Nicotto Town


木漏れ日の下


気狂いピエロ【12】

【汚れ血よ……森帰れ……。闇を掘る……辿り着く断頭台……。真紅の血に抱かれ寝むれば良い……
聖母マリアの膝の上……翼を持たぬ天使は首を抱く……。気狂いピエロの心には……愛すべき女神が……抱かれている】

 捉えられた少年は永遠とこの言葉を繰り返した。心が折れたのか、少年は自身の目玉を抉り出して、暫く「あいつ」と呼ばれる者の事を叫び続けた。少年の両親から、ベルカは、お前のせいで息子が壊れたと怒声を浴びせられ、上司に一週間の停職を言い渡され、今はコールの家で書類を読んでいる。
あの後。色々あったのだ。
銃口を向けられ続けた少年は「あいつ」と叫んだ後に微動だにしなくなり。かと思えば連行する為に呼んだパトカーの中で、目玉を抉り出した。隣に座っていたベルカは少年の血を服に浴びながらも抑えつけ、結局その格好を上司に見られ停職処分を言い渡された。
電話を受け駆け込んできたコールは必死で頭を下げる始末。ベルカは、心の底から疲労を感じた。こんな事は、初めてだ。

「コール……もう謝らなくて良いから。私は大丈夫。ジェシーは来てないの?」
 気になっていた事を、項垂れて落ち込んでいるコールに聞いた。ジェーシーの姿が無い。
「ああ。そう言えばいませんね。電話はしたらしいですが」
 青年は項垂れたまま答え。頭を掻きながら、顔を上げた。その顔は、依然として悔しそうだ。

「エレン。ジェシーは? 電話したんでしょ」
「したわよ。でも……出ないの。さっきからずっとかけてるんだけど」

 ジェシーの消息が掴めない。ベルカの心に、嫌な苦みが広がる。コールは、ベルカのそんな表情を、逃さなかった。
――こういう時、惨劇は、続くものだ。

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