核爆弾チビ龍 4
- カテゴリ:自作小説
- 2011/12/26 08:36:27
無線の声の主の女性は、人間にしては可愛い声の持主だった。
「聞こえますか?こちらは東京核爆発対策本部の救護部看護師のセイウ コミコです。聞こえましたら応答お願いします。応答するには無線のスイッチを押して話して下さい」
僕は無線マイクのスイッチを押し応答した。
「聞こえるよ。良く聞こえる。コミコちゃんの声、可愛いですね」
「きゃ、。うれしぃ~。ありがとう」
コミコちゃんの声に続いてすぐに後ろで男性の声がしたが途中で切れた。
余計な事は喋らないように注意されているみたいだった。
「あのぉ~。お体の調子ですが、何か変わったところはないですか?あなたの様子がこちらのモニターに映し出されています。お顔の色が少し良くないみたいですよ」
「あぁ、これは生まれつきだよ。僕は人間じゃないから」
「えぇ、人間じゃないのですか。じゃ、獣医さんが必要ですね。私、人間の体のことしか分かりません」
彼女は僕を人間だと思っていたらしく、僕の言葉に驚いた様子だった。
無線の向こうで何かを相談しているのか、彼女の無線はしばらく無かった。
しかし、こちらの様子はテレビカメラによって向こうのモニターに映し出されている。
僕はおとなしく無線機のマイクを握って彼女の言葉を待った。
「あのぉ~ちょとお尋ねしたいことがあります」
彼女は申し訳なさそうに僕に質問をしてきた。
「いいよ。何でも聞いてください」
僕は彼女が気に入っていたので何でも答えることにした。
「はい、ありがとうございます。あなたにお名前がありましたら教えていただけませんか?」
「僕の名前ですか。生れたばかりなので名前はないよ。コミコちゃんが付けてくれればいいよ」
「えぇ、私がですか。いいのですか。私が名付け親になって」
「あぁ、いいよ」
「ほんとにいいの?」
「あぁ、いいって」
「じゃ、チビリュウ君でいいですか?」
「チビ龍か。いいね」
「じゃ、あなたのこと、チビリュウ君と呼ばしてもらいます。ところでチビ龍君はどこから来たのですか?」
僕は彼女の質問の答えに僕は困ってしまった。
「どっからて、ここで生れたみたいだよ」
今度は彼女が僕の答えに困ったらしく、しばらくまた無線がなかった。
「私は陸上自衛隊中央特殊武器防護隊司令官のカタギリだ。この度の東京核爆発は我が国に甚大かつ致命的な被害をもたらした。国の機能が停止したと言ってもいい。君はその核爆発の重要参考人として、警視庁臨時本部より先ほど手配された。そこから動くことはもう許されない。おとなしくそこを動かずにいろ」
突然の偉そうな男の無線の声に僕は苛立った。
そして、その感情は僕の体に変化を起させた。
体の鱗が逆立ち何かを放出し始めたのだ。
モニターを見ていた人間がモニターの異常に気付いたのか、すぐにコミコちゃんを無線に出した。
「チビ龍君、御免ね。偉そうなおっさんが横からはいちゃった。怒ってるでしょう。あの偉そうなおっさんは誰でしょうね。私の側に居るのヒトじゃないからね。本当に御免ね」
僕はコミコちゃんの声を聞いて安心したのか、感情の高まりが収まっていくのを感じた。
そして、鱗の逆立ちも元に戻った。
ほんとですね
放射線で火傷もするみたいです
波長の一番短い電磁波みたいですね
まだ良く理解できていません
チビ龍くんは人間のコミコに安心感を与えてもらいました
コミコに母親を感じたら会いに行くかもしれません
でも、悲劇の恋になると思います
コミコさんに会いにいくのかしら?