僕に おへそがない 17
- カテゴリ:自作小説
- 2010/01/30 21:29:46
人間は気絶した時に、まれに不思議な体験をする事があるそうです。
気を失うと脳の活動が一時停止して、意識がなくなるのが普通です。
でも僕は気を失っている時、先生が声をかけるまでの短い時間、現実では長い時間だろうの夢を見ていました。
脳が想像をめぐらす時間と、身体から感じる実際の時間には大きな差があるみたいです。
「ゴミト君、大丈夫。大丈夫なの」
僕は先生のせっぱ詰まった緊張感のある声と、肩を揺らされる感覚で意識を取り戻しました。
ほんとうは、脳だけの活動に体の感覚がプラスされたと言ったほうがいいかもしれません。
「先生、僕、どうなったの?」
「気絶したのよ。突然、目をつむって寝てしまったようになったの」
先生は僕の横で顔をのぞき込みながら、心配そうにそう言いました。
「ゴミト君、死んだかと思って心配したわ。よかった」
「ほんとうですか。こんなの僕、初めてです」
「そう、でも気絶でよかった。病院へ連れて行こうかと思ったわ」
先生は、僕が意識を取り戻し普通に話していることに安心したみたいでした。
「先生、いつの間に僕の横に?」
「ゴミト君が気を失ってすぐに。びっくりして、思わず肩を揺らしたわ」
「僕、気を失って長い夢、見ました」
「長い夢って、すぐに気が付いたわよ」
先生は、不思議そうな顔をしながらそう答えました。
「ええ、あんなに長い夢なのに」
僕はほんとうに、現実の時間にすれば何年もの出来事を見てしまったのです。
「長い夢って、どんな夢を見たの?」
先生は完全に安心したらしく、僕の気絶より夢の内容に興味をしめしました。
僕はゆっくりと夢を思い出しながら話そうとしましたが、長い夢をどこからどのように話せばいいのか迷ってしまいました。
『頭の夢の記憶をコピーして、先生の頭に直接貼り付けできたら』
と、僕は夢を思い出しながら思いました。
テーブルを見ながら考え込んでる僕の様子を、先生は僕の横でじっと見ていました。
二人の間に少しの沈黙が、静かに流れました。
外の雷と雨もおさまりかけ、雷の音も雨粒も小さくなっていました。
その事が二人の沈黙を、大きなものに感じさせていたのかもしれません。
でも沈黙は気まずさのあるものでなくて、なんか安心感がただよう静かな暖かい空気の中にいる感じがしました。
柔らかくて優しい空間でした。
『先生とできたら、このままずっといたいな』
と、僕がふと思ったときでした。
先生が沈黙を壊しました。
「ゴミト君、催眠って知ってる?」
「ええ、催眠術ですか。少し知ってるよ」
僕は先生の突然で突拍子のなく分けの解らない質問に、そう答えるのがやっとでした。
先生との空間の暖かな空気も気絶してみた夢の事も、みんな吹っ飛びそうになりました。
「ゴミト君、意識って分かる?」
「はい、僕、今気絶して意識が無くなりました」
「御免、ちょと質問難しかたったわね」
「はい」
僕が先生の難しい質問に気分を壊していることを、先生はすぐに気が付いてくれました。
「先生が言いたいのわね、いい。人間、催眠に入ると潜在意識が浮かび上がってくるの。解る?」
「解りません」
「うう、どう説明したらいいのかな」
先生は少し困った顔して、僕に解る言葉を考えているようでした。
「ゴミト君は、気絶したのでなく一種の催眠状態になったの。そう、君にそなわった能力がトランス状態をひき起こしたの」
僕は先生の話をぜんぜん理解できませんでした。
「先生、僕、疲れました」
僕は急に家に帰りたくなって、先生にそう言いました。
「そうね、雨も止んだ事だし店を出ましょうか。お勘定払っとくから先に帰っていいよ」
「先生、どうもご馳走さまでした。先に帰ります。ありがとう」
僕はなんだか本当に疲れきたので、先生にお礼を言って家に帰ることにしました。
すごい雨が降った外は、夏の日差しが戻りむしむししていました。
応援ありがとう
がんばるわ
これからもよろしく
そうです。
自分の出生どきの秘密と先生との未来での関係に気がつき始めました
BENクーさん、言葉の内容よくご存知で
また教えてくださいね~
今回は読みやすかったです
でも 難しい内容に挑戦してるんですね
ゴキブンちゃん ファイト~^^v
ゴミトの意識が何かに覚醒し始めたのか・・・
心理描写・・・相変わらずお上手です!^-^!
そうでうね。
学校で試験がなかったら、誰も勉強しないかも。
夢の内容は次回にしまた。
年上の女のヒト魅力的です
ゴミトは、夢の内容を先生に送れたのでしょうか?
その夢は、お話にどう係わってくるのか、楽しみです ^^
先生は、ゴミトを子供だと思っている反面、普通の大人と同じような感覚で話してしまう事が
あるように見受けられます。
中学生は、本当に 微妙な年代なんですね ^^