Nicotto Town


木漏れ日の下


□:空駆ける戦士に、敬礼!:□ (2-6)

「ミケル爺さん。ファルコンの事は聞いてますか?」

 私はずっと頭の中でぐるぐると回っていた疑問を口に出した。一人で謎の機体を追いかけていった彼は、今どうしているのだろう。私の質問に殆ど答えてくれず、他の皆とも殆ど話しをしていなかった。三人は特に気にしていないようだったが、私は彼の肌と目の色が気になって仕方が無かった。彼の肌は褐色で、瞳の色は深紅だったのだ。
 その肌と瞳の色は、アクーラ人特有のものだと知ったのは、この戦争が始まって一週間が過ぎた頃、施設内で密かに取材をしていた時、パイロット達が小さな声でファルコンの陰口をたたいていたのを耳にした時だった。
――なぁ、ファルコンてよ。純血のアクーラ人なんだろ? あの肌と瞳が証拠だ。
 この言葉を聞いて、私は、18年前の戦争の本当の発端を思い出した。核ミサイルを投入するまでに追い詰められたアクーラ人達の、怒りと悲しみの理由を。

 18年前。嘗てない繁栄を誇ったアクーラは、世界から注目されていた。しかし、そこに住むアクーラ人達の肌と瞳は、外から見ると異端の物だったのだ。そして、人々の自分達とは違うという感情が収拾がつかなくなり、終いには道具としてアクーラ人達を使う様になっていった。怒りに我を忘れた市民達は武器を取り、近隣の国、ベリニア人を相手に何度となく暴動を繰り返したあげく、両国は戦争を開始。
アクーラ人は捕らえたベリニア人を奴隷にし、ベリニア人は捕らえたアクーラ人を虐殺していった。女も子供も、老人も関係なく。――そして、あの日が来た。
 アクーラが七発の核ミサイルを投入した日。
その存在を知ったべリ二アの大統領は和解を望み、そして、完全に決別された時。一発の核ミサイルが落とされ。世界はアクーラにその刃を向けたのだ。

「今思いだすだけでも恐ろしい……あの虐殺は、まさに地獄だった」
 18年前から、ミケル爺さんはこの施設にいたらしい。そして、血みどろの戦争を直接見ていた軍人の一人だった。アクーラの領地を半分征圧し、その土地に渡って整備士をしていた49歳のミケル爺さんは、川に女、子供の死体を捨てて行く兵士達の姿がまるで悪魔に見えたと言って、ふと、前方にある倉庫を見据えた。

「ファルコンは、確かに純血のアクーラ人だよ。そのせいで、あいつはこの施設では異端児に見られてた。あの地獄を見て、ベリニアに加担する、変な奴だってな」
「彼は……どうして行ってしまったのでしょうか」
「わしが聞いてるのは、昨日間に入って撃墜されて、海に浮いた死体の顔が、アクーラ人だったとは聞いたが。あいつ、それを見ていた機体にもアクーラ人が乗ってると思って追いかけて行ったんじゃないかと、わしは思ってるんだが」
「浮いていたのはアクーラ人だったんですか」
「聞いてないのか」
「はい。エッジは一言も……」
「あいつは、アクーラ人でもベリニア人でも気にしてないからな」
「ミケル爺さん」
「なんだ」

「今、この施設はどいう状況なんですか。一度に12人のパイロットを失って。まだ雛鳥扱いだった彼等が戦場に駆り出される。ベリニアは、どうなってしまうのでしょう」
「それは分からん」
「分からないって」
「戦況はこちらが優位だが、アクーラも嘗ては栄えた国だ。武装ぐらい隠し持ってるだろ。それにな、あいつらは覚悟が違う」
「覚悟」
「そうだ、あいつらは、今までベリニアに監視され縛られてきたんだ。この戦争は、自由を勝ち取る為の宣戦布告。どちらに転んでも、平和は無い」
「……」
 言葉が出なかった。私は、ここで、どうしたら良いのだろう。

#日記広場:自作小説

アバター
2010/05/07 18:40
同じ世界に住み。同じ地球という星に住んでいるのに。
何故種族や外見が違うということだけで人は戦争という武器を使うのでしょうね・・・。
もし、他の惑星に私たちと同じ様な生命体がいたら、地球人として一括りされるだろうに。
悲しいことですよね。

お話の続き楽しみにしています^^
アバター
2010/05/07 17:32
世界観が見えてきましたね。
せっかく、同じ土地に住みながら、仲良くできない種族間の苦しみが、戦争になっていくのは、悲しいことですが、歴史では良くあることのようです。

核の恐ろしさは、そんなこまごまとした人間同士のトラブルを超えてしまう超大な破壊力ですね。
春風さんの、核に対する辛い思いを充分綴られることを期待します。



Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.