気狂いピエロ【13】
- カテゴリ:自作小説
- 2010/05/16 01:11:16
※ 二時間後。同期の捜査官、ジェシー・グレイハワードは死体で発見された。
背中に大きく、【36ドール】と彫られ、屈強だった腕は両腕切断されて腹の上で組まれて置いてあり。茶髪を真紅に染めら、眼球を両方とも抜き取られ発見されなかった。ジェシーの遺体の傍には、またあのふざけた封筒が置いてあり
内容を聞いたベルカは、悲鳴を上げるともつかない声で嗚咽を漏らして泣きじゃくった。その隣で、只見据える事しかできない新米刑事の青年は、何を思っただろう。目の前で、自身が守ると決めた、愛する女性が泣いている。別の男の為に、気丈に振る舞ってきた女性が泣いている。
掛けられる言葉など、見つかる筈がない。ベルカは今日、自身が想いを寄せた唯一の人物を失ったのだ。7年間伝える事のできなかった思いが、一気に弾けて消えていく。心には依然として苦みが広がり、後悔だけが脳裏を支配する。いくら泣いても、ジェシーは戻ってこない。失った命は、絶対に戻らない。
コールの家。白い家具で統一された室内は清潔感溢れる空間。いかにもコールらしい部屋だ。そんな部屋のベッドで、失意のどん底に突き落とされた女は目を覚ました。目の周りは隈になり腫れて、身体は思う様に動かずに起き上がる事もできない。
あの後、ベルカはコールに連れられてこのマンションの一室に連れてこられた。コールが家に戻るのは危険だと判断して連れてきたのだ。帰りの道、まるで魂が抜け人形ようになったベルカを支えて、ふらふらと歩きながら、手紙の内容を思い出した。非常に残酷で、人の想いを踏み躙る、手紙の内容を。
【これでおあいこ。邪魔者は一人になっちゃったね。君が大切に想ってた男、最後までフィアンセを殺された悲しみを叫んでたよ。結局は僕に切れたけどね。僕の邪魔をしたらこうなる。
これで分かったでしょ。だったら邪魔をしないでください。あ、そうそう。男の人ね、君の名前を言ってたよ。ベルカには手を出すなって。優しいね。優しいから罪深いね。婚約者がいるのに、きっと君の事も好きだったんだ。でも
気持ちを言えずに、もう一人の女と結婚する事にした。愚かだね。言えば良いのに。君もだよ、言えば幸せになれたかもしれないのに。臆病者だね。また邪魔をするなら、僕はまた一人大切な人を貰う、今度は……返してあげません。僕が人形にして、傍に置きます。それじゃ、バイバイ~】
「お前なんかにジェシーの何が分かんのよ!」ベルカの心からの叫びが耳から離れない。人を完全に馬鹿にした手紙。絶望しない人間等いないだろう。愛する者を失う悲しみは計り知れない。コールもまた、同じだ。下手をすれば、ベルカも殺される可能性がある。何としても、それは避けなければならい。
あの日の様に、もう大切な者を守れづに失う訳に、いかないのだ。
五年前。コールが17歳の時。不運にもコンビニ強盗と出くわし、一緒に歩いていた彼女が撃たれてしまった。その時、コールは恐怖で動けず、逃げていく犯人を見送り、彼女まで救う事ができなかった。目の前で胸のやや下を撃たれて吐血しながら苦しむ彼女の手を握るだけで何もできない自分に絶望し。彼女を失った後、彼女の父親に殴られて奥歯を折り、涙を流しながら謝ったあの日の夜。
少年は刑事になる事を心に誓った。犯人を捕まえる。そして償いさせる。その一心で頑張ってきた。そして今、また愛する者を失う可能性が出てきた。コールは、再度誓う。もう、愛する者は絶対に失わないと。
ブログ広場よりおじゃまします
気狂いピエロ、とても面白いですね!
一話から時間を気にせず一気に読んじゃいました。
次の展開が気になって、続きがとても楽しみです。
それに、読みやすい文章に惚れぼれします。
稀人も見習いたいものですっ
続き楽しみにしていますね^^♪
時間ができたら、他の作品も読んでみたいと思います!