恋は、舞い降りる天使の羽のように。ー初夏ー(1)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/06/14 06:13:42
風の薫る5月である。
あれだけ降った花だましの雪も、沢筋や日陰などに少し残っているだけになった。
周りの木々も芽を吹いて、すっかり様変わりし初夏の景色になって来ていた。
源さんも退院していた。
今日は、松葉杖姿ではあるが、龍太郎がトラクターで田んぼに入って作業しているのをあれこれ指図していた。
いつもの年なら、源さんがトラクターを動かしているのだが、ギプスをつけてトラクターを運転は出来ない。
水を張った田んぼの縁で、椅子に座って大きな声で龍太郎に声をかけた。
「おい!そこんとこは、まちょっと、ゆっくり廻れや。」
トラクターの龍太郎は、聞こえた合図に、片手を上げた。
爽やかな風が田んぼの水面にさざ波をたてている。林の向こうに、鈴原尾根の峰々が見える。
尾根の中腹に、雪が溶けると現れる「種まき姉さま」の「雪形」が見えている。
昔は鈴原尾根に「種まき姉さま」が現れると、
苗代に種を蒔いたのだが、機械化が進んだ現在では、それは季節の風物詩となっていた。
家の台所では杏樹がお茶の支度をしていた
杏樹は、自分の焼いたリンゴのケーキの出来映えに満足していた。
母から教えてもらったお菓子の中で一番自信があった。
切り分けて器に入れて、カゴの中に入れる。
そろそろお茶の時間だ。頃合いも、ちょうどいい。
頭に麦わら帽子をかぶって外に出た。
お茶の入ったポットや湯のみと一緒にケーキも、一輪車に乗せて源さん達のいる田んぼまで押していった。
「源さ~ん!お茶持って来たよ~!」
源さんは、杏樹の方に振り返って手を振った。
「お~!あの木のかげにゴザが敷いてあるで。」
杏樹は涼しい木陰のゴザの上にお茶の支度をした。トラクターが唸りを上げて田んぼをかき回している。
龍太郎も杏樹が来たのに気がついて、手を振った。
「お~い!お茶にしろやぁ。」
源さんは、松葉杖をつきながら杏樹の側に来てドッカとゴザの上に腰を下ろした。
龍太郎は、トラクターを田んぼの畦のそばに停めて、畦に飛び移った。
青いつなぎを着て麦わら帽子をかぶって、いかにもお百姓家のあんちゃんといった風情だ。
「あぁ!のどが渇いた。」
杏樹の隣に座って、お茶を湯のみについでもらい龍太郎は、グイッと飲み干した。
「おっ!うまそう!」
杏樹の作ったアップルケーキをつまむとパクリと一口で食べてニッコリ笑った。
花だましの一件以来、二人の仲は急速に深まっていた。
お茶を飲んでいた源さんは杏樹の方に向き直って話しかけた。
「明日、朝早いな?」
杏樹は源さんにお茶をつぎながら返事を返した。
「鈴羽の駅前を6時半に出る高速バスで行くの。」
「で。東京の学校に辞めるって言ってくるのか?」
「…。うん。」
「そうか。自分で決めた事だ。後悔しねえようにな。」
「大丈夫。書類貰ってきたり、退学願だしたりね・・・。」
杏樹はニッコリ笑って、空を見上げた。
「さて、午前中に終わらせちまうか!」
源さんは、そんな杏樹の様子に気づき、松葉杖をつきつきさっさと田んぼへいった。
龍太郎も、立ち上がると帽子をかぶった。
「向こうに、2泊するんだよな?」
「そうなの、久しぶりに父さんや母さんにも会うし。」
「一緒に帰って来れるかなぁ?」
「え?」
「帰ってくる日に、彫刻展の作品の搬入があるんだ。世田谷なんだけどね?」
「いいの?」
「その代わり、少し待ってもらうかもしれない・・・。いい?」
「うん!」
「それじゃぁ・・・・」
その時、源さんが田んぼから声をかけた。
「おい!早くしろや!午前中に終わらねえぞ!」
龍太郎は、あわてて田んぼへ戻っていった、
その後ろ姿を見つめながら、杏樹はため息をついた。
学校に行くということは、去年の夏の出来事を思い出さないわけにはいかなかったからだ。
退学願はすでに両親が学校から取り寄せて、署名を済ませてくれていてた。
すべては明日だ。
杏樹は、お茶の片付けをするとまた家にもどっていった。
翌日。
スッキリと晴れ上がった空に、鈴原尾根の山並みがくっきりと浮かび上がっていた。
杏樹は、龍太郎に車で駅まで送って行ってもらうことにしていた。
~つづく~
のどかな雰囲気が伝わりました@^-^@・・今は・・よしな(山菜)・・が取れてるんじゃないw・・・(水ぎわになる)
さざなみ(昆布)1袋と・・ゆでた・・よしな2束をまぜ・・翌朝冷えたのを食べるとうまいで~
あのシャキシャキ感がおいしい@^-^@
杏樹・源さん・龍太郎のいる場所が、安曇野を舞台にしてるのかなぁ?って思うのはおいらだけでしょうか。
と、nekomeさん、具合悪いのに無理しちゃダメですョ(>_<)
早く良くなるよぅに休んでくださーーーーい(+o+)
しっかり休んですっきりなおしてくださいね~
今日は涼しくて温度差がかなりあります><
都会で何が起こるんだろ~?(#´ο‘#)いやん♪たのしみ~
emiriさま>mikaさま>ゆのさま>りな^^さま>ちちゃちゃさま>水仙さま>こりんごさま>
いよいよ、-初夏-編、が始まりました。引き続き読んでくださいね。
体調のほうは良くなりつつあります (使い魔に、寝てなさい!と怒られるんでf^_^;)
またわくわくの始まりだ~(^^♪
次回が楽しみです^^
3月の末、福島県の飯坂温泉に行った時に、↑と同じような、
巨大な[雪うさぎ]を見ることが出来ました。
それはラッキーな出来事でした☆
杏樹の秘密もわかるのですね(*^^)v
ますます、目が離せない・・・
今後の展開が楽しみで~す♥
少しずつ仲が深まっていきて今後が楽しみ~^^
ドキドキドキ・・・・・初夏編も楽しみにしております!
これからの展開が楽しみです^^わぁ~~~
思ったよりも早く始まって嬉しいなぁ~
うふふ
杏樹の秘密が分かるのでしょうか?ドキドキしますね^^