サァルゴキ 14
- カテゴリ:自作小説
- 2010/10/16 06:13:59
クリリスは男性を見かけたら殺すように教祖ペニスインカムから命令を受けていた。
しかし生きた生身の男性は、この群れで生活するようになってから教祖ペニスインカムしか見たことがなかった。
クリリスが何度か見た人間の男性はすでに殺され、無惨な死体となった肉のかたまりにすぎなかった。
「サァルゴキさま、ちょと裸になって生殖器を見せてくれませんか?」
「ええ、クリリス何を言い出すんだ」
「あなたが持ってる猿の生殖器がどんなものか見たいのです」
クリリスはまだ生殖器がどんな役割をしてどんな形状なのかを良く理解していなかったのでサァルゴキの生殖器に興味を抱いたのだ。
何故なら教祖ペニスインカムはクリリスにまだ手を付けていなかったからだ。
「僕はサイボーグだから生殖器は持っていない。必要ないんだ」
「でもさっき、火星サルにも生殖器があると言いませんでしたか」
「ああ、火星サル達にはあるよ。でも僕には無いんだ」
「そうなのですか。私、男性を見かけたらその場で殺すように言われているのですが、まだ見分け方が良く分からないのです」
「僕も良く知らないけれど、多分火星サルの生殖器と地球人の生殖器は違うと思うよ。クリリスは地球人の男性をまだ知らないの?」
「はい。死体で説明は受けたことがありますが、生きた男性は教祖さましかまだ知りません。それに父がいましたが幼い時にこのコロニーに来てすぐに別れてしまったので良く覚えていないのです」
「ええ驚いた。クリリスはペニスインカムの血が流れていないのかい。ここの女性は最初の数人を除いて皆ペニスインカムの血が混ざってると思っていた」
クリリスとサァルゴキの会話はここで切れた。
二人を夜のつかのまの静寂が包んでいた。
二人はお互いの足元を見ながら考え込んでいたのだ。
顔を上げ静けさを破ったのはクリリスだった。
「あの~。リサ様と会われていた事は黙っていますので私の父がどうなったか調べてもらえませんか?」
突然のクリリスの以外な言葉にサァルゴキは少し面食らった。
「リサと会ってた事を報告しないのなら調べてもいいけど、たぶん殺されているかもしれないよ」
サァルゴキはクリリスの気持ちよりリサとの事を心配したのだ。
「父はやっぱり殺されたのですか」
クリリスは淋しそうな顔をしてうつむいた。
「まだわからないけれど。たぶん」
サァルゴキはクリリスがペニスインカムの血を引き継いでいない事を知り、ペニスインカムのやりそうな事を想像して言っただけのことのだった。
もしも、本当にお父さんが殺されていたら、どうするのでしょう。
私達の常識では通用しないような事が、起こってしまうのでしょうか?