Nicotto Town



自作小説♪  【絶滅危惧種】/(都会) 11月

 空が狭くなった。そして色がくすんでいる。昔はもっと透き通るような青色をしていたと思うが、それももう思い出せない。
 仲間は、みんなどこかへ行ってしまった。こんな住みにくいところでやってられないと、少しずつ減っていった。
 祖父さんの、そのまた祖父さんの、そのまた祖父さんの代から、ここに住み着いている私としては、いくら変わっても、故郷は故郷。やっぱりこの地で最期まで生きていたいと思う。
 人間も変わった。昔は、もっと穏やかな顔つきをしていたし、優しかったが、最近では、みんな魂を抜かれたようにしている。疲れている。どんよりしている。
 そして、見えないものをあまり信じなくなった。この世ってのは、見えないもので大方出来ているってのに、大事なものを忘れていくような気がする。

  川の土手に寝転がる。ここも昔は、清らかな美しい川で、女が洗濯をしたり、子供が水浴びをしたりしていた。今は臭くて汚くて、魚の数も大分と減った。私たちも、いずれ消えていくだろう。

 賑やかな声が聞こえてきた。少年たちが近づいてくる。学校帰りだろうか。
 私はゆっくりと起き上がる。やれやれ。

「で、でたーーーーー!!」

 少年たちは悲鳴を上げて蜘蛛の子を散らしたように逃げていった。

「まだまだ捨てたモンじゃないな。」

 ぼそっと呟くと、頭のお皿を、濁った水で潤した。


end

#日記広場:自作小説

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2014/09/07 19:22
日本の河川というと水質は高度経済成長期が最悪で移行は法規制やエコ技術の発展で改善されいるとのことで、それでも環境の悪化は進むといえば、場所を大陸にかえたというところでしょうか。あるいは爆発を起こした原発周辺で……。そんなことを感がえてしまいました。
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2013/12/10 20:17
 うっほ~!カッパ話でしたか!私は川でカヤック始めたんですが、私が子供の頃とちがってけっこう綺麗です。大和川もwww カッパさん、元気に住み易くなったでしょwww

 と、下記の面々を見るに、ピコさんはぼうぼうさんのお仲間なんですね!
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2013/12/01 22:19
まだ河童を見ることのできる少年たちがいる...まだまだ捨てたもんじゃないですね!
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2013/11/19 00:20
作品を「小説家になろう」に転載させて頂きました。サイト仕様の違いのためか、転載先に行がズレたため、下記転載先で若干の手直しを入れましたので、ご確認ください。なお作品の感想に関しましてはまたのちほどさせて戴きます。ご協力に感謝いたします

http://ncode.syosetu.com/n0138bs/39/

 11月18日更新日52アクセスありました。私の管理サイトで、優良可でいうところの優です。おめでとうございます。

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2013/11/18 18:36
都会に暮らす河童
現実を否定しないでむきあう
したたかさを感じます
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2013/11/16 10:36
都会から離れなかった河童という小題を逆手に取った観点に感心しました。
たしかに都会も昔は田舎。発想を如何に広くできるかを教わった気がしました!
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2013/11/13 21:29
たくさんのコメント、ありがとうございます。

都会といえば・・都会といえば・・・
考えた末になんとか出てきた話です。
自分でも書きながら、これは誰が語ってるんやろうか・・
と楽しみながら作ってみました。
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2013/11/12 21:24
現代人の多くは疲れているんでしょうね。

都会の川に住む魚とか、あんな汚い水でかわいそうな気がする。

河童・・・僕が子供の頃、住んでた所では(ごんご)と呼ばれていた。
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2013/11/12 19:51
川で泳いでくれないとしりこだまをとることも出来ませんね。
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2013/11/12 19:50
まさしく短編の醍醐味を感じました。

どんな話なのかわからないまま読み進めると、最後の一行で
ストンと納得できるのが、すごいなぁと思いました。
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2013/11/12 19:11
そうそう
なんでも現在を否定するのは簡単
未来はいつも目の前の闇に
光明をもたらしているのに
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2013/11/12 16:12
一回目は人間のお話かと思って読んでいましたが最後に河童さんのお話だと気付き、もう一度読み返してしましました^^

構成がいいですね

まあるい、まとまった世界が見えます



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