恋は、舞い降りる天使の羽のように~初夏~(3)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/07/04 10:25:40
鈴羽村を出発したバスは田園風景の中を走りつづけた。
杏樹は龍太郎からもらったパンフレットをあらためて取り出した。
美術館の概要が書かれた裏面に地図が載っていた。
(世田谷の〇〇駅から歩いて15分か…。)
杏樹は龍太郎に迎えに来てもらえるのが何だかうれしかった。
しかし、そのうれしそうな顔もすぐに曇った。
その前に学校に行かなければならない。その事を思うとうれしい気持ちも無くなってしまう。
それ程辛い思いをしたのだった。
(あぁ、行かなくて済むんだったらどんなに良いだろう。)
窓の外の景色も杏樹にとって心の晴れるものではなかった。
やがて、街の中を通り過ぎ、バスは高速道路のインターに入った。
M市を通り抜け東京方面に向かう分岐点を過ぎると杏樹はいつの間にか眠ってしまった。
「さあ!どうするのかな?」
(!!!)
「杏樹!あなたが責任とってよね!」
(ダメ!嫌!)
「君が目的だったんだよ!」
(私、出来ない!)
「さあ!こっちに来て!悪いようにはしないから…。」
(嫌!助けて!)
杏樹はそこで目が覚めた。
乗客の一人が杏樹を怪訝そうな顔つきで見ていた。
慌てて外の景色を見る振りをして顔を背けた。頬を触ると涙を流していたのに気づいた。
窓の外の街並みを見つめ、杏樹は再び出そうになる涙をぐっとこらえた。
やがて、バスは首都高を降り新宿の西口のバス停に止まった。杏樹は列車に乗るため駅の改札に向かった。
新宿駅の構内は通勤ラッシュの時間帯も過ぎ、人もまばらになっていた。
いつものホームに行き、いつもの列車に乗り込む。
(何ヶ月も経っているのに、忘れていないんだな。)
そう、列車に乗るのも、駅の改札も意識もせずに出来るのだ。
忘れよう、忘れたいと思っていたはずなのに・・・。
でも、高速バスを降りて、一歩踏み出した時、杏樹は感じた。
空気が違うのだ。
鈴羽村の樹々の間を駆け抜ける優しい風。
苗の植えられた田の上に、鈴羽尾根から吹き降ろす風。
(やっぱり少しずつ、変わっていってるのかな・・・。)
そう考えながら、杏樹は自分の住む町の駅に降り立った。
気の早いセミが、少し遠慮がちに鳴いている。
駅前の商店街を抜け、公園を回り込むと高層マンションが見えてきた。
入り口のセキュリティロックを開け、玄関ホールに入る。
管理人が、ジッと杏樹の様子を見ている。
(あ。違う人に代わったんだ・・・。)
いつもの習慣で、メールボックスを暗証キーで開けると何通かのダイレクトメールとハガキを取り出した。
その様子を見ると、新しい管理人は奥に引っ込んだ。このマンションの住人だと、安心したようだ。
エレベーターに乗り込み、部屋のあるの階のボタンを押す。
静かに動き出したエレベーターの中で杏樹は軽いめまいを覚えた。
だんだん、部屋に近づくにつれ、鈴羽に行く前の自分に引き戻されるような気がしたからだ。
エレベーターが止まった。
降りて、部屋まで歩いて行き、持っていた合鍵で扉を開ける。
両親は出張にいっていて、夜まで留守だといっていた。
ところが、誰もいないはずなのに玄関に、履き物があった。
スニーカーと赤いミュールが無造作に脱いであった。
(あ、れ?お兄ちゃん・・・・・?それと・・・。)
杏樹の兄 亨らしい、女友達でも連れてきているのだろうか。
杏樹は、そっと玄関の扉を閉めて、ダイニングへいった。
誰もいない。
テーブルの上に郵便物と喬介から貰ったお土産を置くと、自分の部屋に行こうとした。
杏樹の退学願は、両親が署名をして杏樹の部屋の机の引き出しに入れてくれたはずだ。
部屋へ行こうとバスルームの前を通りかかった時、いきなりドアが開いた。
(エッ!)
中から、バスタオルを体に巻いただけの女性が出てきた。
「な、に・・?誰よ!あなた!」
杏樹が声をかける前に、その女が叫んだ。
「え・・・。あの・・。」
「ちょっと!何しに来たの?」
「あ、あの・・。」
「帰りなさいよ!あなたね?しつこく付きまとってる女って!」
その時、兄の部屋の扉が開いた。
~つづく~
ゆのさま>りなっちさま>居酒屋大ちゃんさま>時折さま>ゆきちゃ♪さま>ちちゃちゃさま>
かりネコさま>しぃ☸さま>mikaさま>こりんごさま>靜鬼☆彡さま>水仙さま>
いったい、東京で何があったのか?杏樹の今後は?龍太郎と蘭の関係は?
・・・・・・・書き入れるのだろうか?Σ(〇ロ〇*)ノ?
間違われてる――――――Σ( ̄ロ ̄lll)
なんて事だ どぉなっちゃうんですかっっ!?
杏樹…何があったんだ~!!悪い人に何かされたのかな(>_<)あ~気になる~(*^^*)
続きがあぁっぁぁあっぁぁ^^ぁぁぁぁぁぁぁぁ
あ、あの・・・気になります^^;
うふふ
バスの中の夢がふっとんだじゃないかw
あ、コメントずれている?(笑)
お兄さんがいたのですね^^;
そう言われれば兄の存在が今までなかったのも気になる~
妹が苦しんでいる時に~~~~~
何してんじゃwww( ゚Д゚)ドルァ!!
てか、扉の向こうの兄の反応も気になります。
杏樹の過去も気になります。
ドキドキドキドキ・・・・