とあるマナーハウスの一場面
- カテゴリ:自作小説
- 2012/09/23 21:52:18
「申し訳ございません、
お帰りになる前にお伝えするべきだと申したのですが......。」
してやられた、と思った。
横でカドマスが謝罪を繰り返しているが、
コーネリアの仕業だ。カドマスの手落ちではなかろう。
コーネリアの考える世界は単純で
小説のようにハッピーエンドで終わるのが当然だと思っている。
現実は小説と違い、複雑で何も思いのままにならない。
ふと、その時
ある考えがよぎり
考えるより先に言葉が口からこぼれていた。
「カドマス。
お前がその話を繰り返す程に、
私は今、態度がおかしかっただろうか?」
一使用人への感情以外のものが気取られたかどうかと、急に不安になった。
古くからダヴェントリ家に仕える老執事は、
はたと思い立ったような顔をしたが、次の瞬間には人の良い笑顔を湛えた。
「そのようなことはございません。
そのようなことが万一ございましても、私め以外は気付かなかったでしょう。」
●コメント欄に登場人物一覧があると良いなあと思いました