Nicotto Town


木漏れ日の下


月明り、屋根の上(短編小説)

 ある日。七つ上の姉が見知らぬ男の子を抱いて現れた。
歳は三歳。癖の強い猫っ毛の髪がくるくると自由に動き、目つきの悪い瞳は無邪気に輝きつつ、怯えていた。着せられている服は色褪せ、いかにも古着屋で買った様な古めかしい車のデザインが描かれ、取ってつけた様な赤い大きなボタンが、胸の前でしっかりと縫い付けられていた。男の子は、何故子供を抱いているのか理解できずに口を魚の様にしている弟の自身を見て、姉の首にしがみ付き、目を反らした。これを見て、まさかとは思ったが。
玄関で立ち話もなんだと思い。中に招き入れ、2LDKの侘しい我が家で、堂々と場所を陣取っている白皮の一人掛けソファーに、男の子を膝に乗せた状態で姉を座らせた。自身は姉を前に、硝子板のローテーブルを間にはさむ形でカーペットの上に胡坐をかいて、少し下から見上げる形で座り、とうとう。やる事、話す事の糸口、完全に失った。

 重い時間が過ぎる。どうやら、姉も言葉が見つからないのか、何とも閥の悪そうな表情で癖である髪をいじる仕草をしきりにやり始めた。
――やはり……俺から聞くしかないか。
 そう覚悟を決めて声を出そうとすると、その覚悟は、少年の何とも気の抜けた声で、打ち壊された。
「ママ……お腹すいた」
「こら郁人」
――ん……ママ?
 確定した。思った通り、玄関を開けた時に思った事が現実になった。間違いなくこの子は姉の息子だ。

「姉ちゃん……いつ子供なんて生んだんだよ」
 渋々、姉は重い口を開いた。あたふたと息子の口を押さえたのが嘘の様に、真剣で、不安を隠しきれない女の顔をして。

アバター
2010/08/13 22:37
うぉぉ。続きが凄く気になるところでっ!
せめて姉様の台詞を聞きたかったっ

美しい日々を・・・の方は重たいテーマでしたが、こちらはどうなることでしょう。
ゆったり続きを待ちます~
アバター
2010/08/13 16:31
ぬあああああ。

続きーーーー。

姉ちゃんは何を言おうとしたんだよー。
アバター
2010/08/13 16:23
眠いからまた後で^^;



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