Nicotto Town


木漏れ日の下


□:空駆ける戦士に、敬礼!:□ (2-7)

 途方にくれて、肩を落としながら医務室に向かう私に、ミケル爺さんは叫んだ、「記者さん! アンタは死ぬなよ! あいつ等がもしこの戦いで死んでも、アンタだけは生き残れ!」
ミケル爺さんなりの励ましだったのだろうか。一般市民の私が、ここにいる限り死の恐怖に晒されている事は事実だが、しかし――戦地に駆り出され、人を殺してまでも、必死で生きようとしている兵士達に比べたら。その恐怖はとても小さいものに感じた。
 18年前、21歳だった私はその時起こっていた戦争を深く考えていなかった。ベリニアの小さな町で平凡なニュースペーパーを書いて生活をし、毎朝流れる戦況報告のニュースは眺めるだけで特に気にしてもいなかった。そんな平凡な日常が大きく変わったのは、一発の核ミサイルが落とされたその日。そして、ベリニアを含む五つの国がアクーラに牙を剥いたその日。テレビの前で、歯を食いしばって震え、どうして核を落とすまでになってしまったのか、そんな疑問が浮かんでからだった。そして私は意を決してジャーナリストになり、色々な戦場跡地を回って、ここに来た。18年前の真実を知る為に。それが、この状況下で自身が被験者になって、恐怖をまじまじと感じ、必死で生きる兵士達を間近で見て――分かった。

「ブレイク、私はベリニアに行こうと思う」
 意を決して告げた言葉に、ブレイクは驚愕して私を見据え、目が行くなと言っていた。想像していた通りの反応だった為に、椅子に座ったまま冷静に頷くと。
「……止めても行くんだろ。記者さん」
「うん。今、ベリニアの中はどうなっているのか、私は知らないといけない。そんな気がするんだ」
「……記者だから?」
「いや……只の一般市民として、私はこの戦争を知る必要がある。後世に伝える為にも、私はあえて向かっていかないといけない気がする。だから、記者だという肩書きを武器に、私は行く。それが務めだと思うから」
「どうしてそんなに……」
「毎日命を懸けて、必死で生きている君達を見てきたからだよ」
「俺達を……」
「私は今まで、命を懸けて何かしようと思った事は一度もなかった。でも、初めて間近で懸命に戦う人間を見て、思った。今、私も命を懸けるべきだと」
 ブレイクは、私の最後の言葉を聞いて、深く頷いた。納得したように、私の目を見据え
「記者さん、ここは孤島だから、今出る事は難しい。手はずはある?……」
 素直に、考えているところだと言うしかなかった。
「やっぱり……。じゃあ、俺が手伝うから、三日間だけ。時間をください」
 ブレイクは、策があると言う様に言うと。興味深い話をしてくれた。自信の素性と故郷の話を。

#日記広場:自作小説

アバター
2010/05/21 16:18
「いや……只の一般市民として、私はこの戦争を知る必要がある。後世に伝える為にも、私はあえて向かっていかないといけない気がする。だから、記者だという肩書きを武器に、私は行く。それが務めだと思うから」
↑ここ、好きです^^*
やっぱり…上手に言えないですorz笑



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