Nicotto Town


木漏れ日の下


□:空駆ける戦士に、敬礼!:□ (1-4)

『汝の健闘を祈る』

 まだ太陽も昇りきらない明け方の滑走路。とてつもない爆音と共に、エンジン出力を最大まで上げて大空へと飛び立った13機の戦闘機は、横一直線に並んだ形態でアクーラの奥地、セリスバーン雪原へと向かって行った。海の傍である為にめっきり冷え込む自身の部屋でその光景を見ていた私は、何とも言えぬ心境で、鋼鉄の翼を広げて大空に飛び立った若き雛鳥の事を考えていた。まだ新米パイロットとして研修を終えたばかりの彼が、その操縦技術によって汚れた地へとと駆り出されていく。戦争は終わっているというのに。
「本当に戦争は終わっているのだろうか……」
 
 セリスバーン雪原。嘗てのアクーラ大型奴隷収容施設跡地が本当の名前。沢山の奴隷達の血と涙で支配されたその場所に、今は無き独裁者の影が巣くっているという情報が軍内部で実しやかに流れたのが、今から一週間前の事だった。そして、その情報が完全なる事実だと確定したのが二日前の事。
まだその原型を留めている大型奴隷収容施設跡地に、幾多もの銃火器が運び込まれているというのが、情報の根源だ。その場所を監視飛行していた航空機兵の若者がそれを見たという。初めは信用されていなかったらしいが、極秘任務として夜の偵察飛行を行ったハワード大尉が持ち帰った写真がそれを明確なものとした。その写真には、確かに大型の重火器が幾つも撮影されており、証拠としては十分過ぎる物だったのだ。しかし、何故重火器を集めているのかは一切不明。だが、危険な芽は摘んでおくに限ると、上層部の人間は話し合いを重ね、その結果。
――今日
 決心を固めた上層部の人間達は、13人の戦闘機パイロットに一つの命令を下した。
【跡地に巣くうテロリスト達に武器放棄の勧告をし、それに従わない場合は攻撃せよ】
 この命令に従い、新米パイロット、ブレイクを含めた13人のパイロット達は氷の大地へと飛び立ったのだ。上層部の予想では、テロリスト達は勧告に従い武器を全て放棄し、全ては無かった事になるとされている。そんなに上手くいくとは……到底思えないのだが。


※ 
「なぁ、ブレイク、今何やってんのかな?」
 訓練飛行も一段落した午後、戦闘機を降りて短い休憩時間を与えられた他の新米パイロット達は、上層部に呼ばれたハワード大尉の帰りを待って、今はいないブレイクの話しをしていた。彼等には自分達の仲間が何をしているのか、一切伝えられていないらしい。唯一、極秘ルートで彼の任務を知っている私だけが、その輪の中で孤立した存在となっているが、こういう事は慣れっこだ。対して気にしない。
「ブレイクなら別任務よ」
「別任務って?」
「内容は知らないけど」
「戦場に行ってんだったら、やっぱりあいつ、凄いって事だよな?」
「さっきから質問ばっかりね、ラプター」
 さっきからラプターはエッジに聞いてばっかりだ。そんなに彼が気になるのだろうか。
「だってよ、昨日は珍しくいたけど、最近は別任務ばっかりだ。気になるだろ」
 もっともな理由。人の好奇心そのままだ。
「そんなに気になるなら聞いてみればいい。夜に帰ってくるんだろ? あいつ」
 昼寝をしていたファルコンが割り込んだ。彼もまた、その空戦技術は高く評価されている。だが、ブレイクと違って、彼は戦場に駆り出された事は一度も無い。それを本人は、ブレイクが何か捏ねを使っていると逆恨みしている。本当は、彼の性格に問題があるのだが。

#日記広場:自作小説

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2010/05/05 05:23
ちょっと「スカイクロラ」を思い出した^^
原作は読んでないけど、アニメは面白かったよー



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