ある男の人生
- カテゴリ:自作小説
- 2009/05/10 01:15:52
男は貧しい家庭に生まれた。
来る日も来る日もこき使われる毎日。
それでも彼は幸せだった。
彼の隣にはいつも彼女がいたから。
ほんの小さな幸せ。
だがそれは男にとってかけがえのないものだった。
しかしその些細な幸せは長くは続かなかった。
自宅に帰った男は違和感を覚える。
彼女がいない。どこだ、どこだ・・・。
彼は彼女を探しにまちに戻った。
しかしそこをさがしても彼女は見つからない。
男は彼女が帰るのを待ちながら今日も働く。
ある日の大通り、貴族の馬車が進んでいく。
男はそこに捜し求めていた彼女を見つけ通りに飛び出した。
何事かと顔をのぞかせた彼女は男をみて
今まで見たこともなくみにくく顔を歪めた。
「なんであんたがここにいるの、そんな顔みたくもない。
私は貴族に通りで見初められたの。
もう貧しい暮らしなんてごめんよ。
私はやっと幸福を得られたの、邪魔しないで。」
そういって彼女は私に金を投げ渡し去っていった。
男はしばらく何が起こったのか理解できなかった。
ようやく理解したころ、男は思った。
世の中、金がすべてなのだと。
金さえあれば何でも手に入る・・・。
そして男は変わった。
女に投げ捨てられた金で商売を始めた。
時には危ない橋を渡り
嘘もへいきでつくようになった。
富を得るため友さえ裏切った。
裏取引なんて当たり前にやってのけた。
使えないものは友人だろうと切り捨てた・・・。
気づくと男は街一番の大富豪となっていた。
大きな家も、豪華な食事も衣服もほしいままに手に入れた。
巨額の金で踊り子を買い侍らせた。
なに不自由ない生活。
しかし男は幸せではなかった。
数々の悪逆非道を重ねた男の周りに友と呼べるものはなく
周りには男の持つ権力や富を得ようと暗躍するものばかり。
嗚呼、男は嘆いた。
私はただ幸せになりたかっただけなのに。
金さえあれば幸せになれるのではなかったのか・・・
男は何もかも信じられなくなった。
権力も富みも、男にはうざわらしいだけのものとなった。
もう何もいらないと男は思った。
すべて捨ててしまおうと・・・
そんな考えにふけっていた男の足元にりんごが転がってきた。
ふと見るとやせ細った少年が道端にうずくまっていた。
男は少年に昔の自分を重ねた。
そして男はふと思いついた。
どうせ捨てるつもりだったのだ、
昔の私のような子供のために使ってもいいか、と。
男は自分の持っていた権力も商売もすべて捨てた。
豪邸にあった者は売払い金にし、貴金属とともに保管した。
次に男は豪邸を取り壊し、大きな家を建てた。
やさしい感じのする家だった。
そして男はその家に救いを求める少年・少女たちを引き取り育てた。
あれだけあった金や貴金属は子供たちのために使い
もうほとんど残ってはいなかった。
巨額の富を失った男はそれでも幸せだった。
子供たちに愛され、また男は子供たちを愛した。
男は歳をとった。
またむかしのように貧くなり慎ましやかな生活を送っていた。
子供たちは成長し巣立っていったが
男は幸せだった。
子供たちとともに過ごしたときは男にとって最高の時だったから。
男はある日倒れた。
もう死が迫っているのだと知った。
一人寂し逝くのも悪くないと思っていたが
男は一人ではなかった。
巣立った子供たちは男の下に帰ってき、
男が死ぬまで昔のように暮らした。
これから死に逝くというのに男は幸せだった。
男は巨額の富では得られなかった幸福に包まれていた。
富では得られない幸せを男は胸に抱き
「私はお前たちと暮らせて幸せだった」
そう笑いながら一言言って、男は息を引き取った。
子供に囲まれて一生を終えた≪幸せ≫
どちらもきっと幸せだったのでしょうね
僕は思う。
幸せのカタチはそれぞれだと。
アナタが幸せと感じたらきっと、それが『幸せ』だと思います^^
願わくば、流珠さんが幸せで居続けますように☆
お金がなければ女性は裏切る。
お金があっても人が信じられない。
中間の女性に裏切られない量のお金欲しいです。