Nicotto Town



無名沼での出来事 10


「ぶんぶんぶんハエが飛ぶ。皆、何騒いでるのかな」
フンスイバエは休憩のために卵を押し込むのを止めました
最初の卵から蛆虫が孵るまで後数分です
「あぁ、疲れた」
フンスイバエは死体の顔の上に腰を下ろしました
そして辺りを見回して呟きました
「なんかいつの間にか取り巻きが多くなったな。あっしには関わりの無い事だけど。ふぅ~」
最後にため息を付くと静かに休んでいました
蛆虫は肉を直接食べるのではなく、肉の溶け汁を吸うのです
死体の自らの胃液や腸液で消化された臓器の肉汁を求めてさ迷うのでした

坊主Aが目をつむり手を合わせお経をあげている間、暇そうにしていたキュリッパが死人の顔の上でじっとしてるフンスイバエを見つけて声をかけました
「もうタマゴは入れ終わったのかい」
「うん、だいたいもう終わったよ。もうじき最初のタマゴから我が子孫が動き出す」
「蛆虫君が産まれるだね。おめでとう」
「ありがとう」と、フンスイバエはキュリッパに言いました
「ところでこの死体どうなるか分からないよ」
「分かってるヨ。僕たちには死体がどうなろうと関係ないんだ。ただ繁殖のために腐る物をエサとするだけさ。ただ子孫を増やせばいいだけだから」
「そりゃそうだけど。人間の世界ではいろいろ死体をめぐってあるみたいだから、この死体も無くなるかもしれないよ」
「その時はその時さ。僕たちには人間の都合や気持ちなんか関係ない。ただ繁殖をするため昔から同じ事をくり返してきているだけなんだ」
フンスイバエがそう言い終わると、最初の蛆虫がタマゴから出てきたのか、死体の少し開いた口の中でモゾモゾと動き始めました
「おう、活動を始めた」
フンスイバエは嬉しそうにそう言いました

坊主Aがお経をあげるのを終わり、目を開け死人の顔を見ながら最後に手を合わせお辞儀をしました
そして顔を上げ言いました
「もう、蛆虫がわいている。早くなんとかしなければいけませんな」
「なんとかするってどうするのですか?」
エンバーミングが坊主Aに聞きました
「人間の遺体は尊厳しなければいけません。他の動物の死体と同じではないのです。火葬して早く骨だけにするのが遺体を尊厳することになるのです」
エンバーミングがすぐに反論しました
「それは人間の遺体処理の技術がまだ確立されていない時の話し、今の私どもの技術をもってすれば立体写真として遺体を残せるのです。しかしそれには費用がかかる」
エンバーミングはただでこの遺体を処理することができないので、それ以上強いことを言いませんでした
坊主Aがまた言いました
「生き物には霊魂があります。肉体が活動を止めた時つまり死を向かえた時に霊魂はその肉体を離れ黄泉の世界にいくのです。今まで使っていた肉体が粗雑に扱われることを望みません。丁重に扱い処理することが残された人間の役目なのです」
坊主Aは遺体に向かって合掌しました
「この死体はもう持主のいないただの肉の塊だと思うんですが。それを残された人間に価値あるものに変えるのがいいんじゃないですか」
エンバーミングが坊主Aにまた反論しました
「持主は肉体を離れた霊魂と考えた方がいいですよ。霊魂が怒ってあなたに祟りますよ」
坊主Aがまた遺体に合掌しながらエンバーミングに忠告をしました
二人が意見を言い合ってる間にも死体の蛆虫は次から次へとタマゴから孵りその数を増やしていくのでした

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2011/07/01 02:31
なかなか壮絶な事になってきましたねぇ^^;
当の彼女の魂は、成仏したのでしょうか?

ショックを受けるでしょうから、自分の遺体は
見ない方がいいでしょうね ^^;



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