ブロウクラバー 8
- カテゴリ:自作小説
- 2011/08/26 20:39:59
人形を振り返り見たミコミは、腰を抜かしそうになった
人形が二体になって見えたのだ
前の人形は生きた人間そっくりの人形だが、後ろの人形は半透明で霊的に見えた
ミコミは意識が消えていくような感覚を覚えた
いや、意識はあるのだが感覚や感情が麻痺してるだけかもしれない
催眠術にかかったように、自分の意識よりも誰かの意識が自分を支配してくれるのを待った状態だった
さっきの恐怖感は薄れ、目の前の出来事だけが映像として記憶されていく
そこには感情は無く、あるのは記憶だけだった
ミコミの半意識の中、視界に写る映像が動き始めた
後ろの人形が動き始めたのだ
ミコミにはその人形が何かを語ってるようにも思えた
実際に音声があるのかどうか分からないが、ミコミはそれを耳からの刺激として捉えていた
『私はモンゴル襲来によって島を制圧された壱岐国の守護代である』
ミコミはそのような言葉としてそれを記憶した
「モンゴル襲来?」
ミコミの脳が反応した
そして過去の記憶からある言葉を思いださせた
それは歴史の本に書かれていた文字だ
「文永の役の文永11年(1274年)10月14日申の刻(午後4時から6時頃) 、蒙古軍が壱岐島の西岸に上陸すると、景隆は百余騎の武士を率いて馳せ向かい、庄三郎という者の城の前で矢を射かけて蒙古軍を迎え撃った。しかし射程距離の長い矢をもって大軍で押し寄せる蒙古軍にたちまち追い詰められ、景隆らは守護所の詰城である樋詰城に立て籠もった。日没とともに蒙古軍は船団に引き上げ、翌日景隆が篭る樋詰城を攻撃、景隆一同は城中で自害した」
ミコミはこの言葉のすべてを思い出したのではないが、なんとなく感覚的に「蒙古軍」だけを覚えていた
『このヒトは蒙古軍の攻撃で自害したヒトなんだ』
ミコミの脳はそう理解した
その瞬間に人形は重なり元の一体に戻っていた