむらちゃんはすごいですね。
地球製赤猫、太刀打ちできませんでした^^;
精霊剣、刀身の切れ味はもぅ二の次っていう……;
これからどうやってあそこの騎士団営舎に行くのでしょうね^^
ご高覧・コメントありがとうございます><
ほむらちゃん的には大団円ですが……ノωノ
赤猫さんの野望?はこれから達成されるのでしょうか。
ほむらちゃんの高性能っぷりにすっかり脇役となってしまった赤猫剣。
でも目的はすべて期待以上に達成されたので文句は言えませんねぃ^^;
剣の世界では性能の違いが戦力の決定的差なんですねぇ。
旅から旅の赤猫剣の物語、次も期待しています♪
これはこれで良しと致しますか。