□:空駆ける戦士に、敬礼!:□(2-2)
- カテゴリ:自作小説
- 2010/05/05 06:53:20
翌朝。医務室の扉が開かれ、私は真っ先にブレイクの元へと向かった。見舞いではなく、報告の為だ。しかし、彼は、現在敵国とかしたアクーラの宣戦布告を、私が口にする前に知っていた。この戦争で一番最初に敵の攻撃を食らった者として、あの攻撃は間違いなく憎悪に満ち溢れた戦争への意思表示だったと、彼はその身体をベッドに横たえたまま窓の外を見据えてそう口にしたのだ。あの時の彼の表情。怒りも悔しさも無く、只――悲しみにくれている様に見えたのを、私はしっかりと覚えている。
「ブレイク。君が生きて帰ってくれて良かった」
外を眺める彼に私が小さくそう言うと、彼は、微かに頬を緩め外を眺めたまま
「只の死にぞこないだよ……俺は」と、力無い声を発した。
※
一人生き残ったブレイクは、後に「仲間を見捨てた男」として軍の人間達から白い目で見られる事となった。他のパイロットが死んだのは、彼の責任ではないのに、一人行き残ったというだけで、真っ先に逃げ出したと判断されたのだ。けれど、ブレイクはそれを対して気にしている素振りは一切見せなかったという。彼の操縦技術はベテランパイロット達よりも突出したものがあり、彼は他のパイロット達の撃墜を阻止するため数少ないミサイルで攻撃をしたが、数少ないミサイルでの戦闘は安易なものでは無く、結局この結果を招いた。
全ての責任は、テロリスト相手に対してたいした武装をさせなかった上層部の人間にあったのだ。彼はそれを理解していたらしい。それで、自身がどんなに責められようとも気にする素振りを見せず、毅然とした態度を取り続け、自身に罪はないと表明し続けたのだ。
澄み渡る空に、爆音が轟く。
風と光を貫く鋼鉄の翼。熱風を放つエンジン。飛び交う無線。
戦場の空。そこに、ブレイクの仲間達はいる。
「よし! ブレイクに負けない様に生き残るぞ!」
「ラプター、集中して。ここはもう戦争の空よ」
「分かってるよ! 気合いを入れてないと、手が震えて操縦できねぇんだ」
「私もよ。でも集中しないと落とされるわ」
「分かった。集中だな。集中集中」
「ラプター、エッジ、俺が後ろを守る、二人は隊長機の後ろに付け」
ファルコンがそう言うと、速度を落として一番後ろに並び前方の機体を鋭い眼光で見据えた。するとラプターが
「何で後ろなんだよ! 一番操縦が上手いのはファルコンなんだから一番前はおまえだろ!」と、叫んだ。
「後方からの攻撃が一番部が悪いんだよ。何ならお前が後ろの敵を落とすか?」
「……」
ラプタ―は言葉を失う。彼にそんな技術は無いのだ。この戦場の空で、一番必要とされるのは腕、それを持っていない彼には後方支援は不可能だと、自身で理解していたのだろう。
「分かった、ファルコンに任せる。守ってくれよな。俺はまだ死にたくない」
「分かったよ。守ってやるから、隊長機、見失うな」
「了解」