Nicotto Town


nekomeのつぶやき☆


恋は舞い降りる天使の羽のようにー初夏ー(16)

母の心配をよそに、杏樹は龍太郎と鈴羽に帰るのが楽しみだった。
出勤する母と一緒に、コンビニまで荷物を持っていった。
母が持たせてくれた土産と、自分の荷物を宅急便で送ることにしたのだ。

 出勤する母を見送り、杏樹はマンションに戻った。
玄関ホールを抜けエレベーターの前に来ると、ちょうど着いたエレベーターの扉が開いた。
中から出てくる人と、鉢合わせになった。

  「あ!お兄ちゃん?」

 エレベーターから降りてきたのは、兄の亨だった。

  「杏樹・・・!」

  「どうしたの?」

亨は、少しホッとしたような顔で杏樹を見た。

  (もう、帰ったかと思った・・・。よかった・・・。)

 ふたたび、エレベーターに乗り込んだ2人は、黙り込んだ。
家に戻ると、杏樹は亨にコーヒーを淹れた。

  「わたし、今日の午後、鈴羽に戻るの・・・。」

 亨の前にコーヒーの入ったマグカップを置きながら、杏樹は言った。

  「戻って来たんじゃないんだな・・・。」

  「うん・・・。それでね、あっちで通信制の高校に行くことにしたの。」

 杏樹の淹れたコーヒーを飲みながら、亨はうなずいた。

  「そうか・・・。」

 言いたいことが沢山あったが、亨は黙って杏樹の話を聞いていた。
杏樹が鈴羽に行ってしまってから、心の中に大きな穴が開いてしまったような気がしていたのだ

  「お兄ちゃん?」

  「あ?あぁ・・・そうだ。夏休みにそっちにいくかもしれない・・・。」

  「?」

  「ゼミのセミナーがあるんだ・・・。」

 杏樹は、兄の言葉に驚いた。

  (お兄ちゃんが鈴羽に来る??)

  「ん?いけないのか?」

  「そういうわけじゃないんだけど・・珍しいなと思って。お兄ちゃんは、源さんのことあまり好きじゃないでしょ?」

 亨は苦笑いをしながら、

  「別に、源さんが嫌いなわけじゃない。苦手なだけだ・・・。それに、大学のセミナー用の施設もあるからね。」

  「ふ~ん・・・。家に来るんじゃないんだ・・・。」

 杏樹は少しほっとした。
亨は、そんな杏樹の様子を見て、話題を変えるように尋ねた。

  「何時のバスで帰るんだ?新宿まで送ってこうか?昼飯おごるよ。」

 杏樹は、困惑した。

  (龍ちゃんと帰るからなぁ・・・。)

  「えぇっと・・・ね。バスで帰らないの・・・。こっちに滝さんが来るから、ついでに乗せてってもらおうと思って。」

  「滝?源さんとこの居候か?何でアイツがくるんだ?」

龍太郎のことを聞いた亨はとたんに機嫌が悪くなった。
一緒に住んでいるのも気に入らないのに、こっちまで迎えに来るというのがさらに、気に入らなかった。

  「違うの。わざわざ来るんじゃなくて・・・。こっちに用事があって・・・。」

  「ふん。勝手にすればいい!」

 そう言うと、飲みかけのコーヒーの入ったマグカップをテーブルに叩きつけるように置いた。
そうしてテーブルから立ち上がると、リビングの扉を力いっぱい閉めて出て行った。

  (しまった・・・。また怒らせちゃった・・・。)

 杏樹は憂鬱になった。兄の癇癪はなかなか収まりそうになかった。

  (しかたないか・・・。まだ早いけど、もう行こうかな・・・。)

 一緒にお昼ご飯を食べようと思っていたのだが、亨の分だけオムライスを作った。

     <お兄ちゃんへ  

       鈴羽村に帰ります。
        お昼ごはんにオムレツライスを作りました。
          食べてくださいね。

                             杏樹> 

  オムライスの横に、こうメッセージを添えた。

 帰り支度をして、兄の部屋の前に来た。ノックをしたが返事がなかった。

   「おにいちゃん?ご飯作ってあるから、食べてね。私もう行くね。」

それだけ言うと、杏樹は玄関に向かった。亨が部屋から出てくる気配はなかった。

 
 玄関がしまる音がして、杏樹が出てゆくと、亨は自分の部屋から出てきた。
あの場にいたら、杏樹をもっと責めてしまいそうだったから、自分の部屋にこもったのだ。

 リビングにいくと、テーブルの上にオムライスがのっていた。

   (杏樹・・・・・・・・・・・。)

 亨は、杏樹の作ったオムライスを頬張ると、何故だか鼻の奥がツンとした。
あわてて飲み込むと、少しだけオムライスは塩辛かった。


 杏樹は、バス停で駅までのバスに乗り込んだ。
バスはさほど混んではいなかった。杏樹は、なるべく楽しいことを考えるようにした。

   (そう・・。龍ちゃんが迎えにくるんだ。)

少し気分が良くなったころバスは駅に着いた。
 JRに乗り換えて、世田谷にある美術館へと急いだ。

アバター
2010/09/13 00:34
わ~ヽ(^。^)ノ

またまた続きが楽しみです(^^ゞふふふ
アバター
2010/09/07 13:56
(」゜ロ゜)」おぉ(。ロ。)おぉΣ(゜ロ゜」)」おぉ「(。ロ。「)おぉぉ久しぶりだ~!

お兄ちゃんたら~シスコンなのねえ・・・w

私兄にオムライスとか作ったことないし~(。→‿←。)ぷぷぷっ 可愛い妹じゃないからだけどね~w



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